本社もブース出席、17社からプレゼン受ける(ギフト・ショー秋2016)

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 第82回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2016が東京ビッグサイトで行われた。テーマは、「暮らし・デザイン・新時代~住まいと暮らしのイノベーション 次世代デザインセンスとサムシングニュー~」。生活雑貨や文房具、伝統工芸品、観光物産品など幅広い商材が並び、さまざまな業者が熱心に商談を行った。来場者は、3日間で18万9千23人。

 旅行新聞新社もビジネスマッチングの会場にブースを出展した。目的は、宿で目にしたときに気分が高揚したり、和んだりするもの、働く人の負担の軽減につながるような商材を探すこと。2日間で17社の企業から、さまざまな商材のプレゼンを受けた。

 次回の東京インターナショナル・ギフト・ショーは、2017年2月に10日間の会期で開催される。

12年ぶり800万人台回復、連休の日並びや天候に恵まれ、オートキャンプ15年の参加人口

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 日本オートキャンプ協会(明瀬一裕会長)がこのほど発表した「オートキャンプ白書2016」によると、2015年のオートキャンプ参加人口は、03年以来12年ぶりに800万人を超えた。ゴールデンウイークなどの連休の日並びが良く、それらの連休が比較的天候に恵まれていたことが理由に挙げられた。また、「グランピング」がさまざまなメディアに露出し、キャンプは“誰にでもできて楽しめる”という認識が広まることで、キャンプ人口拡大に寄与する結果となった。

 グランピングとは、グラマラス(魅力的な)と、キャンプを合わせた造語。テントやロッジに泊まってホテルのようなサービスを受けられる。キャンプ道具や経験がなくても、アウトドアを楽しむことができ、おしゃれな雰囲気で幅広い層から注目を浴びている。

 同協会は、7月5日に東京都内で発表会を開き、明瀬会長は同白書が創刊から30年目を迎えたことについて言及。発刊の経緯やこれまでの軌跡、今後の展望などを語った。このなかで明瀬会長は「オートキャンプは世に誕生して約半世紀になろうとしているが、新しい発展の段階に入ったのではないか」と述べた。

 15年のオートキャンプ参加人口は、前年比3・8%増の810万人。キャンプ場平均稼働率は、前年から2・3ポイント増の13・5%と過去最高を記録した。地域別では、東北を除くすべての地域で前年を上回り、とくに九州・沖縄では稼働率が倍増した。また、キャンプ場の収支状況で、「黒字・トントン」と答えたのは69・8%(14年61・3%)、一方の「赤字」は26・3%(14年33・4%)と大きく改善し、収支も過去最高となった。

 15年のキャンパー平均年齢は42・4歳で、ここ15年間で4・1歳上昇している。42歳はほぼ「団塊ジュニア」世代にあたり、比較的人口規模の大きい層になる。近年のオートキャンプの好調さの背景には、団塊ジュニア世代である30―40代の子育て期世代が、全体のキャンパーの約7割を占めていることが考えられる。

 また、訪日客が増加するなか、キャンプ場への訪日キャンパーの受け入れについては、「積極的に受け入れていきたい」が15・4%、「受け入れてもよい」が66・0%となり、約8割が訪日キャンパーの受け入れを許容している結果に。

 対して「受け入れたくはない」は14・7%。「言葉を含めて受入体制ができていない」との声が多く、受入側は言葉や文化の壁、マナー違反などの問題に直面している。ただ、旺盛な訪日客需要を取り込む機会を逃す手はない。今後は早急な受入体制づくりなどの対策を講じる必要が求められる。
【平綿 裕一】

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白書創刊から30周年、明瀬会長が軌跡や展望語る(オートキャンプ協会)

明瀬一裕会長
明瀬一裕会長

 オートキャンプ白書は1986年の創刊から今年で30年目を迎える。7月5日に行われた同白書の発表会で、日本オートキャンプ協会の明瀬一裕会長はオートキャンプをめぐる昨今の動きを説明した。

