近過ぎては見えなくなる ― 外側から目を光らす姿勢を

 白洲次郎氏と正子氏が暮らした東京・鶴川の旧白洲邸「武相荘」を訪れた。天気の良い冬の朝だったが、寒さはそれほど厳しいものではなく、首筋にかかる冷たい風が清々しく感じた。竹林に囲まれた小高い敷地は、今は住宅街の一角となっているが、静謐さは保たれていた。

 茅葺屋根の武相荘は、白洲次郎氏が40歳のときに、1942年当時鶴川村だった農村に正子氏とともに越して来たものだ。正子氏の書斎や日常使われていた高価な食器、アイデア溢れる何気ない装飾品などをゆっくりと見て回った。農家の古民家を自分たちの暮らしやすいように少しずつ作り上げていった夫妻の美意識の結晶は、学ぶものがとても多く、生きるうえでの本当の豊かさについても考えさせられた。

 白洲次郎氏が戦時の疎開先として、東京都心から少し離れた農村を選んだ理由は、英国留学中に憧れた、英国貴族のスタイルである「中央にいるよりも、外側にいて政治に目を光らせる“カントリー・ジェントルマン”」を志したからだといわれている。

 近すぎては見えないものが、少し離れるとよく見えるということは実際によくあることだ。 とくにマスコミの世界では、権力の中枢や、話題の事件の渦中にどっぷりと浸かっているために、全体像が見えなくなっている報道の仕方に出会うことがある。また、時の権力者とべったりの新聞人や、言論人、あるいはジャーナリストを名乗る人がいるが、これも「近すぎる関係」の弊害だ。とりわけ権力者とは一定の距離以上近づかない姿勢が大事なのだと思っている。私の知る多くの記者やジャーナリストは男女問わず “紳士的”であり、とても尊敬している。だが、中には取材相手に妙に馴れ馴れしい態度ですり寄ったり、身の程を弁えずに大きな態度を取ったりする人もいる。

 山で小さな宿を経営しながら、鳥瞰的な見識を持った方々に出会う機会が少なからずある。これは仕事上の幸運なことの一つだ。東京という政治、経済、権力の中心から離れ、平地よりも少し高い山から冷静に世の中を見ている人たちの語る言葉は、とても強い力を持っている。生半な身の私なんぞには胸に突き刺さる言葉が多い。

 山での生活者が、都会生活者と大きく違うところは、「野生の動物や植物との共存関係」という環境の“最前線”に生きていることだ。木の葉一枚の変化さえ敏感に察知し、地球規模の変化として大局的に物事を考えることができる。都会にいれば、さまざまな情報が洪水のように入ってくるが、それは自分自身の目や耳、鼻、指先で実際に感じたものではない。

 1千年前の「源氏物語」の主人公たちは、都の権力の中枢にあり、雅で華やかな世界に生きながら「罪滅ぼしのため」や、現世の苦しみから離れ「遁世し静寂な余生を送りたい」という理由から、折あるごとに出家願望を口にし、また、お互いが“俗の世界”に引き留め合うところが愛らしい。今も昔も激しい権力闘争や恋愛沙汰に疲れ、「隠遁生活」に対する憧れの気持ちは変わらないのだろう。

 しかし、現在においては、現実の厳しい世界から逃避して、さまざまな煩わしさや不都合さから目を背け “隠遁”しているのは、むしろ都会生活者の方なのではないかという視点も必要だ。

(編集長・増田 剛)

1千万人達成祝賀会、日観振協、観光庁ら共催で

 日本観光振興協会と21の観光関係団体で構成される観光関係団体懇談会、観光庁、日本政府観光局は1月27日、東京都港区の東京プリンスホテルで新年交流会を開き、観光団体、企業、行政の幹部ら約450人が参加した。今年は訪日1千万人達成を祝い、達成祝賀会を併せて行った。

