山口県の食PR

 山口県は3月17日から30日までの約2週間、大阪・阪急梅田駅改札内で、特産品約260品目を取りそろえた「山口県アンテナショップ」を開設する。

 山口といえばフグが有名だが、それ以外のイメージが弱いのが現状で、なんとか知名度アップをはかりたいと、関西でのショップ開設は初めてという。フグの加工品のほか、蒲鉾や長州黒かしわ、外郎、地酒などを販売。ショップは夜10時まで営業し、仕事帰りのサラリーマンやOLにPRする。

 県では今年9月1日から12月31日までJRグループとタッグを組み、大型観光キャンペーン・幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーンを開催。来年には明治維新150年を控え、食や温泉、歴史文化の情報発信を強化している。

【土橋 孝秀】

対談 日本政府観光局(JNTO)理事長 松山 良一氏 × ナビタイムジャパン社長 大西 啓介氏

ナビタイムジャパン社長の大西啓介氏(左)と
JNTO理事長の松山良一氏

消費額8兆円達成へ

松山氏「“日本の原風景”をPR」
大西氏「地域の魅力発掘したい」

 1月25日、日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長と、ナビタイムジャパンの大西啓介社長が対談。インバウンドの受入れをめぐる課題や施策を中心に語り合った。観光資源の発掘や、2次交通対策など、訪日外国人旅行者(インバウンド)4千万人や旅行消費額8兆円といった目標を達成するために、自治体が取り組むべきことは多い。世界標準の視線を持つJNTOと、豊富なビッグデータを有するナビタイムジャパン。両トップが示す課題と解決に向けた提言に注目したい。
【謝 谷楓】

 ――海外でのPRを担うJNTOから見た、インバウンド対策に関する課題とは。

松山:受入環境の整備が、大きな課題だと考えています。例えば2次交通対策や夕食のあとにも旅行者が楽しめる娯楽施設を用意することも重要です。

 ――まずは、インバウンドのニーズを正しく把握する必要があるようです。自治体はどのような方策を取っていけばよいのでしょうか。

大西:ビッグデータに代表される、“事実”に目を向けることが重要です。例えば、自治体には、宿泊施設や飲食店の増加計画など、政策を決定する際のきっかけとして、ビッグデータを活用してほしいと考えています。

 奈良県を中心とした動態(人の流れ)に関するビッグデータを分析すると、人の流れが昼間に集中していました。夜間、旅行者の多くが、大阪府や京都府へと向かっていたのです。データに基づく“事実”を知ることで、夜の滞在時間を伸ばすなど、効果的な政策を期待できます。

 ビッグデータのなかには、旅行者の回遊ルート情報も含まれています。国籍についても知ることができ、ルートやスポットについて、国籍別の傾向を把握することができます。想定していたのと違うルートに人が集まるのであれば、道しるべとなる掲示物や標識を設置し、特定スポットへの誘導というように、政策の修正も可能です。

 自治体だけでなく、観光庁の調査事業でも、当社のビッグデータは利用されています。

 ――JNTOでの、ビッグデータの活用について。

松山:JNTOのミッションは、インバウンドの琴線に触れるPR活動を展開し、誘客を実現することです。海外個人旅行客(FIT)が増加し、体験型や地方への分散化が進んでいます。昨今、旅行者一人ひとりの行動パターンをよく理解するという点でも、ビッグデータをどんどん活用していきたいと考えています。

 ――2020年に向けた取り組みのなかで、地方創生も大きなテーマです。サポートできることは。

大西:自治体と手を携えて、地域の観光資源を発掘していくことができます。動態や回遊ルート情報といった、確かなデータに基づく提案をしています。インバウンドの興味を引く観光資源の発掘を、自治体の皆様と一緒になって行っています。

 2次交通についても、旅行者が安心して移動できるようナビゲーションをしていきたいと考えています。乗合いと貸切、日本のバス事業者数は現在、2千社にのぼります。5年の歳月をかけ、各社について整理してきたデータは、全体の8割を超えました。18年には完成するため、情報の多言語化を目指します。

 当社のナビゲーションサービスを利用し、電車を降りたら温泉まではバスで向かうという、よりスムーズな移動が可能となります。インバウンドが増えれば、バスの発着回数の増加も見込めるはずです。

