〈旬刊旅行新聞11月1日号コラム〉代替が利かない―― 組織の中で守備範囲の広いスタッフ

2021年11月1日(月) 配信
 
 

 最近、血圧が高くて、裏通りの古びた病院に通っている。外観は昭和的。担当の女性医師も、このIT社会全盛のなか、すべてアナログで通している。私の話したことをパソコンに打ち込むのではなく、小さな文字でノートに書き写す。

 
 そして、手元にある分厚い医薬書をめくり、きっちりと読み込んでから適当と思われる薬を処方してくれる。先生が医薬書のページを指先でめくる間、手持ち無沙汰な私はつい、先生の横顔を盗み見している。

 
 いや、でも、懐かしい風景である。今は何でもスマートフォンで調べてしまうが、医療の専門家であるのに、昭和の中学生のように真面目に書物をめくる白衣の姿は、とても誠実で、信頼できるように映ってしまう。

 

 
 私の三男坊は航海士で、海図など専門的な書籍が山ほど積み重ねている。義理の妹は看護師で、医療関係の書籍がたくさんあった。こういった特別の知識と経験が必要な道を歩む人たちは、何となく生きてきて、これからも何となく生きていく私には、どこか羨ましく思える存在なのだ。

 
 先日、カスタム専門のバイク屋に行った。そこの店は、通常はやってくれない難易度の高いカスタムにも相談に乗ってくれるので、心強い。私の最も苦手分野である複雑な電気の配線なども見事に仕上げてもらえる。さすが専門家だと感心してしまう。

 
 また、現在、書籍の出版に向けて表紙デザインや色指定で、デザイナーに依頼した仕事が数点あったが、配色などプロの仕事ぶりに魅了されてしまった。やはり素人があれこれ悩むより、その道の専門家に頼んだほうが安心だし、仕事も早いと再認識した日々だ。

 

 
 特殊で高度な知識と技量を持つ専門家は、その専門性ゆえに、一般的に報酬も高い。では、サービス産業はどうだろうか、と考えてしまう。

 
 例えば、旅館やホテル、レストランや飲食店などのホールスタッフは、それほど特殊な技量や知識がなくても仕事は可能だ。花形は、シェフや調理長であり、ホールスタッフは、いくらでも代替が利く存在として扱われることもあるのではないだろうか。

 
 しかし、今やサービス業ではマルチタスク化が一般化してきている。一方で専門性の高い分野では仕事がさらに細分化されている弊害もあると聞く。

 
 そうすると、守備範囲が広いスタッフのほうが、組織的な動きの中では、重宝されるべき存在なのではないかと思う。

 
 電話や接客、レジ、清掃、苦情対応も、臨機応変に動けるスタッフは一見、スター性はないかもしれない。だが、代替が利くのは、むしろシェフの方かもしれない。

 

 
 医師やエンジニアなどは特殊な技術を持っているが、同様の技術を有する別の人でも依頼できる。しかし、日常的な業務をそつなくこなし、大変そうな素振りもみせない人は、突然いなくなったときに機能不全を起こし、穴の大きさに気づく。

 
 スポーツの団体戦を見ても、サッカーのボランチ、野球のショートストップ、バレーボールのレシーバーが窮地を救う守備範囲の広さに感動する。

 
 サービス業も繁忙時間はさながら戦場だ。足を止めず、視野と守備範囲が広いスタッフがいるだけで、現場の士気は高まる。

 

(編集長・増田 剛)

【特集No.595】箱根塔ノ沢温泉「一の湯」 マニュアル化で業務工程を明確に

2021年11月1日(月) 配信 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の9回目は、神奈川県・箱根塔ノ沢温泉「一の湯」社長の小川尊也氏が登場。一の湯は、スタディスト(鈴木悟史社長)のマニュアル作成・共有システム「ティーチミー・ビズ」を活用し、毎日マニュアルを更新している。内藤氏と「マニュアル化で業務工程を明確化する」取り組みについて語り合った。

【増田 剛】

 ――小川社長は一の湯に帰る前は何をやられていたのですか。

 小川:大学を卒業後、イタリアンレストランチェーンのサイゼリヤで7年間、店長など店舗オペレーションに携わっていました。
 2015年に箱根は噴火の警戒レベルが上がり、先代(父)から「戻ってきてほしい」と言われました。「跡を継いでくれ」とは一度も言われたことは無かったのですが、その一言が胸に響き、即座に宿に帰ることを決意しました。
 15年から1年間、一の湯の現場で商品開発部の立ち上げや、PB(プライベート・ブランド)などにも着手しました。17年に16代目の社長に就任しました。

