新旅館名は「天悠」、17年春、箱根小涌園に開業(藤田観光)

外観イメージ
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 藤田観光(瀬川章社長)は2017年春、箱根小涌園ユネッサンイン跡地に開業予定の新旅館の名称を「箱根小涌園 天悠(てんゆう)」に決定した。同社は神奈川県足柄下郡箱根町で1948年にリゾート事業を開始し、「箱根ホテル小涌園」「箱根小涌園ユネッサン」を軸に、60年以上にわたり事業を行ってきた。建設中の新旅館は同エリアの新たな基幹施設を目指し、〝自然と和のおもてなし〟をコンセプトに、全室温泉露天風呂付きの客室をはじめ、さまざまなおもてなしで国内外の客を迎え入れる。

 客室は一般客室118室、ハンディキャップルーム2室、最上階客室24室、特別室6室の計150室を用意。また、季節の食材を中心とした和洋折衷料理を提供するレストランや、渓谷に面して滝を見上げながら四季を感じる露天風呂と箱根外輪山の眺望を楽しめる棚湯露天風呂の2カ所の大浴場、エステ、渓谷庭園など、寛ぎの空間を演出する。

 構造は鉄筋コンクリート地上9階、地下1階で、敷地面積は1万2709坪、延床面積は4776坪。

 問い合わせ=藤田観光リゾート事業グループ 電話:0460(82)3033。

高知家エクストリームトラベル社、第5弾ツアーを発表

「海洋堂ホビー四万十」で「究極のジオラマ」作り
「海洋堂ホビー四万十」で「究極のジオラマ」作り

 高知県は、昨年6月に高知の魅力を体感できる架空の旅行会社「高知家エクストリームトラベル社」を設立し、これまでに第1―第4弾として17本のツアーを発表した。新たに昨年12月24日、第5弾として「すべてはかっぱの見せた夢?あの海洋堂のフィギュアで、究極のジオラマ作り」「忍者ガイドと行く。愉快だけど本格的な猿田洞探検へいざ出発!」「満足度100%!日高村の高級シュガートマトをセルフ収穫できるメダカ池フットパス」の3本を発表した。

 高知県を訪れる観光客はもちろん、高知県内の人でも滅多に体験できないエクストリーム感満載のツアーがそろう。「すべてはかっぱの見せた夢?あの海洋堂のフィギュアで、究極のジオラマ作り」は、全国のフィギュアファンが熱い視線を送る造形集団「海洋堂」の魅力が詰まった「海洋堂ホビー館四万十」で「究極のジオラマ」を作るツアー。かつてない大きさのジオラマ(通常体験イベントの2倍以上)をじっくりと2時間半かけて作り込むという。

忍者ガイドと行く猿田洞探検
忍者ガイドと行く猿田洞探検

「忍者ガイドと行く。愉快だけど本格的な猿田洞探検へいざ出発!」は、義賊忍者・日下茂平の修業の地として伝承が残る「猿田洞」。3層に分かれている洞内を進むと自然のままの深淵などがあり、満天のスリルが味わえる。今回は忍者装束を身にまとった「茂平なりきりガイド」が本格的冒険コースへ案内する。

 「満足度100%!日高村の高級シュガートマトをセルフ収穫できるメダカ池フットパス」は、高知県日高(ひだか)村の中央部にあるメダカ池周辺で、いまや絶滅危惧種とされるメダカや越冬する渡り鳥、可憐な花々などを眺めながら、地元ガイドと道草気分で散策する。1個200円もする地元特産のシュガートマトをかぶりつける贅沢体験も付いてくる。
高知家エクストリームトラベル社は「これまでの旅行」では味わえない高知の魅力を体感できるツアーを続々と企画・発表する架空の旅行会社。各ツアーは提携するJTBコーポレートセールス、とさでんトラベルで実際に申し込みすることができる。

 ツアー内容の詳細は、(http://www.attaka.or.jp/kochi-extreme/ )を参照。

 問い合わせ=一般財団法人高知県地産外商公社 ☎03(3538)4367、高知県観光政策課 ☎088(823)9708。

No.421 “忍者”で地方創生、忍者文化を世界へ発信

“忍者”で地方創生
忍者文化を世界へ発信

 政府は昨年10月27日、地方創生交付金の先駆的事業について、新たに710の事業を選定し、その1つに忍者ゆかりの5県による「忍者を活用した観光誘客推進事業」(4756万円)が選ばれた。それにともない、同月には日本忍者協議会が設立された。本紙はこのほど、日本忍者協議会に加盟している5県5市1協会にアンケートを実施。今後ますます注目される「忍者」への各自治体の取り組みを紹介する。
【松本 彩】
 