 1960年代に高度経済成長期で国民の可処分所得が増え、モータリゼーション(自動車の大衆化)により移動が容易となり日本でオートキャンプが誕生した。70年代に入ると高度経済成長が終わり、それまでの仕事一辺倒の生活から、「家族と自然のなかで、共有の時間を過ごしたい」という需要が生まれた。オートキャンプはそれに応えるレジャーであるということで、次第に普及していった。

 80年代に入り、経済が低成長となると、金銭消費型レジャーから、時間をゆっくり使う時間消費型レジャーへと収束していき、ますます発展することとなった。

 そして1986年にはオートキャンプ推計人口がついに500万人を超え、国民的レジャーとして定着した。同時に今後はオートキャンプの実態を明らかにすべきとの認識がなされて、オートキャンプ白書が創刊された。

 その後、90年代に入るとバブル経済を背景に空前のアウトドアブームが起こり、96年にはオートキャンプ参加人口が1580万人に達し、ピークを迎えた。

 ピークからの20年を振り返ると、最初の10年間は減少の一途、後半はほぼ横ばいだったと総括できる。ただ、オートキャンプが低迷したのではなく、むしろ逆で、この20年間は700万人を下限として、底堅く推移したからだ。つまり、30―40代の子育て世代の家族が、毎年、30―40万世帯ほど新規参入し、参加人口を支えてきたことに他ならない。

 08年のリーマンショックを端に発した世界的な金融危機や、2011年の東日本大震災という未曽有の災害においても、そのエネルギーはいささかも揺るぐことなかった。

 そして、13、14年は僅かに参加人口が増加。少子高齢化、人口減少の相対的な人口動態のなか、2年続けて増えたことはオートキャンプが新しい広がりを見せ始めたのではないか、と昨年指摘した。これは、参加人口が12年ぶりに800万人台を回復したことで立証された。

 背景として、30―40代の子育て世代のオートキャンプに対する需要がこれまでにも増して強くなったことと、前後の20代、50代の参加人口が増えていること。さらに、訪日客のオートキャンプ場の利用などが推察できる。そしてこのことは、オートキャンプが世に誕生して約半世紀になろうとしているが、新しい、発展の段階に入ったということを物語っている。

1%減の72兆2990億円、親のゆとり度が子供に影響、15年の余暇市場

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レジャー白書2016の発表会
レジャー白書2016の発表会

 日本生産性本部(茂木友三郎会長)余暇創研は7月14日、東京都内で「レジャー白書2016」の概要発表を行った。15年の余暇市場の規模は72兆2990億円となり、前年比1・0%減となった。ただ、市場規模が突出して大きいパチンコ、パチスロを除くと同1・2%増で、3年連続のプラス成長となる。

 余暇活動参加人口の順位では、「国内観光旅行」が5年連続の首位。前年に比べ参加人口が100万人増加し、5千万人を超えたものはこの種目のみ。また、「ジョギング、マラソン」の人気が復活し、前年は28位だったが、19位まで順位を上げた。参加人口も50万人増えて、2190万人となった。

 余暇市場動向は、スポーツ部門が同1・9%増と微増で、4兆240億円を計上。スポーツ用品は、スポーツシューズが同5・9%増の1970億円、ウェアは同4・2%増の2750億円と好調。フィットネスクラブは同1・6%増の4390億円で、過去最大の市場規模へと拡大した。さらに、スポーツ観戦料も同5・4%増の1560億円と大きく伸びた。

 また、今年は例年の調査では取り上げていなかった5―14歳の子供の余暇に焦点を当てた調査を実施。子供の余暇活動に影響する要因として、親の時間面と支出面のゆとり度の増減について、注目した。

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 親自身の余暇時間が増えたと回答した場合、「ボウリング」、「ジョギング、マラソン」などのスポーツや「絵を描く、彫刻する」など、時間をかけて取り組む創作系の種目で子供の参加率が高くなっている。一方、減ったと回答した場合、「音楽鑑賞」、「スポーツ観戦(テレビ除く)」などの観賞系の種目が目立った。

