【まえばし発酵めぐりの旅】新たな魅力再発見 風土が生んだ発酵食品

2019年1月3日(木) 配信

元祖焼きまんじゅう「原嶋屋総本家」

 群馬県・前橋市の「前橋観光コンベンション協会」は昨年、首都圏からの誘客宣伝事業として、首都圏在社のメディアを対象としたモニターツアーを開いた。同市には風土が育んだ味噌や日本酒、チーズなど数々の発酵食品が存在する。ツアーでは、同市の新たな魅力再発見として、その風土が生んだ発酵食品を食べ歩く「まえばし発酵めぐりの旅」に関連する施設などを実際に訪問し、今後の情報発信に役立ててもらうのが狙いだ。主な観光素材を紹介する。

【古沢 克昌】

 前橋観光コンベンション協会が主催した「まえばし発酵めぐりの旅」モニターツアーは、東京駅八重洲口の「丸の内鍛冶橋駐車場」からバスで移動する日帰りツアーとして企画された。

 まず到着したのが、前橋市街にある1857(安政4)年創業の元祖焼きまんじゅう「原嶋屋総本家」。江戸時代の古民家を復元した店舗内に入ると、目の前で竹串に刺されたまんじゅうが焼かれ、味噌だれが塗られていた。味噌が焼ける香ばしい匂いが食欲を刺激し、出来立ての焼きまんじゅうを試食した。群馬県民にとっては子供のころから当たり前のように食べている「ソウルフード」なので、県外者は群馬県民になった気持ちで食べてみるのも一興か。

 原嶋屋総本家の営業時間は午前10時30分から売り切れじまい。定休日は火曜日。駐車場あり。

 続いて「中央前橋駅」に移動し、登録有形文化財に指定されている上毛電気鉄道「デハ101」に貸し切り乗車。デハ101は1928(昭和3)年に製造され、動く電車としては現在日本で一番古い電車といわれている。営業当時の昭和初期を思わせるそのレトロ感あふれる角ばったデザイン、モーターが吊り掛け式と呼ばれている古典式で「ウーウー」と唸るような独特の低駆動音が車両に直に伝わり、鉄道愛好家だけでなく一般マニアからも人気が高い。

 デハ101車内では、あかぎ駅までの移動中に昼食タイム。創業1890(明治23)年の味噌漬けの老舗「たむらや」の「和豚もちぶた弁当」をいただく。餅のように柔らかい豚肉をオリジナル味噌に漬け込んだ人気の弁当だ。価格820円(税込)。

上毛電気鉄道「デハ101」車内

 午後からは1877(明治10)年創業「栁澤酒造」を見学。代表銘柄は「桂川 上州一」で全国的にも珍しい「もち米四段仕込み」で造られる贅沢な甘口の本醸造だ。こちらでは酒蔵見学と4種類の酒を試飲。5代目の栁澤清嗣さんは「赤城南麓では夏は農作業、冬は養蚕と1年中、肉体労働が多い土地なので、仕事後は夕食の前に毎晩必ず酒を飲みます。甘口の酒は酒自体に味わいがあり、つまみがなくても飲めるので、疲れた体に活力を与えてくれる甘口の酒が好まれたのだと思います」と語る。しかし、「近年は甘口の酒は絶滅危惧酒(種)です」と笑いを誘う。純米酒以上の酒も造っているが、伝統のもち米を使った本醸造を大切にしつつ、少量の仕込みで高品質を維持しているという。

「栁澤酒造」で酒蔵見学

 続いて、2013年にオープンしたチーズ工房「スリーブラウン」を訪問。「牛を飼ってチーズを作りたい」という夢を持ち続けた松島俊樹・薫ご夫妻が、11年に赤城南麓で牧場をつくり、酪農を開始。ブラウンスイス種の3頭の牛から飼育を始めて、現在は5頭の世話をしながらチーズ作りをしている。店舗では「モッツアレラ」「カチョカバロ」など、ミルクの優しい味わいをしっかり感じることのできる手作りチーズを販売している。

