OATA 新理事長に鈴木氏 徳原氏が任期満了で勇退

2021年4月19日(月) 配信

あいさつする徳原理事長

 協同組合大阪府旅行業協会(OATA、徳原昌株理事長)は3月24日、第46回通常総会を開き、任期満了に伴う役員改選で、鈴木隆利氏(ワールドツアーズ)を新理事長に選出した。

 徳原理事長は「新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、観光業界はとくに厳しい状況下に置かれ、OATAのクーポン発券額も前年比76%減にまで落ち込んだ。それでも、各事業を見直し、全面的な緊縮財政を敷いたことで、赤字幅は最小限に留めることができた」と昨年の状況を報告。そのうえで「新型コロナウイルスがいつ収束するのか、現時点では予測がつかないが、組合員皆の揺るぎない結束で、この難局を乗り切っていきたい」と述べた。

 議事では、すべての議案が承認可決され、新年度は、OATAの活性化に不可欠な組合員の増強に励むほか、兵庫県旅行業協同組合、京都府旅行業協同組合との共同事業をはじめ、各種事業についても、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、柔軟に対応していくことが決まった。

 鈴木新理事長は「理事長という重責に、身の引き締まる思い。これからは、何よりも組合と組合員のことを第1に、全身全霊で職務をまっとうしていきたい。とくに今年度はコロナ禍にあり、正念場の年と覚悟している」と意気込みを語った。

 同日は、受入機関などで組織するOATA連絡協議会(安藤元量会長)の第30回定時総会も開かれ、すべての議案が承認可決された。

 新三役は次の各氏。

 【理事長】鈴木隆利(ワールドツアーズ)【副理事長】清水康市(三協マネジメント南海コスモツアーシステム)【専務理事】笠舞紀伴(照南トラベルサービス)

総会後には鈴木新理事長(左)から徳原氏に花束の贈呈も

 総会終了後には、約14年にわたり理事長を務め、OATAの発展に尽力してきた徳原氏のこれまでの功績を称え、鈴木新理事長から徳原氏に花束の贈呈が行われた。

 徳原氏は「1976年のOATA設立時に理事として名を連ね、以来45年。OATAに惚れ込み、自分の仕事よりもOATA優先でやってきた。理事長となってからも、いろいろなことがあったが、皆さんに助けていただき、今日まで無事にやってこられた。長きに渡るご指導と応援に、あらためて感謝したい」と謝辞を述べるとともに「OATAは永遠に、我われ中小業者の支柱であるということを胸に刻み、皆で一致団結して、コロナ禍も乗り越えていってほしい」と後進へエールを送った。

「トラベルスクエア」加賀屋さんの大量採用

2021年4月18日(日) 配信

 

   「日本一の旅館、最多85人入社」というニュースには心が躍った。

 3月24日(水)、石川県・和倉温泉の加賀屋さんで入社式が行われ、85人の新採用者が列席した。この数字は1906年の創業以来、最多。これまでの記録であった2015年の76人を破ったかたち。

 サービス産業にかかわらず、コロナ以降の不況を予測し、企業の大半が人員縮小、採用手控えを考えているなかでの拡大路線に踏み切ったのには、強かなコロナ対策作戦も含まれていた。

 ずばり、食事のお部屋出しを大々的に復活させようというわけだ。

 考えてみると、身内的な親密な4人くらいの会食で、他のお客さんとの接触がなく、しかも窓が開いて、換気も十分できるお部屋での食事は、コロナ禍のなかでは最良の食事環境といえる。

 実際、部屋食でというお客からのオーダーも多く、それに対応するために、大量採用になった。

 この30年間近く、生産性が低いと断罪され続けたのがお部屋出しだった。

 会席料理だと、正式なら1人の仲居さんが10回以上お膳を運ばないといけない。いくら略式にしても、熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、となればやはり4回くらいは運ばなければいけない。旅館は複数人数入る原則だから、とにかく人海戦術でしか対応できないところがあった。それが「過剰サービス」と受け取られて、人件費増の悪玉扱いが普通だったのだ。しかし、そんなお部屋出しが今、一番喜ばれる供食形態だ。そこに目を付けての加賀屋さん今回の措置は、未来を見据えたもの。

 これにより、大きな設備投資を繰り返してきた料理の自動搬送システムも、かなりの能力を発揮できるのではないか。また大きな厨房の一部を、職場に恵まれない地方の腕のあるコックさんに提供し、一種のゴーストレストランとして機能させ、洋食、中華にもメニューの幅を広げる可能性もある。