松山:2020年に向け準備は万全のようです。大いに期待しています。

 ――兵庫県神戸市では多言語によるバスロケーションサービスを提供しています。DMOに関する考えを、それぞれ教えてください。

松山:JNTOでは各地域のDMOに対し、海外の成功事例を紹介しています。米国のナパバレーや、スイスのツェルマットの取り組みを参考に、提案をする場合もあります。

 DMOの要は、民間の方々、とくに地域が主体となって行動することにあります。地域の魅力を広域にまたがってPRするのが狙いですから、中心となってリーダーシップを発揮する存在が必要だといったアドバイスも行うよう心がけています。

 北海道観光振興機構や、せとうち観光推進機構など、成功事例も出つつあります。JNTOでは、DMOが日本のインバウンドを牽引することにより、モデルケースが増えることを期待しています。

大西:当社では、定性・定量調査の実施や、自治体職員向けインバウンド対策のワークショップの開催など、コンサルティングという形で、地域への誘客をサポートしています。奈良県ではデジタルサイネージを利用し、モノ・コト消費の拡大もはかっています。

 ――地域の“稼ぐ力”を伸ばす施策ですね。DMOの理念と重なります。

大西:インバウンドの訪日目的も、把握しています。インバウンド向けナビゲーションサービス「NAVITIME for Japan Travel」アプリを利用する際、国籍や性別、訪日回数といった情報も合わせて取得しているのです。旅行者の国籍別に、滞在者数や目的を知ることができ、国内地域ごとの比較も容易です。例えば、四国地方を訪れるインバウンドの数や目的を他国と比較すると、フランス人旅行者が多く、神社仏閣や四万十川など、文化や自然に高い関心を示していることが分かります。

 これらデータに基づく“事実”を知れば、フランス人向けの標識増加や、案内パンフレットにフランス語を加えるといった、効率の良いPRができるはずです。

 ――今後、インバウンドの消費拡大をはかるためのキーワードとは。

松山:“日本人の日常生活”こそ、一番強みのあるコンテンツだと考えています。例えば、あぜ道を散歩するという、日本人にとっては当たり前となった原風景も、外国人旅行者にとっては、魅力ある素晴らしい体験の1つなのです。

大西:田植えも良い体験となるはずです。また、川で鮎を釣り、囲炉裏で焼く。ただそれだけでも、関心を持つ旅行者は多いため、地域での消費増加を望めます。

松山:体験を通じ、大きな感動が生まれます。感動が生じれば、自ずと財布の紐も緩むはずです。立派な施設を立てるだけが正解ではないと思います。

大西:現在、日本在住の外国人クリエイターが、地域の魅力を海外に発信する「EXPLORE JAPAN PROJECT」の取り組みを行っています。WebサイトやSNSを通じ、地域の観光資源を発掘・発信しているのですが、今後も、自治体と協力しながら、誘客や消費に貢献していきたいです。

 ――ありがとうございました。

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インバウンド対策の
現状を語る松山氏

インバウンド観光セミナー、松山氏、大西氏らが登壇

 当日、対談が行われた東京国際フォーラム(東京・有楽町)では、インバウンド対策の立案に携わる自治体担当者を対象に、ナビタイムジャパン主催による「インバウンド観光セミナー」も開かれた。日本政府観光局の松山良一理事長と、蜷川彰インバウンド戦略部長、JTB総合研究所の早野陽子主任研究員、同社の大西啓介社長が、それぞれ登壇した。

 松山理事長は、「今後、口コミはますます大きな影響を及ぼすことになる。SNSの活用が大切だ」と強調。インバウンド者数4千万人(2020年)を達成するためにも、海外個人旅行客(FIT)を取り込むPR施策を創出することが重要との考えを示した。

 続いて蜷川戦略部長は、消費拡大のノウハウを説明。早野研究員は、「データから見る訪日旅行者の変化」と題し講演した。

大西氏は、ビッグデータの
活用について説明

 大西社長は、「旅行者の視線で、地域の観光資源を、自治体の方と発掘していく。インバウンドの滞在実態など、データを分析しないことには、分からないことがあるのも確かだ」と、ビッグデータの有用性を紹介した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

海旅の新しい未来を、アウトバウンド促進協 始動(JATA)

全体会議で菊間会長があいさつ

 日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は2月13日、第1回アウトバウンド促進協議会(菊間潤吾会長)の全体会議を開催した。菊間会長は冒頭「2017年のJATAの最重要課題は海外旅行の復活」と述べ、業界始まって以来の画期的な試みである、同協議会の設立が、海外旅行の新しい未来を切り開いていくことにつながると意気込みを語った。

