基本計画最終案を報告、全府省と連携確認

全府省の副大臣クラスが集結
全府省の副大臣クラスが集結

 国土交通省は3月28日、国土交通大臣を本部長とし全府省の副大臣等をメンバーとする観光立国推進本部の第3回を開き、観光庁から次期観光立国推進基本計画の最終案が報告された。

 前田武志国交大臣は冒頭、「観光を国の成長戦略の柱として、政府全体で一体的かつ各省庁間の連携強化に取り組んできたが、日本の存在感を世界にアピールするため、さらなる取り組み強化をお願いしたい」と呼びかけた。

 観光庁からの次期観光立国推進基本計画の最終案報告後に行われた意見交換では、環境省の横光克彦副大臣は「地域の宝に触れ、知識や理解を深めるエコツーリズムでは、自然環境の保全や観光振興、地域振興が期待される。エコツーリズムに取り組む地域の支援や人材育成、プログラム作り、環境整備などの基盤作りに取り組みたい」と発言。

 文部科学省の森ゆうこ副大臣は「留学生は帰国後に日本の魅力を語ってくれる民間の観光大使。戦略的な留学生交流に取り組みたい」と語った。

 外務省の山根隆治副大臣は、被災地支援の一環として11年11月15日から開始した被災3県を訪れる外国人のビザ発給手数料の免除で2844件の発給があったことを報告。さらに、11年7月から発給を開始した沖縄を訪問する中国人観光客への数次ビザについて「被災地復興の一環として被災地3県への数次ビザ発給へ向けて関係省庁と協議を始めた」と述べた。

 経済産業省の牧野聖修副大臣は「経産省として『クールジャパン』の発信に努めているが、『ジャパンルネッサンス』として、もっと日本の埋もれている魅力を洗い直し、世界に発信していくべき」と語った。

 なお、観光庁から報告された次期観光立国推進基本計画の最終案では、既報の通り、2016年の数値目標として(1)国内における旅行消費額を30兆円(2)訪日外国人旅行者数を1800万人(3)国際会議の開催件数の50%以上の増加(4)日本人の海外旅行者数を2千万人(5)国内宿泊観光旅行の年間平均宿泊数を2・5泊―などを掲げている。

No.307 武蔵野大学シンポジウム - ホスピタリティ人材育成を考える

武蔵野大学シンポジウム
ホスピタリティ人材育成を考える

 武蔵野大学(東京都西東京市)は3月9日、同大学グリーンホールで、第1回就業力育成シンポジウム「日本の未来を創出するホスピタリティ人材の育成を考える」を開いた。同大学では、学生の就業力向上のため、産学が連携した人材育成の挑戦が始まっている。とくに重視しているのはホスピタリティマインドを持った人材の育成。当日は、長期インターンシップ実習などの事例発表や、注目のホスピタリティ企業経営者によるパネルディスカッションなどが行われた。

【沖永 篤郎】

≪産学連携のキャリア教育≫

 同大学は、政治経済学部、環境学部、教育学部など9学部を有する総合大学。今年4月からは東京都江東区に有明キャンパスを開設し、2キャンパス制となる。昨年度の入試志願者数は定員1500人に対し、1万7千人を超えた。学生数の減少により、どの大学も学生獲得に苦労するなか成長を続けている。その要因の1つが、独自の取り組みを進める産学連携のキャリア教育。企業と学生のニーズのマッチングや学生の就業力向上といった成果を上げている。

 

 

※ 詳細は本紙1458号または日経テレコン21でお読みいただけます。

新たな観光行政 ― 「観光の役割」発信と実行(4/11付)

 4月1日付で観光行政のトップが変わった。2008年10月1日に発足した観光庁の3代目長官に、国土交通省出身の井手憲文氏が就任した。

 過去にはトップ人事に政治的な力学が働いて翻弄された面もあると聞く難しい立場だ。また、初代長官と2代目長官が模索しながらそれぞれ開拓した道や、手法の違いを受けて、3代目の井手長官が今後どのように観光行政をリードしていくか、重責であるが期待も大きい。

