攻めのディフェンスで期待に応える年に、JATA田川会長会見

JATA田川博己会長

2018年1月11日(木) 配信

日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は2018年1月10日(水)に開いた新春会見で、2019年からの大きな変革の潮流を控える今年を「備(そなえる)」と表現。「今年は攻めのディフェンスをしていく。国内、海外、訪日の三位一体で取り組めるJATAへの期待はますます大きい。その期待に応える年にしていきたい」と力を込めた。

 1982年の旅行業法改正から35年が過ぎたことに言及し、旅行業の今後35年の発展には品質を見直すべきだと主張。「インターネットで何でも見られる時代だが、自分の目や足で確かめてコンテンツを作ることが重要。2018年はこうした根幹的な部分を太くしていきたい」と述べた。

 2019年から導入予定の国際観光旅客税(仮称)の使途については、「観光に限って目的税としての使用が実現しそうで一安心している」と胸をなでおろした。2017年度の補正予算や2018年度の予算で、「旅行の安全情報等に関する情報プラットフォームの構築」が含まれたことに対し、「海外旅行の一番の障害になっている安心安全に関するもので、旅行会社が関わる事案に予算がついた画期的なできごと」と評価。「2019年度の予算では、若者の海外旅行増加策や2国間交流の活発化など我われの要望を働きかけていきたい」と意気込んだ。

 各市場や事業の取り組みについては、国内旅行は「DMOの自立が地方創生のカギ」とし、地方自治体やDMOとの連携を一層強化していく。観光資源の磨き上げや、受け入れ環境整備への参画など旅行会社ならではの価値づくりを促進する。

海外旅行は2年目を迎えるアウトバウンド促進協議会の活動をさらに促進する。すでに成果が表れているエリアもあるが、各部会ごとにテーマを設け、取り組む。今年は日本との関係が深い国々との周年の年にあたり、2国間の交流にも尽力する。

ツーリズムEXPOジャパンは①観光の裾野の広がりを見える化した観光博覧会②経済効果③名実ともに世界3大観光イベント――の3つをポイントに取り組む。2019年の地方開催を前に、現行での完成形を目指す。

会見内の質疑応答を抜粋して紹介  

――DMOについて。

 DMOの推進は避けては通れない。大きな課題だ。住民の人たちをどう巻き込むか。日本ではDMOの取り組みは始まったばかり。5年10年先を見据え、その時々何をすべきか工程を作ることが大切。それができれば日本でも定着するだろう。

――国内旅行推進は。

 足元を見直して、魅力を磨くべき。旅行会社は地域と組んで商品開発する力が鈍っている。地域もインバウンドだけに目を向けないでほしい。国内で発展したところに外国人が集まるのが筋。国内旅行に携わる人は原点に立ち返ってほしい。

――民泊法が施行されるが。

 民泊そのものを否定するつもりはない。ニーズは高まることはあっても減ることはないと思う。ただ、宿泊施設として備えるものはそろっていないといけない。地域によっても大きな違いがあるので、運用するなかで再整備されるのでは。

――ナイトタイムエコノミー(夜遊び経済)への見解は。

 まちの商店街を夜まで空けられる仕組みなど、遊ばせ方を考えなくてはいけない。夜観光やMICE、ユニークべニューなどは地方創生とセットで考えるべき。五輪までにいくつか事例が必要。ワールドカップラグビーは地方にもお客様が周り、富裕層の観光客が1カ月ほど滞在することもあるので、それぞれの地域で議論してほしい。旅行会社としてはこうした素材は商品として扱いやすいので歓迎する。

――政治との関わりは。

 政治については会員各社の立ち位置があるが、政治力を持つことは必要だと思う。何かに使うわけではないが、業界団体として持つべき機能だという認識だ。流れは今年の総会までに作っていきたい。

高速道路の乗り降り自由に 北海道観光のフリーパスを発売

2018年1月11日(木) 配信

高速道路が定額で乗り降り自由!NEXCO東日本北海道支社が、「冬の北海道観光ふりーぱす」を発売した

高速道路が乗り降り自由になる「冬の北海道ふりーぱす」が発売された。道北と道東、道南各エリアの高速道路がそれぞれ、4,800~7千円で利用できる。

 道北プランは新千歳空港~士別剣淵IC間、道南プランは小樽~大沼公園IC(函館)間、道東プランは小樽~本別IC間で利用可能だ。価格は全プラン共通で、2日間の場合、軽自動車で4,800円、普通車で6千円。3日間の場合はそれぞれ5,600円と7千円になる。

