働き方・休み方改革へ、プレミアムフライデーを(JATA)

プレミアムフライデーについて
語る越智良典氏

 日本旅行業協会は(JATA)2月2日の定例会見で、プレミアムフライデー(PF)などの取り組み状況を報告した。1月末時点でロゴ申請数は1191件。旅行会社はエイチ・アイ・エス(HIS)や日本旅行、近畿日本ツーリストなど25社が申請済みだ。メディアの露出も増え、今後は計画的な広告を打ち出し、さらに機運を高める。労働環境問題が取り上げられるなか、働き方・休み方の改革、消費喚起を目指す。

 PFは経済産業省が国民運動として推進。2月24日から毎月の月末金曜日に実施される。同省主体だったが、観光庁とも連携し旅行に力を入れた。各旅行会社は、この動きに合わせ限定企画や記念企画、割引プランなどを造成している。

 業界外でも動きは活発化している。大和ハウスはPFに対応し偶数月の月末金曜日を有給休暇とし、東京・霞ヶ関では内閣人事局がPFに早期退庁するように協力要請文書を出している。

 越智良典理事・事務局長は「徐々にムードが浸透していくはず。繰り返すことで意識が変わる」と述べた。

 JATAはこのほか「韓国旅行復活緊急フォーラム」について報告。

 同フォーラムは3月3日の開催が決定した。申し込みは2月27日まで。セミナーは新たな商品をテーマに(1)都市深堀り(2)地方素材(3)新素材――を取り上げる。

 昨年の訪韓者数は14年並みの230万人まで回復した。要因の1つに円高基調や燃油サーチャージが無料だったことが挙げられる。ただ17年はすでに円安基調になり、燃油サーチャージも2月から復活したことで動きが鈍化する可能性がある。

 越智理事・事務局長は韓国が大統領選挙を控えていることも踏まえ「市場に対して価格ではなく、価値の要素で訴えなければならない」と強調した。

タダ湯めぐり

 石川県・加賀温泉郷の3温泉(片山津、山代、山中)では2月1日から3月31日まで、19―22歳の若者限定で3温泉の総湯(4カ所)が無料で利用できる「タダ湯めぐり」を実施している。

 新たな加賀温泉郷ファンの開拓を目的に、加賀市が2015年度から夏と冬に期間限定で実施するもの。明治期の総湯を復元した山代温泉の「古総湯」や、柴山潟の眺望が美しい片山津の総湯など、3温泉それぞれに趣の異なるお風呂が楽しめるとあって徐々に人気が広まり、昨年夏(8月1日―9月30日)は延べ約4400人、1日平均72・5人が湯めぐりを満喫した。

 19―22歳という年代は、友達同士で初めて旅行に行く人が多いという。3温泉の宿では、若者限定のお得な宿泊プランも販売中だ。

【塩野 俊誉】

女将サミット 7月5日開催、「うまさぎっしり新潟」でおもてなし

 全国旅館おかみの集い運営委員会(野澤邦子運営委員長)と旅行新聞新社(石井貞徳社長)は、第28回全国女将サミット2017新潟を7月5日、新潟市内のホテル日航新潟で開催する。開催テーマは「うまさぎっしり新潟」でおもてなし。東洋のベネチアとも讃えられた新潟の街を、信濃川ウォーターシャトルで巡る企画など、盛りだくさんのプログラムで参加者を迎える。

 2月2日に新潟市内で開いた運営委員会で決めた=写真。プログラムの柱となる基調講演など、大会の詳細は現在調整中。分科会は信濃川ウォーターシャトルの乗船など、新潟市内を大会会場に見立てた学びの場を企画する。米、酒、肴(さかな)は大会テーマにもあげた県最大の魅力。懇親パーティーでの演出も、活発に意見交換した。

【鈴木 克範】

最大2分の1を負担、着地型商品の造成など(観光庁)