 子供1人当たりの平均参加種目数は、余暇時間が増えたと回答した場合、13・3種目で、減った場合は12・4種目となった。

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 親の余暇支出が増えた場合、「温泉施設」、「動物園、植物園、水族館、博物館」、「遊園地」などの観光、行楽系の種目で子供の参加率が高くなった。一方、余暇支出が減った場合は、「ソーシャルゲームなどのオンラインゲーム」、「読書(勉強など除く)」、「ドライブ」などで、比較的安価にできる種目が並んだ。

 親の余暇支出が増えた場合、子供の平均参加種目数は13・9種目、減った場合は12・9種目となった。

 また、2016年度版には新項目として「ヨガ、ピラティス」を追加。「女性を中心に中高年が参加しているが、まだ伸びる余地があり、一度始めるとある程度習慣化する可能性がある種目」と初年度の調査を振り返った。

キズナサミット2016開く、「良地良宿」サービス開始(宿泊予約経営研究所)

末吉秀典社長が冒頭あいさつ
末吉秀典社長が冒頭あいさつ

 宿泊予約経営研究所(末吉秀典社長)は9月7日、神奈川県横浜市内のホテルで「キズナサミット2016」を開いた。全国から40社50人が集まった。今年のテーマは「値付け」。末吉社長は冒頭のあいさつで、「宿泊施設が利益を確保するには、施設、周辺の観光地のポテンシャルを最大限活かしきっていくことが大事」と話し、「今日はその具体的なアイデアや考え方を体感してほしい」と語った。

 同社は、「良い町があるから、良い宿屋がある。良い宿屋があるから、良い町がある。宿屋は、その土地の文化に寄り添うことで、もっと栄えていく」とする「良地良宿」(りょうちりょうしゅく)を経営理念に掲げている。末吉社長は「この『良地良宿』を、新たなプロジェクトとした新サービスの提供を始める」と報告。同社は「宿の集客パートナー」として、デジタルマーケティングを最大限活用することで収益最大化を支援していく。具体的には、ブランド構築へのコンサルティングや、宿により適した集客が可能な予約サイトの活用などの販促、自社ホームページの制作による活性化などをサポートする。

 キズナサミットでは、基調講演「きちんと儲けるためのプライシング戦略」には公認会計士の田中靖浩氏が登壇。その後、同社事業創造戦略室の坂本真士マネージャーが「宿泊施設のプライシング戦略~利益の確保と根付けの方法について」をテーマに、ワークショップ・セミナーを開いた。

 夕刻からは、アル・ケッチァーノの奥田政行シェフと、横浜ベイホテル東急のコラボディナー「実食体験セミナー」も行った。

奥田政行シェフも参加
奥田政行シェフも参加

道東に周遊観光バス、広域観光目指し試験運行

出発式のようす
出発式のようす

 知床や阿寒湖など、道東の代表的な観光地を巡りながら移動できる「ひがし北海道周遊観光バス」の試験運行が8月20日から始まった。2次交通の整備充実をはかることで、観光客の広域周遊観光を促す。

 道内の観光団体や民間企業などでつくる「プライムロードひがし北・海・道」推進協議会(上野洋司会長)の事業で、札幌観光バスの関連会社・クールスター(福村泰司社長)が運行する。外国人旅行者の利用も想定し、通訳案内士(英語)が同乗する。

 北ルート((1)札幌→層雲峡(2)層雲峡→ウトロ)、南ルート((3)札幌→十勝川(4)十勝川→ウトロ)――の2系統4区間を往復する。最少催行人員は1人。途中の乗下車が可能で、立ち寄り観光も楽しめる。