 ともあれ、加賀屋さんのお部屋出しへのこだわり復活は旅館ルネサンスを起こすかもしれない。

 僕たちがその時々で効率的だと思って、捨て去った中にも宝物がある。

 能の世阿弥は「時分の花」という。盛りの時の「花」だけを時分の花と思うのは間違い。初心の頃(創業)にはその時の花があり、壮年期(企業の大成長期)にも齢を経て、転換期に入った時にも時分の花があるという。世阿弥の言う「花」というのは、演能上でその人でしかできない技のことで、いわば「武器」。時代ごとに我が社の「花」=武器を変えていく。伝統のカタチを守りながら、そのために中身は変化させる。加賀屋さんには、またまたこのリーダー旅館ならではの時分の花を見つけているようだ。

 

コラムニスト紹介

松阪健氏

 

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

〈観光最前線〉興味ないものを観る

2021年4月17日(土) 配信

クイズも交えてアイヌと「樹木」の関わりを教わる

 半世紀も生きていると、音楽や外出先など、多くの選択があるにも関わらず、無意識に選ぶ範囲が固まっていく。興味の成熟といえば聞こえがいいが、おかげで新しい出会いは日々少なくなる。それに気づいて、時々行動に移す。去年、北海道・白老町のウポポイを訪れた時もそうだった。

 数ある体験プログラムから、最も参加しないであろう「樹木案内」を選んでみた。古式舞踊の人気列を横目でにらみ集合場所へ。参加はただ1人、案内人は2人もいる状況に「逃げられない」と覚悟を決める。園内を散策しながら、アイヌと植えられた樹木の関わりを丁寧に教わった。

 「アイヌは花を愛でる習慣がない」と知ったのは、意外であり1番の収穫だった。興味のないところから、新しい関心事が生まれた瞬間だ。

【鈴木 克範】

「観光人文学への遡航(10)」 カントに影響を与えたルソーの「エミール」

2021年4月17日(土) 配信 

 

 カントは大変時間に正確な人だったらしく、毎日決まった時間に近所を散歩したのだが、それがあまりにも正確だったため、近所の人は散歩するカントの姿を見て、自宅の時計の時刻を修正していたそうだ。

 しかし、そんなカントも、ルソーの「エミール」を読んだとき、その魅力に引き込まれて読書に没頭してしまい、決まった時間に散歩をするのを忘れてしまったらしい。カントは「エミール」を読んで、「ルソーは私の誤りを訂正してくれた」と表現している。カントの人間理解に大いに影響を与えたのが、ルソー「エミール」その書なのである。

 
 大学時代の私は、教育行政学を専門としていた。教育学では、ほぼ間違いなく「教育原理」を履修することになるが、そこで必ず取り上げられるのが、ルソー「エミール」である。教育学の古典中の古典である。すなわち、世の中の小中高の教員は、ほぼ間違いなく「エミール」の存在自体は知っている(原文を読んだことがあるかどうかは別である)。

 そして、その「エミール」の説明として、「自然に帰れ」という言葉が必ずついてくる。原文を読んだことがないほとんどの履修者は、まず間違いなく、「エミール」で書かれてあることは、教育は強制ではなく子供の自由に任せることが大事なんだと認識する。

 かくいう私もそうだった。別に教員になりたいわけではなく、なんとなく教育行政学を専門にしていた私は、期末試験を乗り越えるために原文を読まずに「ルソー」「エミール」「自然に帰れ」「自由教育」これらのキーワードをセットにして覚え、テストを乗り切り、テストが終わると記憶の彼方に追いやっていた。

 
 しかし、カントの哲学に出合い、カントに大いに影響を与えた書物が「エミール」だったことを知り、30年ぶりに旧友に再会したような気分であった。

 
 そこでカントが「エミール」のどのような点に魅了されたのか探るために、ここで初めて原文を読んでみたら、今まで認識していた印象とはまったく違う世界が展開されていたことに驚いた。

 
 この連載は、昨年7月、コロナ禍の中で始まり、多くの人が旅を制限された生活を経験することで、これからの旅行業ないし観光関連産業が世に必要な存在であり続けるために、移動の自由と公共の福祉の関係についてから考究してきた。

 さらに、自由の本質をカントの哲学を通して理解を深めてきたが、このカントの自由観の根源にあるのが、ルソーの「エミール」である。このことからも、「エミール」が単に自由を放任と捉えていないことは想像がつくだろう。