チーズ工房「スリーブラウン」

 前橋に来たらぜひ立ち寄りたいのが、国の重要文化財にも指定されている「臨江閣」。本館と別館、離れの茶室が渡り廊下で結ばれている。本館は1884(明治17)年、当時の群馬県令である楫取素彦(かとりもとひこ)や市内の有志らの協力と募金により迎賓館として建築された。1910(明治43)年に建てられた別館は、壮麗な外観が目を引く。大広間は詩人の萩原朔太郎の結婚式にも使われたという。

 別館1階の「かふぇあんきな」では、明治時代当時の味を再現した「維新珈琲セット」がおすすめ。季節の和菓子付きで900円。深入りローストコーヒー豆を細かく挽き、和三盆を三温糖に置き換えてシナモンを煮出したコーヒーだ。飲んだ後は萩焼の茶碗をそのまま持ち帰ることができ、珈琲以外に緑茶セットも用意されている。

 臨江閣の見学時間は午前9時―午後5時(入場は閉館時間の30分前まで)、定休日は月曜・祝日の翌日、12月28日―1月4日。入館料無料。

 モニターツアーの最後は、昼食で弁当を食べた味噌漬け専門店「たむらや」前橋南部店に立ち寄り。1階売店では群馬土産に最適な味噌漬けを販売。たむらやオリジナル味噌「さざれ石」を使用した「焼きまんじゅう」や「みそソフトクリーム」の軽食コーナーもある。2階レストランでは最大120人まで受け入れが可能。群馬ならではの「ソースかつ丼」「和豚もちぶた丼」「舞茸天ぷら」などが食べられる。近隣には物販のみの千代田本店、若宮店、高崎飯塚店もある。

たむらやの「和豚もちぶた弁当」

* * *

 前橋観光コンベンション協会は、健康食品として注目される発酵食品を切り口に、2020年春の大型観光キャンペーン「群馬デスティネーションキャンペーン」に向け、新たな誘客戦略を打ち出そうと初めて企画した。19年2月には一般市民を対象としたモニターツアーを、実際の有料ツアーは19年5月下旬―6月の間に(募集開始は年度末より)実施する予定だ。

 問い合わせ=前橋観光コンベンション協会 電話:027(235)2211。

「トラベルスクエア」あえてネガティブな予測を

2019年1月2日(水) 配信 

2019年の観光業界をあえてネガティブに予測する

 一般に未来予測というのは悲観的なことを言う方がコメンテーターとしては安全といわれる。

 というのも、「これから先好況が来ますよ」と楽観論を唱えて、それが当たらないと、「予想と違うじゃないか」と叱られてしまい、時によって恨まれてしまうことがあるからだ。これに対し、「うーん、先行き難しそうです」としかめっ面して言うと、人気はあまり出ないが、外れて景気が良くなると、予想を外していると批判されても、景気が良ければ結果、皆ハッピーになれるから、それほど叱られないですむ、という面がある。

 楽観論のハードネス、悲観論のイージネスというものだ。という前提で2019年を占うとなると、悲観論的な立場をとりたくなってしまう。イージーだろうと誹られても。

 表面的にはラグビーのワールドカップもあるし、20年を目前にして活気が生まれるかもしれない。大阪万国博、IRの話題もある。人手不足も18年度内に急ぎ決着をみた入管法改正で、外人労働者枠増大でやや緩和されるかもしれない。

 トピック的には結構、いいカードが手札に来ている感じがするのだが、やはり疑い深いジャーナリストの端くれ、ネガティブな面を見てしまう。

 まずはインバウンド景気。この正体は単純に巨大人口を抱える中国の景気がまだまだ健在だから、ということに尽きる。国力を伸ばしている国の隣国が観光で潤うのは、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ、グランツァー時代のころから不変の法則だろう。

 だから僕がいちばん懸念しているのは中国経済の減速。トランプさんが仕掛けている米中経済戦争の行方次第で、どうなるか? 他にも英国のEU脱退に伴う欧州の深刻な経済不安などもある。