 運行は、11月2日までと12月23日―来年3月15日(南ルートは12月25日―同3月13日)。料金は大人2千―6500円。道東・道北エリア内での宿泊が利用条件。

ぐるなび、“LIVE JAPAN”活用、東京観光をワンストップで

LIVE JAPANの説明を受ける一行
LIVE JAPANの説明を受ける一行

 ぐるなび(滝久雄代表取締役会長)は9月3日、観光庁が主催する「カンボジア報道関係者による東京観光に関する取材」で来日した報道関係者一行に対し、“LIVE JAPAN”による快適なナビゲーションを提供した。全日本空輸(ANA)による成田―プノンペン間の直行便就航にともない来日した一行に、東京の魅力を知ってもらうのが狙い。

 “LIVE JAPAN”は、訪日外国人観光客に対し、ワンストップで観光情報を提供することを目的としたWebサイト。スマートフォン端末からの利用も快適で、利用者は、食事や宿泊施設の情報から、目的地に至るアクセス方法まで、同サイト1つで必要な情報を得ることができる。

 一行は、同社の住田博人副グループ長から“LIVE JAPAN”の操作方法を教わり、浅草寺境内を目的地に設定したうえで、観光に出発。さっそく仲見世へと向かった。

雷門の大提灯に興味津々
雷門の大提灯に興味津々

 同サイトでは「観光する」と「食べる」、「買う」、「泊まる」のアイコンボタンを用意。表示される画面をタッチするだけで目的地にたどり着けるよう工夫されており、ワード検索の手間を省いた仕様となっている。マップ機能も有するため、混雑のなかでも、はぐれる心配なく買い物に集中できる。同機能を利用した一行も、人形焼や扇子など日本の伝統的なお菓子や文化を堪能しつつ、無事境内にたどり着くことができた。

 周辺の飲食店を検索する機能も付いているため、観光を楽しみながら、電話一本でランチやディナーの予約を済ませることができる。

 4月からサービスを開始した同サイト。ぐるなびと東京急行電鉄、東京地下鉄が事務局を務めている。私鉄各社やANA、JALなど全22社が参画し、訪日観光ガイドのスタンダードを目指す。

 来日したカンボジア報道関係者一行は5人。現地発行の英字新聞、「The Phnom Penh  Post」や、「KAMPUCHEA  THMEY DAILY」の記者など、同国を代表する報道関係者が集まった。

【9月19日まで】めんたいパーク大洗、開店7周年記念で感謝祭を開催中

7周年チラシ

 茨城県大洗町の「かねふくめんたいパーク大洗」が9月に開店7周年を迎え、9月9―19日までの11日間に、7周年を記念した感謝祭を開催している。

 館内の直売所で3500円分の買い物をするごとに1回、明太子製品や帆立シューマイなどが当たる空くじなしの福引大会に挑戦できる。1等には明太子1キログラムがプレゼントされるほか、必ず食品がプレゼントされるためお得な福引となっている。

 そのほか、土曜・日曜・祭日には小学生以下の子どもを対象に、7周年記念のオリジナル缶バッジ作りを実施。好きな色に塗って作れるオリジナル缶バッジは、家族での旅の思い出づくりにもなることだろう。

 かねふくめんたいパーク大洗は2009年9月に開業。館内には無料で見学できる明太子工場、直売所や明太子グルメを楽しめるフードコーナーなどがある。明太子の作り方や歴史などについて、展示やムービーなどを見て体験しながら学ぶことができるため、子どもから大人まで楽しむことができる。

 営業時間は午前9時―午後6時。大型バス12台、乗用車120台の無料駐車場を完備する。

 予約・問い合わせ=TEL:029(219)4101。

【イベント概要】
■期 間 : 9月9日(金)~9月19日(月)の11日間
■会 場 : 「かねふくめんたいパーク大洗(茨城県東茨城郡大洗町磯浜町8255-3)」
■時 間 : 午前9時 ~ 午後6時まで
■内 容 
 ◎福引大会(空くじなし)
  直売所で3500円お買い上げ毎に1回抽選
  ☆1等☆ 明太子1キログラム
  ☆2等☆ 明太子450グラム
  ☆3等☆ 帆立しゅうまい
  ☆4等☆ ヤリイカ明太
  ☆5等☆ ちょっぴり明太子製品
   
