JATA「道プロジェクト」、環境省に意思伝える

JATAの吉川副会長(中央左側)と高橋環境大臣政務官(同右)
JATAの吉川副会長(中央左側)と高橋環境大臣政務官(同右)

 日本旅行業協会(JATA)は10月22日に環境省を訪れ、現在推進している「JATAの道プロジェクト」の全体像や、取り組みに対する意気込みを高橋ひなこ大臣政務官らに伝えた。JATAからは吉川勝久副会長(KNT―CTホールディングス会長)らが出席した。

 「JATAの道プロジェクト」とは、環境省が選定した東北沿岸地域700キロにわたるロングトレイルコース「みちのく潮風トレイル」(青森県八戸市―福島県相馬市)を活用した東北復興支援事業。新しい東北観光の実現に向けて、自然環境の整備活動を通じて「自然景観の復興」や「生活文化の再生と向上」に今年4月から震災発生10年後の2021年3月までの7年間取り組む。トレイルコースは現在北から開通し、岩手県久慈市まで約100キロを歩くことができる。

 吉川副会長は、「地域との意見交換をし、旅行業団体ならではの資源の発掘や商品の磨き上げなど、『目利き』の力を伝えたい。最終的には、ニューツーリズムを生み出せるよう取り組んでいく」と意気込んだ。

 高橋政務官は、「時間をかけて、地元の人でも楽しめる場所をしっかり歩くことができるようようサポートをしていきたい。10年間来ていただくことで、計画が完成すると思っている」と期待を込めた。

海外新展開など発表、「星のや バリ」は来夏完成(星野リゾート)

星野佳路代表
星野佳路代表

 星野リゾート(星野佳路代表、長野県北佐久郡)は10月15日、東京都内でプレス発表会を開き、インドネシアで運営予定の「星のや バリ」の進捗状況や、バリに続く海外での運営施設「星野リゾート Kia Ora ランギロア」での新展開を発表した。

 星野代表は冒頭で、「施設への投資でなく運営ノウハウの投資ができるのが星野リゾートの強み。我われが所有と開発から離れた運営会社でありたいということを改めてお伝えしたい」と強調し、各施設のダイジェストを語った。

 「星のや バリ」については、「旅館メソッドをバリに持って行きたい。私たちが日本の旅館でやってきたような、地域の魅力や地域らしさ、住む人たちが自分たちのプライドを感じられるサービスで、バリになかったリゾートができる」と期待を込めた。

 「星のや バリ」は当初2014年内の開業を目指していたが、工期が遅れており、開業は15年の夏ごろになると発表した。

 また、15年4月1日から、世界で2番目に大きなラグーンを持つタヒチ最大の環礁の島ランギロア島で「星野リゾート Kia Ora ランギロア」の運営を始める。客室はプライベートアイランドや水上バンガローなど全65室。

“県の魅力伝える場に”、オープニングセレモニー開く(銀座NAGANO)

テープカット・セレモニー(左から4人目が阿部長野県知事)
テープカット・セレモニー(左から4人目が阿部長野県知事)

 長野県の首都圏総合活動拠点「銀座NAGANO~しあわせ信州シェアスペース~」が10月26日、東京・銀座にオープンした。

 当日は午前10時30分からオープニング・セレモニーを開催。開式の冒頭で阿部守一長野県知事が「単なる物産館ではなく、首都圏の皆さんに長野県の魅力をしっかり伝える場にしたい」とあいさつし、続いて来賓を代表して風間辰一長野県議会議長、母袋創一長野県市長会相談役(上田市長)、藤原忠彦長野県町村会会長(川上村長)、北村正博長野県商工会議所連合会会長、野原莞爾信州・長野県観光協会理事長が祝辞を述べた。その後、店頭に移動してテープカット・セレモニーを実施。阿部知事のオープニング宣言に合わせて、テープカットが行われた。

1階ショップスペースのようす
1階ショップスペースのようす

 1階の物販コーナーで購入できる長野県産の農産物やワイン、地酒、そばなどを求め、午前11時の開店前から入場整理券を求めて長蛇の列ができた。開店後、客は1階に並ぶ約1千アイテムの商品を品定めし、県産ワインや地酒の有料試飲を楽しむ姿も多く見られた。

 午後からは長野県出身のタレント・峰竜太さんと乙葉さんもオープニングイベントに参加し、阿部知事と「信州の食」をテーマにトークセッションを行ったあと、1日店長を務めるなど、会場を大いに盛り上げた。

