2012年新春特別対談 観光で地域を元気に

2012年新春特別対談
観光で地域を元気に

 2012年の本紙「新春対談」は、民主党観光振興議員連盟の川内博史会長と全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の佐藤信幸会長(日本の宿 古窯)が登場。2011年は、東日本大震災による直接的被害に加え、福島第一原子力発電所の事故の影響で「風評被害」という言葉では括れない多くの「実害」を生み、東日本を中心に観光業界は壊滅的な被害を被った。一方、九州新幹線全線開業効果による西日本を中心とする観光の盛り上がりも見られた。12月10日には、2012年度税制改正大綱に、旅館業界が長年の悲願として要望してきた「ホテル・旅館に係る固定資産評価の見直し」が盛り込まれ、15年度の評価替えからの実施が決定。この決定に大きく関わった観議連の川内会長と、全旅連の佐藤会長に観光業界の現状とこれからについて語ってもらった。

【司会進行=旅行新聞新社社長・石井貞徳、構成=増田剛、伊集院悟】

固定資産税 減税へ

<観光業界2人のキーマンに聞く!!>

民主党観光振興議員連盟会長
川内 博史

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全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長
佐藤 信幸

川内 博史 氏  ×  佐藤 信幸 氏

※ 詳細は本紙1447号または日経テレコン21でお読みいただけます。

“人間”のサービスに ― 不要論は出ない(1/1付)

  2011年は日本国内だけでなく、世界中で激動の1年だった。12年はどのような年になるのか。もちろん期待もあるが、不安も同じくらいある。

 今年は旅行業界の雄「JTB」が創業100周年を迎える。JTBよりも一足先に、日本旅行が2005年に創業100周年を迎えた。日本を代表する2つの旅行会社も、1世紀という重い歴史と伝統を有する100年企業なのである。この長き歴史に敬意を表したい。

 JTBが創業した100年前の1912年も、まさに激動の年だった。4月にタイタニック号が沈没、7月には大阪に初代通天閣が完成。そして、明治天皇が崩御し、元号が明治から大正に変わった。日本旅行が創業した1905年は日露戦争の年だ。激動の時代からスタートしたために、その後の数知れない荒波にも耐え、自らを変革し、大企業に成長したのだろう。そして今でもそうかもしれないが、一昔前は、学生にとって旅行会社は眩しいくらいに憧れの企業であった。

 しかし、近年のIT革命によるインターネットの進展によって、大手旅行会社の苦戦が続いている。海外旅行も国内旅行も、楽天トラベルやじゃらんnetに代表されるインターネット総合旅行会社や、宿泊予約サイトに押され気味だ。大手だけでなく、中小の旅行会社も相当に厳しい状況に直面している。

 人間同士の競争であるならば、個人や企業努力によって存在感を示すことはできる。しかし、どんな業態であっても、機械やコンピューターに代わる存在となってしまえば、不要論も出てくる。一方、人間でなければ成り立たない仕事は強い。医師や看護師、学校の先生、料理人などは、100年後も存在しているはずだ。高性能ロボットのようなものも出現しているだろうが、人間でいるかぎり不完全でありながらも、どこか温もりのある人の手や感情を求めるものだ。電脳シティの象徴である秋葉原に、拙なれど、温もり十分のメイドカフェが誕生したのも偶然ではない。未来はコンピューターやロボットによって簡便かつ正確に物事を処理する能力の競争がさらに激化するだろう。その反面で人間の生のサービスを求めるという、2極化が進んでいくだろう。忘れてならないのは、観光業界こそ、人の力が必要とされているということだ。

(編集長・増田 剛)

創造的復興構想を提言、東北シンポの成果報告

中山会長
中山会長

 国際観光施設協会(中山庚一郎会長)は12月1日、東京都内のホテルで忘年交歓会を開いた。中山会長は11月9日、岩手県遠野市において協会主催で開いた東北復興構想を話し合うシンポジウムの成果を報告した。

