“学生交流を地域交流へ”、観光プランコンテスト実施(松江市観光振興公社)

独自のプランを発表
独自のプランを発表

 松江城(島根県松江市)のお堀で遊覧船事業などを行う松江市観光振興公社は9月6日、若者の視点で新しい松江観光を探ろうと、愛知県名古屋市の椙山(すぎやま)女学園大学で「松江観光プランコンテスト」を開いた。

 公社では昨年12月、島根大学と県立短期大学部の学生計15人で学外サークル「みんなの堀川委員会」を設立。ワークショップや乗船体験などを通して、松江の歴史・文化を深く学ぶ取り組みを実践している。この活動が、松江市の外部委員も務める椙山女学園大学の齊藤由里恵准教授の目に留まり、今回地域を超えた学生交流が実現した。

 コンテストでは椙山女学園大学現代マネジメント学部で公共経済学を学ぶ3年生9人がそれぞれ、松江の観光素材を盛り込んだ独自のプランをプレゼンテーション。コンテストに賛同した中部経済連合会や日本政策投資銀行の幹部のほか、堀川委員会のメンバー3人も審査委員に加わり、最優秀賞には堀川遊覧船などを活用したお見合いツアーの「恋よ来い!一期一会ツアー」が選ばれた。

表彰後の記念撮影
表彰後の記念撮影

 一連の事業の仕掛け人で、公社の乙部明宏専務理事は「半分近くのプランに松江城が出てこないのが驚きだった。従来の考え方では若い女性のニーズと少なからずミスマッチがあるのだろう」と話す。

 今後の展開についてはコンテスト上位入賞者を松江に招待し、堀川委員会の学生と交流を加速させる。さらに松江観光協会ではプランの旅行商品化に向け検討を進める。

 乙部専務理事は、フジドリームエアラインズの出雲―名古屋間の増便や松江市と愛知県大口町との姉妹都市提携なども念頭に、「学生交流を地域交流へ広げていきたい。中部圏は1700万人の市場。その意味で今回中部圏の経済界の賛同が得られたのは大きい」とコンテストの意義を強調する。

ぴーすくる女子求む、観光レンタサイクルをPR(ツアーズ広島)

山田智浩社長
山田智浩社長

 広島県広島市の観光総合案内所ツアーズ広島は8 月24日、本紙を訪れ、同市中心部に設置したサイクルポートで、自由に貸出返却ができる、観光レンタサイクル「ぴーすくる」をPRした。来社したのはツアーズ広島の山田智浩社長。

 ぴーすくるは(1)観光客へのおもてなし度向上(2)観光利用と市民利用との融合(3)地元との連携と地域活性化――を目的とし広島市の委託事業として、2015年2月から開始した。事業開始から1年半経った現在、外国人による利用も多いという。広島市には、原爆ドームなど自転車で訪れることのできる場所が多いため、自転車の周遊コースなどを案内することで、観光客の行動範囲拡大を目指している。

 訪日観光客やビジネスで同市を訪れている人たちにとって、最寄の場所までのバスでの移動は、バスのルートや、降車停留所などが分かりづらい部分が多いため、今後はビジネスパック利用者などへのサービス拡大を目指す。山田社長は、「カープ女子ならぬ、〝ぴーすくる女子〟を早く結成して、しっかりPRしていきたい」と語った。

 料金プランは、1日パスで、税込1080円。貸出時間は午前7時―午後11時までで、返却は利用当日の午前零時まで可能。また、交通系ICカードや、おサイフ携帯を持っていれば、それらをカギとして利用することができる。そのほか1日パスのほかに、月額会員プランなど、各種会員料金プランを設けている。詳細は「ぴーすくる」(http://docomo-cycle.jp/hiroshima/)まで。

竹を使ったアクティビティ、群馬県・みなかみ町体験旅行

ライフジャケット着用で、はしゃいでも安心(撮影:内田晃)
ライフジャケット着用で、はしゃいでも安心(撮影:内田晃)