 3月30日には、新しい観光立国推進基本計画が閣議決定された。2012年度から16年度までの5年間で、訪日外客数1800万人や、日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数を年間2・5泊(10年度は2・12泊)とするなどの目標値も掲げられている。同基本計画のなかには、リピーターの獲得の重要性を指摘する箇所が随所に見られる。限られた予算の中で他省庁の関連分野とも連携しながら、「観光の観点を念頭に置いた」取り組みの必要性も強調されている。それであるならば近い将来、観光省となるべく道筋を立てていくほどの覚悟がほしい。観光庁が発足以来、予算が倍増され、注目度が高まったことは確かだ。しかし、母体である国土交通省が決定した交通政策に従わざるを得ないし、休暇改革では厚生労働省や文部科学省の強靭な壁が存在する。さらに、原発事故対応や、なおも原発推進を目論む経済産業省と、観光推進政策で衝突する局面に対しても、観光庁が毅然たる態度で物を言うにはまだ力不足だ。財務省に対しても、観光庁と観光省では予算要求の重みが違う。貿易収支が赤字化し、人口減少時代の緊縮しがちな日本にあって、全国の毛細血管に至るまで、「新たな血流を起こすことができるのは観光なのだ」と役割を強く発信し、実行していかなければならない。

 一方、観光地も従前のように、「旅行者が来てくれるからいいのだ」という姿勢では、いずれ淘汰される。極めていない味で観光客向けに割高の食事を提供したり、ほんの少し“ご当地”版にアレンジしただけの安易な土産品を陳列したり、旅館のビールやジュースが通常の2、3倍の値段で売っていたり。サービス過当競争時代に、そんなものばかりでリピーターが訪れるだろうか。現代的な感覚を持つ旅行者には、もうそれらは通用しない。

(編集長・増田 剛) 

11.5%減の123万人、1―2月の訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した2月の訪日外客数推計値は、前年同月比19・3%減の54万8200人。旧正月休暇時期の変動を勘案して、1―2月の合計でみると、同11・5%減の123万3200人となった。

 各市場の動向をみると、韓国は同27・0%減の16万9200人。作年9月以降1円=14ウォン台で推移する円の高止まりの影響が強く出ている。

 中国は、旧正月休暇時期の変動の影響で同21・1%減の8万3100人。ただし、1―2月の合計では同8・3%増となり、過去最高を記録していた2010年を上回った。同じく旧正月休暇時期の変動の影響がある台湾は、同8・1%減の8万5900人、1―2月の合計では同11・1%増。香港は同41・6%減の2万8800人、1―2月の合計では同7・7%減となった。そのほかでは、訪日旅行の宣伝効果や航空座席供給量の増加などにより、タイが同13・3%増の1万5400人と、2月単月で過去最高を記録している。

 なお、出国日本人数は、前年同月比12・9%増の157万人と、8カ月連続の増加となった。

<回復傾向は継続 韓国、重点的に ― 溝畑観光庁長官>

 観光庁の溝畑宏長官は、3月19日の会見で「昨年の11月が前年同月比13・1%減、12月が11・7%減、1―2月の合計が11・5%減と続き、回復傾向は継続している」とコメント。「韓国が円高の影響で厳しく、全体の回復を鈍らせている。1―2月で中国、台湾は良い結果が出ているが、そのプラスを韓国のマイナスで帳消しにしてしまっている状態。3―4月の桜など、今後重点的なプロモーションが必要」と語っている。

すみだ水族館(スカイツリータウン内)5月22日オープン

「東京大水槽」イメージ(オリックス不動産提供)
「東京大水槽」イメージ(オリックス不動産提供)

 オリックス不動産(山谷佳之社長、東京都港区)は3月19日、都内にて、5月22日に開業する東京スカイツリータウン内に同日オープンする都市型水族館「すみだ水族館」の施設概要および営業概要を発表した。

 注目は、世界自然遺産である小笠原諸島の海を体感できる「東京大水槽」。小笠原村の協力により約1千キロ離れた海の世界を再現し、「すみだ水族館」にいながらにして、雄大な海の恵みと命の育みを感じることができる。またペンギンやオットセイの生態を間近で見られる国内最大級の屋内開放のプール型水槽も目玉のひとつ。フロア間を結ぶスパイラルスロープから生き物たちの姿を観察できる仕掛けも見どころだ。

 オリックス不動産は2004年、新江の島水族館(神奈川県藤沢市)開設より水族館事業をスタート。地域おこしの視点を活かした施設展開には定評があり、3月14日には「京都水族館」(京都府京都市)をオープンさせた。専務執行役員運営事業本部の森川悦明本部長は「単なる誘客施設だけでなく、教育的な価値、そして未来につながる夢を『すみだ水族館』から発信していきたい」と意気込みを語った。

