“原価計算考えて”、貸切バス新運賃制度へ

加藤博和氏
加藤博和氏

 バス会社のコンサルティング事業などを展開するサポートエクスプレス(飯島勲社長、埼玉県所沢市)は、5月16日に東京都内で、貸切バス新運賃・料金制度に関するセミナー「貸切バス・高速バスはどう変わるのか」を開いた。7月1日の新制度運用開始を前に、全国のバス会社から100人以上が集まるなか、国土交通省の同制度ワーキンググループの座長を務めた名古屋大学大学院環境学研究科准教授の加藤博和氏は、原価計算の必要性を訴えた。

 加藤氏は見直しが必要になった背景として、実利価格が本来の適正価格からかけ離れていることや、それにより安全対策が不十分になり大事故を起こすリスクが増大していること、労働条件の悪化、人材不足などの課題を改めて提示。「規制緩和以前に戻せばいいという声もあるが、データを検討したところ、小さい会社の方が、リスクが高いという因果関係は統計学的に見つけられなかった。この状態だと参入規制の強化は学術的に不可能」としたうえで、「では監査の強化となるが、監査に通るにはコストがかかる。しかし、現在の市場では価格転嫁ができないので、運賃を見直す必要があった」と語った。

 そのなかで、最大の問題点は原価計算ができていないことだと強調。運輸局平均をそのまま適用すると不利になることもあるため、「国で上限、下限の基準は作ったが、それに頼らない届け出をしてほしい」と述べた。

 一方で、参加者からは旅行会社など発注者側に力があり、適切な料金を取れないという声には「言い値でできるのであれば、下限割れを申請してほしい。しかし、その運賃であれば品質もその程度だということを示す。問題なのは、これまで言い分がなかったこと。自分たちはこういうことをしているからこの値段だと言えるようにすべき」と一蹴。バスの値段が上がることを一般消費者に周知するためには、自ら業界団体に働き掛けていくことや、自社のホームページでコストをかけて行っている安全対策などをアピールする必要性も訴えた。

 このほか、セミナーでは主催者の飯島社長が、貸切バスの安全評価制度の有効な活用方法を紹介したほか、高速バスマーケティング研究所代表の成定竜一氏が高速バス事故で数々のマスコミから取材を受けた経験から、事故時の報道対応について講演を行った。

 2012年の4月の関越自動車道事故や今年5月の北陸道事故などで多くのテレビ番組に出演した成定氏は、メディアには「対応の遅れ」「トップ不在」「隠ぺい体質」が大きなリスク要素になると言及。東京海上日動リスクコンサルティングの山内利典氏の言葉を引用し、「対応を間違うと『事故』が『事件』になる」と注意を促した。

 また、万が一事故を起こしてしまったときのシミュレーションとして、「現地に向かう人」「対策本部を仕切る人」「本来のオペレーションをこなす人」の3つを考えておく必要があるとした。

 このほか、2つの事故を通して見えたものとして、一般メディアは事業者の規模や格は関係なく報道するということや、一度できた論調は止められず、SNSなどで広がり国会まで炎上してしまうことなども紹介した。

ピンクリボンのお宿

 旅行新聞が事務局を務め、乳がん経験者が気兼ねなく宿での入浴を楽しめる環境づくりを目指す「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が、7月に設立から3年目を迎える。「大浴場の洗い場に間仕切りがある」「ピンクリボンプランがある」など参加宿の取り組みを冊子にまとめ、全国の病院で無料配布している。有り難いことに、読者の方からお手紙をいただくことも多い。

 「冊子を見て温泉に行くことを励みに、これから治療に専念します」。今は温泉旅行に行かれなくても、いつか温泉に入る日の自分を思い描くことは、日常を支えてくれる心に灯る小さな希望となる。

 その夢が叶ったとき、お宿はどのようなおもてなしができるのか。重ねた時間の重みに思いを馳せ、今一度、原点を見つめ直したい。

【森山 聡子】

申込多数で追加説明会、貸切バス新料金を説明(都旅協)

都旅協が2回目の説明会
都旅協が2回目の説明会

 東京都旅行業協会(駒井輝男会長)は国土交通省関東運輸局自動車交通部旅客第一課の成松浩二専門官を迎え、貸切バスの新運賃・料金制度についての説明会を行った。4月に行った説明会には定員の150社を超える申し込みがあり、5月23日に急遽追加説明会を実施。126社が集まり、業界の関心の高さがうかがえる。