 内藤:なぜサイゼリヤに入社したのですか。

 小川:一の湯がサイゼリヤと同じように旅館をチェーン展開していることは、子供のころから知っていました。セントラルキッチンが存在し、予約センターが分離しているなど、普通の旅館とは違うことは意識していました。「チェーンストアを自ら経験してみたい」という思いがあり、さまざまな選択肢の中で、食を通して日常の豊かさを提案するサイゼリヤの理論やビジョンに惚れて入社しました。

 内藤:サイゼリヤでは具体的にどのようなことをやられていたのですか。

 小川:店長としてお客様と対峙しながら、現場のコントロールや「どうしたらお客様に喜んでいただけるか」を追求していました。「何があっても、お客様、従業員、取引先、株主のために動く」という、理念にブレがないことを徹底的に学びました。
 一の湯に入って内部を見ると、まったく違っていました。全社員に「一の湯の経営理念は?」と質問しましたが、誰1人言えませんでした。サイゼリヤでは新卒を大量採用し、入社後1カ月間はホテルに「館詰」で徹底的に教育していきます。

 内藤:当時の一の湯を、あえて批判的に課題を挙げていただくと、他の旅館も共通した課題として参考にもなります。

 小川:3S主義という部分、つまり「標準化(Standardization)」「単純化(Simplification)」「徹底化(Specialization)」が何一つできていませんでした。
 業務マニュアルは一応ありましたが、我流でやっていました。どこの店舗に行っても物の配置が異なっていました。調理方法や、道具もバラバラでした。「これが正しい」という1本の軸、「正解」を作ってあげないと、商品の品質がブレますし、お客様の印象も変わってきます。
 まずは経営理念とマニュアルを作ることからスタートしました。マニュアルをバインダーにしていましたが、常に差し替えていくべきものが、2015年に宿に入ったとき、前回の更新が06年というような状態でした。

 内藤:盛り付け方がバラバラなど、実際にクレームなど問題は起こっていましたか。

 小川:現場で問題が発生していたかどうか、それすらも分かっていなかったと思います。「報告する」という概念がなかったので、トラブルは現場で対応して、それで完結していたと思います。今はクレームを含め、お客様の声が現場からたくさん上がってきます。
 離職の問題もありました。新入社員も2、3年で辞めてしまう理由は「ずっと放置され、教育をされないから」です。
 教育にもつながることですが、一の湯には、セントラルキッチンに板前がいますが、各店舗にはいません。そのうえで、原材料の段階から消費者にわたるまで全責任を一貫して持つ「バーティカル・マーチャンダイジング」の考え方を取り入れ、産地から食材を探し、自分たちが提供したい商品を創る「商品開発部」を立ち上げました。
 そこでカタチになったのがコーヒーやカレー、ラーメンなどの自社独自の商品開発です。夕食も朝食も「我われが本当に出したいものを出す」方向に動いています。

 内藤:バーティカル・マーチャンダイジングは面白い考え方だと思います。チェーンストアでは当たり前の考え方ですが、旅館業界ではこれまであまり議論されることはありませんでした。

 小川:もう1つ、離職の課題解決には、朝働いて、中抜けで5―6時間休憩して、夜働くというのが旅館の一般的な働き方ですが、中抜けを無くしました。「朝、昼働いて帰る」「昼、夜働いて帰る」というシフトに変えています。

 内藤:中抜けは問題だと感じたのですか。

 小川:若い人たちは目を輝かして入社しますが、2、3年経つと身体的な疲れと、精神的にも放置され、次第に目標を失っていく姿が伝わってきます。しっかりと教育ができる環境を整え、愛情をかけてあげるというのがテーマです。
 清掃はアウトソーシングしていたものを内製化しています。中抜け対策の1つとして、昼の時間帯に働けるイタリアンレストランも始めています。現在は、長い中抜け休憩が無い8時間勤務で帰れるようにしています。

 内藤:必然的にマルチタスク化になります。

 小川:フロントだけ、キッチンだけ、という概念がない会社ですので、マルチタスク化への抵抗はありませんでした。

 内藤:以前は表の仕事がマルチ化だったと思いますが、清掃など裏側の仕事もマルチ化されているのですね。
 フロントなどのスタッフに清掃業務もやるように言われたときの反応はどのようでしたか。

 小川:抵抗なくやってくれました。旅館業のサービスでは、「お客様の滞在時間が最も長いのが客室です。その客室を綺麗にするというのは、一番のサービスです。やりがいをもってやってほしい」とスタッフには伝えています。
 アウトソーシングしていたときに、客室に髪の毛が落ちているなどクレームがたくさんありました。現場のスタッフはとても困っていたので「清掃を自分たちでやることでお客様が喜んでくれる」とやりがいを感じていると思います。

