2015年度版「ピンクリボンのお宿」冊子発行!

2015年版冊子

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(会長 畠ひで子=匠のこころ吉川屋女将)は10月6日、加盟するお宿情報をまとめた冊子「ピンクリボンのお宿」を発行いたしました。

 冊子では加盟するお宿の温泉・お風呂情報を中心に、「洗い場の仕切りがある」「脱衣所での配慮」「入浴着着用の有無」「貸切り風呂対応」などをご紹介しております。さらに、宿泊プランや宿泊特典、温泉や料理に関するコラムなども掲載し、また巻末にはお得なクーポンページもございます。

 全国の病院やネットワークに加盟する宿などで配布するほか、お問い合わせいただいた方にも無料で送付いたします。

 
 詳細は同ネットワークホームページ(http://www.ryoko-net.co.jp/modules/pink_oyado )から。

桑田雅之次期青年部長、政策目標を達成したい、衆・参院選挙を控え

桑田次期部長(左)と山口部長が握手
桑田次期部長(左)と山口部長が握手

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の青年部(山口敦史部長)は9月11日に臨時総会を開き、次期青年部長に桑田雅之氏(菅平高原温泉ホテル代表取締役)を選任した(既報)。桑田氏は当選人演説で「『One for  All,All for One』(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」の精神で青年部の組織運営を行うことをアピールした。さらに、さまざまな課題を解決していくうえで、(1)政策問題への取り組み(2)流通課題への取り組み(3)インバウンドへの取り組み(4)組織強化(5)未来を担う若手経営者の育成――の5つの基本方針を推進していくと語った。

 政策問題への取り組みについては、「耐震問題や固定資産税、NHK受信問題、国内旅行の活性化に向けて有給休暇を取りやすくするといった大事な政策、業界の環境が変わるような政策に取り組まなくては全旅連青年部が存在する意味はない。しっかりと取り組んでいきたい」と語った。さらに、「私の期には、16年7月に参議院議員選挙、同12月には衆議院議員の任期満了を迎え、選挙が行われる。このときに我われ宿泊業界が一丸となって、一つでも政策目標を達成していきたい」と強調した。

 流通課題への取り組みでは、全旅連サイト「宿ネット」をベストレートギャランティー(最低価格保証)の直販サイトにリニューアルするビジョンを示した。

 インバウンドへの取り組みでは、「RYOKANブランドを確立し、しっかりとプロモーションしていく」とし、観光庁の施策にRYOKANブランドを含めてもらい、国土交通省、観光庁との結びつきを深めていきたい」とした。

 組織強化では、「見える化」を進める。「旅館規模の関係でどうしても参加できない部員もいるため、セミナーや総会などのネット配信ができるようにしたい」と語った。そのほか、青年部の緊急ネットワーク網の整備を継続するほか、青年部員の減少により、全国大会の低予算化に取り組み、その分を各委員会など青年部事業への予算増加をはかる。

 未来を担う若手経営者の育成では、若手経営者の登竜門となるような年間プログラムを作成していきたいとした。

 そのうえで、桑田氏は「皆の想いが叶えられる組織でなければ、組織の存在意義はない」とし、「アンケートで部員の声を集め、年内には新たな事業も含め、事業内容をしっかりと作っていきたい」と語った。

青年部員の前で当選人演説を行う
青年部員の前で当選人演説を行う

【桑田雅之氏演説】「One for All ,All for One」
(一人はみんなのために、みんなは一人のために)

 ラグビーでよく使われる言葉ですが、これはすべての組織を運営するために必要な基本的な考えだと私は思います。全旅連青年部においては「青年部員は全旅連青年部のために、全旅連青年部は青年部員のために」と解釈できると思います。

 現状はどうでしょうか? 地元の部員に聞いても全旅連青年部はどんなことをやっているのかわからない。という答えが返ってきます。では実際我われの活動は意味の無いことをやっているのでしょうか? そんなことはないと思います。ただ、上手く伝わっていない状態なのだと思います。