 銀座NAGANOは銀座5丁目のすずらん通り沿いに新築された8階建てビルの1・2・4階の3フロアを使用。1階が物販コーナーと旬の信州味わいコーナー(有料の試飲・試食コーナー)、2階がオープンキッチン付イベントスペースと観光情報コーナー、4階が移住交流・就職相談コーナーで、各フロアを連携させることで長野県の魅力を最大限にアピールしていく。長野県と信州・長野県観光協会が協力し、管理・運営を行う。

 開設3年目の2016(平成28)年度の成果目標として、来場者数35万人、イベント実施延べ団体数300団体、移住・Iターン就職者数100人以上を目指すという。

理解を深めながら対応、ムスリム観光客におもてなし

加森観光の事例を紹介する仙野氏
加森観光の事例を紹介する仙野氏

日観振がセミナー開く

 日本観光振興協会(山口範雄会長)は10月23日、東京都内で「ムスリム観光客おもてなしセミナー」を開いた。ビザの発給要件の緩和や、LCCの新規就航などにより、アジア各国からの観光客が大幅に伸びるなか、今後ムスリム(イスラム教信仰者)観光客の飛躍的な増加も予想される。観光業界では、ムスリム観光客を受け入れる際には、信仰や戒律に基づいた食事、礼拝などの配慮を学びたいとの声も多く、今回のセミナーには定員150人を大幅に上回る約250人が参加した。先進事例紹介では、「ムスリム観光客の話を聞き、コミュニケーションによって理解を深めながら対応していくことが大事」という現場の声が多かった。

 加森観光社長室長の仙野雅則氏は「料理はハラルの概念を守りながら、北海道の食材を食べていただきたいとハラル御膳などを提供している。お酒やみりんが使えないので、代わりになるものを独自に研究している」とし、「料理長が食後にムスリム観光客のテーブルに行き、話を聞くことが一番ノウハウの蓄積につながる」と話した。また、北海道内を周遊するツアーの場合は、昼食にハラルフードを提供できる店がないケースもあり、「朝ハラルフードのランチボックスを用意すると喜ばれる」と語った。

 横浜ラーメン博物館営業戦略事業部広報・宣伝課長の中野正博氏は「最近は世界中から日本のラーメンを食べに訪れる」状況を説明。「宗教、思想、アレルギーなどの理由で困っているお客様にも、いかに美味しいラーメンを食べていただけるかを考え続けている」とし、「ベジタリアン向けのメニューや、ムスリムフレンドリーの対応にも取り組んでいる」と報告した。

 白馬五竜観光協会理事・白馬サンバレーホテル支配人の坂本守氏は「すべてハラル対応はできないので、背伸びをせずに、できること、できないことを正直に話している」としたうえで、「日本食が口に合わない人もいるので、瓶に入ったチリソースなどムスリムの方が使う調味料などをテーブルに置くことで、空腹のまま席を立つことがないように配慮している。自分流にアレンジして美味しく食べていただく方がいいと考えている」と述べた。さらに、「本や講習で学んだものを先回りして実践しても良い結果にはならないと思う。その場、その場でムスリムのお客様に聞きながら対応した方がいい。コミュニケーションを取りながら、こちらができる範囲で彼らが一番望ましいと思うことをしてあげることがいいのでは」とアドバイスした。

 専門家による講義では、日本アセアンセンター観光交流部プロジェクトマネージャーの藤田賢氏と、INJカルチャーセンター・インドネシア語主任講師のイワン・スティヤ・ブティ氏が「アセアンからのムスリム観光客の受け入れについて」をテーマに、ハラルフードやお祈りなど、ムスリムの生活習慣などを具体例も示しながら詳しく説明した。

No.385 観光系学部卒業生インタビュー - 入社後役立った経験とは

観光系学部卒業生インタビュー
入社後役立った経験とは

 大学に初めて観光学部が設置されて約15年経つ。大学で観光を学んだ学生は観光業界でどのような活躍をしているのか。卒業生を取材し、観光学部に入った経緯や就職してから見えてきた「理想と現実」のギャップなどを聞いた。今回取材した星野リゾートの谷澤めぐみさん(2010年立命館大学経営学部卒業)と、JTBコーポレートセールスの桐山智光さん(2013年立教大学観光学部卒業)は、希望した職種に就くことができた。観光を学ぶ学生にも参考になるところは大きい。

【丁田 徹也】

 
 
 

2013年 JTBコーポレートセールス入社 桐山 智光さん 〈立教大学 観光学部 卒業〉
2013年 JTBコーポレートセールス入社
桐山 智光さん
〈立教大学 観光学部 卒業〉