 それからロボット化、AI化。メーカー方面の自動化はこれから2、3年の短いスパンで急速に進み、第2次産業から人手が余る。

 それも不況要員になるが、サービス産業は今の人手不足を外国人で補っていると、そこから出てくる優秀な人材獲得に後れを取ってしまう。それに20年を超えればホテル旅館は一気にオーバーストア化し、リストラ必至になるだろう。人手不足の今だからこそ、少数精鋭型オペレーションを確立しておきたい。

 そして今年秋の消費税10%化。相当なダメージになるだろう。駆け込み需要はあるかもしれないが、外食や旅行は買いだめできないからその恩恵は受けにくい。そして増税後、不要不急とされるレジャー支出の削減現象は結構、長引くと思っている方が正解だと思う。

 どれも当たってほしくない予想だが、僕自身は20年以降のサバイバルのために、最も大事な準備な年と位置づけている。

 

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

〈旬刊旅行新聞1月1日号コラム〉2019年の観光業界 海外旅行も順調に増加 健全な発展へ

 2019年1月1日(火) 配信 

2019年の観光業界 健全な発展を祈る

2019年は大きな出来事が控えている。

 年明けの1月7日から、国際観光旅客税(出国税)の徴収が始まる。出国するたびに1千円が徴収される。旅行動向への影響はほとんどなさそうだが、税収がどのように使われるのか、厳しい目が注がれるだろう。

 5月1日には新元号となる。これに合わせて、4月27日から5月6日までゴールデンウイークが10連休となり、祝賀ムードのなか、観光業界にとっては、大きな追い風となりそうだ。

 6月28、29日には大阪でG20首脳会議が開かれ、世界中の目が日本に集まる。

 9月20日から11月2日まで、ラグビーワールドカップが開催される。開催地は、札幌市、釜石市、熊谷市、調布市、横浜市、袋井市、豊田市、東大阪市、神戸市、福岡市、熊本市、大分市の12都市。参加国をはじめ、世界各国のラグビーファンが日本の地方都市を訪れる機会が増えそうだ。

 一方、10月1日から消費税が10%に引き上げられる。旅行意欲や消費の低下が予想される。

 プラスとマイナスの両面が見込まれる19年。JTBはこのほど、旅行動向の見通しを発表した。

 これによると、19年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の3550万人と予想。18年は12月18日に史上初の3千万人を突破したが、20年の4千万人に向け、大幅な伸びを見込む。

 国内旅行人数は良好な景況感と、祝日数の増加などが影響し、前年比1・5%増の2億9090万人と堅調に推移するもよう。

 海外旅行人数は同1・1%増の1910万人と過去最高に達する見通しだ。12年に1849万人を記録したあと、13年は同5・5%減の1747万人、14年は同3・3%減の1690万人、15年は同4・0%減の1621万人と低迷が続いた。

 しかし、16年は同5・6%増の1712万人、17年には同4・5%増の1789万人と増加。18年には過去最高となる1900万人に迫る勢いだ。近年、訪日外国人旅行者数の増加ばかりが話題になっていたが、旅行業界の健全な発展には、海外旅行者数も順調に増加していくことが望ましい。

 JTBは19年の海旅について、「GWが10連休となることで、すでに販売が始まっている旅行各社の海外旅行の予約時期が従来よりも早まる傾向がみられる」とし、「欧州などの遠距離方面を中心に前年同期比で2―5倍の予約者数となっている会社もある」としている。

 18年12月8日に出入国管理及び難民認定法が改正され、19年4月から施行される。人手不足で悩む宿泊業界に外国人労働者の受け入れが本格化する。

 日本文化を守りながら、国際化する観光産業の最前線として、優秀な外国人労働者を迎え入れる。日本人労働者と力を合わせ、良好な労働環境を作り上げていくことが大きな課題となる。 

 宿泊業界は生産性向上への取り組みの加速も必要だ。バックヤードの省力化や、省エネへの取り組みは業界全体で共有化しなければ、さらなる発展が見込めない。本紙もさまざまな先進事例を紹介していきたい。