 同協議会には、旅行会社や観光局、航空会社、宿泊施設やその他関連団体など計122社・団体が参加。海外旅行の需要喚起に向け、(1)ヨーロッパ(2)中近東・アフリカ(3)北中南米(4)アジア(5)オセアニア・大洋州(6)東アジア――の6つのチームに分け、全チームが4月には具体的な活動を始められるよう調整している。

 菊間会長は同協議会を設立した目的の1つに昨今の旅行者のオンライン化の現状を挙げた。「(オンライン化が進むなかで)旅行会社の存在意義を高めるためにも、ダイレクトな意見交換をする場は必要」とし、同協議会を名前だけの組織体にするのではなく、プロ同士が意見交換をし、日本のマーケットに価値のある旅行を提供できるよう活動していく旨を伝えた。

 今後の活動として、各チームに1人、専任の商品造成担当者を参加させ、部会長、副部会長のリーダーシップのもとそれぞれの活動方針を決定していく。すでに3月3日には、東アジアチームが担当する「韓国旅行復活緊急フォーラム」が開催され、各チームが具体的な活動に向け歩みを進めている。

 なお、同日の会議では田村明比古観光庁長官による「ツーウェイ・ツーリズムにおけるアウトバウンド促進についての観光庁の方針について」と題した講演も行われた。

 同協議会の役員は次の各氏。

 【会長】菊間潤吾(JATA海外旅行推進委員会委員長)【副会長】松田誠司(同推進委員会副委員長)▽生田亨(同)▽ギジルモ・エギュアルテ(メキシコ観光局局長)【委員】澤田秀雄(エイチ・アイ・エス会長兼社長)▽藤田克己(JATA海外旅行推進委員会副委員長)▽フレデリック・マゼンク(フランス観光開発機構在日代表)▽檀原徹典(ミキツーリスト社長)▽榊原史博(中華人民共和国マカオ特別行政区観光局日本代表)▽マージョリー・デューイ(CWW日本代表)▽石原義郎(航空新聞社編集長)▽大畑貴彦(日本海外ツアーオペレーター協会会長)▽志村格(日本旅行業協会理事長)

丁野朗(ちょうの・あきら)氏 「文化財観光」の展望語る

「ガイド」が観光の付加価値、外客はディープな日本文化求める

さまざまな場所で魅力的な
観光地づくりについて講演
を行う丁野朗氏

 文化庁は、「文化財活用・理解促進戦略プログラム2020」を策定するなど、文化財の活用を日本の観光振興の1つの柱に据えている。「日本遺産」認定事業もその一環。日本遺産審査委員会で委員を務める丁野朗氏(日本観光振興協会総合調査研究所 特別研究員)に、文化財観光の現状と展望、日本遺産の可能性について話をうかがった。カギは「ガイド」と「日本文化」。同氏が考える文化財観光の展望や、日本遺産の活用をまとめた。
【後藤 文昭】

 未来のビジョンを形にすることの重要性

 地域の発展には、未来の地域ビジョンを共有するとともに、これらを形にする事業が不可欠である。日本遺産の認定基準の中には、「資源を活かした地域づくりの将来像と、実現に向けた具体的な方策が適切に示されていること」、さらには「地域活性化の推進が可能となる体制整備の必要性」が掲げられている。単に物語だけでなく、これを実現する事業が重要である。

 日本遺産や文化財の活用をはかるためには、「モノづくりへの展開」や「行政主導から、いかに民間事業に波及させるか」がポイントになる。日本遺産鎮守府4市(横須賀市・呉市・佐世保市・舞鶴市)は戦後70年にわたる連携のもとに「カレーフェスティバル」や共同プロモーションなどを手がけている。わかりやすい事業で「日本遺産」の用語を浸透させ、来場者の関心を引いている貴重な事例だと思う。面白く、画期的なストーリーであっても、目に見える事業を通じてストーリーが体現できていないと魅力が失われてしまう。