基礎知識の多さ実感

 2013年4月にJTBコーポレートセールスに入社し、法人営業柏支店に配属された桐山智光さんは、企業など法人の旅行を担当する新人営業マンだ。入社した昨年には40人規模の旅行を取り扱い、現在は100人を超えるツアーも予定に入っているなど忙しい職場だ。「入社して初めて私の提案と先方の需要が一致したときは、うれしかったですね。役に立ったかな、と実感できた瞬間です」と仕事の魅力を語る。
 立教大学の観光学部で観光について幅広く学んだ。「大学に入ってからしばらくの間は、旅行業や旅行会社の勉強をして、いろいろな旅行業界の人の講演が聞けるのが観光学部なのだと思っていました」と入学時の印象を語る。実際の講義は旅行に限定したものではなく、観光に関わる事象全般だった。…

2010年 星野リゾート入社 谷澤 めぐみさん 〈立命館大学 経営学部 卒業〉
2010年 星野リゾート入社
谷澤 めぐみさん
〈立命館大学 経営学部 卒業〉

旅館再生事業に興味

 星野リゾート「界 箱根」サービスチームの谷澤めぐみさんは、2010年に立命館大学の経営学部を卒業し、星野リゾートに入社。長野県・松本の「界 松本」のサービスチームと人事部の採用担当を経て、「界 箱根」のサービスチームに異動した。サービスチームは、フロント・調理補助・清掃・料飲サービスをマルチに担当し、サービスチーム全体で施設の業務に対応する。仕事ごとに担当が決まっていることの多い旅館・ホテル業では珍しい体制で、1日で4つの仕事すべてを担うこともあるという。…

 

※ 詳細は本紙1563号または10月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

不快を許さぬ旅人 ― 旅先で完璧な快適さはありえない

 9月27日の御嶽山の噴火は戦後最悪の火山災害となってしまった。突然の噴火で、亡くなられた方々もまさか御嶽山が噴火するとは、思ってもみなかっただろう。10月16日現在、死者は56人。年内の捜索は打ち切りとなった。

 私事であるが、小さなころから阿蘇山の火山シェルターは何度も見てきた。このシェルターが必要な状況を想像すると、子供心に恐怖心が襲ってきたことを強く覚えている。

 気象庁によると、現在日本の活火山は110あるという。2000年には北海道の有珠山が噴火し、洞爺湖温泉など周辺の観光地に大きな影響を与えたことを思い出した。専門家によると、有珠山は噴火の予知がしやすい山だということで、早めの避難誘導も行われ、観光客や住民などの人的被害はなかった。

 火山は、温泉や観光資源として、地域や観光業界に多くの恵みを与えてくれるが、人間の営みは地球のごく表面的なものにすぎず、旅人も、観光産業も、あまりに小さな存在なのだと、改めて認識させられた。

 私自身、旅は好きなのだが、旅立つことは同時に憂鬱でもある。それは火山や地震など天災に限らず、事故や事件など人災も含めて、「旅は基本的に危険なものである」と感じているからである。

 現在のように交通が発達していなかった江戸時代やそれ以前も、旅は常に危険と隣り合わせであった。未知の世界を知ることができるトキメキもある一方、旅立つ際には今生の別れも意識していたはずだ。今でも、多くの旅行者は海外旅行に行くときには犯罪に巻き込まれることや、病気にかかってしまうことなどを想像し、楽しみな半面、少なからず不安な気持ちも持ち合わせるだろう。

 しかし、例えば添乗員付きの高額ツアーなどに参加した場合、何から何まで安全が保証されていると勘違いし、安心し切っている旅行者もいる。外国を移動中のバスの中でもまるで日本にいるように安心してしまう。「高額ツアーなのだから安心」という気持ちが勝り、初めて訪れる市街地や海であっても、身の安全を旅行会社やガイドに完全に委ねてしまうという勘違いが起こりがちだ。

 海外旅行ですらそうであるから国内旅行といったら、安心し切っている旅行者をよく見かける。しかし、国内といえども旅はやはり危険なものである。旅人は常にアウェイの状況であり、災害が生じたとき、その土地を熟知する住民に比べ、旅行者は圧倒的に不利なのである。