 
 昨年10月9日に設立された「日本忍者協議会」は忍者にゆかりのある5県(三重県・神奈川県・長野県・滋賀県・佐賀県)5市(伊賀市・甲賀市・上田市・嬉野市・小田原市)1協会(伊賀上野観光協会)が発起人となり設立。同協議会発起人である5県と、甲賀市・嬉野市には、国から地方創生のための交付金が交付され、今後は同協議会と連携して、忍者を定義したうえでのブランディング、忍者ゆかりの地を巡る広域観光ルートの開発、テレビ番組やホームページによる国内外向けの忍者のPRなどを行い、忍者文化に触れることを目的とした訪日旅行客の増加などを目指す。…

 

※ 詳細は本紙1616号または1月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

「プラットフォーマーに責務を」、関係者にヒアリング続く(民泊サービス検討会)

 観光庁と厚生労働省は2015年12月21日と16年1月12日、民泊サービスのあり方に関する検討会を開き、民泊関係者にヒアリングを行った。12月21日は日本旅行業協会(JATA)と民宿・民泊などのマッチングサイトを展開する百戦錬磨(上山康博社長)、1月12日は、賃貸運営を行うスペースデザイン(川島敦社長)が招請された。上山氏はプラットフォーマー(PF、サービス提供者)の責務を強く訴えた。

 12月21日の検討会では、百戦錬磨の上山氏が旅館業法の認可を得ていない民泊に対し「旅館業法に違反している」と断言したうえで、部屋の提供者は現行法の順守を理解し、新たなルールができるまでは民泊を止めるよう求めた。一方で、増え続ける民泊一軒一軒を規制することが困難なことから「民泊を取りまとめるPFが責務を負うべきだ」と述べた。

 JATA国内・訪日旅行推進部長の興津泰則氏は「消費者保護の部分を議論しないと制度そのものが安定しない。そのうえでPFにどんな資格・制度を設けるかを逆説的に議論していただくことが適切だ」と提言した。

 検討会構成員からも「事故や事件が起きたときに責任を取らなければならないという自覚を持たなければ業はできない。規制緩和で安心・安全のリスクを増やし、消費者はそれを理解したうえで安価を選ぶ。そんな社会で良いのか」と疑問が投げかけられた。

 1月12日の検討会ではスペースデザインの川島氏が同社の運営するサービスアパートメント(SA)を検討員に紹介。SAの大きな特徴は宿泊者が1カ月以上滞在することで旅館業法が適用されないところにある。この点について「やっていることは旅館業と近いのに、なぜ旅館業法が適応されていないのか」とあらためて疑問を持った構成員も現れた。

 今後はこれまでの議論を踏まえ、早急に取り組むべき課題として、現行制度で対応できる簡易宿所の枠組みを活用した旅館業法の許可取得の促進や、その際の客室面積基準の見直し、家主不在のケースの対応などを進める。仲介業者に対する一定の責務など、現行制度の枠組みを超えるような課題については中期的に検討していく。

スキーバス転落事 ― 観光立国推進と国内旅行市場の現実

 新年早々に、とても痛ましい事故が起きてしまった。長野県軽井沢町でスキーのツアーバスが転落し、15人が死亡する大惨事となった。大学生など多くの若い世代も犠牲となった。19日現在、国土交通省も調査究明に乗り出しているが、「なぜ、高速道路からカーブの多い狭い峠道にコースを変更したのか」など事故の詳細が明らかになっていない。

 2012年に発生した関越自動車道でのバス事故以来、国も動き、安全対策が強化された。新運賃・料金制度は実態に即していないなどの不満の声も聞くが、遵守しなければ法令違反になる。一部報道によると、ツアーを企画した旅行会社と、運行バス会社が法令で決まっている額よりも破格の安値で契約していたとも報じられている。

 宿泊施設やバス会社を含め、旅行業界は価格競争との戦いである。同様のツアーであれば、100円でも安い方に消費者が流れていってしまう。このため、わずかな利益を確保するために内部で極限までコストを削り、やがて触れてはならぬ「安全へのコスト」の切り詰めにまで魔の手を伸ばしてしまう。表向きは他社のツアーと変わりなく見えるが、企業努力を極限まで行き尽くしたこの旅行業界でさらなる“激安”が可能になる魔法などはあるはずもなく、それが可能になるとしたなら、法令違反しかない。

