国の登録有形文化財に、湯主一條の木造本館

風格ある木造本館
風格ある木造本館

 宮城県・鎌先温泉の温泉旅館「時音の宿 湯主一條」(20代目当主・一條一平氏)はこのほど、木造建築2棟と土蔵が国の登録有形文化財に指定された。木造建築の2棟は、宮城県内でも最大級の規模を誇る。一條家が代々守り継いでいる山(一條の森)からすべて切り出したスギ材を使い、通し柱を多用。また四周に廊下を配しているため、外観は端正だ。しっかりと作られているため、「東日本大震災でもびくともしなかった」(一條氏)という。 

 この木造本館は湯治場の客室として長い歴史を重ねてきたが、2008年の別館の客室総リニューアルに合わせて、木造本館は食事会場と変化した。現在は個室料亭「匠庵(しょうあん)」として、料理のテーマ「森の晩餐会」(月替わり)を個人客を中心に提供している。

 客室のある別館は快適な“現代”的な空間。露天風呂付客室一條スイートをはじめ、8タイプの部屋を選べる。食事は、別館の客室から「時の橋」を渡って木造本館へと“タイムスリップ”した気分を味わえるのが特徴だ。

 客室は24室、個室料亭24部屋。バーラウンジ有り。料金は1万6350円から(平日2人利用時の1人料金)。

 問い合わせ=電話:0224(26)2151。

“観戦客を観光客に”、神奈川県と相互連携(HIS)

(左から)黒岩知事、平林社長
(左から)黒岩知事、平林社長

 エイチ・アイ・エス(HIS、平林朗社長)と神奈川県(黒岩祐治知事)は3月29日、神奈川県内で共同記者会見を開き、2019年のラグビーワールドカップや、20年の東京オリンピック・パラリンピックなど、相互の連携を強化しインバウンド観光を戦略的に推進していくための協定を締結した。この協定により今後両者は(1)観光資源の発掘・磨き上げ(2)海外PRの展開(3)インバウンドツアーの企画・販売(4)観光人材の育成――を行っていく。

 黒岩知事はインバウンドツアーの企画・販売について、ラグビーワールドカップ2019の観戦者を観光客として同県に迎え入れるため、〝1千本のスペシャル観光ツアー〟に取り組んでいくことを発表。「神奈川県には横浜や鎌倉だけではなく、三浦半島や大山など第4の観光地になれる場所が多くある。また、地元の生活感を体感できる商店街や市場なども豊富なので、まだ知られていない場所をツアーに組み込みPRしていきたい」と述べた。

 平林社長は、神奈川県の15年の訪日外国人延べ宿泊者数が前年比51・7%増の217万2550人泊で、全国9位であることに触れ、「今後の数値目標として、延べ宿泊者数を全国5位くらいにできるように努力していく」と意気込みを語った。

 なお、HISは県の行政実務研修員制度を活用し、日本人職員1人(1年間)とベトナム人現地職員2人(半年間)を神奈川県に派遣。県行政の理解を深めた社員の育成をはかる。

東京五輪運営の中核に、3社が公式パートナー(JTB 、KNT―CT、東武トップツアーズ )

(左から)戸川社長、森会長、髙橋社長、坂巻社長
(左から)戸川社長、森会長、髙橋社長、坂巻社長

 JTB(髙橋広行社長)、KNT―CTホールディングス(戸川和良社長)、東武トップツアーズ(坂巻伸昭社長)の3社はこのほど、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにおいて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(森喜朗会長)と、東京2020大会オフィシャル旅行サービスパートナーとしての契約を締結した。今後3社は同大会運営の中核となる、代表選手団・関係者の宿泊手配や、国内パッケージツアーの販売などに取り組む。