 みなかみ町体験旅行(入内島芳崇代表理事、群馬県利根郡)は9月11日、「バンブーキャンプ」をみなかみ町にある洞元湖の湖畔で行った。旅行会社やメディア関係者を対象としたモニターツアーで、今後の商品造成に向けフィードバックを得るのが目的。参加者は大人8人、子供2人。

 「バンブーキャンプ」とは、天然の竹を使って「つくる」と「食べる」「遊ぶ」を、参加者が協力して楽しむもの。当日は、竹を使った筏や器、箸づくりなどが行われた。参加者は、つくった筏で湖に漕ぎ出したほか、竹の箸を利用して流しそうめんを食するなど、竹を利用したアクティビティを満喫した。

 筏づくりでは、パラグライダーインストラクターでもある小林晋リーダーのもと、長い竹をノコギリで裁断して結わうなど、参加者は一致団結して作業に取り組んだ。大人の指導や手助けがあれば、子供でも無理なくつくることができ、林間学校で訪れた小中高生らにも好評を博している。

手作りでも、“本格的”な流しそうめんが楽しめる
手作りでも、“本格的”な流しそうめんが楽しめる

 完成した筏を湖に浮かべ、大人4人で試乗。不安定ながらも、一丸となって漕ぐと、筏はぐんぐん沖へ進んだ。ライフジャケットの着用やインストラクターによる丁寧な指導など、安全面での配慮が厚く、転覆などのハプニングも楽しい。林間学校など大人数での参加時には、プールを目一杯利用しての宝探しゲームなども体験できる。

 流しそうめん用の汁を入れる器や箸づくりでは、竹が割れないよう工夫するなど、作業を通じて竹という素材の性質を学ぶことが可能。そうめんを流すために用いる台も、参加者による手作りで、金槌となたを利用して竹の節を取るなど、普段味わえない体験ができる。

 受け入れの多くを、都心の中学生や小学生、高校生が占め、林間学校や修学旅行など参加者は年間で1万人(15年度実績)を超える。海外からの参加はおよそ10%。みなかみ町体験旅行では一般向けツアーの企画も行っており、現在、冬に向け造成している最中。雪に焦点を据えたものになる予定だという。
【謝 谷楓】

「旅しおり」作成、お届け、旅行体験の質的向上へ(たびらい)

人の温もりを感じる、オーダーメイドならではの楽しみ
人の温もりを感じる、オーダーメイドならではの楽しみ

 パム(長嶺由成社長、沖縄県那覇市)はこのほど、「あなただけの旅しおり」サービスを本格的に開始した。同サービスは、予約サイト「たびらい」を利用した、沖縄エリアの宿泊予約者に対し、オーダーメイドで観光情報を提供するというもの。利用者の目的に合わせて、沖縄を知り尽くした同社の現地編集部スタッフが専任で、観光ガイドを作成する。旅行体験の質的向上を果たすのが目的だ。

 利用者は、施設予約後にメールで届くオーダーシートに、旅の目的や体験したいことなどを記入して返信するだけ。現地編集部スタッフは、想いなどを汲み取ったうえで、各々にぴったりな「旅しおり」を作成し、指定日にオンラインで送付する。スマートフォンからも操作でき、旅行前だけでなく、雨の日の過ごし方など旅行中の質問にも対応できる仕様となっている。

 「たびらい」は同社が運営しており、宿泊やレンタカーといったツアーの予約対応だけでなく、各地域の観光情報も満載の旅行総合サイト。同サイトを訪れれば、目的地の歴史や地理にも触れることができる。

 同社は、“「目的地」から旅を面白くする会社”を掲げて活動しており、現地を拠点に取材を重ねながら、体験にもとづくユニークなコンテンツを企画している。運営メディアも多彩で、「たびらい」のほか、訪日外国人観光客向けの「Tabirai Japan」や、沖縄観光に特化したクーポン付きフリーペーパー「たびカタログ」、中国語沖縄観光フリーペーパー「Hi!沖縄朋友」などの発行も行っている。