 内藤:まったく同感です。清掃する人がいるから、フロントはお客に客室を渡すことができる。マルチ化するということは「同一労働同一賃金に近づけていかなければならない。仕事の上下はない」ということです。
 生産性を上げていき、ムダがなくなっていくと、1つの仕事が欠けるだけでプロセスが止まってしまいます。すると、「フロントが上で、清掃が下」などという概念はなくなります。すべてが歯車となって動いていく状態では、同一労働同一賃金にせざるを得なくなります。コロナ禍でそのことに気づいた宿は多いのではないでしょうか。

 小川:例えば、小柄な女性が清掃に入るときに、手が届かなかったり、体力的にムリが出たりするケースがあります。そういうスタッフには、朝はセントラルキッチン、午後は盛り付けをやってもらうなど、総合的なマルチタスクを実現しており、多様な人が働ける環境になっているのが、強みだと思います。

 内藤:中抜けをしなくて済むように、色々な仕事を作っていったということですね。今でもアウトソーシングしているものはありますか。

 小川:船盛の段階で納品されてくる刺身くらいです。

 内藤:セントラルキッチンはどのくらいの作業行程を残しているのですか。

 小川:野菜を切って10人前のパックにまとめる。店舗が発注して40人前であれば4つを当日に店舗に納品する。そして店舗では皿に盛り付けて、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく提供する。

 内藤:夕食で提供される蒸し物や揚げ物はどうしているのですか。

 小川:各店舗にスチームコンベクションがあるので、具材をまとめてパック状態にし、最終的な加熱工程だけを現場で行うようにしています。天ぷらも現場にフライヤーがあるので、現場で衣をつけて揚げます。

 内藤:わりと多くの工程を現場に残してあるのですね。

 小川:それもこれから無くすことを検討しています。セントラルキッチンですべての盛り付けを終わらせて、皿ごと配送することを実験的にやっています。店舗の労働時間を削って、盛り付けの時間を、お客様への接客時間に充てるという考えです。

 内藤:効果はありそうな感じですか。

 小川:朝食の皿をすべて同じにし、小鉢を大量に出すスタイルに変えました。和食は形の違うお皿がたくさんあり、効率が悪かったのですが、松花堂弁当のように箱に小鉢が並ぶようにし、それを作って配送すれば効率が良くなるのではないかという仮説のもと、実験しています。

 内藤:食器洗浄はどちらがやっていますか。

 小川:店舗で少しやったあとに、セントラルキッチンで最終的な洗浄を行っています。

 内藤:工程を分割して現場に持っていくものと、集約するものに分けるのは面白いですね。

 小川:皿の移動はムダな部分があるので、まだ実験の結果はわからないです。

 内藤:セントラルキッチンで盛り付けが多ければ体積は大きくなるので運搬量は増えていく。一般的な1軒の旅館であれば、「盛り付け工程をいかに食事処に近づけるか」を自分は考えます。調理工程はダクトの問題もあり、すぐには解決できませんが、盛り付けは衛生管理をしっかりとやれば、現場に近い方がいいと思っています。

 小川:「仙石原ススキの原」の店舗は67室あり、盛り付けは2人で4時間×2(本館と別館)でやっています。その1日の16時間の労働時間をセントラルキッチンでまとめてやれば、3―4時間で終わる。配送の分を加味しても10時間くらいの削減はできるのではないかとの考えです。失敗したら別のやり方に柔軟に対応していこうと考えています。

 内藤:私が心配しているのは、体積の膨張による「運搬中の崩れ」の問題です。従来型の大型旅館がまとめて盛り付けして、ラップを掛けて温蔵庫に入れるやり方に近いなと感じた部分もあります。ですが、多くの宿が料理人任せにしている部分をしっかりと考えてチャレンジしていますね。

 ――宿に帰ってくる前とその後では1店舗当たりのスタッフの数に変化はありますか。

 小川:標準店舗というものを3店舗定めていて、その3店舗の生産性は、とても高いです。なぜかというと、フロントとキッチンが真横にあるので、キッチン作業をしていても、いつでもフロントに駆け込めるように動線が短い。一方、一の湯本館のように古い建物や、保養所を買収した施設などは人時生産性の数値は高くありません。
 先代がつくり上げた標準店での人数の掛け方は素晴らしいものがあると思っています。

 ――一の湯の教育とはどのようなものですか。

 小川:前提として、現在の10店舗という規模ではなく、将来的には200店舗への拡大を目指しており、そのためにはスペシャリストの人材が大量に必要になってきます。ヘッドハンティングするのも1つの手法ですが、我われが人材を育てていかないと、この先はないと思っています。
 長期的な視点で見ていくと、今教育体制を構築していかなければ間に合わないので、投資をしていく考え方です。各店舗を任せられる総支配人や、その仕組みを作る間接部門なども、配置転換しながら育てていかなければなりません。
 私の側近に8人ほどの幹部がいます。私の想いを伝え、それを翻訳していくというかたちです。