 キャンペーンに合わせ、スマートフォン端末を用いたスタンプラリーも実施する予定で、スタンプ数に応じ豪華賞品が当たる抽選に参加できる。

「冬の北海道ふりーぱす」・スタンプラリー詳細

利用期間:

2018年1月20日(土)~4月2日(月)のうち、連続する2日間もしくは3日間

道北プラン、道南プラン、道東プラン、各々の価格(各プラン共通):

2日間、4,800円(軽自動車)・6千円(普通車)

3日間、5,600円(軽自動車)・7千円(普通車)

申込方法:以下Webサイトで受付

大内副会長、観光の動きを力強く支えると宣言

2018年1月11日(木) 配信

大内政男副会長

国際観光施設協会(鈴木裕会長)は1月11日(木)、ホテルメトロポリタンエドモンド(東京都千代田区)で賀詞交歓会を開いた。

 大内政男副会長は2013年に訪日外国人旅行者数が1千万人を達成してから5年間で2・8倍の伸び率を記録したことに触れ、「これほどの伸び率を示す産業はほかにない。観光産業はこれから日本を背負っていく基幹産業になる」と語った。

 一方、観光を支える旅館やホテルなどの観光施設は量と質、ソフトとハード面で不足しているとの指摘もあるとし、「協会がよい観光の動きを力強く支えなければならない」と訴えた。また、昨年主催した講演会を振り返り「日本の観光はまだまだ未開発、未成熟な部分があり、観光をこれからより力強い流れに変えていくには、やるべきことがたくさんある」と言及。「各地の魅力を丁寧に見ていくと、新サービス、ビジネスになる。観光分野の流れをより力強い流れにし、日本の観光、会員のビジネスにつなげたい」と宣言した。

講師はジャーナリスト・田原総一朗氏 JTB旅行文化講演会

2018年1月11日(木) 配信 

講演内容

JTB西日本は2018年3月3日(土)、ジャーナリストの田原総一朗氏を講師に迎えて、滋賀県琵琶湖で「第396回JTB旅行文化講演会」を開く。

 JTB旅行文化講演会は、1983年にスタートし、JTBの文化発信活動として全国で親しまれている。関西でもこれまでに、各界のさまざまな著名人を講師に迎えて開催してきた。

 今回の演題は、「時代をよむ ~魅力ある地域の実現に向けて~」。会場である琵琶湖汽船ビアンカで、講演を聞きながら琵琶湖遊覧も楽しめる。

第396回 JTB旅行文化講演会 概要

講師:田原 総一朗(たはら そういちろう)氏

演題:「時代をよむ ~魅力ある地域の実現に向けて~」

日時:2018年3月3日(土)

 開 場/午後0:45 出 航/午後1:30 

 講 演/午後1:40 ~3:00

 帰 航/午後3:30予定

会場:琵琶湖汽船ビアンカ

乗船場所:大津観光船のりば

 ・京阪浜大津駅より徒歩5分

 ・JR大津駅よりバスで約5分(京阪バス、江若バス、近江鉄道バス)

定員:200人(20歳以上)

受講料:無料 

 ※事前に予約された人のみ入場できる。

 ※当日は手話通訳がつく。

申込み・問合せ先

JTB西日本 大津支店

※申込書に必要事項を記入のうえ、下記まで申し込む。

〒520-0043 滋賀県大津市中央3-1-8 大津第一生命ビルディング1階

tel:077-522-4103 fax:077-522-2941

営業時間 午前9:30~午後5:30(土・日・祝休み)

JTB西日本 大津支店
http://www.jtb.co.jp/shop/otsu/
個人から団体まで、国内旅行・海外旅行のお問い合わせ・お申込みはJTB西日本 大津支店でどうぞ。

申込みの締め切り

定員の200人になり次第、申込受付は締め切りとなる。

ANA、トリップアドバイザーと提携で口コミ情報掲載スタート

2018年1月11日(木) 配信 

ANAサイト上で口コミがみられるように

トリップアドバイザー(牧野友衛代表、東京都渋谷区)とANAセールス(今西一之社長、東京都中央区)は提携し、1月10日からANA海外旅行予約サイト上で、ホテルの口コミ情報を表示するサービスを始めた。