 「旅しおり」に関する問い合わせ=パム広報企画(担当・妻夫木) 電話:050(3850)8925。

観光大喜利で魅力発信、やまがた若旦那

大喜利を終えて笑顔であいさつ
大喜利を終えて笑顔であいさつ

 山形県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部(佐藤太一部長)は9月13日、東京都内の寄席でプロの落語家を司会に「やまがた若旦那観光大喜利」を開き、県内の魅力を「笑い」に乗せて発信した。無料冊子「やまがた若旦那」の第3号も配布し、来県を呼びかけた。県の「若者チャレンジ応援事業」の助成金を活用している。立川流真打の立川こしらさんが司会を務めるなか、9人の若旦那が高座に上がった。「お国自慢」や「クレーム」などのお題に対し、珍解答や名回答が続出。それを立川さんが引き取り、さらに笑いを誘った。

 大喜利で魅力を発信するというざん新な企画について佐藤部長は、「経験のないなか、いきなり甲子園のマウンドに立つようなもの」と表現。今回、異業種代表として参加した農家の中川吉右衛門さん(高畠町)は「自分で決めてこの場にいることが楽しい」と語った。企画を練った遠藤直人さん(鈴の宿登府屋旅館)は「一度やると要領が分かった。さらに面白いことができそう」と、次の取り組みに目を向ける。

 青年部では昨年度から若旦那を切り口に、無料冊子の発行やフェイスブックを活用した人投票などのアイデアで、誘客活動に取り組んでいる。

No.441 バリアフリーへの挑戦、情報の見える化で再び温泉へ

バリアフリーへの挑戦
情報の見える化で再び温泉へ

 今年の4月から「障害者差別解消法」が施行され、全国的に障がい者差別解消に対する意識が少しずつ高まってきている。しかし、旅行業において現段階では、観光施設や宿泊施設などの態勢は十分だとはまだ言い切れない状態だ。障がいを理由に温泉旅行に行くことをあきらめている人たちに、再び温泉旅行を楽しんでもらうために、今、旅行業界に求められていることは何か、バリアフリー旅行ネットワーク代表理事の平森良典氏(昭和観光社社長)に伺った。

【松本 彩】

 
 
 

 ――今年4月に「障害者差別解消法」が施行され、障がいを理由とする差別を禁止し、合理的な配慮を行うことが求められるようになったが、現段階で観光施設・宿泊施設などの態勢は十分整っているといえますか。

 観光業では観光庁が主導して、日本旅行業協会(JATA)や、全国旅行業協会(ANTA)などが、数多くの取り組みを行っていくなかで、差別解消に対する意識が高まってきており、かなりの数の人たちが理解を示すようになってきました。

 しかし旅行業ということで考えると、1つの旅行商品で多くのニーズを満たすことは難しいです。困りごとは人によってさまざまだからです。例えば、車イス利用者でも、貸切バスの段差が可能な方から、昇降が難しい方などさまざまです。昇降できない方への合理的な配慮は、ハード面で昇降リフト付バスや、タクシーの別手配、ソフト面で接遇のできる介助者の別手配など、選択肢の配慮がまだまだ不十分だと思います。

 旅行業においては、ゆったりとしたスケジュールで、長い距離を歩かない一般ツアーや、障がい者に優しい専門ツアーなど、地域の旅行会社の、一泊温泉手配旅行などのツアーを、1つの手段として全国に広げることが重要です。宿泊1つとってみても、困りごとはトイレや客室、食事、お風呂、ケアの問題など多岐にわたります。例えば「杖を使っている方に優しい部屋」や「車イス生活の方に優しい部屋」など、求めている情報は人により違います。