 ◎7周年記念オリジナル缶バッジ作り
  小学生以下の子どもを対象に土曜・日曜・祭日開催

そのほか、かねふくめんたいパーク大洗の詳細はホームページ(https://mentai-park.com/park/ooarai/)から。

総額52%増の373億円、訪日受入事業は93%増(17年度観光関係予算概算要求)

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 観光庁がまとめた2017年度の概算要求では、前年度予算比58%増の316億2800万円を求めた。ストレスフリーの旅行環境の整備に155億3200万円、観光産業の革新に123億4400万円、観光資源の魅力向上に33億3100万円、その他に4億2千万円。また、東北の復興枠として57億3500万円を求め、総額で同52%増の373億6300万円を要求した。訪日客の受入環境の整備と海外プロモーションが大きな額を占めるが、従来の規制・制度など抜本的な見直しや、地方創生に資する事業なども加速化させる。また、税制改正でインバウンド向けに酒税の免税制度の創設が要望された。
【平綿 裕一】

酒税の税制改正を要望

〈ストレスフリー〉
 17年度は「ストレスフリーの旅行環境の整備」に前年度比93%増の155億3200万円を要求した。このうちユニバーサルツーリズム促進事業に3200万円。今年度の補正予算で「訪日外国人旅行者受入基盤整備・加速化事業」に155億円を計上したが、同事業を17年度の新規施策として、補正予算と同じ155億円を要求した。

 新規施策の背景に、堅調な増加傾向にある訪日客が一因にある。今年7月時点で約1400万人を超え、引き続き増加すれば秋を過ぎるころに2千万人に達する。続けて、20年に4千万人、30年には6千万人へ向け、さまざまな動きが活発化している。このスピード感のなかで、観光に関する多くのインフラ整備と連携する。また、ハード・ソフト両面からの受入環境整備を通じて、世界水準の観光拠点の整備を、さらに加速化させていく考えだ。

 具体的な施策を見ていくと、ハード面に102億円を充てて観光案内所や交流設備、クルーズ船受入環境などの整備、改良を支援する。ソフト面は、宿泊施設のインバウンド対策で館内の無線LAN環境整備やトイレの洋式化、多言語化などを支援し、53億円を充てる。

 ユニバーサルツーリズム促進事業では、20年の東京オリンピック・パラリンピックや高齢化社会を踏まえ、既存の観光案内所の「バリアフリー相談窓口」化を促進する。現在は全国28カ所ほどだが、各都道府県1カ所ずつに設置を目指す。

〈観光革新と国際競争〉
 「観光産業の革新と国際競争力の強化」全体で、同39%増の123億4400万円を求めた。このうち、日本政府観光局(JNTO)によるビジット・ジャパン(VJ)事業に100億円(JNTO運用費交付金)、国と地方の連携によるVJ事業に15億円、MICEの誘致の促進に2億3800万円を充てた。JNTOは運用交付金で100億円を要求しているが、このなかに訪日プロモーションやMICE関連のプロモーションなども含まれる。

 VJ事業は観光庁の15億円とJNTOの運用費交付金100億円の内数で、既存市場の確保に加えて欧州米豪を中心とした富裕層市場開拓に取り組む。プロモーションは、「映像」の力を最大限に駆使し、質が高く魅力ある訪日観光のブランドイメージを確立し、グローバルメディアを介して世界に発信する。

 MICE関連は観光庁の2億3800万円で、MICE商品の企画、開発や経済波及効果の調査、ユニークベニューなどを支援する。JNTOは100億円の内数で、日本のMICE統一ブランドを活用した日本初の年間を通じた大規模なキャンペーンの展開など、海外プロモーションを強化する。