日観振協・山口範雄会長
日観振協・山口範雄会長

 主催者あいさつに立った日本観光振興協会の山口範雄会長は昨年を振り返り、「オリンピック開催決定など多くの出来事が次のステップへの大きな足掛かりとなった年」と評価し、「今後は訪日2千万人に向けた的確なマーケティングや、日本ブランドの確立が不可欠で連携が必要となる。その一環として観光立国推進協議会を設立し、さまざまな産業の方と観光立国実現に向けた意見交換をした。実現のためには地域・産業との連携が不可欠であり、さらに進めていきたい」と述べた。また、「観光業は内需や雇用機会拡大など地域経済活性化に重要な役割を果たす、即効性のある視野の広い産業であることを訴えていきたい」と意気込んだ。
 
 
 
太田国土交通大臣
太田国土交通大臣

 太田昭宏国土交通大臣は、「1千万人達成は時が流れて達成したのではなく、関係者の活動が総結集し、積み重なり達成した。2千万人の高みを目指すために、ビザの緩和や通信を含めた多言語対応など取り組まなければならないことは多いが、日本の観光ポテンシャルは極めて高い。2千万人のスタートとしてまた、力を結集して頑張っていきたい」と今後の連携に期待した。
 
 
 
 
 
 
 
菅官房長官
菅官房長官

 菅義偉官房長官も駆けつけ、「観光立国の実現は、成長戦略の中でも最も重大な課題」と位置付け、「ビザ緩和など規制緩和をしてきた。来年度には免税品の制度の拡充も行う。今後も訪日外国人の方にとっての厳しい規制や商売は政治の力ですべて解決していきたい」と強調した。
 
 
 
 
 
 
 

心遣いの押しつけ

 「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。

 昨年、関西圏のあるホテルに泊まった。部屋の戸を開け、靴を脱ごうと下を見るとスリッパの上に、直筆で一筆添えられたウェルカムカードが置いてあった。「このホテルでよかったなぁ」と心がほっこりしたまま、靴を履きかえた。部屋の奥に進みテーブルに荷物を置くと、机上にも同様のカード。さらに奥に進み、窓際の椅子に腰かけると、サイドテーブルの上にもカード。ちょっとびっくりして、部屋を見渡すとベッドの枕元にもあり、トイレに行けば、洗面台の上にもあった。

 消費者心理としては、ステキな心遣いも度がすぎると、優しさの押し売りのようで鬱陶しくなる。理想をいえば、心遣いはさりげなく、じわじわと。中国の思想家、孔子は「論語」のなかで中庸の大切さを説いていた。ステキな心遣いなのに、もったいなさすぎる。

【伊集院 悟】

食と観光が連携、木村さんと女将が大臣訪問

表敬訪問のようす
表敬訪問のようす

 農林水産省が事務局を担う国産農林水産物の消費拡大の取り組み「フード・アクション・ニッポン(FAN)」はこのほど、「食と観光との連携による地元食材魅力発信事業」の展開を開始した。同事業のイメージキャラクターに就任した女優・木村佳乃さんとモデル旅館の女将6人が1月27日、林芳正農林水産大臣を表敬訪問したほか、記者発表会を開き事業を説明した。

 表敬訪問では木村さんと女将が林大臣に地元の名産などをアピール。林大臣は、和食が無形文化遺産に登録されたことを受けて、「単に美味しいというのではなく、旬のものを料理することや五穀豊穣への感謝をあいさつに込め、家族みんなで食事をすることなど文化そのものが遺産」と述べた。木村さんは「なるべく家族みんなで食べるようにしています。子供がお米大好きで」と語った。

 FANは、国内外で観光・文化面などから日本の食への関心が高まっていることから、観光業界の企業・団体と連携し、地元の食材を活用した食の魅力や意義を消費者に伝え、消費拡大を目指す。事業概要は、宿泊・飲食・製造など観光事業者にパートナーとしての呼びかけを行い、ポスター・のぼりの設置をするほか、メディアを活用し、消費者へPRする。

 会見で登壇した木村さんは、「幼かったころにニューヨークに住んでいて、そのころから和食は人気があったが、今ではもっと人気になっている。そんな和食を皆様にPRできる大役ができることに感謝し、またしっかり和食の魅力を伝えていきたい」と力を込めた。