 そこで、私が思い描く全旅連青年部とは、私がやりたいことを実現することはもちろんですが、可能な限り皆さんの共通意見を取り入れ、それを全国に伝えていくことだと思います。

 私はラグビーというスポーツを通して色々なことを学んできました。海外のチームでプレーし、プロとしてのハングリーさや、自分を犠牲にしても仲間を生かすチームワークを学び、自分よりも遥かに大きな相手に立ち向かって行く勇気を養い、さまざまな文化や人種の狭間でコミュニケーション能力を磨く、という貴重な経験をしてきました。

 私は、「One for All,All for One」(一人はみんなのために、みんなは一人のために)の精神でこの組織を運営し、この業界を取り巻く問題に全青年部員のスクラムを組んで立ち向かって行きたい。

 そういう想いで次期青年部長に立候補させていただきました。

No.383 旅館経営教室(2)―「おもてなし」 - おもてなしを科学的にモデル化

旅館経営教室(2)―「おもてなし」
おもてなしを科学的にモデル化

 宿泊業界では普通に使われていた「おもてなし」という言葉が昨今、急に注目度が高まっている。一方で、スタッフの接客や接遇にともなう「所作」や「動作」がおもてなしの議論の中心になるケースも多い。工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が「旅館経営教室」の第2弾として、おもてなしを「お客様とスタッフが一緒に行う情報交換の一連の作業プロセス」と定義し、さまざまな現場の事例とともに深く考えていく。(4面に続く)
【増田 剛】

 「おもてなし」が、ここにきて世の中で一つの重要なキーワードとなりはじめています。しかし、宿泊業界はずっと前からこの言葉を普通に使っており、そもそもこれが何か新しい概念というわけではありません。

 私は、サービス産業の生産性革新の科学的手法の開発を専門に、現場の調査と研究を進めています。

 このように言いますと、何かとても無味乾燥なことをやっているように思われますが、実際の現場でスタッフと顧客の間で取り交わされているさまざまなやりとりが、サービスの生産活動の最も基本的な部分であり、だから「日々の顧客接点の現場で実際に何がどのように行われているのか」ということに自分はとても関心があります。

 この7―8年、現場で実際に働いているスタッフに地道にヒアリングし、ここにきて注目が急に増してきたこの「おもてなし」をもう少し科学的にモデル化できないかと思うようになりました。

 結論から言いますと、今の「おもてなし」で議論されていることに漠然とした違和感を持っています。それはなぜかというと、多くの場合、そこにスタッフの接客や接遇にともなう「所作」や「動作」に議論の中心があるからです。…

 

※ 詳細は本紙1560号または10月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

宿文化の継承 ― 宿に誇りを持つ若い世代が増えた

 長野県と岐阜県の県境にある御嶽山が噴火し、多数の死傷者が出た。突然の噴火だったため、秋の紅葉シーズンを迎えた登山を楽しむ観光客が犠牲となった。つい最近では、広島で大規模な土砂災害が発生した。自然と密接している山や海、川沿いに多い旅館や観光施設の方々には、くれぐれも用心してほしいと思う。もちろん、自然災害は、山間部や海辺だけでなく、都市部にも及ぶ。

 さて、先日、長年ずっと行きたかった山形県米沢市の山奥にある一軒宿・姥湯温泉桝形屋を訪れた。日本各地で「秘湯」と言われる温泉宿を訪ねたが、この姥湯温泉への道は、想像を絶するほどの過酷さだった。日本を2周するほど走った愛車で細い急峻な坂道を登り続け、途中狭いカーブで岩にぶつけ、へこませてしまったが、後悔はしていない。東日本大震災の直後、東北の地図を描いたステッカーを貼って、東北自動車道を風を切って疾走している車をたくさん見かけたが、私の車にはもう日本地図のステッカーを貼っても許されるのではないかと思っている。