 同協会は被災地の特徴的な地形、リアス式海岸を使って美しい観光地をつくる「陸中八海岸・広域環状観光圏構想」をまとめ、政府の復興構想会議に提言。平泉から松島までの100キロを超える地域を結び、8地域を選び美しい海のまちをつくる壮大な構想。

 中山会長は「知名度の高い宿施設、料理の達人が腕をふるうレストラン、芸術家村などを誘致し、それを核として地域ブランドをつくる。創造的復興になるのではないか」と語った。シンポジウムには、地元の漁業、酪農、旅館関係者なども出席。多くの賛同を得られたという。

 当日の講演は、日本政策投資銀行参事役で、復興構想会議検討部会専門委員を務める藻谷浩介氏が登壇。藻谷氏の近著「デフレの正体」(角川Oneテーマ21)は、45万部を超えるベストセラーとなった。

藻谷浩介氏が講演
藻谷浩介氏が講演

 藻谷氏は、日本の対貿易赤字の代表国としてスイス、フランス、イタリアをあげ、「結局、先進国の競争力は技術力ではなく、文化力」とし、「文化はある程度人件費が払われ、内需のあるところにしか育たない。日本にはいいものがいっぱいあるが、どんどん人が減り、内需が減る現状では、競争が成り立たなくなるのではないかと心配している」と語った。さらに3国に共通するのが観光ブランド。「現代社会においては国の強さは、観光収支と食品、繊維の強さではかる。ハイテクは20世紀。21世紀は生活文化と観光の時代」とまとめた。

 
 
 
 

東北6県が24%増、海外はアジアが高い伸び(楽天トラベル)

 楽天トラベル(岡武公士社長)はこのほど、2011年12月23日―2012年1月3日のクリスマス・年末年始の国内・海外旅行の予約状況を発表した。国内旅行は前年比25・2%増、海外旅行は同30・2%増と、国内・海外ともに好調な状況となった。

 国内旅行をみると、東北6県は同24・2%増と高い伸びを示し、とくに秋田県が同81・9%増、山形県が同51・1%増と好調。震災以降の東北各県の自治体による積極的な観光施策の効果が出た。また、東北では震災後、団体旅行客が減少し、旅行予約のインターネット化が加速。その受け皿となったことが好調の背景にある。

 一方、例年人気のある沖縄県は同28・7%増と好調で、とくにファミリー層の取り込みに奏功。近年、国内旅行先として高い伸びを示している九州エリアは、九州新幹線効果で引き続き好調。佐賀県が同28・8%増、福岡県が同26・2%増となった。

 海外旅行は、マレーシアが同92・9%増、台湾が同91・3%増と非常に高い伸びを記録し、アジアへの旅行が好調。アジア圏以外では、ギリシャを発端とする欧州の財政不安の影響から長期旅行先は欧州から米州にシフトし、米国が同78・2%増と検討している。また、ダイナミックパッケージは同48・8%増。とくに3人以上利用で同95・3%増と好調だ。渡航先ではサイパンが人気に。 

国内、海外ともに好調、東北・九州新幹線の効果(JTB)

 JTB(田川博己社長)がこのほど発表した、年末年始(2011年12月23日―12年1月3日)の旅行動向によると、1泊以上の旅行に出かける人数は前年比1・5%増の3008万4千人。国内旅行は前年比1・4%増の2948万8千人、海外旅行は同4・7%増の59万6千人と、国内・海外ともに前年より増加した。旅行動向はJTB予約状況、航空会社予約状況、業界動向、1200人へのアンケート調査などから推計した。

 国内旅行をみると、今年は12月23―25日が3連休となり、クリスマス期間の旅行者が増える見込み。夜景やイルミネーションが魅力の都市部やテーマパークが毎年人気だが、3連休を利用し温泉地や北海道道南エリア、沖縄なども人気になっている。

