「女将のこえ206」山本 まり子さん、ふきや(神奈川県湯河原温泉)

2018年1月20日(土) 配信

山本 まり子さん ふきや

SNSと和顔愛語

 「あしがりのとひのかふちにいづるゆの(足柄の土肥の河内に出づる湯の)よにもたよらにころがいはなくに」。これは湯河原のこととされる。唯一、万葉集に歌われる温泉地なのだ。

 高台にあるふきやの露天風呂は、湯に浸かりながら山と天を望められ、月が通る。脱衣所に月齢表を貼る心遣いに、思わず微笑んだ。

 まり子さんは東京出身。姉が見合いを躊躇した先に興味を抱き、今では3人の母で若女将だ。「サラリーマンの方よりも自営のほうが楽しそうと思ったんです」と、屈託のなさと好奇心でふきやを支える。

 「義母が現役でいてくれますし、私は資格もないし料理もできません」と言うが、実は2009年から早々とツイッターを始め、現在はブログもフェイスブックも自ら毎日更新する。これを見て、足を運ぶ人も少なくない。SNSが集客の大きな要となった今、これはもう不可欠な仕事なのだ。

 始める原動力は、「もったいない」という主婦感覚だった。「主人はこだわりの人で、例えばロビーの障子の桟は、通常7㍉のところ、うちは柔らかな雰囲気を出すために5ミリで作ってもらっているんです。階段のすべり止めも特注品ですが、誰も気づかない(笑)。もったいないですよね」。そこを出発点に、食材、おもてなし、温泉、人との出会いなど、さまざまな情報発信を行う。見えない部分を楽しく見せることは親切な行為だ。親切にされた顧客が、安心感や親近感を覚えるのは自然なことだろう。

 さて、普段会えない人に会える喜びが女将業にはあるが、まり子さんにとってその1人は高倉健さんだ。「お得意様が連れて来てくださいました。大ファンの主人や私たちを客室に招いてくださり、特別編集のDVDを一緒に拝見した夢のような時間でした。亡くなる1年前のことです。わざわざ湯河原の街までご自身で行かれ、ケーキまで買って来てくださった。優しさに頭が下がりました」

 誰に対しても思いやりを持つことを、まり子さんも和顔愛語として大切にしている。「まず、相手の話をよく聞いて受け入れることですね。お互いさまという意味で、私の弱さもさらけ出してしまいます」。顧客とは、感情を共有しながら一緒に歳を取っていきたいとし、スタッフには、失敗を咎めるより、頑張った分を認める立場で在りたいという。

 「私が間違えの多い人間なので、人の間違えにも寛容になりやすいのでしょう。これが、私にできるいちばんのこと、と心掛けています」。

(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

     ◇

住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上398▽電話0465-62-1000▽客室数:20室(80人収容)、一人利用可▽創業:1935(昭和10)年▽料金:1泊2食付き3万円(税別)~▽温泉:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉泉▽「ふき」がモチーフの絨毯や浴衣は隈研吾氏デザイン、天井も壁も照明も一流職人による「作品」。まり子さんの書が館内の案内などに生かされている。

 

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

高知の日本遺産「ゆずロード」、ゆず収穫など体験

2018年1月19日(金) 配信

森林鉄道の軌道は「ゆずロードに

高知県中芸地域(奈半利町・田野町・安田町・北川村・馬路村)を走る森林鉄道の軌道は「ゆずロード」へ――。高知県は2017年の日本遺産認定を経て、ゆずの収穫体験やオリジナルポン酢づくり体験、森林鉄道乗車体験などイベントを拡充している。

 かつて森林鉄道が駆け巡った中芸地域は、その後、林業に代わる産業としてゆず栽培に注力し、日本一の生産量を誇るまでになった。木材を運んだ森林鉄道の軌道は、ゆず畑の風景広がる「ゆずロード」に生まれ変り、旅行者にゆずの彩りに満ちた景観と香り豊かな食文化を堪能させる。

「ゆずロード」イベント概要

森林鉄道遺産

魚梁瀬森林鉄道は1911(明治44)年に国内3番目の森林鉄道として開通。1963(昭和38)年に廃線となり軌道などの撤去が行われたが、現在でも当時の面影を残す橋梁などが点在。18カ所が国の重要文化財の指定を受けている。