 話を戻そう。

 通常なら誰も近づかないような断崖絶壁の場所で温泉を守り、宿を営む。そこで日本全国から訪れる宿泊客を受け入れる。その事実だけでも、私はこの一軒宿を17代も守り続けていることに敬意を表したのだった。その日、18代目となる遠藤哲也さんと宿で色々な話ができた。シンプルでありながら、温かみのある客室。ツヤを消した丈夫な柱など、宿のこだわりなども話した。桝形屋は日本秘湯を守る会に加盟している。今年40周年を迎える日本秘湯を守る会では、後継者問題が大きな課題となっている。しかし、これは、多くの旅館経営者の共通の悩みでもある。

 口には出さないが、「実は旅館を経営してみたい」と思う人は多い。私の尊敬する大先輩の旅行作家も山荘を経営する夢を抱いていたし、つい最近は意外な人物もそのような夢を持っていることを知った。また、実際に雑誌「自遊人」を発行する岩佐十良氏は新潟県南魚沼市で旅館「里山十帖」の経営を始めた。先日、お話する機会を得た。岩佐氏は「ぜひ取材に来てください」と笑顔で言われた。

 10月8日に京都で全旅連青年部の全国大会が開かれる。青年部は次世代の宿文化を担う者たちの集まりだ。青年部員は年々減少しているが、最近は青年部員の意識の変化を感じている。今から15年ほど前の青年部員は、まだ「遊び人」風情の若旦那が多かったという印象が残っている。そして、心のどこかに「宿を継ぐことが嫌だ」という空気が漂っていた。彼らに宿を継ぐ誇りのようなものは希薄だったような気がした。そんな時代だった。バブル経済が崩壊し、宿は膨大な借金を残し、地方は本格的な荒廃に向けて、坂を転がり始め、衰退へと加速していた。その後もしばらくの間、青年部の会合では、「旅館経営者として夢を持とう!」という言葉を多く聞いた。

 今は地方の状況は一層厳しいものとなったが、一方で宿の経営者としての誇りを感じる青年部員の割合は増えているような気がするのだ。時代の流れかもしれない。だとしても、それは悪い流れではない。宿文化というものを、もう一度若い世代が見直す時期が来たような気がする。

(編集長・増田 剛)

6カ月連続で100万人突破、8月の訪日外客数(JNTO)

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 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した8月の訪日外客数は、前年同月比22・4%増の110万9600人と、8月の過去最高を記録した。これにより3月から6カ月連続で月間訪日客数100万人を突破。1―8月累計は前年同期比25・8%増の863万7800人。

 市場別では、中国、台湾、香港、タイ、ベトナム、インド、米国、カナダ、フランス、ドイツが8月として過去最高を記録した。

 重点市場の動向をみると、中国は同56・5%増の25万3900人。大型クルーズ船14便の寄港があり、7月に続き、8月も最も訪日旅行者数の多い市場となった。1―8月の累計では前年同期比84・0%増の154万2400人となり、すでに年間の過去最高(2012年の142万5100人)を上回った。

 韓国は同16・7%増の25万1400人で、2カ月連続で前年同月比プラスとなった。8月としては過去2番目の記録だ。

 台湾は同17・9%増の22万9900人と、13年2月から19カ月連続で各月の過去最高を更新中。成田便の増便や地方空港へのチャーター便が就航し、団体・個人旅行ともに好調に推移している。

 同じく香港も、同4・4%増の7万4900人と、19カ月連続で各月の過去最高を更新中。テーマパークの入場券とセットになった旅行商品などが好評だった。

 そのほか、東南アジア諸国では、タイが29カ月連続、ベトナムが32カ月連続で各月の過去最高を記録。同71・0%増の1万1500人となったフィリピンは1―8月の累計(11万4300人)で、すでに前年の年間訪日旅行者数を上回った。一方、マレーシアとインドネシアは、昨年は8月だったラマダン明け休暇が今年は7月であったため、前年同月比でマイナスとなったが、7―8月の合計ではそれぞれ前年同期比25・0%増、同4・1%増の伸びとなった。

 なお、出国日本人数は同2・8%減の178万8千人と、3カ月連続でマイナスとなった。

官民の温度差

 メラビアンの法則は状況設定に関し諸説あるが、相手に与える印象は、表情や服装、態度などの視覚情報が55%、声のトーンや大きさ、口調などの聴覚情報が38%、話の内容や言葉などの言語情報が7%といわれる。

