2025年12月1日(月) 配信

2025年の観光業界を振り返ってみると、大きなイベントとしては、4月13日~10月13日まで184日間開催された「大阪・関西万博」が挙げられる。沖縄県の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」も7月25日の開園前から話題をさらった。しかし、残念ながら私は万博にもジャングリア沖縄にも訪れていない。その大きな要因の一つに、酷暑があった。
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夏の旅行には「緯度+標高」の高い地が最適であるが、今夏はそれだけでは十分条件足りえず、時期も秋に近づけて、北海道の大雪山周辺で休暇を過ごした。宿泊した層雲閣グランドホテルはオールインクルーシブ制を採用しており、ラウンジにはワインや生ビール、チーズなどの軽食も備えてあった。9月なのに薪ストーブにあたりながらワインに酔い、静かに滞在するという、理想的な晩夏から初秋の時期を過ごした。
高原リゾートホテルや山岳リゾート、山の秘湯宿などへの注目度はさらに高まるだろう。長期滞在を想定したラウンジやロビー、温泉などの空間や、多彩な体験プログラムを備えることにより、避暑地を目指す多くの観光客で賑わうはずだ。
クマによる被害が続出し、悩まされた年でもあった。政府は11月14日に「クマ被害対策パッケージ」を発表。観光庁の村田茂樹長官は「観光客の安全確保に向けた地域の取り組みを支援していく」方針を示した。安心して宿泊し、露天風呂を楽しめる環境整備へ、防護柵の設置などの対策も急がれる。
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そして、ここにきて中国の訪日自粛要請である。「またもや」という感想である。人的交流すら、繰り返し政治利用される“チャイナリスク”に対しても、泰然自若としていたい。
コロナ禍もそうだったが、困ったときに頼りになるのは、やはり日本人旅行者である。改めて国内旅行市場における内需強化の重要性が浮かび上がってくる。
人口減少時代にある日本は、地方活性化までも外国人旅行者の力を借りるような、経済的利点に重きを置いた観光政策が目立っている。しかしながら、大都市部ではオーバーツーリズムの問題が年々深刻化し、地方への誘客は2次交通の難しさもあり、簡単にはいかない。
日本を訪れる訪日外国人旅行者数は、今年は約4500万人規模に到達する勢いだ。一方、日本人の海外旅行者数は1500万人ほどで、3分の1に過ぎず、外交で重要な双方向交流は均衡していない。
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現在、国際観光旅客税(出国税)が現行の1000円から3000円への値上げも検討されている。円安に加えて、日本人の海外旅行にも3倍増の税負担を強いることになる。「パスポート」取得費用の大幅引き下げなども議論されているようだが、例えば「日本国籍20代以下は免税」などの特例措置も検討すべきだ。
最近は経済的な理由などにより、修学旅行の参加も難しくなっている。であるならば、とくにこれからの日本を担う若い世代が旅によって自国の深い文化を学び、広く海外を知り、国際感覚を磨く機会を積極的に後押ししていくことも、大きな観光政策の柱ではないか。工業力や農業力、科学技術力、一人ひとりの文化力に磨きをかけ、魅力的な国として存在し続けるならば、自然と日本を訪れる。これこそが真の観光立国の姿だと思う。
(編集長・増田 剛)



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