 関東運輸局管轄区域の設定料金は、キロ制運賃(1キロ当たり)で大型車の上限額が170円、下限額が120円。中型車は上限額が150円で、下限額が100円。小型車は上限額が120円で、下限額が80円。時間制運賃(1時間当たり)は大型車の上限額が7680円で、下限額が5310円。中型車は上限額が6480円で、下限額が4490円。小型車は上限額が5560円で、下限額が3850円。交替運転手配置料金はキロ制料金が上限額40円で、下限額30円。時間制料金が上限額3080円で、下限額2130円。

 例えば2泊3日で大型車を1台チャーターして、東京都内から仙台・山形・蔵王方面をめぐり都内へ帰るツアーを想定すると、初日は午前7時に出庫し、午後6時にホテルへ到着したとすると、出庫前点検時間とホテル着後の点検時間を加え、走行時間は13時間。走行距離は425キロと想定。2日目はバスの運行はなく走行時間0時間、走行距離0キロ。3日目は午前8時にホテルを出発し、午後7時に都内車庫に戻ったとすると、走行時間は13時間で、走行距離は450キロと想定。仮に下限額で計算すると、時間制運賃が5310円×26時間で13万8060円、キロ制運賃が120円×880キロで10万5600円。合計で24万3660円(税別)となる。さらに身体障がい者の場合は3割、修学旅行等の場合は2割割り引きできるが、今回のケースは下限運賃額で計算しているため、これ以上の割り引きはできない。別途、高速道路料金や駐車料金、ガイド料などの実費、2日目の待機料金がかかる。

 説明会に参加した会員旅行会社からは「このバス料金ではツアーを組めない」「正規料金では難しいので、闇の業者が出てくるのでは」などの懸念が出たほか、「消費者に消費増税の便乗値上げと思われる」と料金制度変更でバス料金が高くなったことを、一般消費者にしっかり広報してほしいとの要望が多数あがった。

伊予鉄道次期社長に、国交省出身の清水一郎氏

清水一郎氏
清水一郎氏

 4月9日に観光庁観光戦略課長を最後に、国土交通省を退官した清水一郎氏が、6月25日付で伊予鉄道(佐伯要社長、愛媛県松山市)の代表権のある副社長に就任する人事がこのほど内定した。清水氏は来年にも想定される次期役員改選で、社長に就任するものとみられる。

 伊予鉄道は1887(明治20)年創立の愛媛県を代表する総合交通企業グループ。鉄道・軌道、バスをはじめ、百貨店、旅行業、タクシー、レジャー、松山空港ビル、石崎汽船など、グループ関連企業として陸海空にわたり幅広く事業を行っている。

 清水氏は1967年11月生まれ。86年松山南高校卒、90年3月東京大学法学部卒業後、同年4月運輸省(現国土交通省)入省。95年英国ケンブリッジ大学大学院修了。大臣官房総務課企画専門官(法規班長)、在英日本大使館参事官、航空局企画室長、四国運輸局企画観光部長、大臣官房参事官(海事局)、観光庁観光戦略課長などを歴任し、今年4月に国交省退官。46歳。愛媛県松山市出身。

「オンリーワンのまち」3、4号認定、日光「堂者引き」と料亭文化保護

ふるさとオンリーワンのまち

 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)は独特の風土や伝統文化、産物、無形のおもてなしなど、あまり知られていないユニークな観光資源を「オンリーワンのまち」として認定している。5月19日には世界遺産“日光の社寺”の観光ガイドを350年以上継続している「堂者引き」日光殿堂案内協同組合に第3号、28日には東京・向島や神田、浅草など全国の料亭や芸妓文化を保護・育成する「界隈を勝手に応援する協議会」連合会に第4号認定し、それぞれ認定式を行った。

「堂者引き」日光殿堂案内協同組合

「堂者引き」日光殿堂案内協同組合の春日武之理事長(右)と津田理事長
「堂者引き」日光殿堂案内協同組合の春日武之理事長(右)と
津田理事長

 「ふるさとオンリーワンのまち」の第3号として、「『堂者引き』世界遺産“日光の社寺”文化的景観の構成要素としての観光ガイド」を認定した。350年以上の歴史を有する「日光二社一寺」の公認ガイド組織である「堂者引き」。1952(昭和27)年には日光殿堂案内協同組合(春日武之理事長、栃木県日光市)となり、現在26人が所属している。

 春日理事長は「我われは単なる観光ガイドではなく、江戸時代から参拝者を引率して歩くプロの『堂者引き』として、指導的な面を持つ一方、日光の社寺を護り、悪い者を取り締まりながら現在まで350年以上の歴史を持っている」と説明。世界中にボランティアガイドはたくさんあるが、地元の防火組織としての活動や、雪かき、非常時の人員誘導も担当するなど寺社と運命共同体のような関係にある。