 髙橋社長は、今年8月に開かれるリオデジャネイロオリンピックの閉会式において、〝東京〟とコールされた瞬間から一気に、訪日外国人観光客の注目が日本に集まると言及。「観戦に来る訪日外国人の方々を、〝おもてなしの心〟で迎えたい。また、東北の復興した姿を見てもらいたい」とし、2社と連携し、オールジャパン体制で東京オリンピック・パラリンピックを盛り上げていくと決意を新たにした。

 坂巻社長は、日本政府が年間訪日外国人旅行者数を「20年に4千万人」とする新たな目標を掲げたことについて触れ、「東京オリンピック・パラリンピックは日本が世界に誇る伝統文化を発信するいい機会になる。また、日本人も日本の良さを再発見できる」とコメント。また、戸川社長は「20年は、多くの人にとって忘れられない年となる」と伝え、ユニバーサルツーリズムの専門部署を持つ同社グループのノウハウを活かし、多くの人が楽しめる国内観戦ツアーの構築に尽力すると伝えた。

 今回の3社との契約により、東京2020オフィシャルパートナーは32社に増加。同組織委員会の森会長は「3社にはスポンサー企業というだけではなく、パートナーとして一緒に東京オリンピック・パラリンピック成功のために、協力をお願いしたい」と期待を込めた。

就業体験で国の奨励賞、南三陸ホテル観洋が受賞

松島高校の就業体験
松島高校の就業体験

 宮城県・南三陸温泉の南三陸ホテル観洋は、文部科学省主催の2015年度「青少年の体験活動推進企業表彰」で審査委員会奨励賞を受賞した。表彰各賞で33社が選ばれたが、宿泊業での受賞は同館が唯一。

 企業が社会貢献活動の一環で実施した、青少年の体験活動のなかから優れた取り組みを表彰するもの。震災後に取り組む中・高・大学生を対象にしたホテル就業体験が評価された。とくに昨年7月は、宮城県松島高校の生徒8人が、1カ月間に渡る長期実習に臨んだ。実際の勤務時間に則り、清掃、給仕、接客業務を行ったほか、震災を風化させないために運行を続ける「語り部バス」への乗車や、地元に点在する商店を紹介する「南三陸てん店マップ」の取材活動なども経験した。

 同館はこれまで、地元中・高校の短期研修から県外大学のインターンシップなど、400人以上の実習を受け入れている。

岩手県北自動車、2つの定観バス運行

ボンネットバス運行日も
ボンネットバス運行日も

 岩手県北自動車(岩手県盛岡市)は今春から盛岡や周辺観光地を巡る定期観光バスの運行を2コースで開始、懐かしいボンネットバスでの運行日もある。

 「懐かし通り 城下もりおか号」(大人2千円、子供1千円)は盛岡駅を午前9時に出発。南部古代型染の「小野染彩所」、石川啄木が新婚時代過ごした「啄木新婚の家」、国指定重要美術品の上の橋に施された擬宝珠、古い商家などの風景が残る紺屋通りを見学、午後12時20分に盛岡駅に戻る。紺屋通りでの2時間はフリータイム。運行日は4月29日―9月30日の土曜・日曜・祝日(5月5日までと6月23日―7月5日、10月2―10日は毎日運行)。また、ボンネットバスの運行日は4月29日、5月1、3、5、7、15、21、29日、6月11、19、25日、7月2、10、17、18、24、30日、8月13、20、21、28日、9月3、10、11、25日。

 「もりおか酒蔵・鉄器・町屋と小岩井号」(大人3千円、子供1500円)は午後1時40分に盛岡駅を出発。盛岡の酒蔵「あさ開」で専門ガイドによる案内付きで工場見学の後、大慈寺界隈を散策。その後南部鉄器工房でショッピングを楽しみ、小岩井農場に向かう。ここで約45分見学し、午後5時35分に盛岡駅に戻る。