 高速道路のETC休日割引が12月31日―1月3日の4日間に適用されるため、出発日のピークは12月30、31日、帰着日は1月2、3日に集中する模様。平均旅行日数は前年より0・1日上回る3・6日。1泊2日が前年比1・4%増の34・9%と最も多い。2泊3日、3泊4日はともに微減したが、4泊5日、8泊以上がそれぞれ3・0%増、2・1%増と、長期を予定している人が増えた。

 旅行の同行者は「家族」が3・5%増の72・3%。旅行目的も「実家で過ごすため」が4・4%増の40・4%と多く、昨年の旅行と異なる点では「久しく会っていない親族や友人と会うため遠出する」が24・2%を占め、今年の年末年始は久しく会っていない親族や友人に会うための帰省や旅行が増えそうだ。

 東北新幹線効果で青森方面の旅行者が増加。世界遺産に登録された平泉が注目され、花巻、志戸平温泉の人気が高い。また、九州新幹線全線開業効果で九州方面の宿泊施設の予約状況も好調で、とくに鹿児島県の指宿温泉が人気となっている。

 海外旅行は、円高の恩恵で好調に推移。旅行先は、前年比14・3%増のシンガポールや13・5%増の台湾、12・9%増の香港などCM撮影地で話題となったアジア方面が人気に。そのほか、航空機の定期便が増えたハワイも10・6%増となった。出発のピークは12月29、30日が最も多く、年始の1月3日までは出国ラッシュが続く見込み。一方帰国は1月2、3、8、9日がピークとなりそうだ。

 旅行費用は前年比0・8%増の20万4700円となる見通し。 

日本ブランドの担い手へ、おもてなし大賞創設―経済産業省

 経済産業省は12年度に「おもてなし大賞(仮称)」を創設し、優れたサービスや先進的な取り組みを行っている企業や地域を「おもてなし大賞」として表彰する。

 「おもてなし」は、日本の新たなサービス・ブランドとして海外へ売り込むことができる重要な価値であり、「日本ブランドの担い手」としてインバウンド観光の需要喚起に加え、地域に存在するサービス産業の活性化を目指していく。

 12月6日には、同省で「『おもてなし』による産業の活性化に関する研究会」の第1回会合が開かれ、産業の高付加価値化に向けたおもてなしなどについて意見交換した。

 委員は次の各氏。

 【座長】力石寛夫(トーマスアンドチカライシ代表取締役)【委員】新井民夫(東京大学大学院工学系研究科教授)▽牛窪恵(インフィニティ代表取締役)▽鈴木一義(国立科学博物館理工学部科学技術史グループ長)▽セーラ・マリ・カミングス(桝一市村酒造場取締役)▽田中実(CS・ホスピタリティ実践研究所代表)▽内藤耕(産業技術総合研究所サービス工学研究センター副センター長)▽増田剛(旅行新聞新社・「旬刊旅行新聞」編集長)▽政所利子(玄代表取締役)▽モンテ・カセム(立命館副総長・国際担当)▽山上徹(同志社女子大学現代社会学部特任教授、日本ホスピタリティ・マネジメント学会会長)

三陸鉄道のアイデア仕掛け人、日本国際観光学会で赤沼課長が講演

赤沼喜典課長
赤沼喜典課長

 日本国際観光学会(会長=松園俊志・東洋大学国際地域学部国際観光学科教授)は日本旅行業協会(JATA)と協力して11月28日、東洋大学白山第二キャンパスでツーリズム・インダストリー産学協同セミナー「三陸鉄道の果敢なチャレンジ! 観光で復興を信じて」を開いた。

 今回は、こたつ列車や赤字せんべいなど斬新なアイデアを連発することで、過疎地にありながら全国区にファンを広げた三陸鉄道のアイデア仕掛人である、赤沼喜典課長が登壇し、数多くのアイデアを実現させた思いや、東日本大震災によって被災した体験、今後の復旧への道筋などを熱く語った。