森林鉄道遺産の見学: 

 森林鉄道遺産18カ所のうち2カ所をガイドが案内する。

森林鉄道乗車体験:

昭和30年代の中ごろに活躍した機関車が昔の姿のまま走行。機関車の運転も体験できる。

【ゆずのまちで体験】

■ゆずロード”を眺めながら、収穫体験 in 安田町なかやま

ゆずの収穫体験(写真はイメージ)

場所:集落活動センター (旧中山小中学校、高知県安芸郡安田町正弘1538)

実施期間:11月15日(木)~12月10日(月)ごろまで ※ゆずの状況により、終了時期が変更。

受け入れ時間:午前9:00~午後3:00(体験時間は1時間)

定員:1回20人

料金:大人(中学生以上)1千円、小学生500円、 小学生未満 無料

予約:1週間前まで(受付は平日のみ)

TEL:0887-34-0866(高知県東部観光協議会) 

■馬路ポン酢手作り体験

ゆずの商品で有名な馬路村のゆず果汁と、様々な出汁やしょうゆを組み合わせて、自分だけのオリジナルポン酢づくり体験ができる。作ったポン酢はお土産に。

場所:馬路村農業協同組合(安芸郡馬路村3888-4)

時間:1時間(午前9:00~午後4:00の間)

実施期間:1月~10月(年末年始、 土日祝日は除く)

定員:1回40人

料金:800円

予約:2週間前まで

TEL:0887-44-2211 (馬路村農業協同組合)

馬路村農協工場見学:

かつての営林署跡地に建つ農協は、ゆず加工品売上げ30億円を誇る。工場内は見学自由で、ゆずの化粧水作りや石けん作り体験も楽しめる。見学者には、ごっくん馬路村1本(ゆずドリンク)の土産がつく。

■癒やし効果抜群のパワースポット

伊尾木洞の散策(安芸市):

伊尾木洞

周辺が海だったころ、波の浸食でできた天然の洞穴。洞穴の壁面と周辺には天然記念物のシダが群生している。神秘と癒しのパワースポットとして人気が急上昇しており、地元ガイドによる案内で散策もできる。

 北寺(安田町)で空海ゆかりの仏像を拝観:

空海が寺院建設のために木材を安田川へ流し、途中で滞留した木材から仏像群を造り、そこに建立したといわれる北寺。重要文化財の仏像9体が保管されている。

魚梁瀬杉の森・千本山:

樹齢200~300年の魚梁瀬杉の巨木が林立する千本山は自然のパワーが感じられる癒しの空間。長い間保護されてきたため、天然の巨大な杉や桧、ブナなどが今も残っている。

松山港に初寄港、2019年運航の「ダイヤモンド・プリンセス」

2018年1月19日(金) 配信

クルーズ旅行の人気が止まらない。2019年には、「ダイヤモンド・プリンセス」が初めて、愛媛県・松山港に寄港する

クルーズ旅行の人気が止まらない。2016年には、国内利用者数が過去最高の24万8千人を記録し、関連インバウンド数は約200万人となった。消費増を果たす絶好のチャンスと捉える寄港地も出ている。

 昨年12月、クルーズ旅行大手の「プリンセス・クルーズ(カーニバル・コーポレーション& plc社傘下)」が、2019年日本発着クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の寄港地を発表した。愛媛県・松山港が初めて寄港地に選出され。愛知県の中村時広知事は寄港に備え、受入体制の整備充実をはかるという。

 クルーズ旅の性質上、比較的高い年齢層が記念旅行に利用することが多い。富裕層の占める割合も高いとされ、定期的な運航は地域の観光業にとって大きなメリットとなる。政府は一昨年、目標とする(2020年まで)訪日クルーズ旅行客数を500万人に設定しており、300万人の飛躍を目指す構えを見せている。