 運行日及びボンネットバス運行日は「懐かし通り 城下もりおか号」と同じ。

 2コースは午前、午後に分かれているので、1日かけて盛岡観光を楽しむこともできる。

 大阪府泉佐野市の「関西エアポートワシントンホテル」(東京都文京区)が3月14日に東京地裁に申請していた特別清算が、17日に決定した。東京商工リサーチによると、負債は約28億8700万円で、親会社からの借入金が大半を占める。

 同社は、東証1部上場のホテル・レジャー施設経営大手「藤田観光」(東京都文京区)の100%子会社として設立され、2000年4月に開業した「関西エアポートワシントンホテル」の運営を手掛けていた。関西国際空港の入口にあたる「りんくうタウン」の立地や、「ワシントンホテル」の知名度も生かし、14年12月期には売上高約18億7500万円を計上していた。

 しかし、「りんくうタウン」自体の集客力が低迷するなか、同社の業績も想定を下回り、同期には33億9200万円の債務超過に陥っていた。こうしたなか、藤田観光グループ組織の再編が行われ、16年1月1日付で関連会社の藤田ホテルマネジメント(現:WHG関西、京都府京都市)に全事業を譲渡し、同社は1月28日付で株主総会の決議によって解散していた。

 なお、「関西エアポートワシントンホテル」はWHG関西が継続して運営している。

No.427 ANTA国内観光活性化フォーラム、地域と連携し強い絆を

ANTA国内観光活性化フォーラム
地域と連携し強い絆を

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)は3月17日、鹿児島県鹿児島市の鹿児島アリーナで「第11回国内観光活性化フォーラムinかごしま」を開いた。地域と旅行会社が現地で直接交流し強い絆を結ぶことにより、地域に根差した着地型旅行商品”地旅”を創出する機会を作りやすくするという交流型イベントだ。18日には㈱全旅主催の「第2回地旅博覧会inかごしま」も開かれ、両日で記念講演や表彰式、ブース出展などさまざまな催しが行われた。

【丁田 徹也】

 
 
 
 主催者あいさつで二階会長は地旅(着地型旅行)の取り組みについて「心と心が通う旅行商品」を創り出すことの重要性を訴えた。「魅力ある旅行商品を販売していくためには、ますます各地域の皆さんとの交流が必要だと考えている。地元の行政や観光関係者と連携を取り、地域の歴史・文化・資源・食材などの特色を活かした新たな旅行商品を作り、ANTAのネットワークを活かして送客する着地型旅行――“地旅”を創り出すために、常に知恵を絞っていかなければならない」と力説した。

 ANTAは2003年から「国内旅行活性化フォーラム」を全国で展開し、着地型旅行をPRしてきた。二階会長は「フォーラムを通じて地元の観光関係者とANTA会員、海外からの旅行関係者が強い絆で結ばれてほしい。皆様と絆を結び、国内観光の活性化や地域振興に努め、旅行業界の発展に寄与していきたい」と意気込んだ。

 鹿児島県知事の伊藤祐一郎氏は鹿児島来県を歓迎し、「日本初の世界自然遺産の屋久島や活火山の桜島、良質な温泉、豊かな食材など多彩な魅力にあふれ、お越しいただいた方に最高の思い出を提供できる」と県の魅力をPRした。

 18年に明治維新から150年の節目を迎えるに当たり、同県は大規模イベントを控えるほか、奄美・琉球の世界遺産登録に向けた活動を進めるなど、観光への取り組みが一段と進んでいる。伊藤知事は「多様化する観光客のニーズに対応した着地型観光を進め、鹿児島の魅力を国内外に広く発信する。鹿児島県は第1次産業と観光業を明確に産業の柱としている。観光業の進歩は鹿児島県の発展そのものでもあるので県としても精いっぱい力を入れていく」と地旅への期待を語った。…

 

※ 詳細は本紙1624号または4月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅のプロ ― 意識的に「リスク」を回避している

