〈観光最前線〉「雨もまぁいいか」

2021年6月21日(月) 配信

旅先での雨宿り(広島県竹原市)

 映画やドラマのワンシーンから楽曲、さらには広告コピーまで、「雨」の情景が印象的な作品は、誰にも1つくらい思い浮かぶものがあるだろう。

 第3者として眺めるには、五感に深く染み入る世界だが、こと自分に関して、さらに旅行ともなると、雨は手のひらを返したように「やっかいな」代物へとかわってしまう。だから旅先や商品展示会などで、露の美しさに気づかせてくれる句や、雨音を奏でるインテリアなどに出会うと、ちょっと嬉しくなる。

 降ったら半額などの「雨でよかったね」ではなく、「雨もまぁいいか」と思えるひととき。そこに思いを馳せると、想像と工夫次第でまだまだ「こんなの初めて」という空間が生まれてくるのでは。そんな演出をいつも探しています。

【鈴木 克範】

【特集No.584】観光の新概念「メタ観光」 位置情報で見る新たな旅へ

2021年6月21日(月) 配信 

 デジタルとリアルを融合させ、位置情報を用いてマップ上に観光地の持つ多様な魅力を可視化させる「メタ観光」。2021年1月に設立を発表したメタ観光推進機構は、近年生まれたこの概念を推進する活動を行っている。多様化が進む現代で、「旅行者が考える観光の価値」を尊重するメタ観光は一体どのようなモノなのか。メタ観光を活用した観光振興や、これからの日本の観光について、同機構代表理事である牧野友衛氏に話を聞いた。
【馬場 遥】

 

メタ観光推進機構 代表理事 牧野友衛氏に聞く
隠れた魅力を見つけ“可視化”

 

 「メタ観光」とは、GPS(衛星測位システム)やGIS(地理情報システム)によって入手した位置情報を活用し、その場所にある歴史的・文化的文脈に加え、複数のメタレベル情報をICT(情報通信技術)により付与することで、多層的な観光的価値や魅力を一体的に運用する観光のこと。
 これまで観光にはさまざまな形態が存在し、コンテンツツーリズムやダークツーリズム、グリーンツーリズム、ヘリテージツーリズム──など、それぞれに独自の呼称が存在していた。メタ観光では、これらの観光概念を「レイヤー(層)」として捉えている。観光形態であるこれらレイヤーよりも一段上位──つまり、「メタ」(超越した、高次のなどの意味)にある観光概念がメタ観光である。
 牧野氏は甘味処「竹むら」を例に説明した。

 

メタ観光の例 甘味処「竹むら」

 

 東京都・神田にある「竹むら」は、揚げ饅頭が有名な和菓子店である。そして、池波正太郎の作品「散歩の時に何か食べたくなって」にも登場した店であり、2000年には東京都が選定した歴史的建造物として認められた。そのほかにも、仮面ライダー「響鬼」のロケ地や、アニメ「ラブライブ」に登場した建物のモデルとしても知られている。
 このように、竹むらには多様な観光要素が存在していることが分かる。たった1カ所の観光スポットにも、訪れる理由が複数存在している。
 つまり、竹むらは池波正太郎を好むファン層(およそ50代)や、仮面ライダー「響鬼」のファン層(およそ30代)、ラブライブのファン層(20~30代)を惹きつける魅力を内包している。
 それにもかかわらず、旅行ガイドブックだけではなくオンラインの地図にも、観光地が持っているすべての観光要素の情報が載っておらず、限られた情報しか得られない。同機構はこの問題点に切り込んだ。
 牧野氏は、「既存の観光スポットにあるさまざまなカテゴリを『メタ情報』として可視化することで、今まであった観光スポットの価値がさらに向上し、需要を網羅することができる」と力を込める。
 メタ観光とは、人を惹きつける魅力(カテゴリ)をレイヤーとして分け、縦串として位置情報を通すことでメタ的観点から旅行者に観光スポットを紹介する考え方である。
 牧野氏は「この考え方を元に、もう一度皆さんに地域の観光のあり方を考え直してもらいたい」のが一番の狙いだと話した。……