 内藤:OJTもやられていると思いますが、現場の支配人に対する評価指標は変えたのですか。

 小川:評価指標自体は変えていませんが、教育プログラムは変えました。マニュアルの全項目がチェックリストになっています。入社半年後、1年、2年目にも段階的に課題を与え、副支配人になるためにクリアすべき課題も提示しています。
 目標を明確に設定し、意欲がある人は良い点を取りますし、意欲のない人は点数が低い。ステップアップを目指す人と、現状のままで良いという人がいます。例えば、「主任になればこれだけ給料が上がります」、「順調に昇進していけば10年後にはこれだけの給料になります」と示しています。やるかやらないかは本人次第です。

 内藤:とても分かりやすいですね。

 ――宿に入られて6年の間に順調に改革は進んでいますか。

 小川:順調だったのですが、台風や新型コロナで大打撃を受け続けています。私が帰ってきて3店舗増え、あと2店舗増える予定でしたが、この2年間で計画変更を余儀なくされました。
 人件費が頭でっかちになっている部分もありますが、ここ数年、短期的に見るとこれを圧縮していかなければならないと考えています。社員教育の流れを止めることはありませんが、一時的に採用をストップさせざるを得ないと思っています。

 内藤:現在箱根に10店舗ですが、将来的には箱根を出ていくということですか。

 小川:その思いはあります。箱根で温泉旅館を展開していますが、温泉旅館に限らず、シティホテルや、ビジネスホテルなどさまざまな宿泊形態がありますので、それぞれにブランド展開をしていきたいと考えています。分かりやすく言えば、外資系ホテルチェーンのように複数のブランドを保持し、それぞれにセグメントやコンセプトが異なる宿泊施設を展開して、お客様のニーズに応じた商品提案をする。もちろん、創業してから391年続けてきた温泉旅館の強みも生かしていきたいと考えています。
 今は資産を持っていますが、将来的にはオペレーター(運営会社)になりたいと思っています。

 内藤:極端に言えば、マニュアルと支配人1人を施設に送り込むイメージですね。

 ――ではマニュアルについてのお話をお願いします。

 内藤:サービス業では「アンチマニュアル化」の人が多いのが特徴です。「ホスピタリティはマニュアル化できない」と言われます。一方で、「皆が好き勝手にやってバラバラでいいのか」と言えば、それも否定される。
 おそらく、個別対応が大事なサービス業にとって、マニュアル化は画一化と勘違いされています。「個別対応をするためのマニュアル化」と捉えるべきです。
 マニュアル化するということは、「業務プロセスを明確化する」ことなので、マニュアルがないと教育ができない。IT化や評価もできない。教育とIT化と評価は、マニュアル化するうえで最も大事なことです。
 画一化とはまったく関係ありません。

 小川:時間を掛けてお客様と相対する時間を設けるために、作業を単純化、標準化、徹底化していく。作業とサービスは別で、作業の部分をマニュアル化するという考えです。

 内藤:一方で、どの経営者も「マニュアルを作れ」と言っていると思います。
 一の湯でも、何年もマニュアルが変更されていない。そこを変えようと、スタディストのマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)という仕組みに出会い、コラボレーションをしてきたというところですか。

 小川:一の湯に帰って「1年でマニュアルを作成しよう」との思いがあり、すべての作業を洗い出して作りました。冊子で作ったので、ものすごい大量になりました。
 1年に1度更新するにしても、全店舗200冊分を更新しないと改善活動につながらない。「これは大変だ」と悩んでいたときに、ある勉強会でスタディスト(東京都千代田区)の鈴木悟史社長の講演を聴き、「これだ」と思いました。幹部を全員引き連れて体験会に行き、すぐに契約しました。

 内藤:今はどのようなに、日常的に使われていますか。

 小川:すべてです。何かあればティーチミー・ビズを開いています。この10月に朝食と夕食もメニュー内容を変更しましたが、盛り付けの行程も、ティーチミー・ビズで通達し、共有しています。

 内藤:1年に1度更新するという話でしたが、今はどうですか。

 小川:毎日更新しています。何か問題があれば、すぐに実験・検証してマニュアルの文章を削除して、加えるという作業をしています。

 内藤:実験・検証するには良い・悪いという一次元の軸が必要です。「考え方の違いです」というのは検証になりません。どういう風に検証されるのですか。

 小川:例えば、スプーン1杯の調味料を入れる場合、グラム数がブレる可能性があるケースでは、違う道具を使って検証してみます。15㌘を計れる道具があれば、そちらに変える。
 紙のマニュアルでは、1年後に更新するためのチェックリストを作っていましたが、膨大な分量になって頭を抱えていました。