 旅慣れた人――と言えば、故・森本剛史氏を思い浮かべる。

 森本氏とは、マレーシア・ボルネオ島のキナバル山(4095メートル)に登ったときに出会った。「ちょっとコンビニに行ってくる」ような格好の私とは違い、森本氏はすでにキナバル山への登山の経験もあり、登山靴を履き、メンバーが疲労したときに配る甘いお菓子やレインコート、登山酸素吸入器も準備していた。ずぶの素人である私は無事登頂できたものの、「登山自体をナメていた」ので、相当に危険な目にも遭った。   

 登山前夜、松明の焚かれたリゾートホテルで登山隊のメンバーである旅行会社の社員や、カメラマン、私のような旅行関連メディアらが夕食を囲み、明日登るキナバル山の話に花が咲いた。スタンド・マイクで女性ボーカリストがカーペンターズの「マスカレード」を気怠るく歌い、夜は更けていった。自然なかたちで話の輪の中心には、誰よりも旅慣れた森本氏がいた。

 キナバル山の登山から2週間ほど経ってから、再びそのメンバーが東京・新橋の酒場に集まった。声を掛けたのは、やはり森本氏だった。多くの写真を見せ合い、思い出話で盛り上がった。旅の楽しみの一つに、酒を飲みながら思い出を共有することもあるのだなと、感じた。

 その酒場で、森本氏がこれまで巡った世界各地の写真を見せてくれた。陰鬱な感じの街並み、青い海、祭りなどさまざまな写真があった。そして、メンバーの女性の1人が森本氏に「世界中でどこの海が一番綺麗でしたか?」と聞いた。

 森本氏は間髪入れずに「沖縄」と答えた。

 私はそれ以来、世界一綺麗な海は沖縄だと信じている。未だ多くの美しい海を見ていない私にとって、世界中の海を見てきた、信頼できる旅人が、「沖縄!」と断言したからだ。私もそれから何度も沖縄を訪れたが、「世界一綺麗な」という目で沖縄の海を見ている。晩年代官山蔦屋書店で旅行書のコンシェルジュをされていた森本氏は14年9月22日に亡くなった。会いに行こうと思った矢先だった。

 航空機事故や、海外でトラブルに巻き込まれたというニュースを見ていると、「初めての海外旅行で……」「飛行機は滅多に乗らないのに……」など耳にすることがある。一方、毎日のように世界中を飛び回るビジネスマンなのに大きなトラブルとは縁がないように見える人もいる。運命の不公平を感じるが、これは実力の差である。旅慣れた人たちは、ちゃんと意識的にリスクを回避しているのだ。経験上「嫌な予感のする航空会社や航空便には乗らない」「今はこのエリアのホテルはやめよう」など磨かれた直観や情報管理によって行動する。私のように「ちょっとコンビニまで……」のような格好で4千メートル級の登山をする輩は、たまたま無事生還したものの、自らリスクを呼び寄せているようなものだ。

 JATAなどが主催した「テロ遭遇時の旅行会社の対応」セミナーで、越智良典理事・事務局長は、テロが発生して危険だからとツアーを避けていては、一般のお客様と同じ。「旅のプロ」である旅行会社は徹底した情報管理によってリスクを下げることが仕事だと言い切った。不安定な国際社会のなか、旅慣れた「旅のプロ」である旅行会社は今こそ「本来の力を発揮できる環境になった」と考えるべきだ。

(編集長・増田 剛)

ほのぼの民泊増加、規制強化策の新提案も

日仏代表者らが積極的に意見交換
日仏代表者らが積極的に意見交換

―民泊の真実―
今、観光立国フランスで起こっていること

 ほのぼの民泊増加――。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(北原茂樹会長)と日本旅館協会(針谷了会長)は3月17日、東京都内で「緊急フォーラム 民泊の真実~今、観光立国フランスで起こっていること~」を開いた。観光立国フランスでは、昨年11月のテロ事件の際、テロリストの主犯格が民泊を利用していたことが伝えられ、それにともないフランス政府が民泊に対する規制を強化し始めている。その一方で、日本では訪日客の急増により、宿泊施設の客室不足を民泊によって埋め合わせるべく、積極的な導入に向け審議がすすめられているが、フランスでのテロ事件など民泊の安全性が問われるなかで、早急なルール作りが「安心・安全」を左右するとみられる。
【松本 彩】