松本ホテル花月「ながのテロワールとワインの会」4/1開催

2018年1月19日(金) 配信

左=マスターソムリエ・髙野豊氏、右=総料理長・須崎武氏

ゴーラ・ホテルアライアンスの松本ホテル花月(長野県松本市)は、長野の食材を使った料理とマスターソムリエ厳選のワインのペアリングが楽しめるイベント、第2回「ながのテロワールとワインの会」を、2018年4月1日(日)に開く。

 第1回「ながのテロワールとワインの会」は1月13日(土)に開催し、37人が参加した。当日は、食の経験が豊富な40~50代の女性が多数参加。地元松本や長野県内から参加した人も多く、長野の食材やワインを堪能できたと大変好評だったという。

 料理はレストランイカザの総料理長、須崎武氏が信州を代表とする「そば粉」をテーマに、地産食材をふんだんに使った料理全5品を提供。ワインは長野県出身でマスターソムリエの称号を持つ髙野豊氏が料理に合わせて厳選した下記6種類を提供した。

第1回の提供ワイン

・五一わいん、ナイヤガラ・スパークリング(長野県塩尻市)
・マンズワイン、酵母の泡・龍眼(長野県小諸市)
・山辺ワイナリー、シャルドネ・バレルファーメンテーション2015
(長野県松本市・里山辺地)
・山辺ワイナリー、長野県原産地呼称認定、メルロー・樽熟成2007
(長野県松本市・里山辺地)
・シャトー・ラバディ2014(フランス ボルドー、メドック地区)
・安曇野ワイナリー、紅木花2014(長野県長和町)

第1回のようす

□ 第2回「ながのテロワールとワインの会」概要

 総料理長が、地元松本の農家から仕入れた新鮮な食材をフレンチの技法を用いて料理する「ながのテロワール」を、特別コースにて用意。その料理一品一品に合わせるワインは、長野とワインを知り尽くしたマスターソムリエがセレクト。料理とワインそのものから、使用している食材にいたるまで、長野松本の魅力が存分に詰まったイベント。また、本イベントは、地元生産者の協力のもと、年間を通じて開催していきたい考えだ。

開催日:2018年4月1日(日)

時 間:午後12時30分~2時30分(開場 正午)

場 所:松本ホテル花月 レストランイカザ

料 金:1人 6千円(税・サービス料込み)
内 容:・1日限りの「ながのテロワール」特別コース(全5品)
    ・マスターソムリエ 髙野豊氏セレクトのワイン5種

松本ホテル花月は「民藝フィロソフィ 松本の日常の記憶」のコンセプトのもと、街の自慢となる地域に貢献できる施設を目指していく。

問い合わせ=松本ホテル花月 TEL:0263-32-0114

日観振とトリップアドバイザーが連携協定を締結

2018年1月19(金) 配信

日本観光振興協会の久保成人理事長(左)とトリップアドバイザーのサラ・マシューアジア太平洋地域デスティネーションマーケティング統括責任者

日本観光振興協会(山口範雄会長)とトリップアドバイザー(ステファン・カウファーCEO、米国)は2018年1月19日(金)、連携協定を結んだ。国内の各地域の観光振興に向け、情報発信へのアドバイスなど知見の提供や支援を共同で行っていく。

 同日、両者は会見を開き、日観振の久保成人理事長は「日本の観光は、特定の地域に偏っている状況が続いている」と言及。今回の提携で、地域の発信力やマーケティング力を向上させ、世界中から日本の地域への誘客を狙う。

 また、トリップアドバイザーアジア太平洋地域デスティネーションマーケティングのサラ・マシュー統括責任者は「日本の観光産業全体をサポートしたい」と展望。日本のまだ知られていない地域に人を呼び込むことで、地域経済への貢献をはかっていきたい考え。

 今回の提携ではトリップアドバイザー側のデータなどを基に、日観振が地域の参考になるよう編集したニュースレターを年4回ほど発信していく。2月に第1弾を配信する予定。また、人材教育では、セミナーや勉強会を開催。とくに日観振の勉強会にトリップアドバイザーから講師協力を受け、グローバル視点やIT視点を持った人材教育に力を入れる。