 続いて、同事業のモデル旅館のPRが行われた。モデル旅館は、宮城県「松島佐勘松庵」、静岡県修善寺温泉「あさば」、石川県山代温泉「瑠璃光」、京都府嵐山温泉「嵐山辨慶」、岡山県湯郷温泉「季譜の里」、長崎県雲仙温泉「東園」。各旅館は地元食材を積極的に活用しており、同事業のモデル旅館として選ばれた。PRでは、旅館のおもてなしやモデル旅館としての意気込み、地元食材を活用する意義などを語った。

企業・団体のトップ集結、オール日本で国民運動を(観光立国推進協議会)

団体・企業のトップ85人が集結
団体・企業のトップ85人が集結

 日本観光振興協会(山口範雄会長)はこのほど、観光立国実現に向けて、観光産業や観光関係団体だけでなくオールジャパン体制での国民運動の展開を推進する「観光立国推進協議会」を立ち上げた。1月27日に東京プリンスホテル(港区)で第1回の会合を開き、観光に関連する幅広い分野の団体や企業のトップ85人がテーブルを囲んだ。

 山口会長は「観光は、地域の雇用造成や経済成長への寄与など、裾野が広く経済効果は計り知れない。まさに『観光立国は地域に始まり地域に終わる』と言える。国民一人ひとりの理解と実践がなければ観光立国は実現しないので、この協議会で国民運動を展開し、観光を盛り上げていきたい」と設立の趣旨を語った。

 同協議会は、観光関係団体や運輸、宿泊施設、旅行といった観光関連企業に加え、全国知事会や全国市長会、全国町村会などの自治体関連団体や、日本経済団体連合会、日本商工会議所など幅広い分野の団体や企業のトップが一堂に会し、観光立国実現に向けた方針の策定や政策提言などを行っていく。また、シンポジウムやタウンミーティングを開催し、観光立国推進の諸施策を観光関係者や国民に広く周知し、観光地域づくりも促進していく。

 2月7日には福島県のホテル福島グリーンパレスで、「観光立国タウンミーティングin福島」を開催。パネルディスカッションでは「ふくしま 食の魅力とおもてなし」をテーマに議論する。