 ホテル口コミ情報は、ANAホームページ内「海外旅行パッケージツアー」の検索画面、ツアー詳細画面から見られる。トリップアドバイザーのユーザーが採点した「評価」が表示され、多数の口コミを参考にホテル選びができるようになった。

 サイト上の口コミは合計件数で表示されている。口コミのボタンをクリックすることで、ユーザーの実際の口コミが閲覧可能。さらに、旅行後には「マイブッキング 予約一覧ページ」や「メール」などから口コミの投稿もできる。投稿された口コミ1件からマイルが貯まり、毎月最大1500マイルまでとなる。口コミ情報の提供は、海外航空券+宿泊「ANA旅作」や国内旅行予約サイトへも順次展開していく見通し。

※マイルに関する詳細URL:

<サービス概要>

 1. 予約サイト内、検索画面やツアー詳細画面でトリップアドバイザーから提供される評価点、口コミ件数が表示され、評価点が高いホテルから並び順を変更することも可能

 2. 旅行終了後は専用のフォームから口コミの投稿もできる

【特集 No.480】新春対談・民泊元年によせて 予算は「人」にこそ配分すべき

2018年1月11日(木) 配信

 住宅宿泊事業法(民泊法)が6月に施行される。都市部で規制が進む一方、誘客と消費額増に生かそうと、プラットフォーマーとの提携に手を上げる地方行政も出てきた。今回はその是非から一度離れ、地域に人とカネをもたらす手段として「民泊」を捉えたいと考えた。勝瀬博則氏(パソナ)と上山康博氏(百戦錬磨)はそれぞれ、大手OTA(オンライン旅行会社)を経て、イベント民泊や合法民泊、農泊の推進に携わってきた。地域は今、何をし、何をしないべきか?一歩踏み込んだ対談を届ける。
【司会進行・構成=謝 谷楓】

 

 ――いよいよ今年、住宅宿泊事業法(民泊法)が施行となります。違法民泊の問題をはじめ、昨年は宿泊する「場所」の側面に光が当たりがちでした。

上山:違法民泊の淘汰により、物件数は一時減少するはずです。宿泊提供日数の180日規制により、都心部の不在型は運営が厳しくなるからです。

 「人」の魅力に着目した観光コンテンツの創出が、地方で民泊を運営する際には、重要となっていくと見ています。

勝瀬:同感ですね。提供日数の制約がネックとなり、都心部で部屋を借りての運営は割に合いません。一方、居住する自宅が舞台の、滞在型民泊の持つ可能性は大きいと考えます。不動産の価値だけでなく、人と人のつながりにも目を向けるべきだということです。

 ――詳しく教えてください。

勝瀬:今後は地域に住む「人」とその取り組みがコンテンツをつくっていくこととなります。場所ではなく、「人」が旅の重要なコンテンツになりはじめています。アイドルグループAKB48が良い例です。秋葉原でスタートしたものの、栄や難波、博多など、場所を問わず成功を収めてきました。「人」の持つ魅力に関心を抱き、握手会やコンサートにリピーターが集まっているのです。

 地域に住む一人ひとりが主役となる、劇場型の観光がこれからの本流です。行って帰ってくるだけの、消費される場所で終わってはいけません。

上山:観光地を磨き上げるという言葉を良く耳にしますが、人間同士のコミュニケーションを通じた摩擦がなければ輝きは望めません。外国人旅行者の視点を取り入れることも重要です。地方行政の皆さんにはぜひ、地域住民個人が活躍するステージ(舞台)として民泊を捉えてほしいと思います。

勝瀬:大型の観光施設が誘客に役立つことは否定しませんが、場所の磨き上げは差別化につながりにくいのが現実です。代えのきかない「人」に焦点を据えることが必要です。地域をPRする動画の作成がムーブメントとなっていますが、地域住民を前面に押し出す工夫が求められます。この地域にはこんな人がいるのだということを広め、ユニークな取り組みを行う「人」の発信を助ける。そういう役割を、地方行政には担ってほしいですね。

