宿泊産業研究会が始動、海外への情報発信を議論(観光庁)

 観光庁は本紙の取材に対し、今秋に宿泊産業研究会を立ち上げ、4月の観光産業政策検討会提言で出された諸課題のうち、宿泊施設の外国人観光客への情報発信のあり方などについて議論していることを明かした。

 宿泊産業研究会は、現在観光庁が力を入れている旅行産業研究会の宿泊産業版といえるもので、10月中旬に第1回を開催。基本的に報道機関などに公開はせず、外部の関係有識者10人ほどを集め、政策検討会提言で出された諸課題のうち、初回は主に宿泊施設の外国人観光客への情報発信のあり方について議論した。観光産業課によると、「旅館とホテルでは、海外での認知度も違い、的確な情報発信方法も異なる」ので、今後は旅館とホテルとを別々で議論していくという。

 次回開催は未定。年度内にあと数回は開く予定だ。

大商談会で世界へPR、ツーリズムEXPOと同時開催に(トラベルマート2014)

 「VISIT JAPAN トラベルマート2014」が来年9月、日本観光振興協会の「旅フェア日本」と日本旅行業協会(JATA)の「JATA旅博」を統合した「ツーリズムEXPOジャパン」と、同時開催することが決まった。

 日本最大の商談会として世界に強くアピールすることが狙いで、トラベルマートの主体は現行の日本政府観光局(JNTO)のままという。詳細についてはこれから詰めていくことになるが、久保成人観光庁長官は、11月20日の会見で「ツーリズムEXPOジャパンとの同時開催という大きな冠で世界にアピールしていきたい」と力を込めた。

 同時開催については、JATAの菊間潤吾会長が「旅フェア日本」と「JATA旅博」の統合を発表した11月8日の会見で、「トラベルマートも一緒に開催するのが望ましい。(JNTOの)決断を待っている」とラブコールを送っていた。

31・5%増で過去最高、韓国は20カ月ぶりの減少(10月訪日外客数)

日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した10月の訪日外客数推計値は、前年同月比31・5%増の92万8500人。10月の過去最高だった2007年を14万3千人上回った。1―10月の累計では前年同期比23・4%増の865万9600人。目標の1千万人は、前年比20%増を維持できれば達成するが、韓国が12年2月以来のマイナスとなるなど予断を許さない状況は続く。

市場別では中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナム、フランスが10月として過去最高を記録。タイ、マレーシアは通年の単月ベースでも過去最高を更新した。また、台湾、香港、タイ、ベトナムに続き、1―10月までの累計で、韓国、インドネシア、フィリピン、フランス、ロシアがすでに12年の年間累計を上回った。

市場ごとに詳細をみると、訪日外客数全体の4分の1を占める最大市場の韓国は同5・9%減の15万8300人と、12年2月以来20カ月ぶりのマイナスとなった。放射能汚染水問題の報道が影響し、11月以降も厳しい見通しだ。

10月として過去最高を更新した中国は同74・1%増の12万1400人。10月上旬の国慶節休暇に加え、日本への忌避感が薄れたことで、堅調な個人旅行に加え、団体旅行の回復基調が継続した。

台湾は同58・0%増の21万3500人と、10月の過去最高を更新し、9カ月連続で毎月の過去最高を更新中だ。円高是正を背景に、買い物目的の訪日旅行需要が拡大。また、仙台や山形へのチャーター便が運航し、地方への旅行需要も高く、今後も新規就航が予定される。

同じく10月の過去最高を更新し、9カ月連続で毎月の過去最高を更新中の香港は、同84・5%増の6万2400人となった。そのほか、東南アジア諸国は、査証緩和効果で引き続き高い伸びを示した。

なお、出国日本人数は同1・3%増の149万人で、9カ月ぶりに前年同月を上回った。

直販含め宿サポート、消費者へは旅館発信ハブに

篠塚 孝哉氏

WITグランプリの宿泊サイト「relux」

満足度の高い宿泊施設を厳選した会員制の宿泊予約サイト「relux」の運営などを中心に、ホテル・旅館向けのWebマーケティングサービスなどを展開するロコパートナーズ。今年のオンライン旅行業界の国際会議「web in travel(WIT)JAPAN2013」では、「relux」がグランプリを受賞し、10月のWITシンガポールで代表取締役の篠塚孝哉氏がサイトを紹介した。篠塚氏に起業の経緯やサイトの展望などを聞いた。
【飯塚 小牧】