 内藤:製造業の場合は、「時間が短い方が身体的にもラクで、良いこと」という軸があります。また、常に「作業時間を入れなさい」と言われます。そのような評価基準は各ページに入れてあるのですか。

 小川:「なんのためにする作業か」という、目的と意義は項目の頭に記してあります。マニュアルには標準作業時間も明記しています。

 内藤:品質の平準化のために、マニュアルを作っているということですね。

 小川:この人の料理は美味しいけど、この人が作ったものは不味いというのが一番良くないと思っています。ティーチミー・ビズを導入して劇的に変わりました。

 ――スタディストが提供する「ティーチミー・ビズ」とはどのようなサービスですか。

 鈴木:小川社長の話を聞いて、マニュアルがあるべき姿になっていて、とてもうれしく思っています。
 マニュアルはその内容が再現され、改善され続けて、初めて役に立つものです。残念ながら多くの経営者はマニュアルを作ることが目的になっています。
 ティーチミー・ビスはマニュアル作成・共有システムで、リアルタイムのマニュアル更新や共有に特化したサービスです。写真や動画など視覚に訴える分かりやすいマニュアルを簡単に作成できるのが特徴です。
 各社がスタッフに支給するスマートフォンにティーチミー・ビズのアプリケーションを入れると、作業の合間にも確認できます。マニュアルの作成権限や閲覧権限を細かく設定することも可能です。
 新たなマニュアルが作成されたときには、プッシュ通知でタスクとして配信もでき、閲覧、完了状況を本社で把握することで、作業指示の徹底や実行管理にも役立ちます。
 ある会社では、新人スタッフに「1回しか教えないからな」という先輩の言葉にプレッシャーを感じていた状況がありました。しかし、ティーチミー・ビズを導入すると、スマートフォンなど手元のデバイスで、必要なときにビジュアルで業務手順を確認することができるので、「教育の効率と標準化が飛躍的に進んだ」と報告されました。

 ――現在、ティーチミー・ビズを導入している企業はどのくらいありますか。

 鈴木:約2千社で製造業が最も多く、小売業が続きます。拠点が多く人の入れ替わりの多いところと相性がいいですね。
 費用は月額10万円。つまりアルバイト1人分で、「全社員に分かりやすく手順を説明できるスタッフを雇った」と考えたら安いと思います。
 最初は世の中のハウツーが集まり、共有できるようなサービスを作れないかと思いました。
 ティーチミーとは、「あなたの知っている手順を瞬時に教えて」という意味が込められています。BtoBとBtoCの両面を狙い、趣味で料理の仕方や、ネイルの塗り方、キャラ弁の作り方などを投稿してもらうスタイルからのスタートでした。「ビジュアルベースの手順書を瞬時に共有できる」という価値を広めたい――この熱意だけでアプリを自社開発し、2年掛けてリリースしました。
 社内の業務手順の標準化を決めても、第三者に伝わらなければ何の価値もありません。アプリ上で動画や画像を仕様書で共有することで、全体のスキルアップにつながります。

 内藤:一の湯でも何か問題があれば、ティーチミー・ビズに戻るという日常になっているのですね。

 小川:月ごとの設備点検レポートでも、劣化した箇所の写真を撮って共有、対応状況をコメント機能で報告するなど、役立てています。清掃の悪いところを写真で撮って赤でマーカーして指摘し、全スタッフに共有するといった多様な使い方ができます。
 一の湯ではお客様もこのマニュアルが見られるようにし、「浴衣はここにありますよ」「大浴場は〇〇時まで」など店舗の情報はすべてQRコードを貼り付けて、お客様が自らティーチミー・ビズにアクセスするというスタイルです。
 客室に置いている紙のファイルだと入れ替える手間も生じます、今はそれがありません。

 鈴木:工場の壁にQRコードを複数貼り、設備が故障したときに、ファイルを探しに行くのではなく、スマートフォンをQRコードにかざしたら、自分が知りたい設備のメンテナンスの手順が出てくる仕組みなので、どんどん活用すべきだと思います。

 小川:温泉設備のハンドルや配管のところにQRコードを貼るということを、今まさにやろうとしています。緊急性があったときにすぐに見られるというのがいいですね。手順書を探している時間がないですから。

 内藤:ハサミを置くときに、ハサミの型を作って置くことがありますが、「型」というのは「情報」なのです。現場に情報を埋め込むという考え方で、これはとても大事なことです。
 実際の効果はどのようなものですか。