 三陸鉄道は岩手県の三陸海岸を縦貫する、全国初の第三セクター方式の鉄道会社。赤沼課長は、アイデア仕掛人として、海女ガイドや、漁師ガイド、カモメの餌付け、寄席列車、ワイン列車、そして1933(昭和8)年の津波を紙芝居で伝える「海の語り部」など、ありとあらゆる企画を列車に盛り込み、「三陸鉄道を一つの観光地」として全国的に話題を集め、集客にも貢献した。

 しかし、今年発生した東日本大震災で現在、北リアス線は宮古―小本間間と陸中野田―久慈間で臨時ダイヤで運転、南リアス線は全線で運転を見合わせている。第3次補正で108億円の予算がつき、12年4月20日ごろに久慈―田野畑間が復旧、13年には盛―吉浜間、そして14年4月の全線復旧を目指している。

 日本国際観光学会は、3・11後も被災した線路後のウォーキングツアーなどを実施している赤沼課長が全行程を同行しながら、被災した陸前高田市の奇跡の一本松や大船渡市、三陸鉄道荒川橋梁、釜石市、田老地区、浄土ヶ浜、鍬ヶ崎地区、宮古市内などを視察する「被災地支援三陸フロントライン観光」を企画した。日程は12年1月8、9日の2日間。宿泊は山形県・花巻温泉。詳しいツアーの問い合わせ・申込みは日本国際観光学会「ツーリズム・フォーラム」事務局 電話:03(3556)8223。

観光客数の回復を、観光地関係予算に意見書

佐藤好億地熱対策特別委員長

 全国観光地所在町村協議会(会長=吉田秀光・鳥取県三朝町町長)は12月1日、東京都千代田区の全国町村会館で総会を開き、2012年度の観光地対策関係政府予算に対する意見について確認した。今回は、東日本大震災や台風などの災害からの復旧・復興についての項目を盛り込み、観光客数回復への施策を求めた。

 吉田会長は東日本大震災などに触れ、「インバウンドは政府、国会のトップが外国に対して日本の安全を発信しないと回復の兆しは見えない」と主張。「大変厳しい状況のなかだが、全国の観光地所在町村一丸となって観光客の復帰に向けて全力をあげて努力することを皆さんと確認したい」と力を込めた。

 また、観光庁の溝畑宏長官が登壇し、最近の観光行政の取り組みについて語った。そのなかで溝畑長官は「観光は掘り起こしの作業でマネージメントだ。皆さんはその経営者で、日本の観光を変えていくのは皆さんの働き。今後の日本の観光に多いに期待している」と呼び掛けた。

 「2012年度観光地対策関係政府予算及び施策に関する意見」の内容は、従来からの意見に加え、国土交通省や総務省、厚生労働省、文部科学省などの関係省庁に対し、減少した観光客数の回復に向けた施策を要望。具体的に(1)国内観光の活性化をはかるため、国内各地での観光キャンペーンを積極的に展開すること(2)訪日旅行客の誘客をはかるため、海外で先導的なプロモーションに取り組むこと(3)訪日外国人旅行者の安心感につながる、正確でわかりやすい情報を発信すること(4)出入国管理・査証発行体制整備など、着実な取り組みを進めること――などを明記した。

 まとまった意見書は総会後、正副会長と役員で室井邦彦国土交通大臣政務官や竹歳誠内閣官房副長官、溝畑宏観光庁長官、宮島大典民主党副幹事長ら政府・国会関係者に持参し、実行運動を行った。また、会員には地元選出の国会議員や関係省庁へ適宜実行運動するよう促した。

第37回「100選」決まる、新たに8施設入選―本紙1月11日号で発表

100選選考審査委員会

 旅行新聞新社・100選選考審査委員会は12月1日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第37回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞「日本の小宿」10施設を決定した=写真。「第32回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第21回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2012年1月11日号の紙面で発表する。