 認知度を高めることが課題

 日本遺産の認知度がどの程度あるのかは、一度世論調査をする必要があると思っている。とくに地元の人たちや教育関係者、旅行業者などへの認知度が上がっていかないと、外から訪れる人に日本遺産が浸透せず、本来の目的である“地域の文化ストーリー”が伝わらず、魅力が高まっていかない。地域住民に日本遺産のストーリーを理解してもらうことが重要で、時間はかかるが、最終的には国民の認知度が半数を超えるようになることが目標だろう。

 ガイドは点ではなく全体を語れるべき

 日本遺産にとってガイドは非常に大きな役割を持っている。このため、「日本遺産のストーリーを語れる」ガイドの養成が不可欠である。横須賀市では、「ベルニ―公園」や「記念艦三笠」などの個々の施設だけでなく、エリア全体を1つにつなげ、まち全体の歴史を説明し、魅力を高める努力をしている。さらに4都市のガイドが連携し、ほかの都市の案内もできるような交流事業も計画している。

 ディープな日本文化を掘り起す日本遺産

 日本の金物は精巧で、世界でも人気が高い。例えば兵庫県三木の金物は、大工道具として欧州ではよく知られている。海外ではよく知られているのに、日本人が気がついていないことが実は多い。日本人が道具や文化に疎くなったことも要因ではないか。各地域に古くから伝承されている祭りのなかには、部外者が入れないものが多いが、欧米人などが見ると虜になりそうなものが多い。

 今後は個人の海外旅行(FIT)、特別な目的に絞った旅行(SIT)を志向する外国人が、ディープな日本文化を見に来るケースが増えると予想している。何度も海外旅行に行く日本人が、ひなびた地方の小さなまちに、その国の本当の原型があると思うのと同じことだ。そう考えれば、日本遺産の可能性もディープな日本文化にあると言える。

 観光はありのままを見せるべき

 日本人は「もてなす」という文化行動を持っていた。しかし、最近の文化財施設や型にはめられた観光などでは、そのまま「おもてなし」を形にすることが難しくなっていると感じる。 

 反対に、にし阿波観光圏(徳島県三次市と美馬市、つるぎ町、東みよし町からなるエリア)では、山深い地域の住民がガイドの受け皿になっている。何か特別なことをしているわけではなく、普段のありのままの暮らしに、訪れた外国人は感動する。そこには暮らしの知恵と厳しさが感じられて、観光客を惹きつけているのであろう。

 観光が文化交流ではなくなりつつある

 観光は本来文化交流である。今はそこから外れている事例が多い。そこで、なるべく早くに、日本遺産のような文化財を楽しむ観光の仕組みづくりが必要だと痛感している。外国人観光客は旅慣れていて、よく勉強をして訪れる。今まで日本人の団体観光客相手に行ってきたやり方を少し変え、文化をみせることの本当の意味を考えて仕掛けを作らなければならない。

 日本には、地域文化の基層とその変遷、暮らし、文化の意味などを語れるガイドが非常に限られている。地域文化を多面的に語れる人が育っていかないと文化が経済にならない。ましてガイドを無償のボランティアに依存していてはダメだ。観光の付加価値はガイドの力量に拠るところが大きい。

 文化財のドラスティックな活用を

 文化財活用の点では、もっとドラスティックな展開がほしい。例えば、文化財指定の大寺院の庫裡は書庫であり、宿泊施設でもあったのだから宿泊できたらいいと思う。武家屋敷なども同じだ。旅館業法などの問題もあるが、早急に対応を進めてほしい。

 ただし、文化財の公開・活用は、「文化財の毀損」という大きな問題もはらんでいる。モラルに関しては規制や強制をするのは難しい。そこでカギになるのが、「旅育」ではないか。子供のときに親と旅行して、親から公共の場でのモラルや、文化財の価値などを教わることも必要だ。安易に複製品を使用するケースもあるが、外国人には気がつかれてしまう。昔からそこに住んでいた人や本物を知っている人にはすぐにバレてしまう。

 日本には物語が豊富にある

 日本遺産は、全国で100カ所の認定を目指している。大都市や北東北、北海道などの地域にはまだ日本遺産がない。これらの地域にも物語は豊富にあるので、今後、各地からのエントリーを期待している。

3月19日、龍泉洞再開、“観光復興のきっかけに”