【全文は、本紙1835号または6月25日(金)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】

〈旬刊旅行新聞6月21日号コラム〉「何故それはそこにあるのか」――本物は根源的な問いに回答できる

2021年6月21日(月) 配信

 
 人は美しいデザインを欲し、お金を払う。家具やクルマ、文具、服、食器などもそうだろう。その製品を「美しい」と感じる理由に、装飾と機能の両面の美がある。

 
 花瓶や壺などの装飾品ではなく、繰り返し使う道具(製品)であれば、たとえデザインが優れていても、使い勝手が悪ければ意味がない。機能を最優先に追求した究極型は美に至る。

 
 有名建築家が設計した美しい家屋や、ホテルは称賛される。だが、実際に使ってみて、オペレーション上の負担が大きかったり、宿泊客が滞在中に不便ばかりを感じたりしては、その評価は決して高くはならない。その意味で、一切の装飾が削られ、機能の本質を体現した実務的な製品に、感動を覚え、いつまでも愛情を注ぎたくなる。

 

 
 さて、ある時、旅行先でレンタカーを借りた。奇抜なデザインが売りの、かつて人気を博した小型車が待ち構えており、ワクワクして車内に乗り込んだ。

 
 しかし、何ということだろう。ダッシュボートの高さと、ドライバーズシートに座った位置がどうも合わない。視認性も居住性も悪い。

 
 また、レンタカーの契約書や保険などの書類が入ったクリアファイルをドアのサイドポケットに入れると、底が浅いために、柳のように、こちら側に折れ曲がって使い物にならない。

 
 さらに、センターコンソールのドリンクホルダーにペットボトルを置き、道路に出て軽くブレーキを踏むと、ホルダーの底が浅いため、ペットボトルが飛び出してフットブレーキの近くに転がり、ヒヤリとした。

 
 国内の主要メーカーの人気車種で「このレベル」だということに、愕然とした。「それらしいモノ」を何となく取り付けただけで、ドライバー(利用者)のことを考えていない思想の薄っぺらさに、寂しさを感じた。

 

 
 もしも、私がデザイン責任者であれば、必ずシートに座り、視界が優れているか、またペットボトルや紙コップを置いたときに転がったり、こぼれてしまわないかを確かめる。サイドポケットを作ったのならば、A4判サイズの書類がきっちりと収まるか、実際に試してみる。一つひとつを細かに実体験し、「使い勝手」や「運転しやすさ」を突き詰めていく。クルマが好きな人間なら、当たり前のことだ。

 
 デザイン重視の高級スポーツカーなら「実用性を犠牲にする」視点もあるだろうが、「小型大衆車」という工業デザインであれば、実用性と機能性が最も重要ポイントではないか。

 
 洒落たホテルの洗面台やトイレも最近多く目にするが、使い勝手が一番であるべきだ。

 

 
 嗜好性が多少関わる「装飾美」とは違い、「機能美」は普遍性が重要だ。精密機械などの製品は何千、何万回と同じ動作や操作を繰り返す。その過程で、膨大な実体験に基づく知恵の蓄積が研磨剤となり、奇抜さやムダを省いていく。やがて、あるべき姿(本質)としての「美」が造形される。優れた製品は配置や大きさ、角度など、利用者からのあらゆる問いに、すべて回答できる。「何故それがそこにあるのか」――。この根源的な問いに明確な説明ができないモノは、本物ではない。

 
 ムダのない機能美をたたえるデザインに、あえて説明が不要なチャーミングな装飾(遊び)を小花のように備えた製品が最高だ。

 

 (編集長・増田 剛)

「提言!これからの日本観光」 観光統計の“緊急事態”

2021年6月20日(日) 配信

 毎年、前年度の統計が出そろって発表されるころになると“観光統計”について、いくつか気になる点がある。観光庁が設置された約10年前、観光事業に携わるものとして「永年の懸案が実現した」と大きい期待を寄せていたことを思い出す。

 同庁発足時の重点施策のひとつに“観光統計”の「整備」があった。省庁の重点施策に統計の整備が掲げられることは珍しい。また、新しい役所の発足にあたり統計整備が掲げられたことは当時、“観光統計”の整備が遅れていたことを意味する。それだけに、関係者は統計の完成に大きな期待を持ち、自らも努力してきた。