 さらに、特定地域を選定し、観光振興のための提案や支援を行うケーススタディの共同創出を行う。ケーススタディは熊本県上天草市を対象に取り組みを開始する。

石垣市が世界1位を獲得 人気上昇中ランキング

2018年1月19日(金) 配信 

石垣市が世界ランキング1位に

トリップアドバイザーがこのほど行った「人気上昇中の観光都市2018」で、沖縄県石垣市が世界ランキングで1位を獲得した。世界中の観光客から注目を集めており、その滞在にも満足しているようだ。

 「人気上昇中の観光都市」は、同社に投稿された1年間の世界中の旅行者の口コミをもとに、前年と比較して口コミでの評価や注目度がとくに上昇した観光都市をランキング化したもの。

・「人気上昇中の観光都市2018」世界ランキング

1 石垣市(日本、沖縄県)

2 カパア(アメリカ合衆国、ハワイ)

3 ナイロビ(ケニア)

4 ハリファックス(カナダ、ノバスコシア州)

5 グダニスク(ポーランド)

6 サンホゼ(コスタリカ)

7位 リガ(ラトビア)

8 ロヴィニ(クロアチア)

9 ネルハ(スペイン)

10 カサブランカ(モロッコ)

石垣市の魅力

 石垣市で一番人気の観光スポットは、「川平湾」。ガイドブックで見た写真と同じ景色が広がる、石垣島へ行ったならば必ず立ち寄りたい場所だという。「定番中の定番」、「絵に描いたような美しい眺め」といった口コミが寄せられている。

 多くの旅行者がグラスボート遊覧船を楽しんでいる。石垣市に対しては、英語、中国語での口コミも近年増加傾向。英語圏の観光客は、「プライム・スクーバ 石垣 ダイビングセンター」が人気を集めていた。フレンドリーなスタッフが多く、マンタ遭遇率が高いことが人気の要因に。

 石垣市長の中山義隆氏は1位選出を受け、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで3つ星をいただいた川平湾をはじめ、ダイビングエリアとしても有名な美しいサンゴ礁と、エメラルドの海に囲まれた豊かな自然にあふれる島です。その夜景は、88ある星座のうち84の星座を見ることができる世界有数の星空の宝庫。地元でとれたマグロや南国のフルーツ、地域ブランド和牛“石垣牛”などは、食通の皆様に満足してもらえるはず。また、古くから“詩の国、うたの島、踊りの里”といわれ、美しい風土や、細やかな人情によって育まれたさまざまな民俗芸能が盛んな島です。皆様のご来訪を心よりお待ち申し上げます」とコメントした。

 ランキング世界2位は、ハワイの「カパア」。カウアイ島の東部にある町で、ワイルア川と呼ばれる大河でのカヤックや海沿いの遊歩道でのウォーキングやサイクリングが人気。世界3位は、ケニアの首都である「ナイロビ」。 300万人以上が暮らすアフリカ有数の都市で、近代的な趣と、豊かな自然の両方を見ることができる。

・「人気上昇中の観光都市2018」 アジアランキング

1 石垣市(日本、沖縄県)

2 高山市(日本、岐阜県)

3 釜山(韓国)

4 プノンペン(カンボジア)

5 南投(台湾)

6 深圳(中国)

7 台南(台湾)

8 西帰浦(韓国)

9 ニゴンボ(スリランカ)

10 ポカラ(ネパール)

高山市が2位にランクイン

  人気上昇中の都市のアジアランキングでは、岐阜県の「高山市」が2位に、韓国の「釜山」が3位にランクイン。「高山市」での一番人気は集落博物館「飛騨の里」で、「日本人の心の中にある故郷といった風情の景色が広がっているところ」という口コミが現すように、多くの外国人旅行者もその美しさを口コミに綴っていた。

調査方法

「トリップアドバイザーの口コミで選ぶ、人気上昇中の観光都市2018」は、 16年10月からの1年間にトリップアドバイザーに投稿された世界中の旅行者の口コミをもとに、前年と比較して宿泊・飲食・観光施設に対して投稿されたポジティブな口コミの投稿件数の増加や、予約関心の増加などをもとに、ランキング化したもの。