龍泉洞再開を力強くアピール

 昨年8月に発生した台風10号の被害を受けた岩手県岩泉町の「龍泉洞」が、3月19日に再開する。2月13日には岩手県内の沿岸市町村の観光関係者が本紙を訪れ、岩泉町の現状や今後について説明。来社したのは三浦英二氏(岩泉町経済観光交流課課長)と貫牛利一氏(久慈市観光物産協会専務理事)、山口惣一氏(宮古観光文化交流協会事務局長)、下田良彦(ホテル愛山総支配人)、遠藤康弘氏(岩手県北バス東京営業所所長)、赤沼喜典氏(三陸鉄道旅客サービス課課長)の6人。町を代表する名所の再開に加え、道の駅岩泉も5月の連休を目途に再開の見通しが立つなど、関係者からは笑みがこぼれた。

 龍泉洞は日本三大鍾乳洞の1つ。洞内総延長は今も調査中で、判明している部分は3600メートル。そのうち700メートルが公開されている。3つの地底湖の美しさが魅力。水は「名水百選」にも選ばれている。関係者は、「3月19日の龍泉洞再開をきっかけに、観光復興に期待をしている」と述べ、「ヨーグルトなどの人気商品も、なるべく早く生産を再開できるようにしたい」と語った。

 本紙読者に岩泉町の名産品プレゼント

 岩泉町の名産品詰め合わせを、抽選で本紙読者4人にプレゼント。内容は、八重桜松茸酒(泉金酒造)と、かりんとう(志たあめや)、龍泉洞の水・じっ茶ばっ茶(岩泉産業)の4点。応募はハガキに住所、氏名、電話番号を明記のうえ、「旅行新聞新社岩泉町名産品プレゼント係」宛(〒101―0021 東京都千代田区外神田6丁目5番11号 MOAビル6階)まで。応募締め切は3月10日(当日消印有効)。電話:03(3834)2718。

プレゼントの名産品5点

魅力の箱庭“尾道”

尾道の箱庭的な景色

 尾道市は、「市内のまち並み」と「 村上海賊」(愛媛県今治市と共同認定)に関係する、2つの日本遺産ストーリーを持つ。サイクリストの聖地であり、多くの映画監督に愛された、魅力がぎっしり詰まった“箱庭”の尾道を紹介する。
【松本 彩】

 ■海の守り人〝村上海賊〟

 村上海賊という名前を聞いたことがあるだろうか。2014年に本屋大賞に輝いた「村上海賊の娘」(和田竜著)を読んで、なんとなく耳にしたことがある人も多いのでは。村上海賊は室町時代から戦国時代にかけ、芸予諸島(瀬戸内海西部に位置する諸島)を中心に活躍した海賊(水軍)。因島(尾道市)、能島(今治市)、来島(同)の3家から成り、瀬戸内海の制海権を握っていた。
 村上海賊は現在の金品を略奪するような海賊の一面もあったが、瀬戸内海の水先案内や海上警固、海上運輸などを行っていた。つまり、〝海の守り人〟でもあった。
 因島にある白滝山は、室町時代に因島村上氏の第6代村上吉充が、観音堂を建立したと伝えられていることから別名、「観音山」とも呼ばれている。白滝山はその地形などから、因島村上氏の信仰の場であり、戦略的な見張り場でもあった。

鮮やかな色彩を持つ耕三寺

 ■母の寺〝耕三寺〟

 しまなみ海道の生口島南ICから13分ほどのところに耕三寺博物館がある。耕三寺は大阪で大口径特殊鋼管の製造会社を営んでいた、初代住職・耕三寺耕三が母親の死後、菩提寺として母親への感謝の意を込めて、1935(昭和10)年から30年以上の歳月をかけて建立した、浄土真宗本願寺派の寺院で、「母の寺」と呼ばれている。
 耕三寺の堂塔は、さまざまなものを手本にして建立されている。本堂は京都の宇治平等院鳳凰堂を原型として建立し、孝養門は日光東照宮の陽明門がモチーフになっている。相違点は、色彩や彫刻が手本としたものよりも、鮮やかで豪華であるところ。鮮やかな色彩を使ったのには、初代住職の「母親を綺麗に着飾らせたい」という想いがあったのだろう。耕三寺を訪れる際は、母親への感謝の気持ちを忘れずに、参拝してほしい。

多々羅大橋(しまなみ海道)