 今回の事故では、バス運行会社は(1)運行指示書を作成していない(2)乗務前・終業後の点呼を行っていない(3)運転手の2人は健康診断を受診していない(4)下限額を大幅に下回る運賃で契約――など、乗客の安全のために必要な義務を怠っている。同社は2日前にも「運転手の健康管理が不十分」として行政処分を受けたばかりという。一方、旅行会社も報道通り、バス会社に下限を下回る運賃の提案を行っていたとすれば、起こるべくして起こった事故という印象だ。

 観光立国を掲げるなか、昨今は好調なインバウンドが注目を浴びている。しかしその陰で、バス会社の現場などから、運転手の不足や、高齢化などへの危機感が「悲痛な叫び」として聞こえてくる。それら現場の声をかき消すように、首都圏や関西圏など都市部を中心とした“インバウンドバブル”の勢いは、大きな経済的な期待を担い、多くの人の視線を奪う。この流れの最たるものは、現在、宿泊業界にも大きな波紋を広げている「民泊」問題だ。安心・安全面を危惧する声よりも、シェアリング・エコノミーという言葉が闊達に行き交い、規制緩和の方向に進もうとしている。

 「本当に観光立国の方向に進んでいるのだろうか」と思う時がある。その象徴的な例が、この10年で日本人の国内旅行消費額が8・3兆円も減額していることだ。インバウンド市場以外は、むしろ退化しているような状況である。とりわけ国内旅行の血管の役割を担う貸切バスの問題は、「旅行者の安心・安全」を第一に、国内旅行市場の健全化に向けても、一刻の猶予もなく官民一体となって真剣に考えるべき深刻な課題である。

 人命を預かる運輸機関にとって運転手の育成や、車両整備、健康診断など、最も大事な安全性確保には莫大なコストがかかる。この当たり前の事実を、再度広く認識してもらい、忘れられないための努力が今後、旅行業界全体の大きな「仕事」となる。

(編集長・増田 剛)

政策提言の実行年に、中長、短期の施策振り分け、JATA・田川会長

田川博己会長
田川博己会長

 日本旅行業協会(JATA)は1月7日、2016年初の定例会見を開き、田川博己会長が今年の市場動向の見通しやJATA活動の方向性について語った。今年は昨年、観光庁に提出した国内・海外・訪日の三位一体の「JATA政策提言2015」を実行・実践していく年とし、「ツーウェイツーリズムによる交流大国実現」を目指す。また、16年度からの3カ年計画も議論しており「中長期、短期の施策をしっかり分けて考えていきたい」と述べた。

 昨年は「激動の年だった」と振り返り、45年ぶりにインとアウトの旅行収支が逆転したことなどを語った。国内旅行は「北陸新幹線の開業で、新幹線の影響は大きいと改めて感じた。シルバーウイークなどもあり、堅調に推移した」と評価する一方、海外旅行は感染症やテロなどで苦戦し、恐らく前年を下回るとした。訪日旅行については「急速に伸び、課題も見えてきた」と語った。

 16年の市場動向は、国内は北海道新幹線の開通やさまざまな行事などで引き続き堅調に推移すると予測した。他方、「日本人の国内旅行の動きが新しい段階に入ってきた」とし、より本格的な体験や着地型への意向が高まっていると言及。「提供する側としてしっかり商品のジャンルや中身を精査していく時代になった」と述べた。

 海外旅行は「減少傾向は止まらないが、昨年よりも少しは環境がよくなると思う。回復基調は取ることができるのではないか」と述べ、要因としては燃油サーチャージの値下げや、関西国際空港の民営化などによるLCCの増加などを挙げた。

 こうした状況を踏まえJATAの活動は、国内旅行は引き続き東北の回復に尽力する。「震災から5年経ち、いよいよツーリズム業界の出番」と意気込んだ。また、日本人の宿泊旅行は減少している現状もあることから、宿泊旅行の拡大に向け、連泊や長期滞在に向けた仕組みづくりに取り組む。「人の流れを作り新たな価値を生み出し、地域経済を活性化することが我われに求められている。ショッピングやヘルスなど後ろに“ツーリズム”をつけると人の流れができる。力を総動員すると色々な分野に関わることができ、それが観光の裾野の広さだ。この流れを日本人、外国人関わらず国内旅行市場のなかで作っていきたい。それが日本のブランド力を上げる要素になる」と語った。

 懸案の海外旅行は「復活の年」にするため挑戦していく。「昨年の日中韓やアセアンとの2国間協議の実を取っていきたい」と述べた。テロ後、落ち込んでいるフランスは1月14日から視察を行い、ゴールデンウイーク前に復活の流れを作っていきたい考えだ。