 観光庁は2月20日まで「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」の公募を行う。地域の観光資源を生かした着地型旅行商品の造成や、名産品の開発などの滞在型コンテンツ充実のための経費を、最大で総額の2分の1以内で最大3年間負担する。

 「明日を支える観光ビジョン」を踏まえ、とくに「文化財の利活用」「国立公園との連携」「景観の保全・活用」「食文化の発信」などを取り入れた先駆的な提案を優先的に支援する。

 国が行う支援対象事業の例は(1)計画策定(2)旅行商品造成(3)マーケティング(4)名産品開発――になる。地域内全体の仕組みづくりを担う。一方、これらに合わせ地域が自主的に実施する事業例は(1)情報発信(多言語Webページ作成など)(2)受入環境整備(無料公衆無線LAN環境の整備など)(3)機能強化(遊休施設の改修など)(4)システム開発(予約システムの開発など)――で、本事業を支える取り組みとなる。

 対象事業者は、単一市町村や観光協会、交通事業者、旅行業者、地域づくりの取り組みを実施する人らで構成された協議会となる。公募終了後は各運輸局などからの意見、有識者委員会での審査を経て対象地域を決定する。

【2016年度自治体アンテナショップ実態調査】多面的に店舗活用、63%が売上1億円以上

 地域活性化センターはこのほど、「2016年度自治体アンテナショップ実態調査報告」をまとめた。1991年度には東京都内で2店舗だったが、16年4月時点で65店舗まで増加している。15年度は4店舗で年間来場者数が100万人を超え、年間売上では全体の約63%にあたる34店舗が1億円を超えた。また4店舗が企業誘致を、11店舗が地域間交流を開設目的に挙げるなど、物産品の販売や、情報発信以外にも多面的に店舗を活用しているようすがうかがえる。
【後藤 文昭】

 2店舗目を出店する自治体も増加

 店舗数をみると、2015年4月以降、奈良県と長崎県、青森県の青森市、田子町、石川県の羽咋市、滋賀県の長浜市が新たに開設。結果、店舗数は54店舗となり、右肩上がりに増加している。調査基準日の16年4月1日以降も富山県と福井県の坂井市が出店し、17年以降には滋賀県と福岡県の久留米広域連携中枢都市圏が出店を予定している。また同一自治体が2店舗目を出店するケースも増えており、17年以降は富山県と奈良県、長崎県が出店した。店舗面積は拡大傾向にある。500平方㍍以上と回答したのは、「いわて銀河プラザ」(岩手県)と「広島ブランドショップTAU」(広島県)、「表参道新潟館ネスパス」(新潟県)、「ふくい南青山291」(福井県)、とっとり・おかやま新橋館(鳥取県・岡山県)「銀座わしたショップ」(沖縄県)、「かごしま遊楽館」(鹿児島県)、「産業観光プラザ『すみだ まち処』」(東京都墨田区)の8店舗。

 年間入場者数100万人以上が4館

 年間入場者数で100万人以上入館したのは「北海道どさんこプラザ」(北海道)と「とちまるショップ」(栃木県)、「表参道新潟館ネスパス」(新潟県)、「銀座わしたショップ」(沖縄県)の4店舗。70万人以上100万人未満が3店舗、50万人以上70万人未満が5店舗と続いた。

 北海道が初の売上10億円以上

 15年度の年間売上では、「北海道どさんこプラザ」は調査開始後初めて10億円を超えた。7億円以上を売り上げた店舗は「いわて銀河プラザ」と「広島ブランドショップTAU」、「銀座わしたショップ」と3店舗あった。今回の結果は、プレミアム商品券やふるさと割の導入などによって、各ショップの売上が好調に推移したため。一方「(2016年度は)商品券などを導入する計画はない」と回答した店舗は23店舗増加し、31店舗あった。取扱商品数は、6千品目の「銀座わしたショップ」が1番多く、3千―4999 品目で「ふくい南青山291」(福井県)が続き、以下2千―2999品目が4店、1千―1999品目が16店舗となる。