≪ロコパートナーズ代表取締役 篠塚 孝哉氏に聞く≫

 ――会社の経緯や事業内容を教えて下さい。

2007年に新卒でリクルートに入社し、旅行事業の「じゃらん」に在籍して以来、旅行業界に身を置いてきた。しかし、11年に発生した東日本大震災を機に、自分自身に対し「チャレンジしていない」と感じ、一念発起して、同年9月に単独でロコパートナーズを起業した。当初は、ホテルや旅館のコンサルティングやマーケティングを展開していたが、半年前に宿泊予約サイト「relux」をオープンし、現在はこちらを中心に事業を行っている。

地域には、本当に良い旅館やホテルが多いが、日本には紹介するサイトがないことから、それらをまとめて紹介するものを作ればとても良いサイトができると思い、「relux」のサービスを開始した。現在、旅館を中心に全国の約80施設と提携している。

――宿泊予約サイトは他社もさまざま展開していますが、「relux」の特徴は。

高級な宿をまとめているサイトはあるが、満足度は十分加味されていないと思う。海外では同様のビジネスモデルはあるが、日本で競合するものはないと考えている。

施設にとっては結果、予約が増えるというメリットが一番大きいが、サイトに載ること自体がブランドになり、名前の浸透に役立つと価値を感じていただいている。今、「relux」では1泊2食付きの渾身の1プランしか紹介しない仕組みにしている。とはいえ、ほかのプランを見たいという方が多いので、施設のホームページリンクを貼っているが、こちらは副次効果を生んでいる。他のサイトでは、リンクも電話番号さえ載っていないことが多いが、我われは直販を含めて総合的にサポートしていきたいと考えている。その分、手数料は15%と他社と比べて高いが、ご理解いただいている。

サイトへ掲載するうえでの審査は厳しく、審査項目は100項目以上ある。一定以上の基準がないと参画できないので、お断りすることも多い。審査にあたっては、我われや信頼の置けるパートナーが実際に体験したものをもとに行っている。

一方、一般消費者へのアプローチについては、SNSを利用しており、フェイスブックの運用がとても上手くいっている。フェイスブックで編集記事として毎日違う旅館を紹介し、ファンが約4万人(11月末現在)と国内高級サイトでは圧倒的な人気がある。会員には、有料広告なしのメールマガジンを配信し、好評を得ている。30―40代の利用者が多いが、意外と旅館を知らないので、旅館の認知度向上のハブになれればと思っている。

――今後の展開については。

提携施設は、来年度400―500施設まで増やし、2年後には1千施設を目指している。現状、旅館が中心だが今後はホテルの取り扱いを広げていく。また、今は宿泊料金が2人で最低5万円以上の高級で高満足な宿をご紹介しているが、将来的には料金に関わらず、満足度の高い宿としてペンションや民宿も扱っていきたい。

――インバウンドに関してはいかがですか。

このほど海外向けに英語と中国語のサイトをオープンした。先日、シンガポールのWITに参加したが、海外オンライントラベルエージェンシー(OTA)からもいい反応だった。今後は、現地のアウトバウンド会社と提携することも考えたい。

日本文化というのは本当に素晴らしい。こういう事業を通して世界に発信していきたいと、シンガポールで改めて強く思った。それは日本人にしかできないことだ。「relux」は国内の方には日本を“再発見”してもらうためのツールとして、海外の方にとっては“新発見”のツールとして使ってほしい。旅館ごとにプロモーションが上手い下手はあるが、そこは旅館の仕事ではなく、我われの仕事だと思っている。紹介の仕方で魅力は絶対に伝わるはずだ。とくに、インバウンドで成功している旅館はごく限られているので、そこをしっかりサポートしていきたい。

東南ア2国に数次ビザ、ラオスとカンボジア

 外務省は11月18日から、ラオスとカンボジアの両国に対し、短期滞在数字ビザの発給を開始した。

 今回の緩和は、安倍晋三首相が11月16―17日に両国を公式訪問し、相互ビザ緩和に合意したことに基づく。両国とも滞在日数は15日で、有効期間は最大3年間。両国内に居住する国民であることが条件となる。

 これによりASEANでビザの緩和がされていないのはミャンマーだけとなった。ミャンマーについて、久保成人観光庁長官は11月20日の会見で「年末の特別首脳会議までに緩和の結論を得られるよう働きかけていく」とした。