 同庁は発足直後に、観光客数の「集計基準」を策定している。各都道府県に同基準を通知して数値をまとめることとした。「同基準」はこれまで、複数回改定し、現在に至っている。これで日本の総観光客数も判明するはずだった。

 しかし、この基準による集計に「応じない」、または調査しても「集計中」などとし、毎年の公表時に自県の状況を発表しない府県が数カ所に及ぶ。このほか、観光統計のなかには「自治体によって集計方法が異なるので比較できない」と注記されているものも存在する。

 このため、同統計は現在でも、完成されておらず、国内総観光客数も把握できていない。外国人の観光目標数値は入管統計などから推計している。このうち、外国人入国者数は明示されるが、邦人観光客は示されていない状況が続いている。

 筆者は各地域が全国統一の「基準」である同統計の集計方法で、調査することが必要だと思う。なぜ、各府県は「同基準」による統計を取らないのか。また、数値の同時期公表を拒否するのであろうか。

 もし、国の「共通基準」が採用できないなら、その理由と「共通基準」での集計を公表したうえで、自地域が正確と考える別手法による数値を併記するなどして、統計を完成させるべきではないか。

 コロナ禍で国内観光が未曾有の打撃を受けている現在こそ、地域別入込客数統計で地域別の影響度を把握するべきである。今後、客数の変移から地域別の復元状況も明らかにしなければならない。

 なぜなら、前者における数値の把握・分析結果が、それぞれの地域がコロナ禍後、観光復元への施策を策定するうえで、貴重な指針になると思う。

 さらに後者からは今後、観光需要を回復するためのフォローアップの情報が得られると考えるからである。

 また、災害時に地域別入込客数の推計や、国内観光客数の推移が定量的に把握できないことは、観光の復元や新しい観光客受入態勢を整備するための貴重な指針が得られないことを意味している。極言するならば現在の統計末整備は観光統計にとって“緊急事態”と考えざるを得ないと思う。

 一刻も早く関係統計の完備を願うこと切なるものがある。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

「井川今日子のおもてなし接客術(49)」 滞在中の顧客評価を集めよう

2021年6月19日(土) 配信

 宿泊予約の際、宿のクチコミ評価が最後のひと押しになるのは、今も変わりません。

 顧客評価は、“滞在後”だけでなく、“滞在中”にもしてもらえれば、最終的な評価を上げられると考えています。

 滞在中の不満がその場で解消されれば、お客様の評価の下げ幅は、最低限に留められるのですが、それができないことで、不満指数はどんどん大きくなり、顧客評価が最低にまで下がってしまいます。そのタイミングで滞在後のアンケート評価を依頼されると、自ずと評価点が下がるのは言うまでもありません。

 ただ、アンケートが滞在後だけではなく、滞在中にもできれば、宿側がお客様の不満に即対処でき、お客様も今以上の満足度が得られるはずです。

 それでは、どのようにすれば滞在中にお客様評価(とくに不満点)を集めることができるでしょうか。それはやはり接客を通して確認していくほかありません。

 この時、着目したいのが、「お客様が意見を言いやすい環境を整えられているか」という点です。

 例えば、旅館の夕食提供の時に、スタッフからお客様に「お部屋ではお寛ぎいただけましたか。至らない点はございませんでしたか」などと聞けば、お客様も意見や不満を言いやすくなります。

 一方で、スタッフが料理の説明だけをしていると、お客様が部屋への意見や不満を言うのは、相当にハードルが高いと思います。

 接客中にお客様の意見や不満を吸い上げる仕組み作りをすれば、顧客評価を収集できますが、収集だけでは不十分です。 

 大切なのは、お客様からいただいた意見や不満に即座に対応できる体制を整えることでそこに価値が生まれ、顧客評価向上という結果に結びつきます。

 宿側に不満を伝えたお客様は、その解消を期待しています。それがチェックアウトの時間になっても解決されなければ、当初の不満に加えて「わざわざ不満を伝えたのに無視された」と、不満指数は倍増して、かえって顧客評価が悪くなります。