 一方、好調な訪日旅行は質の問題が深刻化しており、JATAに旅行者から助けを求める声が寄せられることもあることから、ツアーオペレーター認証制度をしっかりアピールすることや、オペレーターの登録制度の必要性を訴えていく。

 このほか、安心安全マネジメントやコンプライアンスへの取り組み、業法、障がい者差別法など経営課題も対応を進めるとした。

 また、議論が進む民泊の問題については、「安心安全の制度設計を作ってもらい、我われも自由に取り扱えるようにしてほしい」と管理体制を整えることを求める一方、個人的な意見として「地方で民泊を解禁しても、インバウンド客が増えることはない。今でも地方の旅館などには空きがある。地方創生と結び付けるのはエゴ」と持論を展開した。

“相互交流通じて学ぶ”、IT化戦略など業種超えて

内藤耕氏
内藤耕氏

サービス・イノベーターズ・フォーラム2015開く

 サービス産業革新推進機構(内藤耕代表理事)は15年11月27、28日の2日間、東京都・秋葉原で「サービス・イノベーターズ・フォーラム2015―21世紀に求められるサービス産業の像」を開いた。現場の改革を通じて、サービス・イノベーションを目指す企業の経営者や現場の実務者が相互交流と学びの場として毎年開催しているが、内藤氏は冒頭、「参加者同士の相互訪問や交流が活発化している。交流を通じて学んでいくことを大事にしていきたい」と強調した。

 今回は「中小サービス企業のサービス・プロセスの標準化とIT化戦略」をテーマに、医療法人北星会の島野雄実氏らが講演。島野氏は「医療業界では告知は可能だが、広告は不可など差別化が困難な状況にあるなか、サービスに特化した」とし、とくにIT化に力を入れ、インターネットでの診察時間の予約・問診を可能にするなど待ち時間を短縮させることで、小さな子供を持つ親などに好評を得ていった事例などを紹介した。一方、内藤氏は「ITの強みは情報のスピードと思われがちだが、最大の強みは情報が劣化しないこと」など、情報伝達の正確性などを指摘した。

 「これからのサービス企業経営の新潮流」では、酒商山田の山田淳仁氏や滋賀県・おごと温泉「湯元舘」の針谷了氏が講演。山田氏は日本酒の売り方として(1)売れ筋商品を売らない(2)価格競争をしない(3)小さな単位で売る(小口多数)――などと決め、お客や仕入先へのアドバイザーサービスで支持を得たことなどを紹介した。針谷氏は「現状の改革・改善を社風にしていくべき」とし、自館でのさまざまな現場の改善例を説明した。

 「サービス企業の仕組み化とグローバル展開」では、無印良品名誉顧問の松井忠三氏が「小さな改善の積み重ねしか進歩することができない」など、豊富な経験から得た経営哲学を語った。

NIPPON MONO ICHI

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」表彰式が1月22日に東京・新宿の京王プラザホテルで開かれる。

 表彰式に合わせて、旅館・ホテルの売場を見直し土産品の販売拡大を目指す「売場改革プロジェクト」の一環として、中小企業基盤整備機構が支援し開発された全国のモノづくり事業者の商品展示会「NIPPON MONO ICHI」を祝賀会場で実施する。

 販路開拓を支援する中小機構の地域活性化パートナー企業である旅行新聞新社が協力するもので、日本全国の地域の特色を活かした商品をこれまで取引がなかったホテル・旅館やドライブイン・観光施設などに紹介して、新しい売場改革や客室備品のヒントにしてもらうのが狙いだ。気になる商品が見つかれば、ぜひ一度試験的に導入してみてもらいたい。

【古沢 克昌】

野口冬人「温泉・山・旅」資料室、観音温泉に15年12月オープン

観音温泉の鈴木和江社長
観音温泉の鈴木和江社長

貴重な蔵書約3000点展示

 静岡県・観音温泉(鈴木和江社長)は15年12月13日、同温泉敷地内の正運館多目的コーナーの一角に、旅行作家・野口冬人氏が約60年にわたり蒐集してきた温泉や山岳、旅行、民俗などの蔵書約3千点を展示する「野口冬人『温泉・山・旅』資料室」をオープンさせた。鈴木社長は「長いお付き合いをさせていただいている野口先生には色々と教わりました。下田の文化をさらに深める一助になればうれしい」と話す。
【増田 剛】

 旅行作家の野口冬人氏の旅や温泉、山岳関係の資料室を観音温泉で開設する構想は3年前から練られていた。

 蔵書は野口氏が約60年をかけて旅と温泉、山などの取材、執筆で蒐集した各種資料3千点余りで、旅行業界の歴史そのものである。とくに長年の取材活動で集められた、年度別に色分けした約50冊に及ぶファイルに貼り込まれた全国の旅館・ホテル・各市町村発行のパンフレットは、その時代の旅行業界の動きを知る貴重な資料だ。