 18年は自然災害が多発したが、19年は防災、減災への意識を高めながら、観光業界全体が明るい年になることを祈っている。

(編集長・増田 剛)

石井大臣、20年にインバウンド4千万人「視野に入った」 2019年新春インタビュー

2019年1月1日(火) 配信 

新春インタビューに応える石井啓一国土交通大臣

石井啓一国土交通大臣は2018年に新春インタビューを開き、19年の抱負を語った。18年12月18日に訪日外国人旅行者数は初めて3千万人を超えた。政府目標とする訪日外国人旅行者数の2020年4千万人達成が「視野に入った」と好調な訪日需要に期待感を示した。羽田空港と成田国際空港の首都圏空港の発着容量の増枠については、関係自治体や住民らとの協力が大事だとした。

 19年にはラグビーワールドカップ、20年は東京オリンピック・パラリンピックなどが控える。「世界の目が日本に向く。 我が国の魅力を海外に発信する絶好のチャンスだ。これら機会も活用し、『明日の日本を支えるビジョン』に基づいて、新たな訪日需要を掘り起こす。今後は幅広い国・地域からの旅行者を確実に増やし、地方への誘客を促進していく」と強調した。

 1月7日からは国際観光旅客税(出国税)が始まる。19年度は税収が満年度化し、歳入は500億円となる。出国税も活用しながら「政府一丸、官民一体となって目標達成に取り組んでいきたい」と述べた。

 羽田・成田の両空港については、それぞれ20年に年間約4万回、計8万回の増枠へ取り組みを進めている。実現に向け、関係自治体や住民に対する丁寧な情報提供を引き続き進めていく。「できる限り多くの理解を得ることが大事。機能強化へ尽力していく」と話した。

【全国女将サミット 30回記念大会は東京で】 7月1日、京王プラザホテルで開催

2019年1月1日(火) 配信

2019年 年謹賀新年 旅行新聞新社 社員一同

 今年30回の節目を迎える全国旅館おかみの集い(第30回 全国女将サミット2019東京)は7月1日、京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催する。記念大会を企画・運営する全国旅館おかみの集い実行委員会の委員長には、小田真弓女将(石川県和倉温泉・加賀屋)が就任した。

 昨年12月に実行委員会を開き、会場と開催日を決めた。全国女将サミットは各地の女将たちが交流できる場を「自らの手で」作りたいという思いがカタチとなり、1990年3月に第1回大会を京都ホテル(京都市)で開いた。以後、「女将のための 女将による 女将の会議」という趣旨を軸にしながらも、時勢を反映して交流の場から勉強の場へ、さらに地域開催を通じて、日本の文化や伝統を学ぶ場として、参加者同士交流を深めてきた。これまで延べ4千人以上の女将たちが参加している。

 30回を迎える今年は記念大会と位置づけ、過去に参加いただいた女将の皆様はもちろん、初めて参加するという女将にも「楽しみの中に学びがある場」(小田女将)になるようプログラムを企画する。

 全国の女将の皆様、今夏はぜひ、京王プラザホテルでお会いしましょう。

※詳細は本紙1740号または1月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

〈観光最前線〉霜月祭に行ってきた

2018年12月31日(月) 配信

霜月祭のようす

 南信州の遠山郷に伝わる霜月祭に行ってきた。以前から気になっていた祭りで今回ようやく取材が実現した。

 国重要無形文化財に指定されている遠山の霜月祭は、上村・南信濃の各神社で奉納される湯立神楽の古い形態を今も伝承している。

 スタジオジブリの映画「千と千尋の神隠し」のモチーフにもなった神々が湯治に訪れるというアイデアは、この霜月祭がモデルだといわれ、宮崎駿監督はテレビでこの祭りの存在を知り、強い影響を受けたのだという。

 社殿の中央に設えた釜の上には神座が飾られ、湯を煮えたぎらせて神々に捧げる。祭りの最大の見せ場では天狗などの面が登場、煮えたぎる釜の湯を素手で湯切りし、禊ぎの湯をふりかける。1年の邪悪を払い、新たな魂で新年を迎えるのだ。