 同フォーラムは2部構成で行われ、第1部ではホテル職業産業連合(UMIH)ホテル部門会長のローレン・デュック氏、フランスのホテル・レストラン・カフェ・ケータリング全国協会(SYNHORCAT)エグゼクティブ・ディレクターのフランク・トゥルエ氏が「今、観光立国フランスで起こっていること」と題し講演を行った。フランスの民泊は〝コラボレーティブエコノミー=分かち合いの原理〟という相互補助の新しい経済モデルとして成長を遂げてきた。フランスでは、フランス人の10人中9人が民泊を利用したことがあると回答するほどだ。

 同原理はデジタルプラットフォームの発展により飛躍的進歩を遂げてきたが、規制の外に存在するもので、近年Airbnbによる同一アカウントによる複数の物件の確保など、ビジネス面で悪用され「まやかしのコラボレーティブエコノミー」へと転じてしまっている。

 デュック氏は、このような現象によって消費者がさまざまな危険にさらされている現状について「ホテルでは、24時間管理体制が敷かれているが、民泊物件には消費者保護が何もない」と訴え、UMIHのアクションとして、積極的に消費者への注意喚起イベントなどを行っていくと述べた。また、トゥルエ氏も現状の解決策として、ホストに対し、「各種義務を守り、確定申告をすること」、デジタルプラットフォームに対し「オーナーの許可」「ホストの所得を税務署に送る」などの提案を行う必要があると伝えた。

 第2部では「民泊のあり方について」パネルディスカッションを行った。パネリストとして引き続きデュック氏とトゥルエ氏が登壇したほか、全国独立企業団体(GNI)のディディエ・シュネ会長、衆議院議員で自由民主党観光立国調査会観光基盤強化に関する小委員会事務局長の上野賢一郎氏と全旅連の北原会長も登壇。コーディネーターを東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授の徳江順一郎氏が務めた。

 はじめにコーディネーターの徳江氏から「民泊の安心・安全性」に関する議題が与えられ、シュネ会長はゲストが危険にさらされる原因の1つとして、“匿名性”が大きく影響していると主張。「匿名性ゆえゲストが暴行など危険な場面にさらされたとしても、警察はその事実が明確にならない限り、追及することができない」と現況を明らかにした。

 上野氏はシュネ会長の報告を踏まえたうえで、民泊を進めていくうえでの重要性について(1)匿名性の問題(2)近隣住民との合意(3)行政機関とのシステムづくり――の3つを指摘。「日本では、『友人に貸しているだけ』などという理由で言い逃れる“ほのぼの民泊”が増加してきている。このような事態が今後起きないようにするためにも周辺住民との合意は不可欠である」と述べた。

 また、「民泊の不平等性とその解決策」について北原会長は、日本においてデジタルプラットフォーマーが事業を行う場合、日本の法律に基づき旅行業の登録を行うべきであると訴え、「このことは国内のOTAにも当てはまること。Airbnb以外にもデジタルプラットフォーマーが増えてきている今、規制を高め旅行業のくくりのなかに入れてしまうことが必要である」とし、今後政府に対しホスト側の対応を含め、新たな規制強化策を提案していくとまとめた。

新社長に日紫喜氏、神應氏は取締役相談役に(名鉄観光サービス)