 今年も47都道府県観光アンケートをお願いするため、各県の観光課に電話をしたのだが、対応は千差万別。丁寧でまさに「おもてなし」を感じる対応や、世間話を交えたフレンドリーな対応もあれば、明らかに煩わしそうな対応や、事務的で無機質な対応もあった。昨今、「おもてなし」が取り沙汰され、観光はその最たるものだが、観光を担当する役所の対応におもてなし精神が感じられないのは残念だ。民間企業は顧客満足を高めるため「おもてなし」に力を入れている。この官民の温度差やいかに。国民の「公」として、役所には「おもてなし」を率先する心ある対応を期待したい。

【伊集院 悟】

【KNT―CT国内大交流コンベンション】全国の支店が集結、各地域が魅力PR

ホールディングス 戸川和良社長
ホールディングス
戸川和良社長

 KNT―CTホールディングス(戸川和良社長)は9月17日、新たな国内旅行需要の発掘を目指した「第3回国内大交流コンベンション」を東京都内で開き、商談会と分科会を行った。グループの全国支店約80カ所と協定旅館連盟・全国ひまわり会の会員180人が、活発な商談や各地域の魅力をPRした。

 分科会では地域ブロック別にブースを構え、各支店に向けたプレゼンテーションやグッズ紹介でにぎわった。北海道ブロックの定山渓は、「風呂に入って飯食って帰る、ではなく、アクティビティも増えている」とカヌー体験・フルーツ狩りや、札幌から40分というアクセスの良さなどを紹介。九州ブロックの鹿児島県はPR隊のかごしま親善大使、熊本県はくまモンが登場するなど多くの人の注目を集めた。

 戸川社長は「地域誘客交流事業は、近畿日本ツーリストの広範なネットワークとクラブツーリズムの開発力を最大限に活かせる。着地のニーズと発地のニーズを合わせて生の旅行商品を造成する」と語った。

 近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟の西野目信雄会長は、来年度の交流会について「また新しく形を変えて、地域活性化につながる交流会にしていく」と意気込みを語った。

横柄な運転手

 沖縄・石垣島に出張した際、空港とレンタカーステーションを結ぶバスに乗って驚いた。運転手がタメ口でガムを噛んでいたのは百歩譲って良いとしても、シートベルトをせずに運転していたのは立派な道路交通法違反である。にもかかわらず、車内には「ポイ捨て厳禁! 発見の場合、罰金1万円頂きます」との張り紙が四方八方に貼ってある。

 島に降り立った観光客が、こういう光景にでくわしたらどう思うか。商談で会った、石垣市観光交流協会会長にその状況を説明し、改善を求めた。タクシーや飲食店などへのクレームも多いという。

 一部の連中は、口を空けていれば、勝手にお客が入ってくると思っている。相変わらず絶好調の八重山観光だが、その土台が揺らいでいる。

【土橋 孝秀】

【第1回旅行マーケットセミナー】シニアも1人旅増加、ネット予約の早期化顕著(JTB総研)

黒須宏志氏
黒須宏志氏

 JTB総合研究所は9月9日、「第1回旅行マーケットセミナー」を開き、1部では黒須宏志主席研究員が海外旅行を中心とする2013―14年の旅行マーケットを解説した。不振の続く海外旅行市場について、旅行経験値の高いコア層の鈍化や地方発需要の停滞感などを指摘し、構造的な変化としてシニア層においても1人旅の増加が進んでいること、FITオンライン予約の早期化が顕著になってきていることなどを挙げた。

 黒須主席研究員は、マクロ経済と国内旅行需要の関連性において、名目雇用者報酬と国内宿泊観光旅行者数が5―10年のレンジで転換が起きている流れを説明し、この2つがシンクロしていることから、消費税増税などの影響で足元の景況は地方経済を中心に個人消費への懸念が広がっているが、「旅行支出は引き続き堅調」との分析を紹介した。観光性の国内宿泊旅行の旅行単価が、2011年の夏を基準とした場合に20代と60代で消費単価が上昇していることを報告。また、家計消費における旅行単価と旅行者数が反比例のグラフを描くことに触れ、大きな流れとして「価格が低下していくときにしか、旅行マーケットが拡大していかない」との仮説を立て、「旅行コストが上がっていく現状のなかで、マーケットの成長が実現できるのかがポイントになる」と語った。