【古沢 克昌】

「味のある街」「抹茶と和菓子セット」――安房あづち茶屋(千葉県館山市)

2018年12月30日(日)配信 

抹茶と和菓子セット550円(税込)▽千葉県館山市大神宮589番地 安房神社内▽電話:080(9550)0311。

千葉県館山市の安房神社は安房国一之宮であり、平安時代の「延喜式」に記載されている式内社、旧官幣大社でもある格式高い神社だ。

 日本の産業の総祖神として崇敬されており、ものつくり、企業隆昌、事業繁栄、商売繁盛、技術向上、学業向上などにご利益があるという。また相殿神として祭られている忌部五部神は、それぞれ美術、紡績業、建設業などの神だ。さまざまな神の祭られているこの神社は、パワースポットとしても近年注目されている。

 本殿は1881(明治14)年築、建築様式は伊勢神宮などと同じ神明造で檜皮葺き。境内には池もあって広々としており、訪れるたびに清々しい気分になる。桜の名所としても有名だ。春には鳥居から続く広い参道の両脇に続く桜並木や、池の周りの桜が見事に咲き誇るようすを見に多くの人が訪れる。

 この境内の一画にあるのが、2013年に開店した安房あづち茶屋だ。建物はまだ新しく、木を基調とした明るい店内には、年配の方から若者まで入りやすい雰囲気がある。店の前には緋毛氈の敷かれたベンチがあり、シーズンには桜を眺めながらいただける。

 「抹茶と和菓子セット」は、和菓子が春には菜の花やこいのぼり、秋には紅葉などと変わり、季節を感じられると人気だ。ほかに、1日10個限定の自家製プリンも手作りの温かみが感じられると評判が高い。甘酒、抹茶ぜんざいなどもある。お腹の空いた人にはおにぎりセットもあり、これは地元の米を使用している。

 店は宮司の夫人を中心に運営されており、いつ訪れても温かく落ち着いた接客で迎えてくれる。参拝の後に少し休もうとして入ってきた人が、これほど質の高いメニューに出会い、温かくもてなされれば、帰りには深い満足を覚えるだろう。

 営業日は金、土、日曜と祝日の月曜。限られた日数でも、ずっとここにあってほしいと切に願う。あわせて神社の隣にある「館山野鳥の森」で自然に触れ、展望台からの眺めを楽しむのもおすすめだ。

(トラベルキャスター)

 

コラムニスト紹介

トラベルキャスター 津田令子氏

社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

仏像の顔をAI分析 学生が研究成果発表(奈良大学)

2018年12月29日(土) 配信

仏像の顔を読み取る実演を行う学生たち

 人間の感情測定に用いられるAI(人工知能)テクノロジーで、仏像の顔を読み取るとどうなるか―。奈良大学の学生グループによるプロジェクト「Buddience~仏像の顔貌を科学する~」の発表会が12月4日、大阪市内で開かれた。

 プロジェクトは、米マイクロソフト社が開発した感情測定テクノロジー「エモーションAPI」を使い、興福寺(奈良市)の国宝「阿修羅像」など、216体の仏像の顔の画像データを測定。「怒り・軽蔑・嫌悪感・恐怖・喜び・中立・悲しみ・驚き」の8つの指標を数値化した。

 その結果、阿修羅像は「中立」の数値が低く、人間の表情により近いことが判明。さらに正面より横から見たほうが「悲しみ」や「喜び」の数値が高くなることが示された。調査した学生は「人間の表情に近く、慈愛に満ちた顔が、多くの人々を魅了する要因ではないか」と分析する。

 一方で、102体の仏像が測定不能となったが、これは画像が不鮮明であったり、色彩が落ちて面貌が損なわれていたことなどが原因とみられる。また、同一の仏像でも、撮影角度や照明の違いによって数値が変化することも確認された。

興福寺の阿修羅像は横から見た方が喜びや悲しみの数値が高い©飛鳥園

 プロジェクトを指導した同大文学部文化財学科の関根俊一教授は「すべての仏像を同条件で撮影しないと比較できないため、必ずしも説得力のあるものにはならないが、美術史研究に一石を投じる技術」と評価。参加した学生も「これまで感覚で捉えていたものが数値化できた意義は大きい」と感想を述べた。