 また、お客様の不満を吸い上げるのと合わせて、既にいただいた(過去の)クレームを活用しながら、不満を未然に防ぐ取り組みも効果的です。

 たとえば「貸切風呂の温度が熱すぎて入れなかった」とクレームがあった場合、その後に貸切風呂をご利用になるお客様には、「一度浴衣のまま、浴槽の温度をご確認いただけますでしょうか。調整が必要でしたらお知らせください。直ぐに伺います」と声を掛けるといった具合です。

 このように既存のクレームを踏まえた声掛けひとつでも、お客様が意見や不満を言いやすい環境を整えることができ、不満を未然に防ぐことにつながります。滞在中の顧客評価の収集こそが、最終的なお客様評価を上げる近道です。

井川 今日子 氏

おもてなしコンサルタント 井川 今日子 氏

大学で観光学を学んだ後、船井総合研究所を経て、10年に観光文化研究所入社。全国の旅館や観光協会を中心に、女性の感性を活かした集客・固定客化支援で活躍中。商品戦略や販売促進、現場接客サービスなど多岐にわたり提案。

 

 

日観振、ワクチン接種に関する観光産業の緊急アピールを発出

2021年6月18日(金) 配信

観光産業一丸で1日も早いワクチン接種へ協力

 日本観光振興協会(山西健一郎会長)は6月17日(木)、「ワクチン接種に関する観光産業からの緊急アピール」を発出し、東京都内で会見を開いた。「ワクチン接種の進展に伴う社会経済活動の正常化に向けて」を副題とし、観光産業を挙げて1日でも早いワクチン接種に協力するとともに、接種後の経済活動再開に向け、改めて感染拡大防止に努める決意を表明した。

 山西会長は「ワクチン接種は諸外国の例から、発症化や重症化を防ぐのみならず、感染予防にも高い効果があることが明らかになった。ワクチンは長いコロナとの闘いの先に見える光明だ」とし、ワクチン接種が進むとコロナに対する雰囲気も大きく変わることへ期待を込めた。

 このうえで、1日でも早く、1人でも多く接種できるよう産業全体で協力することを宣言した。各地域の観光関係者は地方自治体や医療関係者などとの連携で接種会場の運営や予約受付業務、会場提供、会場までの輸送などを手掛けているが、大企業は職域接種を効果的に進めていくことを記した。

 また、政府に対しては諸外国と連携できる「ワクチンパスポート」の早期導入を求めた。国際的なビジネス再開に向け、観光産業のみならず、日本経済団体連合会など経済界からも要望が上がっており、世界に遅れを取ることがないように検討の加速化を訴えていく。

 ワクチン接種の進展に伴い、社会活動は順次回復すると予想し、地域経済の活性化を期待する半面、改めて観光関係者は感染防止対策を徹底することを確認。ガイドラインの確実な遵守やワクチン接種証明などを活用した旅行、検査付商品などの展開で交流拡大につなげていくとした。

 一方、さまざまな理由でワクチン接種を受けない人への差別や偏見に配慮したうえで、安心安全な観光環境を整備するため、PCR検査の陰性証明を有効活用することなども盛り込んだ。

 会見には副会長らも登壇した。東日本旅客鉄道(JR東日本)の会長を務める冨田哲郎副会長は「観光も運輸も一刻も早い人流の回復が喫緊の課題」とし、自社の状況として需要はコロナ前の50~60%、新幹線などの長距離輸送にいたっては4分の1程度と明かした。安全安心な輸送環境を提供するため、運転士など現場の社員から順次職域のワクチン接種を進めていく。

 髙橋広行副会長(JTB会長)はワクチンパスポートについて「コロナが収束するまで必要なもので、海外旅行でもインバウンドでもスタンダードなものとなる。日本入国時のさまざまな制限についてもセットで考える必要がある」と言及した。また、「飲食業界も観光業界もギリギリの状況で、インフラの維持に必死だ。タイミングを見据えた経済対策を」と訴えた。