 観光立国推進協議会の委員96人は次の各氏(敬省略)。

 【委員長】山口範雄(日本観光振興協会会長)【副委員長】谷本正憲(石川県知事)▽柏原康夫(京都市観光協会会長)▽松山良一(日本政府観光局理事長)▽森民夫(全国市長会会長)▽二階俊博(全国旅行業協会会長)▽大塚陸毅(日本経済団体連合会副会長・観光委員長)▽茶村俊一(日本百貨店協会会長)▽石毛博行(日本貿易振興機構理事長)▽小林哲也(日本ホテル協会会長)▽近兼孝休(日本旅館協会会長)▽菊間潤吾(日本旅行業協会会長)【委員】佐藤茂雄(アジア太平洋観光交流センター会長)▽笠原幸一(オリエンタルランド営業本部副本部長)▽中島都志明(休暇村協会理事長)▽石原進(九州観光推進機構会長)▽古宮洋二(九州旅客鉄道総務部長)▽原祥隆(国際観光サービスセンター常務理事)▽中山庚一郎(国際観光施設協会会長)▽尾川欣司(国際観光日本レストラン協会会長)▽後藤常康(サービス・ツーリズム産業労働組合連合会会長)▽佐々木隆(JTB会長)▽川西孝雄(JCB社長)▽松田清宏(四国ツーリズム創造機構会長)▽泉雅文(四国旅客鉄道社長)▽前田新造(資生堂会長兼社長)▽福田金也(ジャパニーズ・イン・グループ会長)▽安藤圭一(新関西国際空港社長兼CEO)▽鈴木修(スズキ会長兼社長)▽細田安兵衛(全国観光土産品連盟会長)▽櫻井正志(全国空港ビル協会会長)▽石澤義文(全国商工会連合会会長)▽橋本光男(全国知事会事務総長)▽藤原忠彦(全国町村会会長)▽藤本隆明(全国農協観光協会代表理事専務)▽佐藤信幸(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)▽井山嗣夫(全国レンタカー協会会長)▽篠辺修(全日本空輸社長)▽藤野公孝(全日本シティホテル連盟会長)▽高橋達雄(地域活性化センター理事長)▽富取善彦(地域伝統芸能活用センター理事長)▽山下隆(中国地域観光推進協議会会長)▽三田敏雄(中部「東海・北陸・信州」広域観光推進協議会会長)▽川上博(中部国際空港社長)▽辻岡明(定期航空協会理事長)▽山田佳臣(東海旅客鉄道社長)▽隅修三(東京海上ホールディングス会長)▽上條清文(東京観光財団理事長)▽梅崎壽(東京地下鉄相談役)▽西田厚聰(東芝会長)▽高橋宏明(東北観光推進機構会長)▽日覺昭廣(東レ社長)▽金子剛一(中日本高速道路社長CEO)▽夏目誠(成田国際空港社長)▽石塚由成(西日本高速道路社長)▽佐々木隆之(西日本旅客鉄道会長)▽愛知和男(NPO法人日本エコツーリズム協会会長)▽吉田章(日本オートキャンプ協会会長)▽大山正雄(日本温泉協会会長)▽大畑貴彦(日本海外ツアーオペレーター協会会長)▽入谷泰生(日本外航客船協会会長)▽矢木野功次(日本観光通訳協会会長)▽鷹城勲(日本空港ビルデング社長)▽大西賢(日本航空会長)▽志賀典人(日本交通公社会長)▽滝久雄(日本交通文化協会理事長)▽松園俊志(日本国際観光学会会長)▽分部日出男(日本コンベンション事業協会会長)▽長澤惠一(日本サイクリング協会専務理事)▽久米正一(日本自動車連盟専務理事)▽河上一雄(日本修学旅行協会理事長)▽須田寛(日本商工会議所観光委員会共同議長)▽篠原一博(日本ショッピングセンター協会専務理事)▽井上淳(日本チェーンストア協会専務理事)▽山田隆英(日本添乗サービス協会会長)▽大塚陸毅(日本ナショナルトラスト会長)▽銭谷眞美(日本博物館協会会長)▽高橋幹(日本バス協会会長)▽馬場彰(日本ファッション協会理事長)▽森昭三(NPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構理事長)▽石塚勉(日本ホテル教育センター理事長)▽渡邉一也(日本ホテルバーメンズ協会会長)▽坂井信也(日本民営鉄道協会会長)▽水野宰(日本ユースホステル協会理事長)▽山崎潤一(日本旅客船協会会長)▽小西亘(日本レクリエーション協会理事長)▽立谷光太郎(博報堂執行役員テーマビジネスユニット長)▽廣瀬博(東日本高速道路社長)▽清野智(東日本旅客鉄道会長)▽上田準二(ファミリーマート会長)▽北山憲武(北海道観光振興機構専務理事)▽野島誠(北海道旅客鉄道社長)▽島田秀男(三井住友カード社長)▽和田哲哉(三菱UFJニコス社長)▽樋口一成(ユーシーカード社長)▽舩山龍二(ロングステイ財団会長)

目指せ全国デビュー?

 石川県能登半島の付け根に位置する羽咋(はくい)市。その玄関口、JR羽咋駅に今年1月、UFOが出現した。地元、羽咋工業高校の学生たちが「UFOのまち・羽咋」をPRしようと、ホームの壁面2カ所に描いたものだ。同市にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」のキャラクターで、近年じわじわとローカル人気が高まる宇宙人サンダーくんも描かれている。

 来年春の北陸新幹線開業を目前に控え、沿線各地では、それぞれ地域色を出したPR展開に熱心だ。羽咋市界隈では、昨年春に能登有料道路が「のと里山海道」として無料化。隣接する富山県氷見市を走る能越道も、2014年度内に七尾市まで開通予定となっており、半島を横断する周遊ルートも可能となる。サンダーくんが全国区になる日は果たして。

【塩野 俊誉】

アジアで圧倒的地位を、14年はあるべき姿へ勝負の年(JTB・田川社長)

JTB・田川博己社長
JTB・田川博己社長

リスクともなう商品造成へ

 JTB(田川博己社長)は1月23日、東京・新宿の京王プラザホテルで2014年新春経営講演会を開き、田川社長は2014年を「あるべき姿に向けて勝負の年」と述べ、今後、グローバルレベルでの交流文化事業を強力に進め、アジアで圧倒的な地位を築いていく方針を語った。また、今年4月1日に設立する「JTB国内旅行企画」の代表取締役社長に就任予定の大谷恭久氏が新会社の方向性などを紹介した。