 宿泊した宿でちょっとした粗相にもクレームを付け、大きな態度で接する旅行者もいると聞く。悪質なクレーマーを除いても、「高額な料金を払ったのだから、この旅は快適で・安全で・安心でなければならない。少しも不快な思いは許さない」という思い込みが強すぎる場合もある。旅先で完璧な快楽や快適さを求めるには無理がある。所詮旅は不確実で、思い通りにならないものという観念が抜け落ちている。この基本的な認識すらない旅人は、罪である。危険な道中を無事に過ごし安全に旅ができたことへの感謝の気持ちと節度が旅人には必要である。また、危険な旅をしてまで訪れてくれたと旅人をもてなす宿の気持ちがぴたっと合ったなら、それこそ、両者にとってこのうえもない幸せな瞬間なのだと思う。

(編集長・増田 剛)

京都で山口体制の集大成、松江と新潟がアワード1位(全旅連青年部)

山口敦史部長が主催者あいさつ
山口敦史部長が主催者あいさつ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(山口敦史部長)は10月8日、京都府京都市の「みやこめっせ」で第22回全旅連青年部全国大会「都プロジェクトin京都」を開いた。テーマは「『みんなが主役』自ら学ぶ全国大会『大人の修学旅行』」。山口体制の集大成の場に800人を超える青年部員が一堂に会し、事業委員会活動の報告や、アワード(褒賞)の表彰式などを行った。

 山口部長は「今期は『維新伝心~青年部の共創力で未来を拓こう』をスローガンに掲げ、この1年半、国内旅行、宿泊業界発展のために政策的な提言や、流通対策、海外へのRYOKAN文化の発信、若手経営者の育成事業など、さまざまなかたちで事業を行ってきた」と述べ、「みんなが主役の大会であり、ぜひ新しい仲間を作ってほしい。宿泊業というライバル同士だが、絆ができれば、かけがえのない仲間になる」と強調した。

 今大会のブロックごとの参加者は北海道が10人、東北が124人、北関東信越が178人、首都圏が60人、東海が79人、北陸が28人、近畿が161人、中国が46人、四国が31人、九州・沖縄が126人の計843人だった。

おもてなしメーキャップなど事例報告

 式典のあとに開かれた分科会では、異業種コラボ事業委員会が、資生堂との連携事業「輝く女性はお宿の魅力!『おもてなしWOMANキレイプロジェクト』」として、接客係として働く女性スタッフに焦点を当て、整容の重要ポイントとなる「おもてなしが伝わるヘア&メーキャップの方法」を実践した福島県・飯坂温泉での事例紹介など、さまざまな事業報告が行われた。

プラチナアワードの島根県松江支部青年部
プラチナアワードの島根県松江支部青年部

旅行新聞新社賞に伊香保支部青年部

 総額210万円の第22回全国大会アワード(褒賞)には全国から37本の事業がエントリーした。地域活動の「プラチナアワード(1位)」には、島根県松江支部青年部の「『十数年間かけてブランディングしてきた縁結び事業』―対前年137%・10万人増という驚異的な伸びを示した島根県松江支部の汗と涙の結晶―」が選ばれた。

ゴールドアワードの新潟県青年部
ゴールドアワードの新潟県青年部

 県・ブロック活動の「ゴールドアワード(1位)」は、新潟県青年部が「にいがた地酒の宿 水は雪、酒は米、旅は人 酒蔵×旅館×有資格スタッフのコラボレーション」で2連覇を果たした。

 そのほかの受賞は次の通り。

 ・地域活動

【シルバーアワード(2位)】
長野県白馬支部青年部「人口数千人の小さな『白馬村』が世界の『HAKUBA』へ 大人から子供まで白馬を愛し、誇りに思いハイタッチでランナーを迎えた感動のストーリー『白馬国際トレイルラン』」

【ブロンズアワード(3位)】
愛知県三河支部(蒲郡)青年部「がまごおり若旦那,Sによる蒲郡市活性化事業」

 ・県・ブロック活動

【シルバーアワード(2位)】
佐賀県青年部「さがたびめんこ~佐賀の旅館とメンコDE勝負!!~」

【ブロンズアワード(3位)】
鹿児島県ホテル旅館組合青年部「『旅のスパイス鹿児島』~旅人の“びっくり”地元の“当たり前”~旅スパ絵はがきプロジェクト」

【全旅連青年部OB賞】
山形県赤湯温泉旅館組合青年部「地元名産のワインを生かした観光地づくり『赤湯温泉ワインの饗宴』」

旅行新聞新社賞の伊香保支部青年部
旅行新聞新社賞の伊香保支部青年部
 

・各社賞

【旅行新聞新社賞】
群馬県伊香保支部青年部「未来の伊香保へ!発信!!『伊香保アートプロジェクト』

【トラベルニュース社賞】
群馬県四万温泉支部青年部「四万温泉一山一家(いちざんいっか)プロジェクト」

【観光経済新聞社賞】
栃木県塩原温泉・那須温泉支部青年部「栃木県北部観光広域連携事業『お・も・て・那須手形』那須をお得に楽しむクーポン冊子」

【柴田書店賞】
山形県かみのやま支部青年部「かみのやま温泉開湯555年から新たに始まる上山まちづくり!」

桑田雅之次期部長(左端)と各ブロック長
桑田雅之次期部長(左端)と各ブロック長

 夕刻から開かれた懇親会では、次期青年部長の桑田雅之氏が新体制のブロック長を紹介した。

どこの都道府県?