 そのため、ホームページ上に「高齢者・杖・車イスなどに優しい」といったキーワードで専用ページを設け、部屋の平面図や、トイレの手すりの有無、介助スペース、ベッド周りのスペースなどが分かる写真と、センチメートル単位の情報を掲載する。各施設が、お客様が知りたい情報を提供していける環境づくりこそが、温泉旅行をあきらめている方の利用促進につながると思います。…

 

※ 詳細は本紙1641号または9月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

あえて… ― 快適なゆえの“退屈さ”を排除する

 ある時、フランス料理の先生が2人、向かい合って昼食を食べているのを何気なく眺めていたことがあった。

 彼らは、テーブルに肘を着き、リラックスしながら時に話に夢中になり、千切ったパンでお皿のソースの残りをすくいながら、口に持っていっていた。フランス料理を知り尽くし、テーブルマナーも熟知しながら、背筋を張らず、丸めた背中で少し下品にフランス料理を食べる、慣れた仕草に男の色気のようなものを感じた。世の中には、さまざまなマナーや作法、ルールがあるが、知識のうえで知りながら、あえてきっちりとやらないことが、洒脱であったりもする。服装もそうだ。上から下まで完璧なドレスアップよりも、あえてのドレスダウンが粋に見える。

 最近の旅は、どんどん快適な方向に進んでいる。家を出て駅や空港まで行けば、目的地までエアコンが効き通しで、雨にも濡れない。目的地でもホテルや旅館の中でずっと過ごせば、旅の途中でその土地の空気と触れることもなく、旅が終わる。

 数年前、沖縄の県庁に日帰りの取材に行ったことがある。家を出てバスで高速道路を走り、羽田空港からそのまま飛行機に乗った。那覇空港に着くと空港内でランチを取り、モノレールに乗って県庁前駅からわずかに歩いただけ。沖縄の島渡る風をほとんど浴びることなくその日の夜には逆の経路で家に帰っていた。これは、私の中では、「旅」とは言えない。沖縄には行ったが、「旅」ではなかった。

 最近、普通自動二輪の免許を取りに行っている。

 なぜ、オートバイなのか?

 それは、どこか快適さへのささやかな反逆なのかもしれないと、思っている。

 クルマは、年々快適性が向上している。まず、ほとんどがオートマチック車である。AT車は便利な分だけ、退屈さを感じてしまうのは、仕方がない。

 最近のクルマは、エンジンの振動や風切り音も遮断し、シートポジションも細かに選べ、エアコンやナビゲーションシステムも高性能だ。だから、家を出て、気が付けば快適な環境のまま、目的地に着いてしまうことになる。

 人間は贅沢である。不快なものを次から次に取り除き、ようやく得た快適さには、退屈を感じてしまうのであるから。だから、あえて快適さを排除したものを求めたがる。

 その一つが、オートバイである。クルマはまもなく自動運転の時代が到来する。そうなれば、ただの快適なカプセルの移動に過ぎない。

 メルセデスやポルシェ、ロールスロイスを所有する世界中のセレブの多くも、オートバイを所有している。快適な退屈さをあえて排除した楽しみに興じているのだと思う。

 オートバイには天井もなければ、エアコンもない。このため、夏は暑いし、冬は凍えるほど寒い。雨が降れば全身ズブ濡れだ。転倒すれば、生死に関わる。しかし、少なくとも旅の目的地に到着した時に覚える感動は、快適な高級車で行くよりも大きいはずだ。

 宿も同じで、ただ快適さや贅を尽くすだけでは、宿泊客はもの足りなさを感じるかもしれない。山や海、川など自然を体感できる遊びのメニューや、あえて原始的な空間を提供することも、きっとプラスに作用するだろう。

(編集長・増田 剛)

リアルな体験を提案、旅行会社だからできること(ジャルパック)