 ■サイクリストの聖地〝しまなみ海道〟

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60キロ(サイクリング推奨ルートは約70㌔)のしまなみ海道は、瀬戸内海の美しい海や島々の景色を眺めながらサイクリングできることから「サイクリストの聖地」として、国内外からサイクリストたちが訪れている。
 しまなみ海道サイクリングロード推奨ルートには、車道の左端に推奨ルートを明示するブルーラインや、サイクリングルートの中で目印となる施設などが少ないルート上に、各島の地点距離を500㍍間隔で記した表示板「瀬戸内しまなみ海道Location Marker」などが設置されている。また、サイクリング中に気軽に立ち寄って休憩などができる「サイクルオアシス」も、しまなみ沿線の施設に整備されているので、安心してサイクリングを楽しむことができる。
 国内最長の斜張橋で、広島県と愛媛県の県境に架かる多々羅大橋(1480㍍)の支柱の下で手を叩くと、龍の鳴き声のような音が反響しながら空に向かって登っていくような現象「多々羅鳴き龍」を体感することができる。美しい景色とともに、さまざまな体験をするのも、サイクリングの醍醐味と言えそうだ。
 尾道市にはサイクリストに優しいホテルがある。JR山陽本線の尾道駅から徒歩10分ほどのところに2014年3月にオープンしたONOMICHI U2は、全国初の自転車に乗ったままチェックインできるフロントが完備されており、自転車はすべての部屋に持ち込むことができる。

おのみち映画資料館

 ■映画のまち〝尾道〟

 小津安二郎監督の「東京物語」や、大林宣彦監督の「ふたり」など、尾道市はたびたび映画やドラマのロケ地に使用されることが多く、1929年から2008年までの約80年間に尾道市内で撮影された映画の本数は45本と、まさに「映画のまち尾道」と言っても過言ではない。
 しかし映画のまちと呼ばれる尾道市も、レジャーの多様化や、DVDの普及などにともない、徐々に映画館への客足は遠のき、最盛期の1950年には4館あった映画館は、2001年には1館も残らず閉館してしまった。
 この状況を打破するべく、立ち上がったのが映画好きの尾道市民たちだ。04年に市民有志による「尾道市に映画館をつくる会」が発足。06年には同会が「シネマ尾道」としてNPO化され、08年に同法人主体の映画館シネマ尾道が開業。メッセージ性の強い邦画や洋画を上映し、再び尾道市が映画のまちとして注目されるようになった。
 おのみち映画資料館には尾道ゆかりの映画資料などが展示されており、ミニシアターでは、尾道ゆかりの映画の予告編などを見ることができる。

新コースターは“闘牛”、大迫力の新アトラクション登場(志摩スペイン村)

ゲスト参加型の新ミュージカルも注目

 志摩スペイン村は2月3日、今期の見どころを紹介する内覧会を開き、新たに導入したアトラクションやストリートミュージカルなどを披露した。当日はマスコミのほか、ネットで募集した一般客や地元の幼稚園児など、約3千人の招待客も訪れ、一足早く新たな魅力を楽しんだ。

 新アトラクションとなるスチームコースター「アイアンブル」は、スペインの伝統競技「闘牛」が、メカ闘牛“アイアンブル”と、武器を装備した人間が闘うバトルゲームへと進化した近未来が舞台のインドアコースター。闘いで傷ついたアイアンブルが修理・強化のためファクトリー内を恐るべきスピードで疾走するスリル満点のアトラクションだ。最高速度は時速51キロ。利用は身長110㌢以上から。同コースターの導入で園内には個性あふれる4機種のコースターがそろうことになる。

 新ストリートミュージカル「バイレ・デル・カピタン」は、「大航海時代」をテーマにした祭りの準備で盛り上がるスペインのとある広場が舞台。主役の船長(カピタン)も決まり、準備万端と思ったところに思わぬハプニングが…。陽気で明るいスペイン人が巻き起こすゲスト参加型の楽しいミュージカルとなる。上演時間は約25分。11月30日まで毎日2回公演。

 また、今年のフラメンコショーは、スペインのテイストに中南米発祥のルンバやタンゴ、ラ・バンバなどをふんだんに取り入れた「イーダ・イ・ブエルタ」を上演。11月30日まで毎日2―3回公演する。

 このほか、春休みやゴールデンウイーク、夏休みにはライブスペクタクル「ロストレジェンド~シルコ・デ・ティエラ~」を期間限定で上演。炎と水、そしてアクロバティックなパフォーマンスが織りなす迫力満点のライブショーだ。