 同館の営業時間は午前9時から午後9時まで。年中無休。一般入場料は大人2千円、高校生1500円、中・小学生1千円、幼児(3歳以上)600円。

 なお20人以上の一般団体および学校団体利用の予約(6月1日より適用)は、4月1日より先行で受け付ける。

 問い合わせ(4月1日10時開線)=代表 電話:03(5619)1821。団体予約専用 電話:03(5619)1272。

昼神温泉と“菊芋”、「学ぶ・食す」グリーンツーリズム

栽培歴10年の菊芋生産者から話を聞く
栽培歴10年の菊芋生産者から話を聞く

 長野県の阿智村地域活性化協議会は2月21―22日に、南信州「昼神温泉と高機能食品菊芋を学ぶ・食す」旅のモニターツアーを初めて実施した。阿智村内の観光・農業関連の5団体が昨年9月に発足させた村地域活性化協議会は、村が特産化をはかる機能性食品「菊芋」と観光を結びつけたグリーンツーリズム商品を開発する目的で3カ年計画に取り組んでいる。

 1泊2日のモニターツアーでは、まず最初に座学で地元農家の菊芋生産者と阿智村の菊芋事業担当者から栽培にまつわる話を聞き、その後宿泊する昼神温泉の旅館や村内のアンテナショップ「きくいも茶屋」で菊芋を使った料理を試食して意見を聞くというもの。昨年度の農林水産省の補助事業に選ばれ、体制整備にあてた昨年度は250万円が交付された。

 宿泊先となった昼神温泉郷「日長庵 桂月」では会席料理の中に菊芋を使った田楽や信州牛シチュー、グラタン、菊芋めん、菊芋まんじゅうなどが提供され、参加者から「菊芋という名前から想像していたよりも美味しかった」「食物繊維が豊富で体に良さそう」「和食もいいが洋風メニューとの相性もバツグン」などの意見が聞かれた。

 これまでにも個々の旅館で地元農産物を生かした誘客事業が行われたことはあったが、今回の事業では各団体が連携してマーケティングに力を入れることで誘客促進に繋げるのが狙いという。具体的には菊芋を使用したオリジナルメニューの開発や村内の小売店で加工品を販売するほか、旅行商品として旅館だけでなく農作業体験などと組み合わせた農家民泊の連泊プランなども検討する考えだ。

 村地域活性化協議会の事務局を務める昼神温泉エリアサポートの木下昭彦社長は「ニーズがあるものを作る〝地消地産〟をテーマに、観光と食の連携を深め、観光につなげられる仕組みづくりをしたい。可能な限り続けていきたい」と意気込みを語った。

【古沢 克昌】

「ふくしまから はじめよう。」知事が都内フェアで宣言

応援メッセージも多数寄せられた
応援メッセージも多数寄せられた

 食や体験、ステージイベントなどで福島の今の姿を伝える催し「がんばろうふくしま!大交流フェア」が3月20日、東京国際フォーラムで開かれ、1万5千人の来場者でにぎわった。

 会場には佐藤雄平知事も駆けつけ、福島の復興を早くから支援し、紅白歌合戦にも出場した郡山市出身の俳優西田敏行さんとのトークショーも開いた。終了後は、復興に向けた新しいスローガン「ふくしまから はじめよう。」を宣言し、「ぜひ来県を」と呼びかけた。

 ステージでは、スパリゾートハワイアンズのフラガールがフラ&タヒチアンダンスを披露したほか、ご当地のゆるキャラPRなどを実施した。

 グルメコーナーでは昨年のB―1グランプリ姫路大会で4位入賞を果たした「なみえ焼きそば」をはじめ、会津ソースカツ丼、ふくしま餃子、喜多方ラーメンなどが出展。体験コーナーには県の縁起物「赤べこ」の絵付けで東北の復興支援を応援する活動「赤べこプロジェクト」が参加、来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」コーナーも設け、観光の話題を紹介した。

 取り組みは08年に開いた「ふくしまファンの集い」から数えて5回目となる。今回は被災から復興していく福島を伝えるとともに、首都圏に避難している被災者の交流の場として開いた。

復興進むいわき、福島県が視察会実施

 東日本大震災から1年が経過した3月、福島県は首都圏の旅行会社の担当者を対象に、県観光の風評被害を払しょくし、正確な情報を伝えることを目的とした視察研修会を開いた。今回は「中通り・いわき」、「白河・会津」の2コースを企画。3月14日から2泊3日で開かれた中通り・いわきコースに同行した。

【鈴木 克範】

≪誘客事業も強化≫

<最後の海獣が帰還>

 東日本大震災の津波被害を受けたアクアマリンふくしま(いわき市)は、開館11周年記念日となった昨年7月15日、いち早く再開を果たした。全国の動物園や水族館が海獣たちの受け入れに協力し、さらには新たな展示生物を提供したことが、復興を力強く後押しした。