 小川:以前は使われていなかったマニュアルが今、使われているというのは間違いないですね。皆自分のデバイスを見ながら業務を行っています。

 内藤:セントラルキッチンでの調理や、盛り付けの手順も入っているのですか。

 小川:すべての手順が入っています。調理人ではないスタッフも、デバイスを見ながら天ぷらを揚げています。

 内藤:「マニュアル」=「作業を固定するもの」というこれまでの考え方に対し、「マニュアル」=「業務改善の道具」という考え方に変えているわけですね。

 ――ありがとうございました。

安来市観光協会 ICカードセミナー 車社会でJR利用促す

2021年11月3日(水) 配信

ICカードやネット予約などを学んだ

 島根県の安来市観光協会は9月25日と10月9、30日の3日間、地域住民に向け、JRの交通ICカードの使い方やお得な切符などをレクチャーするセミナー「JRを使いこなすには?(入門編)」を実施した。安来商工会議所が主催する「安来まちゼミ」のなかの1コマ。車社会の山陰エリアでJRの利用を促した。

 同セミナーはJR安来駅に隣接した観光交流プラザ2階のギャラリースペースで行い、各回6人が参加した。安来駅の清水久年駅長が講師となり、ネット予約の仕方や遠隔による窓口サービスでの切符の発見方法などをレクチャーしたほか、観光列車「あめつち」のお見送りなどを体験した。

 参加者は「コロナが落ち着いたらお得なきっぷで旅行したい」「あめつちに乗りたい」などセミナーに満足したようすだった。

 同観光協会の門脇修二事務局長は「知っているようで知らないことを学べたと好評だった。今後も安来駅と連携しながらさまざまな取り組みを進めていきたい」と話した。

大阪観光局 NMB48を起用 教育旅行の広報動画

2021年11月5日(金) 配信

右から溝畑理事長、泉さん、塩月さん

大阪観光局(溝畑宏理事長)は10月8日、体験型教育旅行プログラム「大阪B&S(Brother&Sisters)プログラム」の広報動画に、アイドルグループNMB48のメンバーを起用したと発表した。

 同プログラムは昨年11月、大阪観光局とJTB、留学生支援コンソーシアム大阪の3者で始めた。大阪を訪れる国内外の教育旅行団体に、大阪で学ぶ大学生や留学生がガイド役となり、兄弟姉妹のように交流しながら、大阪の魅力を紹介する。コロナ禍で教育旅行の中止や延期が相次いだが、収束後に向け、広報動画を活用し、PRを強化する。

 動画はNMB48のメンバー5人が学生役となり、留学生のガイド役のもと道頓堀や大阪城、通天閣・新世界などの観光スポットを体感する内容だ。同局の公式ページで公開している。

 同日開いた記者会見に、NMB48の泉綾乃さんと塩月希依音さんが出席。泉さんは「留学生と楽しくコミニュケーションできた。このプログラムを通じて大阪の人の優しさが伝わるのではないか」。塩月さんは「もっと長い時間、留学生と一緒に過ごして違った文化を学びたいと思った」などと話していた。

 なお、同プログラムでは校外学習を含め今年度と来年度で計6校の実施が決定している。第1弾として、10月下旬に大阪府下の私立高校が、コロナ禍で海外への語学研修ができないため、代替として同プログラムを利用し、まち歩きを実施した。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(201)」 日本遺産サミットと地域連携(石川県小松市)

2021年10月31日(日) 配信

「こまつの石」などを常設展示する小松市博物館

 2016年から始まった「日本遺産サミット」。今年は11月13~14日の両日、石川県小松市で開催される。

 日本遺産サミットは、日本遺産の意義とストーリーを地域の人々に身近に理解して頂くとともに、各認定地域の交流を通じて、日本遺産活用の事業手法などを相互に学び研修するという2つの意義を持っている。

 従って例年、講演やシンポジウムのほか、参加地域による公開講座やPRブースの設置など、日本遺産ブランドの広報活動が展開されてきた。今年の小松サミットでは、これらの定番プログラムに加えて新たに2つの取り組みが展開される。

 1つは、古くからの「ものづくり」技術をもとに、小松の現代の産業をアピールする「GENBAプロジェクト」の開催である。これは九谷焼をはじめ、古くからある多様な工場・工房のオープンファクトリー化の事業であり、3年前から準備を進めてきた。