HIS、タイに京都の魅力発信するカフェ開く アフターコロナ後の送客課題につなげる

2021年6月18日(金) 配信

Hannari Café de Kyotoの外装と店内のようす。2回では京都産品も販売する

 エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長兼社長)のタイ法人であるH.I.S.TOURS CO.,LTDは6月9日(水)、タイのバンコクで「食」・「モノ」を通じて京都の魅力と文化を発信するカフェ「Hannari Café de Kyoto」をオープンした。

 同法人は、京都旅行専門サイト「Kyoto Special」を運営するなど、インバウンド需要の創出に向けて京都府と連携していたが、コロナ禍での渡航規制などで、送客できていない。これを受けて、フターコロナを見越して、タイからの送客拡大につなげようと、タイへの輸出拡大を進めている京都府と同府の企業と協力し、物販を通じて京都の魅力を感じてもらう。

 営業時間は毎日午前10:30~午後9:30。店内の1~2階にはカフェとイートインスペースを設けた。このうち、2階は畳を敷き、京都府と連携し、加工食品と雑貨を中心とした京都産品を販売する。

 タイでは日本をテーマにしたカフェやレストランが人気で、日本のチェーン店も多く進出するが、同カフェはタイ人には馴染みのない喫茶店をコンセプトにした。 メニューとして、京都産の抹茶を使用した薫り高い抹茶ドリンクとスイーツを提供する。

 今後は、京都府と同県の企業と連携したメニューの展開や京都の魅力と文化を発信するイベントも開く。


 

冬は「流氷サウナ」に 世界遺産を望むデザインサウナが誕生 北こぶし知床 ホテル&リゾート

2021年6月18日(金) 配信

「UNEUNA」(左)のうねりは、3D加工で木材を削り出して曲線を形取った

 北海道・知床の「北こぶし知床 ホテル&リゾート」は2021年6月19日(土)、時代に合わせてサウナ室をリニューアルオープンする。

 新しいサウナ室には、風景をパノラマで切り取る大きな窓を設置。眼下には、世界自然遺産・知床の大自然が広がる。連なる山々と雄大なオホーツク海に、すべるように飛ぶカモメと海原はるかを行き交う漁船や観光船。テレビはなく、聞こえるのはほのかなBGMのみだ。冬季は「流氷サウナ」として楽しめる。水風呂で体を引き締めた後は、露天スペースに設置された外気浴用のイスで澄んだ空気を体いっぱいに取り込み、心も体もしっかりと”ととのえ”たい。

 今回のニューアルは、サウナー専門ブランドやサウナのプロデュースを手がけるTTNEが監修。ダイナミックな流氷をイメージして直線的なデザインを力強く表現した「KAKUUNA(カクウナ)」と、木の洞窟をイメージして緩やかな曲線でうねりを描いた 「UNEUNA(ウネウナ)」が誕生する。「UNEUNA」のうねりは、世界でも珍しい3D加工で木材を削り出して曲線を形取っている。

 サウナストーブは、世界一のシェアを誇るHARVIA社製を採用。ストーブを囲む壁面には六方石を使用し、知床の切り立った岩肌を表現している。ストーブの上のサウナストーンは、地下深部にあるマグマから生成されたものを使用した。サウナ内のBGMは、サウンドアーティストの松本一哉氏が知床の地で環境音との即興演奏による録音・制作したドキュメンタルなサウンドを音源に使用している。

21年版観光白書 Go Toなどの施策を振り返る

2021年6月18日(金) 配信

政府は6月15日(火)、2021年版の観光白書を閣議決定した。

 政府は6月15日(火)、2021年版の観光白書を閣議決定した。同書は4部構成。観光立国推進基本法に基づいて、毎年国会に提出している。21年版では、例年通り国内外の観光の動向を掲載するほか、新型コロナウイルスが観光にもたらした影響を幅広い観点から分析。また、20年度の施策の振り返りや、観光のトレンドの変化、日本の観光の特性と課題点、観光立国の実現に向けた具体策──などを報告している。

 

Go To実績、5000億円の支援

 政府は20年度中、新型コロナの感染拡大防止策の徹底と共に、Go Toトラベル事業などの需要喚起策の推進を行った。この結果、20年11月にかけて国内旅行の需要が回復した。しかし、12月に再び感染拡大が起こり緊急事態宣言を発令したことで、全国一律で事業を一時停止し、需要は再び減少した。