□  ■

 JTBの田川社長は昨年を振り返り、「2013年は国内旅行部門が順調に推移した。13年度のグループ中間決算では経常利益169億円を計上し、年間見込みも20億円上方修正し、将来に向けた継続的な投資をしながら150億円の利益を見込んでいる」と語った。14年度については「海外渡航自由化50周年、東海道新幹線開業50周年、スポーツイヤー(ソチ冬季五輪、ワールドカップブラジル大会)、訪日外国人客2千万人に向けた新たなスタートの年にも当たる」とし、「JTBグループにとっては中期経営計画2年目に当たる。15年にはJTBが分社化して10年の節目の年であり、イノベーションや、構造改革を継続的に行い、事業の新陳代謝をさらに進めていく」と述べた。そのうえで、(1)国内旅行部門の強化とDMC(ディスティネーション・マネジメント・カンパニー)の進化に取り組むことを強調した。

 国内旅行部門の強化では、「国内旅行における『旅行エージェントとしての存在価値への挑戦』を、不退転の覚悟で実施する」と述べ、14年4月1日に「JTB国内旅行企画」を設立することや、訪日インバウンド営業体制の一元化などを挙げ、「06年にJTBが分社化して以来、最大の改革。JTB国内旅行企画は3千億円の取扱額と社員約1千人の規模の会社となる」と紹介した。田川社長は「これまで我われが進めてきた地域の改革、店頭の改革は機が熟した。新しい会社では、付加価値のある商品を創造、提案していく」とした。

 さらに、「地域で素材を開発するDMCの流れと、もう一方で、JTB首都圏やJTB東海、JTB関西など店頭展開する会社で得られるマーケットインの発想とプロダクトアウト側の発想を合わせて、最も相応しい商品を作る会社にしていきたい」と語ったほか、「我われ自らが責任を持ってリスクをともなった商品造成の流れを、海外旅行だけではなく、国内旅行でも展開していきたい」と強調した。

 DMCの進化については、「これまで交流文化事業をJTBグループのなかで進めてきたが、DMCは新しい旅行会社や交流文化のかたちであり、ツーリズム産業のイノベーションだと思う。旅の力をフルに発揮して、地域のさまざまな課題を解決していくことがこれから我われツーリズム産業に求められる」と述べた。

 2020年ビジョンについて、田川社長は「アジア市場における圧倒的なナンバーワンポジションを確立する」とし、グローバル各事業の基本戦略として、(1)インハウス(2)インバウンド(3)アウトバウンド――3事業をあげた。海外企画商品「ルックJTB」に関しては、「現在の取扱人数約140万人を、14年には145万人、将来的には200万人を目指していきたい」と語った。また、「世界発、世界着のネットワークを構築する『グローバルDMCネットワーク』によって、世界レベルの交流文化事業を進めていきたい」と話した。最後に、「2020年に開催される東京オリンピックは追い風。いかに地方を盛り上げるか」を課題としてあげた。

「JTB国内旅行画」の方向性

JTB国内旅行企画社長就任予定の大谷恭久氏
JTB国内旅行企画社長
就任予定の大谷恭久氏

 4月1日付で同社代表取締役社長に就任予定の大谷恭久氏は「1971年にエースJTBが誕生。パッケージの利便性が高く評価され、国内旅行ブームの火付け役になった。しかし、バブル経済崩壊後は、国内旅行は成長路線から横ばい傾向となった。また、オンライントラベルエージェントの台頭によって販売額は伸び悩んでいたが、現在はJTBのウェブ販売強化や、シニア層の拡大、大型イベントなどによって回復基調にある」と報告した。

 新会社については、「北海道から沖縄まで全国の仕入部門、商品企画造成部門を1社化し、意思決定の迅速化をはかり、国内旅行の構造改革を加速していく」とした。大谷氏は「2015年度までをフェイズ1として構造改革を進め、18年度までをフェイズ2として、地域交流事業やインバウンド事業など成長分野の基盤を構築する。東京オリンピックが開催される2020年度には、東京のみならず全国規模で交流拡大の確立を目指していきたい」と語った。