 低迷する海外旅行では、これまで頻度を上げることで海旅マーケットを支えてきた経験値の高いコアな旅行者層が、13年に大きく減少したことを指摘。逆に海外旅行経験回数が1―5回の経験値の少ない層をみると、男女とも20代が13年に旅行者数を伸ばしており、「13年はコアな旅行者層が減少し、経験値の少ない若年層が伸びた」と解説した。

 昨今注目を集めてきたシニア層については、「1947―49年生まれのコアな団塊世代は高額商品や長期旅行商品を除き、すでにピークを過ぎた」との見解を示し、これがシニア需要停滞の一因ではないかと指摘。また、大都市に比べ地方発の観光需要に停滞感が出ていることを懸念した。

 海外旅行市場の質的な変化を見ていくと、これまで夫婦旅行が多かったシニア層で1人旅が増加中だ。予約時期では13年は3カ月以上前の予約が4割を突破し、とくにFITのオンライン予約で早期化が顕著になっている。これには「休暇」への考え方の変化が影響しており、計画的な休暇取得が広がっていると分析する。

 若年層の旅行回帰の動きについて、出国率の推移で説明。若年女性の出国率をみると、20―24歳の層と、25―29歳の層は96年ごろに迎えた過去最高の出国率に及ばないのに対し、15―19歳の層は徐々に増え、近年過去最高を迎えている。若年男性も同様な傾向を示し、黒須主席研究員は「10代後半の海外へ行く機会は、昔より今の方が増えてきている」と見解を示し、「若年層マーケットはポテンシャルは決して低くないので、もっと取り込みに力を入れ、将来市場と位置付けたマーケティング戦略が必要」とアドバイスした。

牛窪恵氏
牛窪恵氏

“1人旅まだ伸びる”、団塊世代とジュニア妻に期待
≪牛窪恵氏が予測≫

 JTB総合研究所が9月9日に行った「第1回旅行マーケットセミナー」の2部では、マーケティングライターの牛窪恵氏と、WILLER GROUP代表の村瀬茂高氏、JTB総合研究所のコンサルティング事業部長の小里貴宏氏をパネリストに、旅行マーケットの変化について分析した。牛窪氏は「1人旅」に着目し、世代分析による特徴を説明しながら、今後需要が見込まれる「1人旅」層に、「団塊ジュニアの妻」と「団塊世代」を挙げた。

 牛窪氏は「1人旅需要はまだまだ伸びる」とし、「学びや体験などの“言い訳”があるとより行きやすくなる」と説明した。ある調査会社の統計では、20、30代女性の86%が「おひとり様」を経験したことがあり、国内の1人旅は21%、海外の1人旅は14%に上る。

 00年代前半から注目を集め始めた「おひとりさま消費」ブームだが、第1次ブームの中心にいたのは1965―70年生まれで現在44―49歳の真性バブル世代。この世代は留学者数でも女性が男性の2倍に上るなど好奇心が旺盛で、雇用機会均等法の本格化後の就職により「バリキャリ志向」の女性が多いという。オンとオフの切り替え意識が強く、お金も時間にも「メリハリ消費」の志向が強い。第1次ブームでは高級ホテルやレストランに「おひとり様プラン」が登場したほか、エステや美容サロンもおひとり様男女に人気となった。

 第2次ブームを支えたのは、71―76年生まれで現在38―43歳の団塊ジュニア世代。この世代は核家族化により「1人部屋」が与えられ、ゲームやアニメの普及で「1人遊び」も増え、1人で過ごす時間が当たり前となった。ファミレスやファーストフード、コンビニなどが子供のころから身近にある飽食の時代で、「今しかできないもの」への関心が高く、ブランド物よりもレア物・希少価値の高い物への関心が高い。旅行では祭りや現地でのイベントなどに関心が高い。カフェブームや立ち飲み屋などが人気で、国内のぶらり「1人旅」も関心が高かった。