 ――地方で民泊を成功させるキーワードは、「人」のようです。

勝瀬:昨年8月、徳島市の阿波踊りでイベント民泊に携わりました。ホストとゲストの多様な交流を目の当たりにして、「人」がこれからの観光の主役だということを実感した次第です。

 地元住民の知恵とネットワークを活用すれば、新しいスタイルの地域体験を提供できるはずです。オープンマインドの方が多いのも特徴でした。地域住民と交流したい外国人旅行者の取り込みも見込めます。

 「人」に焦点を据えることは、住民の取り組みに予算を配分することを意味します。観光コンテンツの企画に携わってもらい、適切な判断のもと、予算をつけるべきです。

上山:過剰投資を抑えるためにも、有効なことです。補助金や交付金など、お金をかけずにどれだけ成果を出せるか。儲ける仕組みをつくり、補助金や交付金を無駄にしない姿勢を、地方行政は一層強く求められていますから。

 民泊法や新しい通訳案内士法の施行など、ルールが変わる今をチャンスと捉え、地域のために本腰を入れてほしいですね。…

 

※詳細は本紙1699号または1月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

神奈川県・箱根強羅温泉「円かの杜(まどかのもり)」 進化続ける宿

2018年1月11日(木) 配信

篠山紀信氏の限定本「食」

「本のある風景」に出会う ブックディレクター・幅允孝氏が演出

 花扇グループ(飯山和男社長)が2014年12月に神奈川県・箱根強羅温泉に開業した「円かの杜」の館内を歩くと、さまざまなエリアで「本のある風景」に出会う。飛騨の高級木材などに囲まれた温もりのある空間で、上質な落ち着きを提供する円かの杜に、新たな魅力が加わった。ラウンジや蔵バーなど館内各所に置かれた本棚には、ブックディレクター・幅允孝(はば・よしたか)氏がセレクトした本が並ぶ。ハイセンスな写真集や限定本、絶版本など、希少価値のある本もそろえ、魅惑の世界が広がる。

 開業から間もない15年4月、円かの杜は雑誌との企画で、本のある特別室「ディスカバージャパンルーム」を設置した。このときに、ブックディレクションの第一人者・幅允孝氏との縁が生まれた。

 松坂美智子女将が幅氏と話し合いながら、全館に本をセットしていった。「朝、鳥のさえずりで目覚めたお客様の知的好奇心を満たせるように」と、鳥の図鑑も置いている。建築や家具の好きな宿泊客には、北欧デンマークの建築家、家具デザイナーのフィン・ユールの本も楽しめる。

松坂美智子女将
大浴場のエリアにも本棚

 本棚めぐりも小さな館内の旅だ。

 「箱根を存分に味わうための本棚」「心と体を落ち着ける本棚」「日本の食文化を知るための本棚」「男の本棚」――の4つのテーマで回遊できる。

 例えば、大浴場近くのリラクゼーションルームには「心身ともに癒されるような本を」と、波だけが被写体の写真集が置かれている。心の中まで波に洗われるような気分になる。

 ラウンジには箱根にちなんだ本が並ぶ。滞在中の宿泊客がソファに座ってくつろぎながら本を開いている風景が見られる。

ロゴマーク
心と体を落ち着ける「波」の写真集

 食事処の入り口には、篠山紀信氏の「食材」を接写した限定本など、食にまつわる本も置いている。蔵バー「こだま」には、絶版となった少年マガジンや、退廃の香りがする男性好み本も陳列し、秘めた楽しみを演出する。

 ラウンジに接する喫煙ルームには、フランスの写真集「ノースモーキング」が渋い存在感を示す。エスプリが効いている。

 「深く読み込む種類の書籍ではなく、手にとってくつろいでパラパラとページをめくれるような本をセレクトしています。ユーモアのエッセンスも取り入れています」(松坂女将)。本のタイトルやジャンルも多彩だ。

蔵バー「こだま」のオリジナルカクテルを飲みながら…
蔵バーの「男の本棚」

各部屋に本のメニュー フロントで貸し出しも

 フロントで本の貸し出しも行っている。客室で本のメニューを見て気に入った本があれば、滞在中に楽しみが広がる。「猫と女とモンパルナス」(藤田嗣治)や「女の一生」(伊藤比呂美)、「ハーブ図鑑」(ジェニー・ハーディング)など、メニューを見るだけで心が豊かな気分になる。貸し出しの本のメニューも今後増やしていく予定だ。