 春日理事長は「今回の認定を機に、日光の奥深さを多くの方に知っていただき、なお一層飛躍していきたい」と抱負を語った。

 一方、津田理事長は「世界遺産として海外にも知られる日光だが『堂者引き』という素晴らしいソフトの部分はあまり知られていない。今回初めて堂者引きの案内を受け感動した。この感動を多くの方に伝えるのが我われの使命」と話した。

「界隈を勝手に応援する協議会」連合会

「界隈を勝手に応援する協議会」連合会の西村繁会長(右)と津田理事長
「界隈を勝手に応援する協議会」連合会の西村繁会長(右)と
津田理事長

 第4号は「『料亭・芸妓・日本食類』総合文化保護・育成」に取り組む「界隈を勝手に応援する協議会」連合会(西村繁会長)を認定。

 東京・向島の料亭や芸妓文化の保護を始め、界隈を勝手に応援する協議会連合会の会長も務めている西村会長は「全国の色々な街の料亭を見てきたが、絶滅危惧状態。“おもてなし日本”といいながら、日本古来のおもてなし文化が消えつつある。なんとか、保護や育成をして日本の料亭文化という集積した総合文化を残そうと活動している」と話す。「東京では向島、神田、浅草と広がりつつあり、全国でもあちこちで応援組織ができつつある」とし、「神田も72歳の芸妓さんが1人しか残ってない絶滅状態にある。京都は観光地産業として成り立っているが、我われは絶滅危惧状態にある全国の料亭や芸妓、日本食やおもてなしの文化を総合文化として維持発展していきたい」と語る。「全国にたくさん仲間が増えているので、日本のソフトの力を世界に発信できるように頑張っていきたい」と語った。津田理事長は「おもてなしの心を持った文化の保護、育成に賛同した。微力ながら料亭文化の底上げ、ブランド力アップを支援していきたい」と話した。現在、芸妓白書などは存在しないが、全国の料亭は全国で約300軒、芸妓は約3千人と推測されている。

 今後の認定事業について津田理事長は、「地域の埋もれた財産、宝を発掘したいという思いを『ふるさとオンリーワンのまち』という認定事業にぶつけていきたい」とし、「オンリーワンのまち」の全国的な広がりを目指している。

サンルートを売却、「旅行事業に専念する」(JTB)

 JTB(田川博己社長)は5月30日、全国にホテルチェーンを展開する同社子会社のサンルートの株式を相鉄ホールディングス(林英一社長、相鉄HD)に売却することを発表した。中期経営計画の要となるグローバル中心の旅行事業に専念するために売却する。

 田川社長は「今後の事業拡大に向けて持続的な投資が不可欠で、経営計画のコアであるグローバルを中心とした旅行事業に専念したい」と述べ、「JTBグループで経営するよりも、ホテル事業をコアとする他社で成長を目指すほうが良いという判断をした」と売却理由を語った。また、今後も重要なパートナーとしてサンルートに送客することを確認した。

 JTBの交流文化事業は佐々木隆前社長(現会長)の代から、できるだけハードを持たないという考えをもっており、これまでも物流部門や印刷部門を分離してきた。田川社長は「今回が最後の売却になる。グローバル分野や地域のDMC(デスティネーションマネジメントカンパニー)を含めて、コンテンツへの投資は積極的に行っていく」とハードからソフトの開発にシフトしていくことを強調した。

 JTBグループはサンルートの株式を相鉄HDに売却するほか、サンルートプラザ新宿の不動産を共同で保持していた森トラストに売却する。譲渡額は非公表。株式の譲渡実行日は9月1日。

朝湯プロジェクト始動、新潟県旅組青年部

荻野光貴部長
荻野光貴部長

 新潟県旅館ホテル組合青年部(荻野光貴部長、74会員)は5月26日、湯田上温泉のホテル小柳で第43回定時総会を開き、今年度に取り組む「にいがた朝湯プロジェクト」などの説明を行った。

 荻野部長は「県の観光事業や青年部会員にとってプラスになる取り組みを全力で行い、会員が青年部に参加してよかったと胸を張れる会になるよう充実した活動をしていきたい」と力を込めた。13年度は会議スタイルを見直し、役員会を簡素化したスカイプ会議にし、理事会を観光交流のため2カ月に1度の地方開催に変更した。14年度はさらに一般部員が参加しやすいよう「観光交流会」に改め、部員以外の行政関係者も多く参加できるスタイルにしていく。