永瀬グループ長(左)、石井マネージャー
永瀬グループ長(左)、石井マネージャー

 ジャルパックは、10月21日と11月3日に、「忠義に生きた西軍の智将石田三成ゆかりの地をめぐる」ツアーを実施する。同ツアーは、JALマイレージバンク(JMB)会員に上質な旅を提供する“JMBプレミアムツアー”の商品で、石田三成というテーマにこだわった内容となっている。造成を担った石井秀俊国内企画商品第2事業部西日本グループマネージャーと同グループを率いる永瀬聡グループ長に話を聞いた。造成の意図に注目したい。
【謝 谷楓】

 ――ツアーの醍醐味はズバリ何でしょうか。

石井:このツアーの醍醐味は、石田三成が身を隠したとされる「オトチの岩窟」(滋賀県)を訪れ、捕縛された瞬間の風景や想いを追体験できるところです。この岩窟は、過去のNHK大河ドラマだけでなく、関ヶ原の合戦を描いた映像作品では必ずといっていいほど登場してきました。現地を訪れることは、歴史好きな方にとって、非常に興味深い体験になると考えています。
 現地へは山を登らなくてはならず、麓から1時間以上かかります。一般的な観光地ではありませんから、道などの整備も十分なものではありません。テレビや映画を見て、行ってみたいと思い立っても、1人で手軽に出かけるといったことはかなり難しいのが現実です。ツアーならば、団体行動というメリットを活かして、このような奥地を訪れることができます。参加者らは、余裕を持って、現場の雰囲気を感じ、過去の出来事に想いを馳せることができるのです。
 また、アマチュア歴史家で、「ミツナリスト」として有名な田附清子氏も同行するため、歴史に詳しくない方でもツアーを楽しむことができます。

 ――テーマ型の造成で大切にしていることを教えてください。

石井:テーマ型造成では、内容の“濃さ・深さ”が重要なキーワードとなってきます。旅行会社は、そのテーマの“キモ”をはっきりさせたうえ、参加者らに対し納得のあるものを提供しなくてはなりません。ただ深掘りし過ぎるのもまた問題ですが、適度な濃さは必要不可欠です。そうすることによって旅行会社は、特定のファン、すなわちリピーターを獲得できるようになると考えています。
 もちろん、これ単体だけでは、十分な利益を望むことはできません。しかし、リピーターを獲得できれば、同種や派生型のツアーを繰り返し実施でき、利益の確保もし易くなります。また、“そのテーマならジャルパック”というように、会社のブランド向上効果も期待できます。

 ――旅行会社としての企画力や提案力が問われる訳ですね。このような姿勢は、個人旅行全盛の昨今では珍しいことだと思いますが。

石井:その通りだと思います。しかし、旅行会社が主体となって、忠実にテーマと向き合い提案するなら、期待しているお客様は必ずついてきてくれます。そのため、内容の“濃さ・深さ”を重んじるツアーがなくなることはないと考えています。今回は、フリープランを中心とした個人旅行とは、ベクトルの異なるツアーができたのではないでしょうか。

JMBプレミアムツアー最新号の表紙。詳しくは左記News HEADLINEへ
JMBプレミアムツアー最新号の表紙。詳しくは左記News HEADLINEへ

 ――個人旅行との差別化も意図していたのですね。今後も、テーマ型に力を入れていくのでしょうか。永瀬グループ長いかがですか。

永瀬:ほかのパッケージ型やフリープラン型とのバランスが、とても重要だと考えています。
 お客様からの要望や自治体との連携など、テーマ型のツアーは、継続していく必要があります。一方、個人旅行の増加や、フリープランを中心とした価格競争など、旅行市場を取り巻く環境の変化についていくことも疎かにはできません。今回のツアーでも、「オトチの岩窟」という秘境をメインに据えましたが、個人では容易に行けないデスティネーションは決して多くありません。言葉のバリアがない国内旅行は、とくにそのことが顕著です。
 そのため、今後も、フリープラン型といった収益を確保する商品を大切にしながら、テーマ型を継続して、バランスの良いツアー造成をはかっていきたいと考えています。