GENBAプロジェクト拠点の一つ「EATLAB」

 小松の「石の文化」は、地元八日市遺跡など、約2300年前から続く碧玉、瑪瑙(メノウ)、水晶などものづくり加工技術を起源とする。良質の凝灰岩石材や九谷焼原石の陶石など優れた石の加工技術も生み出された。石の加工技術は、古墳の石室にも見られるが、近世以降は城郭や石蔵・石塀などの都市づくり技術にも多用された。今でも石材を切り出す幻想的な石切り場も残る。近世になると、金や銅鉱脈の存在から尾小屋鉱山や遊泉寺鉱山などの鉱山経営も盛んになる。これらの鉱山用の機械を製造した小松鉄工所が、今日の世界的重機メーカー、コマツの原点でもある。

 加賀前田家3代利常公は、産業政策とともに文化を重視し、九谷焼をはじめ瓦、茶、畳表、加賀羽二重(絹織物)などを奨励した。とくに絹織物(小松絹)は機業地としての勧業奨励が大きな後押しとなった。これらの産業をルーツとする現代の工場・工房を開放する「GENBAプロジェクト」は、今回の小松サミットの大きな特色である。

 もう一つは、日本遺産物語として共通テーマをもつ地域同士の研究交流分科会の開催である。小松の石の文化とも共通する宇都宮市、福井市・勝山市、笠岡市など備讃諸島、八代市などの「石の文化」。繊維・織物の文化をもつ八王子市、桐生市、与謝野町、倉敷市、十日町市などの「繊維・織物文化」。多様な食文化物語のある小浜市、北総4都市、湯浅町、高知県中芸、長崎市などによる「食の文化」である。

 日本遺産は地域の文化財などをつなぐ歴史文化物語であるが、これらは、もともと地域を越えて深いつながりを持ってきた。北前船のような「交易」をテーマとする物語だけでなく、それぞれの地域が今回のような機会をきっかけに研究を通じた地域間交流をするきっかけとしてほしい。

 小松の日本遺産サミットの「現場」に是非ともご参加頂きたい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(10月号)」

2021年10月30日(土)配信

http://zoomjapon.info

特集&主な内容

 ズーム・ジャポンでは、毎年秋には日本の食文化を紹介しています。これまで取り上げたテーマはお茶、お酒、ビール。この10月号では、お米に注目しました。まずは産業としても主食としても危機にある日本のお米の現状を解説。お米マイスターであり、米穀店も営みながら、日本米のために尽力する西島豊造氏にもお話を伺いました。能登半島の当目地区も訪れ、伝統を守りながら米の栽培に取り組む活動を紹介しています。連載のレシピコーナーでは、既にOnigiriがテイクアウトの選択肢になってきたフランスで、フランスで手に入る食材でもできる「おにぎらず」の作り方を紹介。旅のページでは、まだフランス人にもあまり知られていない能登半島を取り上げ、棚田の絶景や夏の祭り、そしてもちろん輪島塗を取り上げました。

〈フランスの様子〉2021年夏の国内旅行消費がコロナ以前の2019年以上に

10月6日付の経済紙Les Echos(レ・ゼコ−)のウェブサイトより。「ツーリズム:リンセによると、この夏、フランス国民は気を抜いた」

 フランス国立統計経済研究所(L’Insee:リンセ)が発表した速報によると、2021年7月と8月に、フランス国内で宿泊・外食・娯楽関連で使われたクレジットカードの消費額が、コロナ禍以前の2019年を上回ったという。◆フランスではこの夏、日本と同じように感染症が再拡大していたが、衛生パスの運用も始まっていた。海外旅行もEU規格の証明などがあれば可能ではあったが、以前は海外旅行をしていた人たちも国内にとどまったことで、フランス国内で過ごす人が多くなり、それが消費額に現れた。◆具体的な数字はまだ発表されていないが、消費額のほか、宿泊数も2011年7月以来の記録的な数字だという。◆ただし、もちろん外国人旅行客は激減、そしてパリやパリ周辺地域は敬遠されて、この恩恵を受けていないという。◆ちなみにフランスでは、日本のようなGo Toキャンペーンはない。政府や自治体の補助はもちろん、企業などからのプロモーションがなくても、これだけ制限された生活が続けば、フランス国民は進んで外食に行くし、旅行にも行く。◆年間5週間の有給休暇を完全消化するフランスと日本の違いだろうか。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

国交省が貸切バスの安全・安心な運行へ取り組み推進 需要回復に備える

2021年10月29日(金) 配信

運賃の下限割れなどを防ぐため情報の周知再徹底はかる

 国土交通省は10月29日、「安全・安心な貸切バスの運行に向けた取り組み」を推進すると発表した。新型コロナウイルスの感染状況が改善し、貸切バスを用いた旅行需要が回復するとみられる。こうしたなか、改めて安全な輸送の確保をはかるために運賃の下限割れなどが起こらないよう、関係各所へ周知の再徹底をはかるのが狙い。