 
 来月以降、ルソーの「エミール」を通して、さらに自由の本質を追求していく。なぜルソーは「自然に帰れ」と言ったのか、その言葉に込められた想いとは如何なるものか、読み解いていきたい。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

観光産業の再活性化目指す要望を発表 4月20日に赤羽国交大臣へ提出(日本商工会議所)

2021年4月16日(金) 配信

日本商工会議所は4月16日(金)、観光関連産業の再活性化に向けた要望書を発表した

 日本商工会議所(三村昭夫会頭)は4月16日(金)、観光関連産業の再活性化に向けた要望書を発表した。新型コロナウイルス感染拡大で厳しい経営が続く観光関連産業への継続的な支援により、再活性化を促す必要な事項をまとめた。

 重点となる要望は、飲食・宿泊などの観光関連事業者の事業継続支援、段階的な観光支援の展開とGo Toトラベル事業の改善や延長、旅行・観光への風評被害払拭と「旅ごころ」への訴求、地域の魅力開発・情報発信の支援、地域の受入態勢や危機管理の強化──など。

 総務省が発表した2020年2月~21年1月の家計調査では、2人以上勤労者世帯可処分所得と消費支出は、パック旅行費(前年比73・6%減)、宿泊料(同54・7%減)、交通費(同48・3%減)、外食(同25・1%減)がほかの支出より大きく減少した。

 この結果から、「観光関連産業の縮小や消失は、地域の雇用にも多大な影響が及ぶため、地域経済はこれからも疲弊し続ける可能性がある」(日商)と、観光関連事業者の倒産や、廃業の増加を懸念している。

 4月20日(火)には赤羽一嘉国土交通大臣に、東京商工会議所が発表した「コロナ禍からの復活に向けた、わが国の観光振興に関する重点要望」と合わせて提出する予定だ。

サービス連合2021春闘、コロナで「雇用維持」軸に 後藤会長「収束後見据えて交渉」

2021年4月16日(金) 配信

後藤常康会長。新型コロナウイルスの影響で「難しい交渉が続いている」という

 新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けるなか、サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(後藤常康会長)は、2021春季生活闘争で喫緊の課題である、雇用や賃金の維持を軸に交渉している。

 4月16日(金)に開いた会見で、後藤会長は「観光産業は大変厳しい状況だが、将来を奪われていない」とし、「収束後を見据えて話し合いを続ける」と力を込めた。

 今季は4月15日(木)時点で、152組合中、40組合の交渉がまとまった。このうち、ホテル・レジャー業は40組合のうち、17組合が妥結した。ツーリズム業26組合は、19組合が春闘を終えた。3月末を期限としたが、「難しい駆け引きが続いている」という。

 同連合は、立憲民主党と国民民主党のほか、厚生労働省や観光庁などに、人件費などの費用を補助する観光持続化給付金の創設や、雇用調整助成金の特例措置延長を働き掛けた。

 この結果、立憲民主党が、観光持続化給付金を創設する法案を本国会に提出した。後藤会長は「一定の成果を残せた」と振り返った。

 今後は引き続き、同連合が掲げる35歳550万年収と年間賃金の1%向上も目指す。

地方のインバウンド対応支援で消費拡大目指す 公募は10月29日(金)まで(観光庁)

2021年4月16日(金) 配信

観光庁は10月29日(金)まで地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業を募集する

 観光庁は4月16日(金)~10月29日(金)まで、地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業を募集する。同事業では、観光需要の回復に向け、感染症対策も含めた訪日外国人旅行者の受入環境整備などの取り組みを支援する。

 補助メニューは、①外国人観光案内所の整備・改良②観光拠点情報・交流施設の整備・改良③観光スポットの段差の解消④公衆トイレの洋式便器の整備及び清潔等機能向上⑤非接触式キャッシュレス決済⑥混雑状況の「見える化」と推奨ルートの表示――など。

 観光庁が定めた2021年度指定市区町村以外の、着地型整備に積極的に取り組む地域が対象。

 また、⑦観光案内所における非常電源装置及び情報端末への充電機器の整備⑧観光施設等における感染症対策機器の整備――の補助メニューについては、指定市区町村も応募できる。

 補助率は、①~⑥は補助対象経費の3分の1以内、⑦・⑧は2分の1以内とした。

〈旬刊旅行新聞4月11・21日合併号コラム〉ロケツーリズム 「北の国から」の舞台 富良野を訪れる

2021年4月16日(金) 配信

 