 ゴマフアザラシの「くらら」が避難先の鴨川シーワールドで出産した子供は「きぼう」と名付けられ今、元気な姿で来館者を迎えている。3月21日にはトドの「フク」が避難先から戻り、すべての動物の帰郷が完了した。

 当初からシーラカンスの生態解明に力を入れ、解剖標本や稚魚の水中映像などを公開している。シーラカンスのキャラクター「権兵衛(ごんべえ)」の人気も上々とか。
 

<きづなテーマに再開>

 いわき市のスパリゾートハワイアンズは2月8日、「きづなリゾート」を新コンセプトに約11カ月ぶりに全館で営業を再開した。

 震災前から建設を進めていた120室、500人収容の新ホテル「モノリス・タワー」も同日開業した。

 メイン施設の大型屋内プール「ウォーターパーク」が復旧し、連日子供たちの歓声でにぎわっている。「きずなキャラバン」として、全国公演を続けてきたフラガールたちも本来のステージに戻り、熱のこもったポリネシアンショーを披露している。

大勢の観客を前に華やかな舞台(ハワイアンズ)
大勢の観客を前に華やかな舞台(ハワイアンズ)

 施設を運営する常磐興産は、3年後の2014年に震災前の年間来館者(日帰り145万人、宿泊40万人)に戻す計画を掲げている。

<いわき沿岸の被災地>

 美空ひばりさんがレコーディングした「みだれ髪」のモチーフになった塩屋埼灯台周辺は、いわき市内でも津波被害が大きかった。灯台に向かう道路沿いは、建物の基礎を残すだけの光景が続く。そんななか、みだれ髪の歌碑前にある「山六観光」は昨年末から物販営業を再開した。店舗内には被災当日、売店の使い捨てカメラで撮影したという写真が展示されている。団体客などからの要望で「当時のようすを説明させていただきます」(同店)。今回昼食で訪れた「丸克商店」(小名浜)や「アクアマリンふくしま」なども、写真や映像で被災時のようすを伝えようと取り組んでいる。

発災時の状況を説明(山六観光)
発災時の状況を説明(山六観光)


<春の訪れは間近>

 県下で桜の名所として名高い三春町の「滝桜」。ベニシダレの一本桜で国の天然記念物の指定を受けている。今年の観桜期間は4月6日から5月6日(開花状況により変更)。4月14日から同22日は午後6時から9時までライトアップも行う。

 このひと月に例年30万人が訪れるという人気スポットだ。混雑が予想される週末には駐車場からの無料シャトルバスや、JR三春駅からの臨時バスも運行する。観桜料は1人300円(中学生以下無料)。

 滝桜と合わせて、旅行商品の目玉となるのが福島市内の「花見山」。私有地を花見山公園として開放しているが、今年は樹木養生のため、立ち入り規制が行われている。周辺散策は可能だが注意が必要だ。詳細は花見山コールセンター(電話:024―526―0871)へ。
 

<県の誘客対策>

 福島県は5月27日まで、体験型の宝探しゲーム「リアル宝探しイベントin福島コードF―2」を7温泉地で実施している。昨秋、約2万人を集めた人気企画の第2弾。今回は3万5千人の参加を目指す。宝の地図の暗号を解きながら県内各温泉地に隠された宝箱を探す仕組みだが、「難しい点が奏功し、人気を集めています」(県観光交流課)。新年度事業では磐梯吾妻スカイラインなど観光有料道路3ラインの無料開放、旅行会社と連携した誘客事業なども実施する。

宝探しゲームを解説(飯坂温泉・旧堀切邸)
宝探しゲームを解説(飯坂温泉・旧堀切邸)

 原発事故への不安に対しては、正確かつ最新の放射線情報を県ホームページのトップ画面から提供している。客観的な事実を伝え、最後は個人の判断に委ねるのが現状だ。そんななか、明るい話題もある。震災後1年を機に、台湾から福島県への渡航自粛勧告が解除された(東京電力福島第一原発の半径30㌔圏内は除く)。「見て、感じて、知って」もらうことが、風評被害克服への最大の支援になる。今後も正確な情報発信や誘客事業に力を入れていく。

全通1周年を祝う、「みずほ」「さくら」は増発

新大阪駅でセレモニー開く
新大阪駅でセレモニー開く

 山陽・九州新幹線の全線開通1周年および「みずほ」「さくら」の増発を記念したセレモニーが3月17日、新大阪駅で開かれ、JR西日本や熊本、宮崎、鹿児島3県の関係者らが集まるなか、増発の一番列車となる「みずほ605号」(午前8時59分発鹿児島中央駅行)の出発を祝うテープカットなどが盛大に行われた。