 販売やイベント開催など多様な活用はかる

 開設目的では、特産品のPRが53店舗、自治体のPRが49店舗、特産品の販路拡大が47店舗、観光案内・誘客と地域情報発信が46店舗と続く。これに対し運営効果では、特産品の知名度アップが52店舗、自治体の知名度アップが49店舗、特産品の販路拡大と地域情報発信が44店舗となった。事業内容をみると、物産販売が52店舗、イベント開催が46店舗、観光案内が43店舗、飲食施設が35店舗と回答。

 さまざまな利用者への環境整備進む

 インターネットの活用では、ホームページの導入が51店舗、年々増加するフェイスブックの導入が35店舗と続く。外国語の案内パンフレットを作成しているのは18店舗、無料Wi―Fiの整備は17店舗が行っている。また免税店対応が進み、16年度は15年度より6店舗多い9店舗が対応を始めた。また移住者対応を行うアンテナショップが増えている。実行していることでは、パンフレット・書籍の設置が30店舗、交流会やイベントなどの実施が12店舗、相談員の常駐が5店と続く。

 自治体が単独で運営しているのは2店舗

 運営主体は、民間・NPOなどへの委託が29店舗、地方自治体とその他団体の複数で共同運営をしているのが11店舗と続く。地方自治体単独で運営しているのはわずか2店舗となる。

 同調査は、自治体が主体となって設置した常設の独立アンテナショップ54(都道府県38、市町村16)店舗を対象にした。表は、調査報告より引用。

2次交通不足解消へ、東北の訪日需要の扉開く

仙台空港・松島・平泉線の第1便
松島町の櫻井公一町長

松島や平泉を結ぶ、実証運行スタート

 岩手県平泉町、宮城県東松島市、松島町の1市2町は1月25日、2016年7月に民営化された仙台空港から、日本三景の松島・奥松島と世界文化遺産の平泉を結ぶガイド付き直行バス「仙台空港・松島・平泉線」、「仙台空港・松島/奥松島観光周遊バス」の実証運行を開始した。同バスは1市2町の共同による「仙台空港2次交通運行調査業務事業」として実施され、実際の運行、情報発信、利用者情報調査などは、業務委託を受けている岩手県北自動車(松本順社長)が行う。

【松本 彩】

岩手県北自動車が業務受託

 同バスは、仙台空港から、松島や平泉など自然・文化観光地への誘客をはかり、東北におけるインバウンド需要の新しい扉を開くものと期待されている。同日行われた出発式で、松島町の櫻井公一町長は、「東北の観光は全国的なインバウンド急増の流れから大きく遅れており、東北観光における2次交通不足が課題となっていた」と報告。同事業の開始を受け、今後東日本大震災の影響で遅れていた、東北への訪日外国人観光客の誘客促進が望まれることから、「遠方からはるばるやってこられる訪日外国人観光客の方が、より便利に目的地に到着でき、多くの東北の魅力を知っていただくことで、東北ファンが増えていくと期待している。継続した事業となるよう検討していきたい」とあいさつした。

松本順社長

 運行事業を担う岩手県北自動車の松本順社長は業務委託に関して、「今回このような大役を仰せつかったからには、旅行エージェントの皆様方の力を貸していただき、自治体や、仙台国際空港、エアラインの皆様方のご支援もいただいて、東北の王道ルートの旅をできるだけ沢山の人たちに楽しんでもらえるように全力で取り組んでいく」と意気込みを述べた。

 出発式終了後、午前11時に「仙台空港・松島・平泉線」の第1便が仙台空港を出発。第1便には、多くの外国人観光客も乗車した。「仙台空港・松島・平泉線」と「仙台空港・松島/奥松島観光周遊バス」は、松島海岸までは1日5往復、奥松島・平泉へは1日2往復運行する。5月からは、フリーWi―Fiやバスガイドによる外国語ガイダンスも導入予定。