 同事業の利用人泊数は約8781万人泊、支援額は約5399億円だった。Go Toを利用した宿泊旅行の平均泊数は約1・35泊で、1泊での利用が最も多かった(約8割)。1泊当たりの利用価格は「5000円以上1万円未満」が最多で、次いで「5000円未満」が多いことから、比較的低価格帯で利用された。

 また、国内旅行者の約67%が事業を利用したと回答した。

 

コロナで観光のトレンドが変化

 観光のトレンドの変化として、国内旅行では県内や近隣地域内での観光の割合が増加し、マイクロツーリズムが浸透した。旅行の同行者については、「夫婦・パートナー」の割合が増加する一方で、「友人」が減少した。旅行形態では「個人旅行」が増えてきていると報告した。

 人ごみなどの3密を回避したい思いから、アウトドアが人気を集めた。また、新しい旅のスタイルとして、滞在型観光や分散型旅行などを、旅行会社・交通事業者と連携して促進している宿泊施設も見られる。

 コロナ禍でテレワークが普及した影響で、「ワーケーション」の周知が広まった。とくに20代から30代からの実施希望率が高い。受け入れ側の地方や宿泊施設などは、施設の整備やコンテンツの造成を行っている。

 

日本の観光を分析、課題解決を目指す

 政府は、日本の国内旅行の特徴として、宿泊日数の短さや、月別旅行消費額に偏りがあることなどを挙げた。加えて、宿泊業の労働生産性や年間賃金が、全産業の平均に比べ低いことも指摘。宿泊業や飲食サービス業の入職率と離職率が、他産業に比べて高かった。

 これらの課題を解決するため、観光業の体質強化と、魅力向上やデジタルトランスフォーメーションなどを目的とした観光地の再生に向けた取り組みを行った。

 21年度は、事業の継続や雇用の維持への支援を行い、国内需要喚起に取り組む予定だ。また、魅力的なコンテンツの造成や、訪日外国人観光客の受入環境整備に力を入れ、インバウンドの段階的復活に向け準備を進める。

 

国内外の観光動向、全部門で大幅減へ

 国連世界観光機関(UNWTO)の調査では、20年の国際観光客は前年比73・1%減の3億9400万人だった。うち、訪日外国人旅行者数は412万人で、同87・1%減と大幅に減少した。訪日外国人旅行消費額(試算値)は同84・5%減の7446億円だった。

 日本人の国内宿泊延べ人数は同48・4%減の1億6070万人、日帰り旅行は同51・8%減の1億3271万人となった。日本人国内旅行消費額は、同54・5%減の10兆円だった。うち、宿泊旅行は7・8兆円、日帰り旅行は2・2兆円と、どちらも前年から5割減となった。

 また、日本の観光動向(宿泊旅行)として、20年は客室稼働率が34・6%となり、前年から28・1㌽減に落ち込んだ。シティホテルや、ビジネスホテルの客室稼働率は相対的に高い水準となったが、旅館やリゾートホテルよりも前年比の落ち込み幅が大きかった。

5月の訪日外客数、19年同月比99.6%減の1万人 JNTO発表

2021年6月18日(金) 配信

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 日本政府観光局(JNTO、清野智理事長)が6月16日(水)に発表した2021年5月の訪日外客数(推計値)は、前々年同月比99.6%減の1万人だった。新規入国の一時停止のほか、ビジネストラック・レジデンストラックの運用停止など、国境をまたぐ往来の制約が続いていることが主な要因。観光目的の入国も引き続き認められていない。日本人の出国者数は、同97.9%減の3万100人だった。

 訪日外客数の前年同月比は、501.3%増と大幅に増加した。だが、前年同月は多くの国で海外渡航制限や外出禁止などの措置が取られ、日本も検疫を強化したことにより、前年の月別で最少の1663人だったことから、今回の伸率が大きくなった。

 市場別の人数は、中国の1800人が最多で、次いで韓国と米国の各1000人、フィリピン600人、インド500人の順だった。