 JR西日本の川上優常務執行役員・近畿統括本部大阪支社長は「震災直後の厳しいスタートだったが、予想を上回る客が九州方面へと足を運んでいただいた。今回のダイヤ改正で、みずほとさくらは8往復増発し、1日23往復とさらに便利になった。南九州の魅力をぜひ堪能してほしい」とあいさつした。

 また、南九州3県を代表し、鹿児島県大阪事務所の伊喜功所長が「南九州3県は食、温泉、伝統芸能など多種多様な魅力がある。ぜひひとつの観光地と捉え訪れてほしい。増発により、南九州の観光振興と、関西との交流促進が今後、ますます発展することを期待したい」と述べた。

 当日は、新大阪駅在来線コンコースで、南九州3県による観光PRイベントも実施され、3県のキャンペーンレディーや、「くまモン」「さくらじまん」「みやざき犬」といったゆるキャラたちが、それぞれ各県の魅力をアピールした。

 なお、JR西日本が発表した同社管内発の個人型旅行商品実績(11年4―12年1月)は、熊本方面が前年比約5倍、鹿児島方面が約15倍の伸びという。

「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」発足シンポ

清水愼一会長
清水愼一会長

<新しい観光地域づくりの推進母体に>

 日本観光振興協会が事務局を務める「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」(会長=清水愼一立教大学観光学部特任教授)がこのほど設立し、3月2日に東京都内で発足記念シンポジウムを開いた。「観光地域づくりプラットフォームによる地域イノベーション~観光地域づくりの組織と人を考える~」をテーマに基調講演やパネルディスカッションを実施。全国から観光関係者約150人が参加し、登壇者の話に耳を傾けた。

 冒頭のあいさつで清水会長は「環境が様変わりし、従前のような観光振興では立ち行かなくなった。いかに地域が豊かになり、来訪者も満足するかを思考していったところ、辿りついたのが観光地域づくりプラットフォームだ。ポイントは縦割りをどう乗り超えるかと地域と来訪者をつなげ、いかに満足してもらうかというマネジメント。はっきりした解答はまだないが、日本の観光を革新しようとする人たちの組織なので、それをネットワークしさらに高め合っていくのが機構の狙いだ」と語った。

 観光地域づくりプラットフォームや機構の詳細については大社充代表理事(グローバルキャンパス理事長)が「観光関連事業者だけが取り組む観光振興から、地域住民も含め、農商工との連携や6次産業化で交流人口を拡大することで地域を元気にしようというまちづくりを含めたものに変わってきた。主体がマーケットサイドから地域になり、地域は商品を作って売り、来訪者をもてなしていくという機能を内部に設置しなければならなくなった」と説明。この新しい観光地域づくりの推進母体が観光地域づくりプラットフォームで、機構は各地の組織が情報交換を行い、課題解決に役立つ研修や研究を行っていくという。

清水愼一会長
清水愼一会長

 具体的なプラットフォームの取り組み事例として、小値賀観光まちづくり公社専務の高砂樹史氏が「小さな島の未来への挑戦」と題して、長崎県小値賀町での取り組みを語った。高砂氏は少子高齢化が進む島で「観光は手段。次世代に島をつなぐためのもの」と断言。そのための組織づくりとして、2006年にそれまでの観光協会と自然学校、民泊の組織の3つを統合し、NPO法人として「おぢかアイランドツーリズム協会」を設立。半年間話し合い、地域で議論を重ねた結果だったが、これが大きな転機になったという。併せて、株式会社「小値賀観光まちづくり公社」も設立し、第3種の旅行業登録を取得。協会で体験メニューを担当し、会社は顧客からの問い合わせや要望に応じた手配など、両者の役割を分担しながら動いていることが成功の秘訣だと語った。

 一方、大々的な改革を行ううえで、最も難しいのは島の人たちにコンセンサスを求めることだとし、「全員一致は無理。いつも49対51で進めてきた。実績を出していけば反対の人が賛成に変わっていく」と信念を貫き、結果を出すことが重要だと話した。

 最後はコンセプトを覆さないことの重要性も強調し、「『おぢからしさ』を大切にすることと、経済に貢献して若者が暮らせる島にすること。この2つを念頭に一人ひとりが判断している。例えば250人が限度の修学旅行は、257人の場合でも勇気を持って断る。これを守っていくことが大切だ」と語った。