 ――同ツアーと“JMBプレミアムツアー”の関わりについて教えてください。

永瀬:このような内容の“濃い”ツアーを、誰に向かって、どのようにして届けるのかということは、大きな課題でした。JMBはしっかりした会員組織で、“JMBプレミアムツアー”のパンフレットは、そのなかでも上位の会員向けに送付されています。それら会員をターゲットにしているからこそ実現できたツアーだと考えています。

石井:入会に際し、お客様の趣味嗜好に関するアンケートを取るのですが、スポーツや登山といったなかで、歴史という項目もあります。おかげで、年齢や性別にとらわれることなく、歴史に興味を持つお客様というように、ターゲットを明確に意識したツアー造成ができました。

 ――同ツアーは、JALグループの一員であるジャルパックならではの商品だと言えます。本日はありがとうございました。

 “JMBプレミアムツアー「ジャルパックが厳選して贈る いい旅、あたらしい旅。」”では、3つのカテゴリーがあり、「ポレイア」と「ポレイア ネオ」では海外旅行のツアーを、「JMBセレクション」では国内旅行のツアーも楽しめる。

 「ポレイア」は、JALビジネスクラスを利用し、旅にはベテラン添乗員も同行する。「ポレイア ネオ」は、1人からの参加が可能で、ビジネスクラスとJALプレミアムエコノミークラスを利用できる。「JMBセレクション」は、JALエコノミークラスを利用し、テーマに沿った旅を提供する。同ツアーもここに属する。

日本と台湾の共同開発、國光客運とウィラー協働

村瀨茂高代表と呉定發副董事長
村瀨茂高代表と呉定發副董事長

 ウィラートラベル(村瀨茂高社長)と、ウィラーエクスプレスジャパン(平山幸司代表)、ウィラーコーポレーション(村瀨社長)は9月13日に、台湾の國光汽車客運(呉定發副董事長)と協働し、高速バスサービスや商品を共同開発すると発表した。第一弾として、ウィラ―トラベルサイトで、日本から台湾を訪れる旅行者向け商品を販売する。日本にいながら、台湾の交通やツアーを事前に予約、決済ができる。

 共同開発の背景に、両国間の好調な旅行者数がある。2015年度の日本からの訪台者数162・7万人、台湾からの訪日者数は367・7万人を記録した。このなかに、LCCが就航したことで、観光目的の若い女性が増加。これを踏まえ、ターゲットを20代前後から30代の若い女性に据えた。村瀨社長は「日本と台湾は互いに国内旅行に近い感覚で、気軽な旅行になっている」とし、「とくに、若い女性を中心に、非日常的な癒しと刺激を同時に求めている」と話した。

 若い女性は海外旅行で、フリープラン・自由行動タイプのパッケージツアーを選ぶ傾向にある。一方、個人で航空券とホテルを同じサイトで予約・購入する、いわゆるダイナミックパッケージは少数派となっている。原因は、「交通のわかりにくさ」と「言葉の壁」の2つがある。

 両社は、この2つの不安を解消し、簡単・便利に安心しながら、よりローカルな旅の魅力を楽しんでもらうため、共同でさまざまな商品やサービスを開発した。

 國光客運は台湾で最大の路線網を誇り、全国に97路線を有し、利用者は1日約9万人にのぼる。車両は約1160台保有し、桃園空港に24時間空港バスを提供している。今回の協働により、「桃園空港―台北」の往復料金を1千円で、「桃園空港―台中」は1800円で販売する。所要時間はそれぞれ、1時間と2時間10分。

 台北から観光地へ高速バスの利用を想定し、九フンと宣蘭、日月潭、阿里山の4カ所でオプショナルツアーを造成した。村瀨社長は「もともとは國光客運の商品だったが、現地に社員を送り、日本人向けオリジナル商品として造り変えた」と話した。さらに、空港バスと今回販売するツアーの車内アナウンスに日本語案内を導入。今後、順次全路線に拡大していく。