 「1泊2日の滞在中の少し空いた時間などに、いつでも本を手に取れるように、彩りをまとった旅館にしたいという思いはありました」と松坂女将は語る。

 森を抜けるさわやかな風のような詩集、爛熟した雰囲気を漂わせる絶版本、エスプリの効いた書籍などが、ほどよく文化薫る世界観を醸し出している。

 本棚も幅氏が使っている家具屋に特注した。本を選びやすく、並べやすいデザイン。お洒落な脚が付いている。主張しすぎず、見過ごされない、“ちょうどいい”意匠に視線が合う。本の並べ方も決まっている。

 「宿の空間も、木と畳みだけではなく、本棚も1つのインテリアとして彩りを与えられればと思っています。朝、ラウンジでコーヒー飲みながら、景色を眺めているお客様の手元に本がある。絵になる姿です」と松坂女将は話す。

 女将は熱海に近い早川の海岸から、丸い石を拾って来た。客室に置く本のブックエンドするためだ。「強羅にも石はありますが、ゴツゴツしています。円かの杜にぴったりと合う丸い石を求めて海に行きました。子供と何往復もしながら、海岸からクルマまで20個近く運んできました」と楽しそうに笑う。

グッドデザイン賞の“人類進化ベッド”も

人類進化ベッド

 日本デザイン振興会主催の「2017年グッドデザイン賞」を受賞した「人類進化ベッド」を置く客室も備えている。「チンパンジーが樹上に作るベッド」をヒントに開発されたものだ。

 松坂雄一取締役総支配人は「お客様の宿での過ごし方の選択肢の1つとして、楽しく想像しながら人類の進化ベッドも置きました。海外の旅行者も含め、さまざまな宿泊者が来られるので、さりげなく配置したなにかに、アンテナがひっかかる方もいらっしゃいます」。

 円かの杜は訪れる度に、少しずつ進化していることに気づく。

味わい深い宿へ

 日本の宿には独特の「味わい」がある。「味わい」は人によって生まれる。

 円かの杜は、この「味わいを守り続けたい」という志のある宿が集まる「日本 味の宿」のメンバーでもある。

 華美に走ったり、豪勢を誇るだけの宿ではなく、地元に根付き、味わい深い「野にあるごとく大らかな宿」へと磨きを掛けている。

円かの杜の壮観な玄関
温もりのある木と畳の客室

“個客満足が創客に” 4都市でセミナー開く おもてなし経営研究所

2018年1月11日(木) 配信

実体験を基にポイントを伝授する西川丈次氏

 おもてなし経営研究所(代表=西川丈次観光ビジネスコンサルタンツ社長、大阪市淀川区)は、観光関係者など対象の第12回「おもてなしセミナー」を昨年12月13日、福岡市内で開催した。セミナーは仙台、東京、長野、福岡の4都市で開き、福岡会場では約30人の参加者が熱心に受講した。

 講師の西川氏は、ホテやレストラン、タクシー、バス、観光地などでの体験談を基にしたホスピタリティ実践論「もてなし上手」を旬刊旅行新聞に好評連載中。セミナーでは、西川氏が実際に体験した感動サービスの事例を基に、すぐに実行できるもてなし経営行動のポイントを伝授した。

 まず、「ありがとう」を伝えるため10枚の「Thank you」カードを配布。「使い切ろうとする勇気が、おもてなし力を高める」とアドバイス。「良いサービスだと気づく力のない人に良いサービスはできない」と述べ、「感じる力」の大切さを訴えた。

 また「おもてなし行動は、自己満足では駄目。おもてなし経営ができるかどうか」と述べ、「行動を個に向ける」重要性を強調し、「顧客満足から個客満足に向かえば、創客につながる」と指摘。「販売者が売りたい時に買ってもらえるロイヤルリピーターを作ること」の重要性を訴えた。

〈観光最前線〉「西郷どん」

2018年1月11日(木) 配信

鹿児島市内に建つ西郷隆盛銅像

 西郷隆盛を主人公とした大河ドラマ「西郷どん」の放送が始まった。西郷主役の大河ドラマは、西郷と大久保利通を主人公にした1990年の「翔ぶが如く」以来。林真理子原作、中園ミホ脚本による今作は、西郷をとりまく女性たちや、島での生活も深く描いた、これまでにない西郷作品として注目を集めている。