第39回「100選」決まる、新たに7施設入選、1月11日発表

11月26日に行われた100選選考審査委員会

表彰式は1月24日

旅行新聞新社・100選選考審査委員会は11月26日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第39回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞「日本の小宿」10施設を決定した=写真。

「第34回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第23回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2014年1月11日号紙面および、同1月11日に更新する旬刊「旅行新聞」ホームページで発表する。

今回の総合100選では、新たに7施設が入選。表彰式は来年1月24日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

「第39回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万6563の旅行会社(支店や営業所含む)を対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定した。主催は旅行新聞新社で、毎年実施している。今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 今回も旅行会社の皆様からのたくさんのご投票ありがとうございました。

久保長官「1千万人へ予断許さない」、韓国の減少分補えるかが鍵

 10月の訪日外客数が前同月比31・5%増の92万8500人、1―10月の累計が前年同期比23・4%増の865万9600人と好調を維持したが、観光庁の久保成人長官は11月20日の会見で、「目標の1千万人達成へ、依然として予断を許さない状況」と兜の緒を締めた。

 全体では好調を維持したが、4分の1を占める最大市場の韓国が20カ月ぶりにマイナスとなった。JNTOソウル事務所が韓国内の関係者から集めた情報によると、11、12月も厳しい状況が続き、前年同月比で減少となる見通し。久保長官は、「韓国の減少分を韓国以外でどう補えるかが、1千万人達成へのカギ」とした。

 また、11月12日に開かれた旅行産業研究会では、主に旅行業法についてより踏み込んだ議論をしたことを報告。素材の単品販売を旅行業法の適用から外す案や、旅行業法の対象にしたとしても、「より自由な値付けができるようにすべき」などの意見があがったという。次回は安全マネジメントや着地型旅行など別の論点について議論。年末までに各論点について整理していく。

 昨今取り沙汰されている食材やメニューの偽装問題については、「安全安心な食という日本ブランドの信頼性に影響しかねない重大な問題」と指摘し、同問題へ適正に取り組むよう宿泊施設の関係団体へ要請書を出し、検討してもらっていることを明かした。

固定資産見直し要望、経年数大幅短縮を決議(観議連総会)

細田観議連会長があいさつ

自由民主党の観光産業振興議員連盟(細田博之会長)は11月20日、自民党本部で総会を開き、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)、日本旅館協会(近兼孝休会長)、日本ホテル協会(小林哲也会長)、全日本シティホテル連盟(藤野公孝会長)の代表者らが固定資産評価の見直しについて、次の評価替えの年に当たる2015年に、固定資産評価の下限となる経年数を現行の50年から、実態調査に基づく36年に短縮するよう強く求めた。

各都道府県の代表が「必勝」鉢巻きで出席

細田会長は「まもなく税制改正に向けて税調が本格化してくる。12月13日ごろに最終結論を出す予定」と述べ、「現在、旅館・ホテル業界は耐震診断の義務化という厳しい状況に置かれている。固定資産税は重要な地方財源であるが、大切な観光産業を担う旅館・ホテルが潰れてしまう損失のことも真剣に考えた方がいい」とし、「固定資産評価の見直しだけで取り上げると、横並び論などが出てくるが、耐震問題などと連携した考え方で各地元の自治体にも理解を求める努力を、観議連とともにしていただきたい」と語った。

観光庁の石原大観光振興課長は「旅館・ホテルが置かれている立場は非常に厳しいものがあり、経年数が少しでも短縮できるよう今後も総務省との間で事務的な調整を最大限努力し進めていきたい」と述べた。

要望する佐藤全旅連会長

総会では、「固定資産評価の見直しを15年から実行すること」「経過年数の見直しに当たっては、固定資産評価額が下限に到達する年数を現行の50年よりも大幅に短縮すること」を決議した。この決議は観議連の幹部が預かり、タイミングを見ながら関係省庁に申し入れを行っていく予定だ。

そのほかにも、交際費の非課税、印紙税の廃止、さらには消費税の外税表記を2017年4月1日以降も認めることなどを求めた。

No.358 ゆのごう美春閣 - 「誰と訪れても」選ばれる宿へ

ゆのごう美春閣
「誰と訪れても」選ばれる宿へ

〈「21世紀の宿を考える」シリーズ(1)〉 ゆのごう美春閣

 今回から、旅館経営者へのインタビューシリーズ「21世紀の宿を考える」をスタートする。シリーズ第1弾には、岡山県・湯郷温泉「ゆのごう美春閣」や、鷲羽山下電ホテルなどを経営する永山久徳氏が登場。ゆのごう美春閣は客室数85室、最大400人収容と、中規模旅館。旅館経営としては、難しい規模にある。永山氏は「中規模旅館は極端な方向性では上手くいかない。百貨店のようにお客様を絞らず、“誰と一緒に訪れても”選ばれる宿にしたい」と語る。