 また、「にいがた朝ごはんプロジェクト」「地酒の宿」に続くプロジェクトシリーズ「にいがた朝湯プロジェクト」を立ち上げた。夜の地酒を抜き、朝ごはんをおいしく食べるプロジェクトで、新潟のブランディングをはかる。「水」「風」「光」をキーワードに、(1)朝の散歩(2)土地に湧くコップ1杯の水(3)朝湯(4)朝ごはん(5)まどろみの時間――の流れをポイントにする。朝湯では可能な限り窓を開けて風を通し、朝日を浴びられるようにする。「朝湯マスター」の認定制度なども検討中だ。

朝湯プロジェクトを説明
朝湯プロジェクトを説明

 同プロジェクトのアドバイザーで温泉ソムリエの山崎まゆみ氏は「お酒をおいしくいただいた次の日は少し胃がもたれていて、すぐに朝ごはんを食べる気にはならない。その土地で湧いた水を一杯飲んで、散歩をして、朝風呂に入ると、体の準備が整い、朝ごはんをおいしくいただける」と同プロジェクトの経緯を説明した。7月中旬から下旬にスタート予定。

委員会主導で事業推進、天然温泉表示制度を検討(日本温泉協会)

2014年度第1回理事会

 日本温泉協会(大山正雄会長、1404会員)は5月30日に2014年度第1回理事会を開き、このほど新設した女性部委員会など、今年度は委員会主導で事業を推進していくことを決めた=写真。また、天然温泉表示制度に代わる新たに会員証を兼ねた日本温泉協会の看板の発行についても議題に上がり、今後慎重に同制度のあり方を継続して考えていく方向だ。14年3月末現在、天然温泉表示看板は237施設、447枚となっている。当分、看板の新規と更新の申請は受けない。

 また、近年会員数の減少に歯止めがかからない状況について大山会長は「協会の存続のためには、事業内容の点検と、収入に見合った組織の立て直しが必要」と述べ、同会に加盟するメリットについても理事からさまざまな意見が出された。事務局は7月から現行の5人体制から4人体制とする。

 なお、14年度の会員総会は6月24日、群馬県・四万温泉の四万グランドホテルで開かれる。

 新設した委員会は次の通り。カッコ内は委員会の代表者(敬称略)。

 財政・経理委員会(八木眞一郎)▽行事委員会(笹本森雄)▽女性部委員会(小口潔子)▽平成26年度総会実行委員会(岡村興太郎)

今年は学生100人参加、合同インターンシップ(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は8月18―28日の9日間、大学生100人を迎え「JATA合同インターンシップ」を実施する。優秀な人材確保や旅行産業への就業意欲を高めるのが狙いで、昨年から実施している。

 昨年は募集が6月と間際だったことから、今年は3月末から募集を開始。対象を大学3年生に絞り、30校から100人の参加者を集めた。

 インターンシップは、旅行業界の説明やビジネスマナー研修を行う講義と現場での就業体験を実施。講義の導入教育では、観光庁観光産業課の石原大課長らの講演を予定する。就業体験は3日間ずつ業態や規模の異なる2つの職場を体験してもらうため、旅行会社だけではなく観光局やツアーオペレーター、添乗派遣会社などにも協力を仰ぐ。

 5月28日の定例会見で発表を行ったJATAの越智良典事務局長は、「ぜひ旅行業界で働きたいという意欲の高い学生の人たちが集まった」と期待を語った。

【福島県】観光学科の指導職員を募集 6月30日まで

福島県は県観光の復興を担う地域のエキスパートを育てる
福島県立テクノアカデミー観光プロデュース学科などにおいて、
学生を指導する福島県職員(職業訓練指導員[観光])を全国から募集(1人程度)している。

受験資格は、昭和53年4月2日以降に生まれたもので、
「大学(観光、経済または経営に関する課程)修了後、
観光関連業務の実務経験を5年以上有する者」など。

受験申し込みは6月30日までで、一次試験は福島県庁で7月17日に実施する。

県立テクノアカデミーは、職業能力開発促進法に基づく職業能力開発短期大学校と
職業能力開発校を併せ持つ、公共職業能力開発施設。
観光プロデュース学科では、観光学の理論に基づくフィールドワークなどを通じ、
福島県観光の復興と創造を担う人材育成を行っている。

募集の詳細は、県人事課のホームページ(http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01125c/)へ。
電話での問い合わせは、県商工労働部商工総務課(024-521-7269)まで。