 日紫喜俊久社長
日紫喜俊久社長

 名鉄観光サービスは3月22日に開いた定時株主総会と取締役会で、日紫喜俊久常務が新社長に昇格する人事を決めた。神應昭社長は、取締役相談役に退く。

 日紫喜 俊久氏(ひしき・としひさ) 三重県出身62歳。1976年3月立命館大学経済学部卒業後、名鉄観光サービス入社。10年3月取締役中四国営業本部長、11年3月取締役関西営業本部長、12年3月常務関西営業本部長、14年3月常務中部営業本部長兼商品事業本部長を経て、16年3月代表取締役社長に就任。
 
 
 
 

「テロ遭遇時の旅行会社の対応」など探る、常態化するテロのリスクを下げる(JATA)

(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏
(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏

 日本旅行業協会(JATA)は3月18日、東京都内で㈱ジャタ、日本アイラックと「重大事故支援システムセミナー」を開いた。「パリ同時多発テロ後の国際情勢とISの動向を踏まえ、旅行会社の緊急対応を考える」をテーマに、JATA団体保険の存在や、リスクマネジメント意識を高める必要性を求めた。22日にはベルギーで同時多発テロが発生、今後常態化するテロのリスクや脅威を知りながら、リスクを下げる情報管理と安全対策が信頼をかち得ることになるという。
【増田 剛】

菅原出氏
菅原出氏

 セミナーの冒頭、JATAの越智良典理事・事務局長は「フランスのテロなど世界各地でさまざまな事件が起きるたびに、逆に旅行会社の役割が求められる」とし、「インターネット時代には一般のお客様とは違う、プロの旅行会社として情報を管理し(1)企画力(2)斡旋力(3)安全対策――を磨いて高めていかなければ旅行会社は生き残れない。テロのリスクはどこでもあるが、より治安のよいホテルを選んだり、事前に危険な日や場所の情報を得ることによって、リスクを下げ、乗り越えていくことはできる」と語った。

 講演会には、国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原出氏が登壇。ISの動向など歴史的な経緯から説明しながら、「無差別テロの実行犯は命がけ。命乞いをしても意味がなく、とにかく犯人から遠ざかるしかない」とアドバイス。さらに「米国主導の有志連合による対IS作戦により、シリア・イラクのIS支配地域は大幅に縮小しており、『本丸』は劣勢。一方で本丸に渡航した外国人戦闘員を出身国に帰還させてテロを起こさせる傾向が強まっており、『帰還兵』の脅威は『ホームグローン』よりもはるかに高い。先進国においてパリ同時多発テロのような大規模テロが起こる可能性は十分にあり、テロのリスクは今後常態化する」と語った。そのうえで「インパクトは大きいが、交通事故に比べてもテロに遭う比率は小さく過剰に恐がる必要はない。ただ、テロの脅威やリスクを認識しておくことが大事」と述べ、旅行会社には「『移民が多いエリアや治安の悪いホテルは選んでいません』『事前調査で安全な経路を選んでいます』などの対策やセキュリティ基準などを示すことが信頼につながる」と強調した。

 パネルディスカッションでは、日本アイラック部長の山下寿人氏、東京海上日動火災保険課長の中原隆氏、JATA広報室長の矢嶋敏朗氏が登壇。モデレーターは(株)ジャタ社長の大西誠氏が務めた。

 山下氏は緊急事故への社内の準備として「重大事故発生後、マスコミが勝手に事務所に入って来て書類を持ち出したり、海外からの電話に録音機を押し付けてきたりするのを防ぐために、オフィスに入って来ないよう徹底する必要がある」と指摘した。

 保険会社からのアドバイスとして中原氏は、海外旅行中の病気や怪我による病院搬送などで2千万円ほどかかった事例も発生しており、「ツアーを企画・手配した旅行会社で海外旅行保険に入ってもらうと、お客様だけでなく自社を守ることにもなる。仮に加入されなくても、少なくともお客様に保険を勧めたという履歴は残しておいた方がいい」と述べた。

 矢嶋氏は「JATA広報委員会で緊急時対応マニュアルを作成し、ホームページにも掲載しているが、7月ごろに同マニュアルの説明会を予定している」と報告した。