 俳優の田中邦衛さんが3月24日に亡くなった。日本を代表する名優がまた1人いなくなり、寂しさを感じる。

 
 田中邦衛といえば、ドラマ「北の国から」の黒板五郎役があまりにハマっていて、再放送されるたびに観てきた。当初は長男・純の視点から観ていたのだが、自分も年齢を重ね、いつしか父親役の黒板五郎に重ね合わせていることに気づく。

 
 数々の名シーンや名セリフがちりばめられている「北の国から」は、これからも何度も観ることができるのが救いだ。そのときどきの境地によって、映像の中の何気ない田中邦衛さんの表情や、少ない言葉に、心を動かされるのだろう。

 

 
 思えば、昨年の夏、北海道を旅したとき、富良野に寄った。宿泊した新富良野プリンスホテルの敷地内には、「北の国から」の脚本を書いた倉本聰氏が監修した隠れ家的なバー「Soh,s BAR」がある。夜、長い林道を歩き続けると、ひっそりと、小さな建物が現れる。まさに大人のバーという雰囲気だ。私はそこでゆったりとスコッチのオンザロックを飲みながら富良野の夜を楽しんだ。

 
 バーから少し離れたところに売店があり、そこには「北の国から」で黒板五郎が愛用していたトレードマークの冬用のジャンパーや、ニットの帽子が売っていた。私は「黒板」と刺繍されたジャンパーを着て、ニット帽もかぶり鏡の前に立った。憧れの田中邦衛さんに格好だけでも少し似ることができ、心が満たされたことを思い出す。

 

 
 今号1面特集のテーマは、「ロケツーリズムでまちづくり」だ。湯河原町(神奈川県)町長の冨田幸宏氏や、ロケーションジャパン編集長の山田実希氏、ロケツーリズム協議会事務局長の木庭清美氏、そして観光庁参事官(当時)の片山敏宏氏の4氏が座談会を行った。

 
 湯河原町は、2020年8月にロケ誘致をスタートし、わずか5カ月で情報番組など14番組のロケが行われたという。

 
 私は旅番組を見るのが好きだ。過去に訪れた場所だと思い出として楽しめるし、未知の場所であれば、心のどこかに留めておいて、旅する機会をつくることが多い。

 
 また、旅番組で美味しそうな食堂は店名などメモしている。実際にその地を訪れた時に行ってみる。私のようなズボラな人間もこのようなマメなことをしているので、旅番組や情報番組を見て旅行をされている人は多いと思う。

 

 
 映画やドラマ、アニメのロケ地を巡る「聖地巡礼の旅」も完全に根付いてきている。旅行新聞の座談会で、ロケーションジャパンの山田編集長は、ロケツーリズムとは「映画・ドラマのロケ地を訪ね、風景と食を堪能し、人々のおもてなしに触れ、その地域のファンになってもらうこと」と語っている。

 
 通常、縁のない人々に土地のファンになってもらうことはとても難しい。だが、映画やドラマ、旅番組を見て「そこに訪れよう」と思った時点で、すでにファンになっているのだ。その意味で、ロケツーリズムの力の大きさを感じる。

 
 自治体にロケ誘致の窓口を一本化することにより、競争力が高まるだけでなく、地元の人たちの情報共有や、おもてなしの一体感ができる利点もある。コロナ禍だからこそ、ロケツーリズムの活用も考えていきたい。

(編集長・増田 剛)

 

ロビーの改装や露天風呂を新設 かんぽの宿鳥羽がリニューアル

2021年4月16日(金) 配信

木材を使い、落ち着きと開放感があるロビーに

 日本郵政は4月16日(金)に、かんぽの宿 鳥羽(三重県鳥羽市)をリニューアルオープンした。ロビーを開放的に改装したほか、大浴場「潮香の湯」に露天風呂などを新設した。同社は、一昨年から全国33施設のかんぽの宿でリニューアルを実施している。

 同宿は鳥羽湾を見下ろす恵まれたロケーションに建つ。伊勢エビやあわび、地魚など海の幸中心にした料理を夕食・朝食ともにビュッフェ形式で提供する。今回はビュッフェレストラン「雅」も新設した。客室は、鳥羽湾を望むテラス付の和モダンの部屋を新たに設けた。