 また、健全な民泊サービスの普及は新規施策として1億3400万円を要求した。新たな宿泊モデルとして期待は大きいが、近隣住民とのトラブルなども予見される。観光庁は今回の要求額で、民泊に関する相談窓口や広報の設置をはかる。

 通訳ガイド制度の充実・強化は同156%増の5千万円と大幅に拡充した。業務独占の廃止から名称独占へ移行したうえで、通訳案内士の質を担保していく。業務に即した試験改善や研修制度の導入および更新制の義務化、地域ガイド育成支援などに取り組んでいく。

 そのほか、新規施策で旅行業における情報セキュリティの強化支援事業に3100万円を、観光人材育成支援事業では3億9100万円を計上。人材育成は(1)観光経営を担う人材(2)観光の中核を担う人材(3)即戦力となる実務人材――の3層構造で育成、強化をはかる。それぞれ順に育成拠点を、大学院段階(MBAを含む)に形成、大学観光学部のカリキュラム変更、地域の観光分野の専修学校などの活用で対応。

〈地方創生〉
 「地方創生の礎となる観光資源の魅力向上」の大枠で33億3100万円を計上。このなかで、広域観光周遊ルート形成促進事業に19億9千万円、地域ブランド確立支援事業に2億5200万円、テーマ別観光による地方誘客事業に1200万円を充てる。テーマ別観光では、新しいテーマの設定も視野に支援する。加えて、地方創生に役立つ観光施策の検討、評価、改善に必要となる各地域の観光統計を整備するために5億3千万円を充てる。

 東北の復興に関しては、全体で57億3500万円を要求した。東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業(東北観光復興対策交付金)は44億6600万円、JNTOによるVJ事業(東北観光復興プロモーション)で10億円、福島県における観光関連復興支援事業では2億6900万円を充てる。20年には12年の3倍にあたる150万人泊を目標に、復興に向けた取り組みを強く推進する。

 17年度はインバウンド向けに酒税の免税制度も要望された。消費税が免税となる輸出物品販売所の許可を受けた酒蔵で、インバウンドを対象に販売した場合、酒税が免税となる。同制度を創設することで、地方の酒蔵ツーリズムを振興し、日本産酒類の認知度を向上させ、さらに輸出促進をもはかっていく。

旅のプロ ― 空気のような存在こそ練度が高い

 魚を釣りに行っても、酒場のバーに座っても、その人が一つのことにどれくらい訓練を積み重ねてきたか、という練度が自然なかたちで感知される。遊びだけではなく、仕事においても熟練の度合いが鈍い光を放つ。

 旅も同様である。旅行会社の社員と同行取材の旅を経験してきたが、彼らはホテルや航空機、鉄道などの裏事情に精通する旅のプロだけあって、自ずと添乗員的な役回りになる。これはさまざまなトラブルに遭遇し、乗り越えたり、回避したりしてきた経験の層が意識せずとも、凛々しさや、頼もしさを醸し出しているせいでもある。

 自分自身の旅を思い返してみると、わりと色々なところに行って来たな、と感慨にふけることもある。辺鄙な場所にも好んで訪れたし、後で考えると「危険な橋を渡った旅」もいくつかある。

 業種を問わず、年がら年中、世界中を駆け回るビジネスマンも、思いのほか多い。彼らは決して旅行業界の人間ではないのだが、国際空港などでの空き時間の潰し方や、搭乗手続きの手際の良さを目の当たりにするにつけ、いつまで経っても旅の錬度の上がらない己の旅の素人ぶりに気づかされる。

 出張帰りの新幹線に乗っても、私は未だに缶ビールとビーフジャーキーや柿ピーなどを買って、夕暮れが迫る田園風景を眺めながら、ひとときの旅情を楽しんでいる。しかし、しばしば巡り合うのは、隣に座るビジネスマンが車窓に映る景色には一切目を向けず、ミネラルウォーターで乾いた喉を潤しながら、一心にパソコンの画面を見つめ、企画書やら、管理データなどを作成している場面だ。