関係者らによるテープカット

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バスガイドの松尾迪代さん

 岩手県北自動車バスガイドの松尾迪代さんに、同事業への想いを聞いた。

 ――今回、「仙台空港・松島・平泉線」の第1便のガイドを担当することに決まったときの気持ちを教えてください。

 出発式の日にガイドをやらせていただけるということで、とても緊張はしていますが、これからこのバスが、安定して運行できるように、頑張らなければいけないなという気持ちでいっぱいです。お客様に楽しんでいただけるように頑張っていきます。

 ――今回のルートで松尾さんおすすめの観光地は。

 私は海が好きなので、松島を一番おすすめしたいです。今の時期だからこそ、雪景色もあわせてみることができると思うので、一押しです。

山口の絶景と――、 美食を堪能する旅

女性船長の岡村有菜さん(右)

 元乃隅稲成神社、ふく恋盛り――。「山口の絶景と美食を堪能する旅」と題し、山口県は2016年9月1日にプレスツアーを行った。多くの観光資源を有するが、女性がいきいきと働く姿が印象に残った。昨年末に日ロ首脳会談が開催された山口県の魅力に迫る。
【平綿 裕一】

 ■青海島(おおみじま)クルーズ、女性船長が案内 

 2017年に会社設立から50年を迎える青海島汽船に女性船長がいる。岡村有菜さんは14年に入社。「海が好きなので、海に携わる仕事がしたかった」と話した。翌年に同社初となる船長になった。今では操船技術を教える立場となっている。

 岡村さんの案内でクルーズへ。青海島は周囲約40キロ。北長門海岸国定公園の中心部にあり、別名「海上のアルプス」と呼ばれる。

 断崖絶壁や洞穴、洞門、石柱、奇石など多くある景勝地。これらのなかには黒い有色鉱物を含むものがある。岩肌にヘビやタコのような模様を描きだし、見どころの1つとなっている。

 遊覧船は青海島を西周りに、北側の半分で折り返す「観音洞」コース、約50分を運航。

 青海島の西側にある花津浦はそれ自体も立派な海に屹立する洞門だが、通り過ぎる際に観音様がお祈りをしているように見える奇石がある。さらに進むと島の西北端に黄金洞がある。洞内岸壁は金箔色に輝く。有色鉱物の作用や日光の反射などによるものとされている。洞窟が2つ寄り添うように見えることから、別名夫婦洞とも。夫婦円満のご利益があるそうだ。

元乃隅稲荷神社の絶景

 ■米CNN日本の最も美しい場所31選の神社

 元乃隅稲荷神社(もとのすみいなりじんじゃ)は60年以上の歴史を持ち、米CNNが「日本の最も美しい場所31選」に選出した神社。赤い鳥居123基が、曲流するように青い海へ伸び、その脇に緑の草木が鬱蒼と茂る。この赤・青・緑が非常に映える。

 元乃隅稲荷神社近くには国指定の天然記念物「龍宮の潮吹」と呼ばれる場所がある。海からの波が打ち寄せられ、間欠泉のように勢いよく海水が吹き上がる。波が荒い冬の時期は高さが30㍍に上ることもあるという。景観だけでも十分に楽しめるが、観光客を楽しませるのはほかにもある。

 高さ5㍍の鳥居に位置する賽銭箱だ。記者らも試していたが、なかなか骨が折れる。昨年11月には大鳥居が新設されて賽銭箱も移設。さらに1㍍高さを伸ばし、現在の賽銭箱は高さ6㍍の位置にある。

カルスト台地で育つ秋芳梨

 ■最高樹齢110年を超す秋芳長寿梨

 梨は本来は40年ほどで実らなくなるといわれる。1904(明治37)年に植栽された山口県・秋芳町の20世紀梨は、現在も実を付ける。樹齢80年以上の梨の木は120本以上。創業130年の老舗果物専門店・新宿高野から80年を超えた古木の梨を「長寿梨」と認定を受け、販売している。