秋葉原で記念イベント、免税店シンボルマーク使用開始

秋葉原で記念イベント
秋葉原で記念イベント

 観光庁が創設した「免税店シンボルマーク」を活用した情報発信に取り組む輸出物品販売場等税務懇話会(阿部英行会長)は1月31日、同マークの使用開始に合わせ、外国人旅行者が多数訪れ同マークを掲示する秋葉原電気街で「免税店シンボルマーク使用開始記念イベント」を行った。

 阿部会長は「日本と海外では免税制度が異なる。海外では税込価格で購入し出国時に還付を受けるのが主流だが、日本では購入時に免税を受けられるので、持っているお金をすべて買い物に使える」と日本の免税制度の利点を強調。「この良い制度をもっと情報発信するため、免税店シンボルマークを全国の免税店に掲げ、分かりやすく発信していきたい」と語った。

 来賓の篠原康弘観光庁審議官は「2千万人の高みを目指すには、外国人旅行者に便利な環境を整えていくことが必要。日本でしたいことのトップにショッピングが挙がり、これまで免税の対象外だった化粧品や食料品なども含め、10月から対象品目が拡大されるので、免税店とシンボルマークを全国に広め、アピールしていきたい」と語った。

 同マークは外国人旅行者の消費税免税の対象品目が全品目に拡大されたことを受け、免税店のブランド化と認知度向上を目指し創設。4月には、観光庁が同マークを掲げる免税店リストを取りまとめ、日本政府観光局(JNTO)のホームページで国内外に発信する。

「旅館と酒蔵」座談会、にいがた地酒の宿で誘客へ(新潟県旅組青年部)

意見交換会のようす
意見交換会のようす

 新潟県旅館ホテル組合青年部(荻野光貴部長)は1月29日、新潟県・弥彦温泉の四季の宿みのやで、新年会を開き、昨年からスタートした「にいがた地酒の宿」プロジェクトでタッグを組む同県酒造組合青年部の新星会、にいがた美醸主宰の村山和恵さんと「旅館と酒蔵の取り組むべき課題」をテーマに意見交換を行った。

 村山さんは「新潟の酒はもたれないので、長く楽しい時間を過ごすことができる」と前置きしたあと、「お客が自由に楽しめる仕掛けが必要。女性客の立場では酒器が自分で選べたらうれしい」と語った。

 新星会のメンバーからは「にいがた地酒の宿の話を耳にしたとき、日本酒が観光誘客のツールになると認めてもらえ、うれしかった」「新潟の酒は淡麗で飲みやすい」「新潟の仕込み水は軟水なので飲み飽きすることなく女性受けする」などの意見が出た。

 旅館側からは「今後増加する外国人旅行客に日本酒は重要なアイテム」「宿泊客と接する仲居さんが日本酒について知らないことが多い。仲居さん向けの勉強会も必要」「提供する日本酒の瓶の容量をもう少し小さいものが作れないのか。さまざまな種類を味わってほしいが今の容量だと飲み比べが難しい」「旅館が新潟92の酒蔵を活かしきれていなかった」「工場長や杜氏さんも表に出てこだわりをお客に伝える工夫をしてほしい。例えばなぜこの瓶の色なのか、なぜこのラベルなのか。そうしたストーリーも関心を集める要素」などの発言があった。

 意見交換の最後に村山さんは、「提供する側が良いと思うこと、宿泊客が良いと思うこと。この差をなくすことが重要で、ソフト面が切り札。今一度自分たちがズレていないか、そして個々のニーズに対応できているか考えてほしい」と結んだ。

 「にいがた地酒の宿」プロジェクトは新潟の地酒を提供し、県内産の食材を使った地酒に合う献立、プランを旅館・酒蔵が一緒に開発していくもの。昨年3月にスタートしたが両者が一堂に会しての意見交換会は初めてで、荻野部長は「さまざまな意見を出し合えた。今後も継続していきたい」と話している。