【増田 剛】

「百貨店」のような存在に

≪個人型、団体型の宣言はしない、相手を気遣う時間こそ旅館文化≫

 当時流行していた人間工学に興味を持ち、人の動きを解析するため、大学院では都市計画を専攻し、科学的なまちづくりのプランニングを学びました。大学を卒業した1991年は、好景気のピークだったため、就職先はたくさんあったのですが、大学院を出た93年はバブル経済がはじけた直後で環境が一変していました。就活して入社した大手不動産会社では、リゾート開発部門に配属され、バブル期の開発の後始末に直面することになりました。新入社員でありながら、ゴルフ場で売れ残っている数千万円の会員権を販売する対策として、「適正な価格はどのくらいか」を考え会員制度を改正したり、上場企業の役員などを相手にセールスして回ったりと、今から考えると本当に貴重な社会勉強をさせてもらいました。丸4年間働いたのですが、その間に、営業や商品開発、経理部門も経験し、自分の中ではある程度の達成感をもち、28歳の年に岡山に戻りました。

 

※ 詳細は本紙1527号または12月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

四国の観光戦略展望、四国官民会議

PR策や外国人観光客の増加策など議論

官民のトップら25人が参加

四国の観光戦略を考える官民会議が11月6日、香川県・こんぴら温泉郷の「湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭」で行われ、観光素材のPR策や外国人観光客の増加策などについて話し合われた。

会議は、全国各地の観光素材を発掘し、国内観光の活性化を目指す日本旅館協会の近兼孝休会長(紅梅亭会長)が音頭を取り、国土交通省四国運輸局が主催した。観光庁の久保成人長官など国内主要観光組織のトップら25人が参加した。

冒頭、あいさつに立った久保長官は「観光産業は国の成長戦略の柱に位置付けられている。外国人観光客1千万人達成に向け、日本の伝統や文化を発信していきたい」と述べ、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは東京をゲートウェイに日本各地を回ってもらう取り組みを進める」と強調した。

会議では、四国運輸局の丸山研一局長が、四国の宿泊者数が昨今年間900万人泊で推移し、全国比率がわずか2・5%と指摘したうえで、「北関東3県は四国とほぼ同じ面積だが、宿泊者数は倍の1800万人。四国の観光素材は豊富だが磨き切れていないのが現状。とくに文化的資産をどう活用していくかが課題だ」と話した。

日本旅館協会の近兼会長は、「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録される見通しに関連して、旅館の和食文化を広げるアドバイス役として道場六三郎さんと大田忠道さんを顧問に委嘱し、指南役6人を任命したことを報告した。

四国が持つ観光資源の魅力について、観光庁・観光戦略課の清水一郎課長は「私はエーゲ海に行ったことがあるが、瀬戸内海の方が素晴らしい。瀬戸内ブランドを強く発信していきたい」と強調し、日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長は「四国の魅力を絞り込み、PRすることも必要。外国人観光客はWi―Fiへのニーズが高く、環境整備が求められる」と話した。

日本旅館協会の桑野和泉女性経営者委員会委員長(由布院・玉の湯社長)は「九州では、ななつ星の運行が始まり3泊4日の旅が始まった。1泊ではなく3泊できる魅力づくりが必要。お接待文化が根付く四国はお客様を迎えるおもてなしの心がある」と話した。

会議後、日本旅館協会の近兼会長は「日本旅館協会が先頭に立って、今回の会議を皮切りに官民会議を全国各地で開催していきたい」と抱負を述べた。

 官民会議の主な参加者は次の各氏。

【観光庁】久保成人長官▽清水一郎観光戦略課長▽石原大観光産業課長【文化庁】大和智文化財鑑査官▽榎本剛記念物課長【JNTO】松山良一理事長【日本観光振興協会】見並陽一理事長【日本旅館協会】近兼孝休会長【日本航空】上川裕秀取締役専務執行役員【四国ツーリズム創造機構】平尾政彦事業推進本部長【日本旅行業協会中四国支部】青木尚二支部長【四国運輸局】丸山研一局長