 「1人カラオケ」や「1人焼肉」、「パワスポ1人旅」などが人気となった第3次ブームは、81―86年生まれで現在28―33歳の草食系世代と、その下のさとり世代が中心。コストパフォーマンスを気にするコスパ世代で、安さだけでなく、長く使える物や意味のある物になら少し高くてもお金を払う。物心ついたころから「デジタル」を使いこなし、SNSでの「いつでも誰かとゆるくつながる」サービスに安心感を覚える「ゆるつながり」を好む。また、「すき間消費」が特徴で、何事も要領よく無駄なくこなそうと、スマホを活用し「すき間時間」を上手に活用し消費する。

 牛窪氏は、今後おひとり様消費で需要が見込まれる層に、「団塊ジュニア世代の妻」と「団塊世代」を挙げる。博報堂が11年に行った調査では妻の65%が「プライベートな1人時間がほしい」と回答し、「おひとり妻」願望がうかがえる。牛窪氏によると、「団塊ジュニア世代は1人時間に慣れており、結婚をしていても1人時間を求める」という。

 一方、団塊世代は「まだまだ消費意欲が旺盛で、とくに国内旅行で需要が伸びる」。また、団塊世代は子供と仲が良く、子供夫婦も近所に住み、3世代旅行需要に期待できるという。

上高地・アルペンルートなど、新ルートでリピーター獲得へ

高橋里実さん
高橋里実さん

JTB・GMTの訪日FIT事業
 外客誘致を目的に設立されたJTBは、現在注目されている訪日FIT事業に、どのようなニーズを見出し企画しているのか、「第2のゴールデンルート」として上高地・アルペンルートなど新ルートの開発でリピーター獲得を狙う「JTBグローバルマーケティング&トラベル」(座間久徳社長)FIT事業部商品企画課の高橋里実さんに聞いた。
【丁田 徹也】

 ――これまでに造成したツアーについて教えてください。

 訪日FIT向けツアー「サンライズツアー」で、富士山ツアーに洞窟体験などの自然散策を合わせたツアーを企画した。英語でガイドを行うインストラクターと河口湖周辺を歩き、歴史や自然を感じることができるのが特徴。長時間滞在するため、悪天候でも富士山を見るチャンスが大いにあることもポイントとなっている。富士山ツアーは長年催行しているのでバリエーションを増やしたかったということと、販売部署から「バス観光以外の自然を味わう体験ツアーがほしい」という要望があったために実現した。現在、体験ツアーが非常に人気で、ほかにも寿司作りなどはとくに好評だ。

 現在は、東京―富士山―伊勢―大阪など西に抜けるゴールデンルート以外の「第2のゴールデンルート」の提案をしており、来年からの催行を予定している。これからは、富士山から北に向かい、上高地―アルペンルート―富山―京都に抜けるなど新しいコースでリピーター向けのツアーを開発していく。

 ――最近の傾向は。

 東南アジアからのお客様を中心に、アウトレットモールでのショッピングやフルーツ狩りの人気が高い。一昔前は、ツアーガイドがつきっきりの欧米人が多かったが、現在では東南アジア、とくにタイやマレーシア、フィリピンなど東南アジアからのFITがとても多い。

 花見ツアーも今年は初めて富士山山麓の芝桜を見るツアーを行い、好評を博した。やはり、タイなど東南アジアのお客様が多かった。英語サイトからのフルーツ狩りやお花見ツアーの申込みは、欧米より東南アジアの方が多いのが特徴的。

 ――これまでの経緯を教えてください。

 入社してすぐは、「サンライズツアー」の手配を担当した。その後、るるぶトラベルに出向し、国内の旅館・ホテルプランを作成した。

 GMTでは、これまでの経験を生かして「サンライズツアー」や「エクスペリエンスジャパン」のツアーやパンフレットを造成している。そのほか、ツアーのメンテナンスや品質改良にも日々努めている。