 宿泊料金は1泊2食付き、1室2人以上利用で1人1万4500円から。

 今後は地域文化の発信として、地元の生産者や加工業者とコラボレーションしたイベントなどを企画している。

No.579 座談会「ウィズコロナ時代の観光地形成」 ロケツーリズムでまちづくり

2021年4月16日(金)配信

 ウィズコロナ時代の観光は、個人が関心の高い場所に赴くようになるなど、旅への興味が大きな変化を遂げるといわれている。

 また、移動が制限されるなか、居住地域の近くで観光を楽しむ動きも加速している。

 「何もない場所」が観光地になると注目されるロケツーリズム。情報バラエティ番組が多くロケに訪れる神奈川県・湯河原町の冨田幸宏町長と、ロケツーリズムを推進する山田実希氏、木庭清美氏が、観光庁の片山敏宏参事官(取材時)とロケツーリズムを活用したウィズコロナ時代の観光やまちづくりについて話し合った。

 ――神奈川県・湯河原町は、今多くの情報バラエティ番組の撮影が行われているとお聞きしました。

 冨田:2020年8月からロケ誘致をスタートし、5カ月で情報バラエティ番組など14番組のロケが行われました。決定率も63・6%と高い数字が残せ、反響にとても驚いています。

 町民からも、「自分たちのまちがテレビに映りうれしい」という声を聞きます。また、放送後に問い合わせが増えた店舗などもあり、テレビの影響の大きさも実感しました。

 ――年々、自治体関係者らのロケツーリズムへの注目が高まっているように感じます。ロケ情報誌「ロケーションジャパン」の山田編集長は、地域がロケを誘致するメリットはどこにあると思われますか。

 山田:ロケツーリズムとは、「映画・ドラマのロケ地を訪ね風景と食を堪能し、人々のおもてなしに触れ、その地域のファンになってもらう」ことです。

 ロケ地になることの利点は、何気ない風景でも、ファンにとっては特別な場所になるということです。

 ――「ロケツーリズム協議会」では、毎年自治体関係者や企業、映像制作者が一堂に会しロケ誘致に向けた情報交換を活発に行っています。木庭事務局長の目から見て、コロナ禍で自治体のロケ誘致への熱量に変化を感じていますか。

 木庭:コロナ禍だからこそ、自治体の「ロケ誘致」熱は高まり続けています。

 どの地域もいいモノがあり、資源の磨き上げも行っているのに知られていないから来てもらえないという悩みを抱えるなか、最後の発信に効果的なのが「ロケツーリズム」です。

 今はとくに、テレビの情報バラエティ番組を誘致したいという声が多いですね。

 ――一方で、コロナ禍で、観光の在り方も変化を求められています。観光庁では今の観光の現状をどのように見ていますか。

 片山:ウィズコロナ時代の観光は3密になるということで、「コミュニケーションを取ってはいけない」、「未知の人と会ってはいけない」と言われています。これは、観光にとって非常に致命的なことです。

 また、旅の醍醐味である混雑している場所に行くこともできませんし、飲食時の感染リスクが大きいということで食の楽しみもなくなるなど、旅自体の魅力が否定されています。

 こうした状況下で、観光産業全体が沈んでいくのは構造的に非常に危ないという問題意識を持っています。

 ――3密を避けるなどの対策が必要ななかでも、自治体が情報バラエティ番組を誘致したい理由はどこにありますか。

 山田:情報バラエティ番組のメリットは、即効性です。番組に出るときに地名や店名もそのまま放送されるので、翌日には観光客が訪れることもあります。

 旅番組や情報バラエティ番組は、誘客力が強い一方、少人数のロケで地域側が知らない間に撮影が完了し、放送されていることが多く、これまでは観光振興につながっていませんでした。しかし、撮影できる地域が少なくなり、制作隊も事前に一本化された自治体の窓口に連絡することが増えました。これにより、観光への仕掛けができる地域が増えているように思います。

 もう一つ重要なことは、「テレビ番組に出た場所は安心・安全」な場所ということです。

 なぜなら、そういった場所でないとロケもできなければ、放送もできないからです。コロナ禍で旅先での安全に消費者が目を向けるなかで、こうした裏付けを発信できることも、地域にとっての利点ではないでしょうか。

 併せて、これまでの地域のロケ実績を掘り起こし、観光資源として活用することができれば、人を地域内で分散させることが可能なので、よりしっかりと安全対策も行えると思います。

【全文は、本紙1829号または4月23日(金)以降、日経テレコン21でお読みいただけます。】