 また、國光客運の路線の乗り放題券「KingPass3」を3300円で発売。3日間乗り放題で6回利用できる。「KingPass5」は5日間乗り放題、8回利用可能で5千円で販売する。

 利用者はこれらすべてを、ウィラートラベルサイトで事前に予約・決済ができる。利用者の使い慣れたWebサイトで、日本にいながら、旅先の交通情報などが確認できる。事前に情報を得ることで、旅行者の現地における不安を解消させる。旅行中にトラブルが発生した場合でも、日本語で対応可能なカスタマーセンターに、電話かメールで問い合わせが可能となっている。

 加えて、台湾でバスに乗車するとき、降車地を記入した「降車カード」をバスの乗務員に渡せば、降車場所到着時にアナウンスがある。ツアーの場合は、バス乗り場や乗車方法、地図、見どころが母国語で書かれた「旅のしおり」が配られる。2つとも、台湾到着時に國光客運のカウンターで、事前予約のチケットなどを引き換える際に配布される。

 呉副董事長は、「訪台される日本人の方々に、まるで日本で過ごしているように快適なサービスを提供します。台湾各地を便利で安全・安心に旅行してもらえます」と述べ、「我われは準備万端です」と笑顔で語った。

 同日の会見後、東京・大手町の会場で、村瀨社長と呉副董事長が調印式を行った。

 今後は、10月以降に台湾から日本に訪れる旅行者に対して、今回と同様のサービスを日本で展開し、台湾で記者発表会も予定している。

 ウィラートラベルは、今回の協働により、海外市場で認知度向上をはかる考えもありそうだ。

規約説明会を実施、7月には大学で出前授業も(旅行業公取協)

説明会のようす
説明会のようす
中峰秀紀委員長
中峰秀紀委員長

 旅行業公正取引協議会(菊間潤吾会長)は、9月2日東京都内で、「2016年秋季公正競争規約説明会」を開き、東京都内で旅行業に携わる関係者約300人が参加した。説明会は2部構成で、前半に「表示規約」、後半に「景品規約」の説明が行われ、講師は同協議会専門委員会の中峰秀紀委員長が務めた。

 中峰委員長は、表示規約の説明の中で同協議会のロゴマークについて触れ、「ロゴマークの認知度を高めることで、会員の旅行会社は『安心な旅行を提供している』という信頼ができる。会員の方々は積極的にマークを表示してほしい」とコメントした。

 なお、説明会は東京を皮切りに、富山、大阪、千葉、静岡、松山、長﨑、名古屋の計8都市で計12回行われる。

 また同協議会は、7月20日に東京都渋谷区の東海大学代々木キャンパスで、観光学部観光学科の学生を対象に「公正競争規約」に関する出前講座を行った。同協議会では、全国の大学で観光について学ぶ学生たちを対象に、旅行業界の景品と表示に関する自主的なルールである〝公正競争規約〟について、理解を深めてもらい、協議会の活動や、旅行広告に関心を持ってもらうことを目的に出前講座を行っている。

熱心に講義を聞く学生たち
熱心に講義を聞く学生たち
袋井等事務局長
袋井等事務局長

 講師として登壇した同協議会の袋井等事務局長は、規約についてさまざまな事例を交えながら解説。学生たちは、一つひとつの事例や、規約に関する重要ポイントなどを聞き漏らすことがないように、熱心にメモを取りながら講義に臨んでいた。

 袋井事務局長は「表示規約違反事案の中には旅行会社に直接的に責任がない場合もある。しかし、規約では、当該広告表示を行った旅行会社が違反に問われることになる」と言及し、学生に対して正しい広告を選択したうえで、旅行商品を購入してもらいたいと説明した。