旅行業界の歴史や動きを知ることができる貴重な資料がずらり
旅行業界の歴史や動きを知ることができる貴重な資料がずらり

 観音温泉の鈴木社長は、「父がこの地に温泉を掘ってから、半世紀になります。野口冬人先生と、竹村節子先生がリュックサックを背負って来られたのは、私が娘をおんぶしているころでした。それから、長いお付き合いが始まりました」と振り返る。「私が野口先生の言葉で一番感動したのは、『伊豆急行線は単線で不便でしょう?』と聞いたときに、野口先生は『それが旅なんですよ。利便性は旅ではない』とおっしゃいました。

 その言葉を受けて、旅をして自分を切り替えるのは時間なのだと気づきました。それに加えて、伊豆の空気や豊かな自然を求めて観音温泉に来て下さる方々の思いに私たちは応えていかなければならないと思いました」と語る。「観音温泉はただの山でしたが、野口先生と長いお付き合いをさせていただくなかで、色々と勉強をさせてもらい、ここまで皆さんに愛される旅館になれたと感謝しています」。

 さらに鈴木社長は、「下田は“黒船来航”の地であり、歴史的にも文化豊かな土地。この地にある観音温泉で、野口冬人『温泉・旅・山』資料室を開設することによって、文化をさらに深める一助になれたらうれしいですね」と話す。

 同資料室がオープンした昨年12月13、14日は野口氏も加盟している日本山岳文化学会・文献分科会(中岡久会長)の会合が観音温泉で開かれた。同会は全国の山の図書館や博物館などの探訪を重ね、「岳書のたより」などに10数年にわたり報告や発表を重ねており、各方面から高い評価を受けている。当日は資料室オープンを記念して、野口氏の講演も予定していたが、急きょ体調不良により本人は参加できなかった。

 野口氏は「すべての蔵書は展示できないが、今後機会を見て入れ替えなどをしていきたい」と語り、「このようなかたちで資料館を設置していただいた観音温泉の鈴木社長には大変感謝している」と話している。

日本山岳文化学会・文献分科会の会合(12月13日)
日本山岳文化学会・文献分科会の会合(12月13日)

DVD「日本でいちばん美しい町並」、関東・甲信越編を刊行(工学院大学)

「関東編」と「甲信越編」
「関東編」と「甲信越編」

 工学院大学(東京都新宿区)の伝統的建造物群アーカイブ実行委員会は昨年12月1日、地域観光活性化のツールとしてDVD「日本でいちばん美しい町並」シリーズ第3巻「関東編」、第4巻「甲信越編」をリリースした。

 同DVDシリーズは全国100カ所を超える国選定重要伝統的建造物群(重伝建)を観光資源として映像化。江戸時代から保存されてきた我が国独自の日本建築と美しい町並をハイビジョンで紹介する。今年度は東建コーポレーション(愛知県名古屋市)の協賛を得て、産学連携プロジェクトで制作した。同実行委員会は「2020年東京オリンピックを目指して、国内観光客だけでなく、外国人観光客誘致のためのイベントや、旅行事業者のツアー企画にも活用してほしい」としている。なお、頒布金の一部は東日本大震災の被災地復興に役立てる。

 既刊の第1・2巻は近畿編。これに加え、第3巻の関東編では、蔵の町埼玉県川越市、小野川の流れに沿って白壁が映える千葉県香取市佐原の商家町、例幣使街道が日光東照宮に通じる栃木県栃木市、絹織物が築いた群馬県桐生市の町並、筑波山の裾野に開けた茨城県真壁、養蚕集落の名残を残す群馬県中之条町など6地区。

 第4巻の甲信越編では、千曲川の流域にタイムスリップしたように残された長野県東御市海野宿、漆器の町長野県木曽平沢、海抜1250メートルの高地で繁栄した長野県奈良井宿、住民が守り続けた長野県南木曽町妻籠宿、北アルプスを望むお伽の里を思わせる青鬼村、日蓮宗の総本山身延山の天空に栄えた山梨県早川町赤沢の講中宿、千石船が築いた栄華の跡新潟県佐渡市宿根木など7地区が収録されている。

 1・2巻セット、3・4巻セットいずれも5400円(税込、送料別途)、1―4巻セットは1万800円(同)。詳しくは専用HP(http://kogakuin-denken.com)まで。

 問い合わせ=電話:0120(04)3737。