 ブランド総合研究所の「地域ブランド調査2014」によると、群馬県富岡市のランキングが世界遺産の影響で、急上昇した。一方で、県全体には目立った影響はない。前年の群馬県の情報接触度36・5点(富岡市は9・9点)に対し、今年は35・1点(同40・0点)と微減。多数のメディアで富岡が取り上げられているはずだが、「群馬県の」という枕は聞き逃されているのか、あえて強調されないのか。

 他方、この仕事をしていると全国の方々と名刺交換をする機会が多いが、都道府県名が記載されていないことが少なくない。大都市は都道府県と同様の権限や経済力を持ち、不仲説が流れることもあるが、それは特殊な例だろう。旅行者には都道府県の境は関係ないのは確かで、広域連携が提唱されているが、まずどこの都道府県の市町村かをアピールすべきだと感じるのは私だけだろうか。

【飯塚 小牧】

コンセプトへの共感、既存顧客に経営のヒントあり

星野佳路氏
星野佳路氏

星野佳路氏が講演

 中小企業の事業再生専門のコンサルタント会社フィナンシャル・インスティチュートの設立10周年記念講演で、星野リゾートの星野佳路代表が「星野リゾートの組織論」をテーマに話した。星野代表は組織論のポイントを(1)ビジョンと価値観の共有(2)コンセプトへの共感(3)情報とプロセスの公開(4)醍醐味満喫(5)キャリアコントロール――の5つにまとめ、星野リゾートの取り組みを紹介した。

 コンセプトへの共感では、「誰に対して、何を提供する企業なのか」を突き詰めて考えることが重要と指摘し、「ターゲットを狭めれば狭めるほどコンセプトが明確になってくる」とした。また、「星野リゾート青森屋」での再生への取り組みを紹介。「その館・地域の良さや売りは、現地スタッフが一番情報を持っている」と強調した。星野リゾートでは各宿でコンセプト委員会を設置し、(1)市場調査(2)競合調査(3)既存顧客調査――を実施。「売上が下がったときに経営者は、来なくなったのはどの層かと、減っているところを戻そうと考えがちだが、残っている人(既存顧客)のなかにヒントがある」と話す。既存顧客にアンケートを取れば、自社の強みがわかるという。

 意思決定プロセスと経営情報の公開では、「フラットな企業」がキーワード。星野代表は「休憩室や喫煙室での社員の愚痴のなかに、実は経営の真実があったりする」と指摘し、「フラットな場での活発な議論を会議に持ち込めるようにした」と説明した。決めるまではフラットに議論し、決定後は全員がそれに従い、同じ方向を向いて前進することが重要という。また、フラットな関係として、集合写真撮影の例を出し、「フラットな組織では、支配人など役職に就く人が端に追いやられていることが多い」と笑いを誘った。

 仕事の醍醐味としては、顧客からの「お褒め」の言葉を挙げる。「経営者はクレームばかりに目が行きがちだが、クレームは従業員のモチベーションを下げ、消極的にし、提案力が落ちる」と指摘。「クレームはシステム(仕組み)で対応すべきで、従業員には、褒められた内容を皆の前で伝える方がよい」と人材育成についてもアドバイスした。

15年4月1日、東武とトップ合併、「東武トップツアーズ」

 東武鉄道グループの旅行会社の東武トラベル(坂巻伸昭社長)とトップツアー(同社長)はこのほど、2015年4月1日に合併する予定だと発表した。

 新社名は「東武トップツアーズ」(予定)で、存続会社はトップツアー。

 昨夏、東武鉄道がトップツアー持株会社のティラミスホールディングスの全株式を取得したことから、両社は東武グループの旅行会社として、相互の連携をはかってきた。

 今回発表した合併で、法人営業を基盤とした団体旅行の強化やアジアマーケットなどを見据えたインバウンド営業の拡充、間接業務の効率化などさらなるシナジー効果を求める。

 新会社は、東京都墨田区押上1―1―2(東京スカイツリーイーストタワー)に設置する予定としている。