 今期の営業期間は来年1月14日まで(6月26日―30日までは休園)。ゴールデンウイークや夏休みはナイター営業を行う。

No.452 スーパーホテル、“共鳴と感動”でリピーターに

スーパーホテル
“共鳴と感動”でリピーターに

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第9回は、ビジネスホテルチェーンを運営しているスーパーホテルの山本梁介会長が登場。いち早く取り入れた「IT化」に加え、“1円あたりの顧客満足度ナンバーワン”や、科学的に安眠を追求する取り組みなどについて内藤氏と語り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(9)〉
スーパーホテル

内藤:現在からスーパーホテルの歴史を見ると、一見とても順調に映りますが、挫折を繰り返し、さまざまな試行錯誤があったと聞いています。

山本:色々ありました。実家は繊維商社で、私は3代目でした。父が早く亡くなったので、25歳のときに会社を引き継ぎました。とにかく一生懸命やらなければならないという思いで、経営学の本を読み漁り、習いたての計数管理を中心に据えて経営をやっていました。

 しかし、現場からは「社長の言われることはよく分かるけど、現実にはなかなかそのようにはいきません」と言われ、「自分にはリーダーシップがないのだ」と思い悩む時期もありました。

 「リーダーシップとは、どれだけ責任を取るか」ということも、当時は分かりませんでした。結局、上手くいかずに家業の繊維商社を畳んでしまいました。

内藤:その後、不動産賃貸業に転身されたのですか。

山本:父が“石橋を叩いても渡らない”という堅実な経営をしてくれたおかげで、会社を売った資産が残り、不動産賃貸業を始めました。賃貸業をやるからには、「経営をしっかりと学び直し、独自のものをやりたい」と思いました。仕事の合間に時間を見つけ、天分を生かして上手くいっている経営者や、失敗された方などに話を聞いて回るなかで、成功者たちの共通項として「運」が一番大事だという思いに至りました。また、「ピンチをチャンスにする」感性も持ち合わせていました。感性は第六感なので、苦しいときにも閃きがある。そして、そのような人は爽やかであり、人間力がある。周りからも力をもらえている。「感性を磨かなければならない」というのはすぐに理解できたのですが、「人間力」という部分は、実際どうやって行動に移せばいいのか分からず、考え続けました。

内藤:シングルマンションを全国展開していくきっかけは何だったのですか。

山本:たまたま英字新聞を読んでいたら「ロサンゼルスでは不動産賃貸でファミリー層が50%を割る」という記事に驚きました。

 当時の米国は今の日本のように晩婚化や離婚の増加によって、シングルの家庭が増えていました。また、多くの人が仕事や刺激を求めて都心部に集まってきていました。大阪もいずれそのような社会構造になるのだろうと思い、関西で一番早い時期に木造のワンルームマンションを建てました。…

 

※ 詳細は本紙1660号または2月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

プレミアムフライデー ― 終わりなき残業よりも遊んで豊かに

 2月24日から「プレミアムフライデー」が始動する。

 官民が連携して、毎月末の金曜日は早期退社を推進する。給料日後のため、買い物や飲食、週末へと続く旅行など豊かな時間を多くの人が過ごすことによって、消費を喚起していく運動だ。経済産業省が提唱し、観光庁も乗り出した。観光産業に追い風になると期待されている。

 旅行会社やホテル・旅館、レジャー施設、飲食店などはいち早く「プレミアムフライデー」に対応した商品を企画し、積極的にPRしている。ニッポンレンタカーは毎月末金曜日の午後5時から月曜日の午前9時まで、最大64時間利用できる割引プランを企画。2万1060円のコースが、約37%の割引で1万3284円と、お得感を打ち出している。

 宿泊施設や旅行商品も、ドリンク無料サービスなど、多種多様な特典を付けている。

 DeNAトラベルは、会社に勤務する25―69歳の男女509人を対象にプレミアムフライデーに関する調査を実施した。これによると、「導入予定」は全体のわずか2・2%。一方、最も多かったのは「導入予定なし」で55・0%。続いて「分からない」が39・5%。「勤め先が導入したらどう思うか」では、「とてもうれしい」が43・6%、「ややうれしい」が23・6%と全体の3分の2が肯定的に捉えている。「導入されると、アフター3は誰と過ごしたいか」(複数回答)では、トップは「パートナー」(50・1%)。次いで「1人」(48・1%)、「友人」(45・6%)――の順となっている。