カジノの学会設立、産業の正確な情報を啓発

ロケーション・エンタテインメント学会が設立
ロケーション・エンタテインメント学会が設立

 国内外の有識者が発起人メンバーとなり、カジノを核とする大型複合施設とIRに関する調査・研究を目的とした「ロケーション・エンタテインメント学会」が設立した。

 同学会事務局となる金沢工業大学は、2011年に米国、韓国のカジノ企業を交え、産学協同の協議会「ロケーション・エンタテインメント研究協議会」を設立。合法化を直前に控え、活動活性化のため「ロケーション・エンタテインメント学会」として発展させ、有識者による研究を進めていく。

 1月22日に金沢工業大学虎ノ門キャンパスで開かれた記者会見で、佐藤仁会長は「カジノ法案が通れば、法律、経営、観光資源としての統合マーケティングなどカジノ産業の学識を持った専門家が必要になる。これまでのノウハウが少しでも役に立つのであればと思い立ち上げた」と学会設立の意図を説明した。北谷賢司副会長は「近年増えている中華系の海外旅行客はカジノに対して関心が高い。東アジアからの観光客誘致拡大にはカジノなどの大きなアトラクションが足りない。観光立国に向けた競争力強化や経済成長の起爆剤として役立つ」とカジノ産業の利点を語った。今後は、3―4カ月ごとにシンポジウムやセミナーを開き、カジノやゲーミング産業の正しい情報の啓発活動、海外からの問い合わせ対応や情報交換などを行っていく。

 アジア人はゲーム好き
 税率と設置数が鍵

 その後、「激変するカジノ産業 アジアにおける成功例から考える、日本のカジノ創設と展望」と題した設立記念シンポジウムを行い、パネルディスカッションでは、それぞれの立場からカジノ産業について語られた。カンボジアでカジノを経営するGoodLuck9 Casino & Hotel Presidentのアン・ユンモ氏は、「以前はカジノがゲームをするためだけの場所だったが、現在は家族や会社の同僚、恋人などと一緒に楽しむ方向へ変化している」との見解を述べ、「総合エンタテインメントが含まれる複合リゾート」とした。

 Global Gaming for MGM Resorts Internationalの元社長でカジノ経営に詳しいロイド・ネイサン氏は、「アジアの人はゲーム嗜好が高いので、カジノ産業はしばらく成長を続けるだろう」と展望を語った。立法化を目前に、すでに外資が日本国内でオペレーションを始めており、日本のマーケットを利益性高い市場になると見ているとの分析を紹介。日本でのカジノの成否のカギに(1)税率(2)設置カ所数――の2点を挙げた。

 シンガポールでは2カ所に限定し、25億円の投資で豪華なカジノを設営。ネイサン氏は、「もし、1億円ずつの投資で25カ所に作っていたら、客の奪い合いで失敗していた。どのくらいの規模のものを何カ所造るかを決めるのが先決」と助言した。

 学会発起人メンバーは次の各氏。

 【会長】佐藤仁(東急レクリエーション社長)【副会長】北谷賢司(金沢工業大学コンテンツ&テクノロジー融合研究所所長、エイベックス・インターナショナル・ホールディングス社長)【理事】千代勝美(エフエム東京社長、金沢工業大学コンテンツ&テクノロジー融合研究所客員教授)▽北山孝雄(北山創造研究所代表、金沢工業大学コンテンツ&テクノロジー融合研究所客員教授)▽ロイド・ネイサン(英国/米国カリフォルニア州弁護士、Global Gaming for MGM Resorts International元社長)▽鎌田正彦(SBSホールディングス代表)▽秋山弘志(東京ドーム顧問、金沢工業大学コンテンツ&テクノロジー融合研究所客員教授)▽中村規脩(オークローンマーケティング相談役共同創始者)▽林和男(ぴあ特別顧問共同創始者)▽三枝利行(東急不動産常務)▽和田史久(GoodLuck9 Casino & Hotel会長)▽清水太郎(シミズオクト社長)▽多田宏行(前三井不動産S&E総合研究所所長、東京藝術大学講師)▽金山勉(立命館大学国際部副部長教授)▽村井好博(金沢工業大学理事、産学連携機構事務局長)【監事】大橋卓生(虎ノ門協同法律事務所弁護士、金沢工業大学虎ノ門大学院准教授)【事務局長】泉屋利吉(金沢工業大学虎ノ門大学院事務室長)