 今回の総合100選では、新たに8施設が入選。表彰・発表式は1月20日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第37回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万7050の旅行会社(支店や営業所含む)対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定する。主催は旅行新聞新社で、毎年実施。今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 なお、今年は東北6県のアンテナショップに協力いただいたご当地グルメなどの「東北物産プレゼント」を、投票者のなかから抽選でプレゼント。当選者の発表は商品の発送(11月中旬発送済み)をもってかえさせていただきます。

 たくさんのご投票ありがとうございました。

地熱発電問題を議論、初の県温泉協会連絡会議開く

<地熱は本当にクリーンエネルギーか?>

初の県温泉協会連絡会開く

 日本温泉協会(廣川允彦会長)は11月30日、東京都市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、県温泉協会連絡会議を開いた。地熱発電問題への協会としての対応など、各県の温泉協会が横の連携を強め、情報を共有することが目的で初の試みとなる。

 廣川会長は冒頭、「全国に3170の温泉地があり、2万7800の源泉があるなかで、都道府県に温泉協会がある県は14県。このうち11県に集まっていただいた」とあいさつ。「近年、再生可能なエネルギーの導入という国の方針のなかで、地熱発電が脚光を浴びている。また、福島県の原発事故によって追い風が吹いている。しかし、地熱発電の周辺では、温泉源の影響の事例が多数報告されている。短期の観測では影響がなくても、長期的には影響があると考えるのが普通だと思っている。日本温泉協会は温泉資源保護の立場から、既存の温泉地周辺での無秩序な地熱開発に反対してきた。関係団体と協力しながら、温泉資源保護のために運動をさらに進めていきたい」と語った。

 続いて環境省講演「地熱発電の導入促進に向けた国の動き」では、11月24日にまとめた「温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」の素案が報告された。

 ガイドラインでは、地熱開発と温泉事業が共存・共栄するためには、協議会などを設置することで、地熱開発に伴う温泉や噴気への影響に関する検証結果や、地熱発電の現状報告、将来計画などを説明・報告し合いながら、関係者間の合意形成をはかっていくことが重要としている。

 環境省の大庭一夫自然環境局自然環境整備担当参事官は「環境省は再生可能エネルギーの一環として地熱開発を進めなければならないという立場であるが、無秩序な開発はいけないと感じている」と話した。これを受けて山形県温泉協会の堀是治会長は「環境省は温泉保護を第一に考えてほしい」と要望した。

 熊本県温泉協会の松﨑郁洋会長は、温泉掘削の許可は都道府県知事に求めなければならないが、「知事に答申する審議会を通さないで地熱開発を進められると、手も足も出ない」と訴えた。

 これに対して環境省は「ガイドラインでは、審議会を通さなければならない」という見解を示した。

佐藤好億地熱対策特別委員長
佐藤好億地熱対策特別委員長

 地熱対策特別委員長を務める福島県温泉協会の佐藤好億会長は、「日本温泉協会は無秩序な地熱開発には一定のガイドラインが必要という立場をとってきた。無秩序とは人間環境に悪影響を及ぼすこと。地熱発電には蒸気として大量のCO2や硫化水素、ヒ素、水銀などを大気に放出する。また、吸い取った大量の熱水はヒ素などを含むため、一般河川に放流することができない。このため、還元井を作って地下水に戻さなければならない。これがやがて地下水に影響しないなんてありえない」と語り、「地熱は本当にクリーンエネルギーなのか?」と疑問を呈した。

 さらに、「開発サイドにしか情報がない」現状を指摘し、第三者的な、客観性が担保された情報提供に加え、環境のモニタリングの徹底などを求めた。

 岐阜県温泉協会の滝多賀男会長は「ほかに産業のない町で地熱開発によって温泉が出なくなってしまえば、その地域はみじめになる。そのあたりもしっかりと考えなければならない」と述べた。

 森行成副会長は「地元の自治体が『地域経済主義』によって地熱発電を誘致した場合、我われ末端の温泉事業者は反対することができなくなる。地元の合意が絶対必要」と語った。

 各温泉協会からは、地元の自治体に温泉の専門家がいないことへの危惧の声も多かった。