 「この人はもう、新幹線での大移動は日常であって、座席はオフィスのデスクと同じであるのだな」と赤ら顔で、旅に動じない男に感心してしまう。

 誰かと旅をすることで、その人のことをより深く理解できる。

 旅行作家やトラベルライターと言われる人たちと旅を共にすることがよくある。彼らは、一言でいえば、旅に「貪欲」である。朝日が綺麗に見える場所があると聞けば、朝4時に起きて、その場所に行こうとする。夜中に星がくっきり見えると耳にすれば、それが真冬であろうと、セーターを何重に着込み、外に出る。これらは極端だが、例えば旅に貪欲な人と、一般的な人が2人で旅に出たときに、一方は近くに話題の店があると「せっかくだから行こう」と誘う。一方は「ホテルでゆっくりしたいのでこれ以上出歩くのは疲れるから嫌だ」と感じるケースが往々にしてある。

 夫婦や恋人同士で旅をすると、このような細かな行き違いが重なり、その結果「この人とは旅のスタイルも、生き方もすべてが合わない」と別れるパターンもある。旅とは恐ろしいものだが、そのような深い関係でなければ、「へぇ~、この人はこんな旅の仕方をするんだ」と新たな発見をすることもある。

 旅慣れた人と、旅に興味の無い、あるいは旅に関心を失った不感な人は、表面的には見分けをつけづらい。旅のプロのような風情を、一見して見破られる人はまだまだだ。酒場で常連面をして目立つ奴も、まだ浅い。場に空気のように溶け込んでいる人こそが、練度が高いのである。旅先に溶け込み、空気のように存在感の無い旅人になりたい。

(編集長・増田 剛)

No.440 千草ホテル、市場環境にどう適応していくか

千草ホテル
市場環境にどう適応していくか

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第5回は、福岡県北九州市八幡で千草ホテルを経営する小嶋亮社長が登場。結婚式場業の定義に縛られず、「アニバーサリー・デザイン・カンパニー」へと発想の枠を広げ、内製化した自社の強みを活かす千草ホテル現場の取り組みを語り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(5)〉
千草ホテル

 ■小嶋:千草という名前が生まれたのは1914年で、料亭から始まっています。千草は千の草、つまり雑草のことで、「雑草のようにどんなに踏みつけられてもたくましく生き残っていきましょう」という創業者の思いが込められています。

 当時、官営八幡製鉄所ができて非常に街が盛り上がっていました。私の曾祖父が愛媛から北九州の八幡に出てきて、港湾労務者として働いていたのですが、曾祖母が小料理屋を開くと繁盛したため、料亭を始めたという流れです。料亭千草は八幡製鉄所など大企業の社長や重役の接待に使っていただいていたようです。

 戦後は、焼け野原の中で料亭を再開しました。うちは分家筋にあたり、曾祖父の長男が料亭を継ぎ、次男だった私の祖父が分かれて、1942年に割烹旅館を始めました。これが千草ホテルの直系の流れです。料亭と同じく官官接待需要を取り込みつつ、旅館機能を付加した感じです。

 しかし、あくまでも接待が中心で、宿泊機能が現在も“サブ的”な位置付けなのは、そこがスタートだからです。

 父の代になって結婚式が盛り上がり、その後、「レストランウェディング」や「ハウスウェディング」に取り組むようになっていきました。私は2015年7月に専務から社長に就任しました。

 ■内藤:完全にマーケットの需要にあわせて業態転換していったのですね。

 ■小嶋:現在は、洋室宴会と和室宴会という2種類があるのですが、洋室宴会でブライダルが伸びていき、和室宴会は今でも確実にある接待需要を取り込むために、八幡エリアに関しては広げています。最近は個人客も増え、全体の半分を占めています。…

 

※ 詳細は本紙1640号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。