 今後について、関根教授は「さらに精度が高まれば、仏像が造られた時代によって、数値に特定の傾向が表れるのかといったことも明らかにできる可能性はある。一般的には、魅力的な写真を撮る際に応用していけるのでは」と期待を寄せた。

 同大では、同プロジェクトの研究成果をまとめた特設ウェブページを公開。サイト内では、自分の顔を数値化し、どの仏像とマッチするかを診断する「仏顔診断」を楽しむこともできる。

「街のデッサン(213)」世界で最も美しい小さな正教会 オフリド湖の湖岸での聖なる体験

2018年12月28日(金) 配信

世界で最も美しい聖ヨハネ・カネオ教会

 一晩の夢をベッドに残して、ホテルの湖畔に広がっている前庭を降りていくと、9月にしては肌に冷たく風が感じられる。糸杉の樹々の間を抜けると、湖面が開けた。

 透き通った絹の襞のような波が湖岸に寄せてきて、そこに突き出るような小さな桟橋を洗っている。今、ヨーロッパの有閑階級で話題になっているというオフリド湖。桟橋の先端に出ると、360度の景観が展開し、話題となる価値を知ることができた。

 バルカン半島の多くの海岸線に面する村々や、近接した島々は目ざといリゾート開発業者らに買い占められ、プロテニスのジョコヴィッチが結婚式を挙げたというモンテネグロのブドヴァにあるステファン島などはシンガポールのアマングループに村の家々毎買収されて、それらの住宅をつないだホテルになっているという。島のコミュニティ全体をホテルとリゾート施設にしてしまったという構想力をどう評価するのか、難しいところではあるが荒業には違いない。

 それらに比べれば、マケドニアとアルバニアに面して面積348平方㍍の内陸のオフリド湖は、まだ荒業氏の手中には嵌っていないのかもしれない。すなわち今の段階で、湖畔に別荘を持つという選択はセンスの良い評価といえるのであろう。
 以前から噂を聞いていた教会が、オフリド旧市街につながる岬の先に存在しているという案内はこのツアーの目玉の一つであったが、宿泊するホテルの桟橋から出発する船で湖面から観光できるという手配になっていて、私の参加理由の鍵だった。

 迎えに来た数十人乗りの遊覧船は、桟橋を離れるとすぐにマケドニアの民謡だという歌を流し始めた。物悲しい女性の唄う歌は、冷たい風とバルカン半島の国々の苦難の歴史を語っているという歌詞とが奇妙に混ざり合って、船に揺れる私たち旅行者の旅情をも揺するように迫ってくる。

 20分ほど乗っていると、岬の先の丘陵に向けて幾つかの教会建築が壇状に見えてきた。その湖面の一番近くに建っているのが聖ヨハネ・カネオ教会である。建物は13世紀に建立されたとされ、マケドニアの正教会様式とビザンチン様式が混交されたラテン十字の平面と美しいドームによって構成されている。

 船を降りて徒歩で教会に向かうと、その日は聖ヨハネの丁度生誕祭で司祭が聖水を集った信者に振りかけていたが、その聖水は私の心にも届いて、世界で最も美しき教会を、洗われた心を見開いて眺めていたものだ。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

年末年始の営業日のご案内

2018年12月27日(木) 配信

拝啓 師走の候、貴社益々のご盛栄のこととお喜び申し上げます。

本年は格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。

早速ではございますが、2018年12月28日から2019年1月6日までお休みとさせていただきます。よろしくご了承のほどをお願い致します。

お問い合わせ購読のお申込みにつきましては、1月7日以降順次対応させていただきます。

本年中のご愛顧に心より御礼申し上げますとともに、来年も変わらぬお引立てのほど、宜しくお願い申し上げます。

敬具

 

平成30年12月27日

株式会社 旅行新聞新社

代表取締役 石井 貞徳