 国交省は「旅行需要が回復するのに備え、貸切バス事業者だけではなく国やバス業界、旅行業界全体が改めて、安全・安心の確保に向けた意識の向上と、さらなる取り組みの実施が必要になる」と判断。バス事業者や旅行会社、各協会へヒアリングを行い、官民が連携して取り組むべき4つの安全対策をまとめた。

 適切な安全投資を確保するための取り組みは、国による監査を通じ、運賃の下限割れを防いでいく。下限割れ運賃通報窓口や、貸切バスツアー適正取引推進委員会通報窓口のホームページリニューアルの再周知などを実施する。

 バス事業者への安全対策徹底の指導は、国や適性化機関が安全講習会や街頭指導などを行う。

 また、輸送の安全をチェックする取り組みとして、「安全運行パートナーシップ宣言」「輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン」の認知・遵守状況を事業者が自己点検するとともに、再周知をはかる。休止事業者らには国が再開時を捉えて自己点検を呼び掛けていく。

 このほか、バス・旅行事業者やバス利用者など関係者に必要な情報の周知を再徹底する。

旅工房、「ハワイ旅会」を出展 オンライン旅行博覧会で

2021年10月28日(木) 配信

オンライン旅行EXPO2021秋内で実施する

 旅工房(高山泰仁会長兼社長、東京都豊島区)は11月19日(金)~21日(日)、日本最大級のオンライン旅行博覧会「オンライン旅行EXPO2021秋」に出展する。同社はこのうち20日(土)に、ハワイ・ワイキキから生中継で行われるオンラインツアー「定番スポットをお散歩!ハワイ旅会」を実施する。

 「ハワイ旅会」は、毎回700人以上の申し込みがあるという、同社主催のオンラインツアー「オンライン旅会」の中でもとくに好評なもの。今回は、ダイヤモンドヘッドが見えるカピオラニ公園からスタートし、ワイキキビーチ周辺を散歩しながら定番スポットを生中継で紹介する。最新のワイキキや店情報も満載で、運が良ければハワイのサンセットが見られるかもしれないとアピールしている。

 催行時間は、日本時間で午前11時50分~午後1時まで。参加無料。なお、今回のハワイ旅会の参加には、EXPO主催企業「ロコタビ」の無料会員登録が必要となる。

JALら3社で北海道のアウトドアスポーツツーリズム推進へ

2021年10月29日(金) 配信

JALとモンベル、JR北海道がジャパンエコトラックの冬版ツアーを企画

 日本航空(JAL、赤坂祐二社長)とモンベル(辰野勇会長、大阪府大阪市)、北海道旅客鉄道(JR北海道、島田修社長)の3社はこのほど、アウトドアスポーツを通じて北海道の自然を体感する旅行商品「JAL×ジャパンエコトラック ダイナミックパッケージ」の冬版を売り出した。

 JALとモンベルは2018年2月に、地域活性化に関する連携協定を締結。これまでもアウトドアスポーツツーリズムの推進を行ってきた。今回は、ジャパンエコトラック推進協議会が推進する「トレッキング・カヤック・自転車など人力による移動手段で、日本各地の豊かで多様な自然を体感し、地域の歴史や文化、人々との交流を楽しみながら旅する」という新しい旅のスタイル“ジャパンエコトラック”を個人で気軽に体験できるよう、JR北海道とも連携して自由度の高いツアーを用意した。

 今回のツアーは北海道のオホーツクエリア、大雪ひがしかわ・南富良野エリアが対象。限定オプションとして、指定フリーエリアでJR北海道の特急や快速、普通列車の指定席・自由席が乗り放題になる「ジャパンエコトラックひがし北海道フリーパス」の販売や、ジャパンエコトラック公式アプリを使った地域の特産品が当たるデジタルスタンプラリーなども行っている。なお、今後エリアは順次拡大していく予定だ。

地方への幅広い経済効果にも「Go Toトラベル事業継続は必要」 日本旅館協会

2021年10月28日(木) 配信

(イメージ)

 日本旅館協会(浜野浩二会長)は10月26日(火)、Go Toトラベル事業継続の必要性について、同協会役員に浜野会長名で資料を送付し、情報と認識を共有した。

 一部メディアでGo To不要論が出るなど、さまざまな動きがあるなかで、「財務を立て直し、再び成長軌道に戻すには、国の強力な後押しが必要」との考えを示している。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、旅館・ホテルは、政府や地方自治体から移動制限の要請を受け続けた。飲食店のように、休業・時短要請に伴う協力金もなく、厳しい経営状況におかれている。地域経済活性化に向けても、同協会は「地方での関連産業への経済効果を考えると、Go Toの再開による需要喚起が唯一の方策」とコメントしている。