 有名なのは長寿だけではない。2001年に農林水産大臣賞名誉賞を受賞している。日本最大級のカルスト大地で有名な秋吉台。ミネラルを多く含み、豊富な有機物を有する肥沃な土壌だ。この恵まれた環境で育つ秋芳梨は、適度な甘さと酸味、歯触りのいい食感を持つ。長寿も味も品質も評価されている。秋芳梨生産販売共同組合、代表理事組合長の永嶺克博氏は「先代たちからの高い品質の梨を作る想い(規制)を大事にしている」と語った。

「ふく恋盛り」源平荘・繁岡あかねさんが説明

 ■ふく恋盛りを堪能

 山口県・下関はフグを「福」にちなんで「フク」と呼ぶ。フグの取扱量は日本一で、農林水産省から「下関ふく」が地理的表示(GI)登録を受けた。GI保護制度は、地域に長年培われてきた特性などで、高い品質を獲得した産品に対し、その名称(地理的表示)を保護するもの。

 今回のプレスツアーで宿泊した源平荘は、「ふく恋盛り」を提供している。始まったのは14年12月から。すでに多くの反響があり、結婚式場で提供した実績もある。

 下関でも高級とされる「トラフグ」を使用し、ハート型に刺身を盛り付けた一品。盛り付ける皿は、27㌢もある特注のピンク色の萩焼大皿だ。源平荘の繁岡あかねさんはこのふく恋盛り実行委員を務める。「鮮明な薄ピンク色は、イメージに合うよう何度も試作を繰り返しました」「フグは年配者のイメージが強いので、若い人へのアピールで可愛くしました」と語った。フグを味覚だけでなく、視覚からも楽しめる工夫が施されている。

3月、幕末維新博開幕、20の文化施設などで体験も(高知県)

中根雪江宛坂本龍馬書状
尾﨑正直知事

 3月4日、大政奉還150周年を記念して「志国高知 幕末維新博」第一幕が開幕する。会期は来年3月31日まで。メイン会場は開幕にあわせてオープンする「高知城歴史博物館」。地域会場として県内各地の幕末維新の志士ゆかりの文化施設など20カ所を用意し、高知駅の「こうち旅広場」を、情報発信の場としてリニューアル。県内各地で幕末維新を学び、体験できる仕掛けを作り出した。

 1月13日に東京都内で行われた記者発表会で尾﨑正直知事は、土佐藩が大政奉還実行に重要な役割を担った坂本龍馬や山内容堂など多くの偉人を輩出したことを説明。「いかに当時の若者たちが志を持って新しい国づくりを行ったかを明確に感じられる展示にしたい」と述べ、「龍馬を語れる国、高知のこれからに期待してほしい」と意気込みを語った。

 「高知城歴史博物館」は、土佐山内家伝来の「古今和歌集巻第廿〈にじゅう〉(高野切本)」など約6万7千点におよぶ貴重な史料を収蔵。新たな展示施設が完成することで、今まで十分に活用できなかった文化財をより多く公開できるようになる。

 また、地方会場では2次交通を整備し、歴史を学ぶだけではなく各地の魅力的な「食」と、「自然」、「体験」も楽しめる周遊コースを形成。幕末の風俗を写した多数の写真を展示する珍しい展覧会「ガラス湿板写真を中心とした幕末維新写真展」の巡回も行われる。

 維新博の目玉の1つが新発見の1867(慶応3)年11月10日に書かれた「中根雪江宛坂本龍馬書状」。龍馬が暗殺される5日前の手紙で、松平春嶽の上洛に尽力してもらったことへの礼と、三岡八郎(後の由利公正)を1日も早く新政府へ出仕させるようにとの懇願が書かれている。「新国家」という言葉が書かれている点と、封筒に入った状態で保管されていた点で貴重な史料。福井での行動を記録した「越行の記(えつゆきのき)」の続きにあたり、研究の進展が期待できるという。