 「何をして過ごすか」(複数回答)では、「旅行」(70・9%)が、「買い物」(36・0%)や「外食」(33・6%)の約2倍と、圧倒的に多かった。一方で消費とはあまりつながらない「自宅でゆっくり」も46・4%あるのも見逃せない。

 旅行を選択した人に「どこに行きたいか」(複数回答)では、①台湾(17・3%)②韓国(12・8%)③沖縄(9・8%)④北海道(8・3%)が人気を集めた。

 企業側では、これまで「失恋休暇」などユニークな制度を導入してきたサニーサイドアップ(次原悦子社長、東京都渋谷区)がプレミアムフライデーに賛同している。毎月末金曜日は就業時間を午後3時までとし、それ以降は社内会議や行事を行わない。さらに、初回の2月24日には、非正規雇用社員を含む全スタッフに、支援金として3200円を支給するという徹底ぶりだ。同社のスローガンは “たのしいさわぎをおこしたい”。次原社長は「プライベートが充実すれば、より良い仕事に結びつく」とし、仕事の生産性向上にもプラスに作用すると捉えている。

 このプレミアムフライデーは経産省が、「もっと遊べ、もっと旅行しろ、人生を楽しんで国を豊かにしてくれ」と民間企業に対しても積極的に早期退社を推奨し、旗を振っているところが逆説的に映って面白い。今後、広く浸透し、定着するかは未知数だ。「月末の目が回るような忙しい時期に冗談じゃない!」という声が、多くの企業の現場から聞かれるだろう。しかし、日本人はやはり働き過ぎである。終わりなき残業でダラダラと深夜まで働くより、個々の豊かな時間が全体的に増えて、なおかつ経済が活性化した方がいい。

(編集長・増田 剛)

JTB髙橋社長、“仕掛けと変革の年”、黄金の時間の果実得る

髙橋広行社長

 JTB(髙橋広行社長)は1月19日、東京都内で2017年新春経営講演会を開いた。冒頭、髙橋社長は2016年の観光情勢を振り返り、16年は爆買いに代表される〝モノ消費〟から、体験などを中心とした“コト消費”へと大きく様変わりした背景を踏まえ、「リアルエージェントにしかできない〝ならではの価値〟について今一度考えた年だった」と表現した。

 今年度の国内旅行は、大きなイベントや話題性に欠けるものの、全体的に需要は底堅く推移する見込み。とくに今年は、JRが新たな観光列車を走らせることから「鉄道の旅」に注目が集まると述べた。海外旅行について髙橋社長は、「今年こそは、我われリアルエージェントにとって、本当の意味での海外旅行復活の年にしなければならない」と述べ、海外旅行復活に向け、待ちの姿勢ではなく、自ら積極的に働きがけを行っていく旨を伝えた。

 訪日旅行は、アジア新興国からの旅行者を中心に、目的地としての日本の人気は底堅いことから、今年も堅調に推移するとみられる。しかし、旅行者のニーズや行動パターンが「モノ消費からコト消費」になるなど大きく変化しているため、このような変化に対し、柔軟に対応していく必要があると語った。

 経営戦略として、同社グループでは17年を「仕掛けと変革」の年と位置付け、仕入れや販売を強化していく。仕掛けについては、(1)直近の需要につながる仕掛け(2)将来に向けた種まきの仕掛け――の2点を強化していく。具体的には昨年10月に、日本通運、三越伊勢丹ホールディングスとの共同出資により立ち上げた合弁会社、Fun Japan CommunicationsにおけるWebサイトでの日本の魅力の情報発信などを行い、日本の企業・自治体とアジアの現地消費者を結ぶ、新たなビジネスを展開していく。

 変革について個人事業において、仕入れの面で(1)仕入れの一元化(2)戦略的な仕入れの強化――の2つの改革を行う。商品造成面では、付加価値の高い商品の拡充を行っていく。また、販売面において実店舗に求められる価値を見つめ直し、より一層顧客ニーズに対応していくことで、〝真の製販一体〟の実現をはかると述べた。

 最後に髙橋社長は、15年の新春あいさつで語った、20年の東京オリンピック・パラリンピックまでの、〝変化の激しい時間=黄金の時間〟について「変化に対応できたものだけが、黄金の時間の果実を得ることができる。果実を得るためには、積極的な仕掛けと変革が必要」と改めて言及した。