 西郷の故郷、鹿児島県では、今月12日に西郷が滞在した鰻温泉のある指宿市で「いぶすき西郷どん館」、翌13日には鹿児島市の西郷生誕地そばに「西郷どん大河ドラマ館」と、西郷ゆかりの各地でドラマ館が誕生する。西郷が足しげく通った日当山温泉(霧島市)には昨年12月、滞在時の屋敷を復元した「西郷どんの宿」もオープンしている。明治維新150年の節目に、歴史を振り返る旅はどうですか。

【塩野 俊誉】

〈旬刊旅行新聞1月11日号コラム〉観光制裁 危うい岩盤の上に立つ観光産業

2018年1月11日(木) 配信

観光も国際政治の駆け引きの1つに

 2018年が始まって10日余りが過ぎた。2月9日からは韓国の平昌で冬季オリンピックが開催される。1月9日には、韓国と北朝鮮は南北境界線にある板門店の韓国側「平和の家」で閣僚級会談を開き、北朝鮮の選手団が平昌五輪に参加する流れになった。しかしながら、北朝鮮の核開発問題は解決されたわけではなく、東アジアを巡る国際情勢は依然として今年も厳しく、危機的な状況が続くと見られる。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は17年12月13日から3泊4日の日程で国賓として中国を訪問した。習近平国家主席や李克強首相とも会談し、韓国にとっては、北朝鮮の核問題への対応と合わせて、米国の終末高高度迎撃ミサイル(THAAD=サード)配備による中国からの報復措置の改善も会談の大きなテーマであった。

 サード配備の報復措置として中国政府は16年3月から、韓国への団体観光商品を全面禁止していたが、文大統領が訪中する直前に緩和された。韓国は中国人観光客を大歓迎したが、文大統領が帰国して間もなく、中国からの報復は再び強まった。

 日本も12年9月に尖閣諸島を国有化した際に、中国の大手旅行会社は日本へのツアーを一斉に中止し、中国人旅行者でにぎわっていた観光地が一時期閑散としていたことは記憶に新しい。また、15年には中国の“爆買い”ブームの絶頂期を迎えたが、16年4月には、中国財政省が海外で購入した商品を中国に持ち込む際に課税を強化したことによって、急速に爆買い現象が沈静化した。

 海外旅行者数が伸び悩む日本を離れると、世界中、とりわけアジアでは爆発的に海外旅行者が増加し、旅行先での観光消費額も拡大している。例えば中国の年間海外旅行者数は日本の総人口に匹敵する1億2千万人規模であり、アジアの近隣諸国だけでなく、欧米や中東、アフリカを含め世界中に大きな影響を与えている。このため、観光大国は、国際間の経済に直結する成長産業の観光を、政治的に利用する価値が高まってきている。相手国との駆け引きの中で「観光制裁」はその有効な政治手段の一つである。観光大国を目指す日本も例外ではない。

 米国ではトランプ政権になって、再びキューバへの個人渡航禁止の措置を取っている。観光産業に依拠するキューバにとっては大打撃だ。一方、イランは15年に米英仏独ロ中の主要6カ国との核合意によって制裁が解除されて以降、押し寄せる観光客向けのホテル開発が一気に進んだ。別の意味で観光産業の影響の大きさを感じさせる。

 日本では、インバウンドの急激な拡大と、2020年に訪日外客数4千万人、30年までに6千万人という右肩上がりの政府目標、さらには近年の着実な実績によって、「今後もこの流れがいつまでも続く」ムードが漂っている。しかし、この過信は、少々危険な気がする。

 国家間の軋轢が生じた場合、武力衝突はどの国も最も避けたい手段である。国際観光交流が拡大するなかで、観光の持つ影響力は今後も拡大し続けることは間違いなく、相対的に国力の弱い国は、強い国から「観光制裁」を受け、翻弄される可能性はさらに高まるだろう。政治状況によって観光産業はひどく危うい岩盤の上に立つという認識を持ち、あらゆる想定が必要である。

(編集長・増田 剛)