庄交グループに観光研究所、着地観光で外客誘致推進

パーティーであいさつする國井英夫理事長

 山形県鶴岡市を拠点とする庄内交通グループはこのほど、外国人旅行客の誘客を目指し、観光分野の調査研究を担う「庄交価値創造研究所」(國井英夫理事長)を設立した。バスや旅行部門(庄交トラベル)と連携し、着地型観光に注力する。市が主要施策として進める鶴岡型地域DMOの受け皿として機能させたい考えだ。

 昨年日本を訪れた訪日外国人旅行者数は約2404万人と、過去最高を更新した。一方、鶴岡市は14年に、ユネスコ創造都市ネットワークの食文化分野に加盟。昨年は農林水産省が訪日外国人旅行者の観光ルートとしてPRする「食と農の景勝地」に認定されるなど、インバウンド推進の機運が高まっていた。

 1月24日には鶴岡市内のホテルで設立披露パーティーが開かれ、約250人が参加。新会社の船出を祝った。

 國井理事長は「今後の成長は、バスと旅行の両事業の融合によるインバウンド推進にかかっている。グループの総力を挙げて取り組む」と新会社設立への決意を伝えた。来賓として尾関良夫東北運輸局長、細谷知行山形県副知事らが駆け付け、祝辞を述べた。

 研究所のアドバイザーには、宮野直生出羽三山神社宮司、佐藤嘉高山形県観光物産協会専務理事らが就任した。長坂紳一社長は「日本遺産に認定された出羽三山の商品化に向けた提案など、半年に1度は発表の場を設けたい」と語った。

21・8%増の2404万人、中国637万人、韓国509万人、欧米豪296万人(2016年訪日外客数)

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 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した2016年12月の訪日外客推計値によると、12月の訪日外客総数は前年同月比15・6%増の205万600人となり、これまで12月として過去最高だった15年(177万3千人)を上回った。また16年の年間訪日外客数は同21・8%増の2403万9千万人となり、過去最多の訪日者数を記録。クルーズ船の寄港回数の増加やビザの緩和などが、主な増加要因となっている。

 12月の市場別では、ロシアを除く19市場が年間での過去最高を記録。とくに中国は同27・6%増の637万人と、全市場で初の600万人台に達し、昨年に引き続き最大訪日旅行市場となった。また、欧米豪9市場も同17・7%増の295万6千人と300万人に迫る勢いで堅調に増加した。

 16年の重点市場の動向を見ると、韓国の訪日旅行者数は509万300人で過去最高を記録し、初めて年計で500万人を突破した。外国旅行者数の増加傾向や、相次ぐLCCの新規就航にともなう座席供給量の拡大などが、訪日需要を押し上げた。

 中国は637万3千人で過去最高を記録。FITとクルーズによる需要の高まりと、航空路線の拡充を背景に、年間を通して毎月40万人以上の送客が続き、すべての月で過去最高を更新した。

 台湾は416万7400人で過去最高を記録し、初めて年計で400万人を超えた。すべての月で同月過去最高を記録し、台湾における外国旅行先の中でも、日本が1―10月まで連続して首位を保持した。

 香港は183万9200人で過去最高を記録。年間を通して毎月10万人以上が訪日し、すべての月で同月過去最高を記録するなど好調が続いた。

 そのほか東南アジア諸国は、タイが90万1400人、シンガポールが36万1800人、ベトナムが23万3800人、インドが12万3千人など。タイは年間最大の旅行シーズンであるソンクラーン(タイ正月)休暇のあった4月をはじめ、すべての月で過去最高を記録。初めて年計で90万人を超えた。

 なお、出国日本人数の16年累計は、同5・6%増の1711万6200人となった。

17年が正念場、田村観光庁長官

 観光庁が1月17日に開いた会見で、田村明比古長官は今後の訪日外国人旅行者数の見通しについて、「17年が正念場になる。これまでの増加は、ビザの緩和や消費免税制度の拡充などによりプラスに働いていたが、観光資源の面で言えば、現存のものを出していた状態。今後は中身(商品)の強化をしていかなければならない」と強調した。