人気上昇中の観光都市ランキングについての詳細は下記から。

外客2869万人、消費額4・4兆円 田村長官「18年はギアアップの年」 

2018年1月19日(金) 配信

5年連続の過去最高を更新

 田村明比古観光庁長官は1月16日の会見で、2017年の訪日外国人旅行者数は、前年比19・3%増の2869万900人だったと発表した。訪日外国人旅行消費額は同17・8%増の4兆4161億円。共に5年連続で過去最高を記録した。18年は「ギアアップの年」(田村長官)とさらに施策を加速させていく。一方、訪客1人当たりの旅行支出は約15万円で2年連続減と、政府目標の8兆円達成に課題が残る。

【平綿 裕一】

 訪客数は、主要20市場で17年年間値と12月単月すべてで過去最高。韓国は同40・3%増の714万200人と急激に伸び、中国の735万5800人(同15・4%増)に肉薄した。台湾、香港と合わせた東アジア市場は約2129万人。初の2千万人超えで、全体の7割以上を占める。

 全体を通して、航空路線やクルーズ船寄港数の増加が、訪日需要の喚起につながった。寄港数は同37・1%増の2765回と過去最高。

 訪客旅行消費額も初めて4兆円の大台に乗った。国別で中国が1兆6946億円と最も多い。次いで台湾、韓国、香港、米国と続く。1人当たりの旅行支出は15万3921円(同1・3%減)で、2年連続減少。15年の「爆買い」収束以降、減少が続く。

 20年までの政府目標8兆円へは、4千万人が20万円使わなければ達成できない。費目別で最も低い娯楽サービス費(5014円)などの底上げがカギとなりそうだ。

 出国税、外客誘致法改正へ

 「次の通常国会にすぐに提出していく」。田村長官は16日の会見で、国際観光旅客税について発言。昨年12月に使途の基本方針を決定。観光庁所管の法律を改正して、使途を明記すると盛り込まれている。この法律がいわゆる外客誘致法。改正に向けて準備を急いでいる。

 一方同法は1977年時点の法律。現状にそぐわない部分も多く、基本方針なども変えていく。

 具体的には、観光資源の開発・活用や海外プロモーション施策などを盛り込む。都道府県の海外への情報発信は県単位となっているが、ブロック単位ほどの広域な取り組みとする。

 名称も変更。これまでは外客誘致法などの通称だったが「国際観光振興法」とする考え。

 旅行の価値を問う

 日本人出国者数は同4・5%増の1788万9300人。1800万人には到達しなかった。15年以降回復基調にあるものの、頭打ち感がある。

 田村長官は「旅行というものの価値を、今一度考え直す必要がある」と指摘。日本は人口減少や少子高齢化が深刻化している側面がある。「新たに成長させるのは並大抵のことではない。旅行商品をただ売るのでなく、何を得られるのかを提案していかなければならない」と強調した。

 国内旅行も含め、改めて“日本人にとっての旅行”の価値が問われている。

【特集 No.481】観光とレンタカーの未来 インバウンド需要、柔軟に応えたい

2018年1月19日(金) 配信

 2017年、訪日外国人旅行者数が2800万人を超え、消費額は4兆円を突破した。旅行スタイルは様変りし、航空会社や旅行会社、宿泊施設ではFIT(個人旅行)客をターゲットに据えた施策が目立つ。近年、それら事業者とFIT客を結ぶ存在として、レンタカーへの注目が高い。トヨタレンタリース東京・森計憲社長を訪ね、自社観光案内アプリの開発や、24時間営業、LCCとの提携可能性など、未来の市場をめぐって話を聞いた。同氏は、全国レンタカー協会副会長・東京都レンタカー協会会長も務める。
【謝 谷楓】

 

海外現地で予約可能

 ――2016年度には、レンタカー業界の総収入高が1兆円を突破しました(帝国データバンク)。昨年10月には全国の高速道路が1週間単位で乗り放題となる、インバウンド向け割引「パス」Japan Expressway Passが発売されるなど、追い風が続いています。

 きっかけは09年、北海道でセルフドライブをしたいという、シンガポールの旅行会社からの問い合わせでした。トヨタレンタリース札幌の新千歳空港ポプラ店が対応したのですが、他の地域にもレンタカーで訪れたいという要望を受けました。「トヨタレンタリース東京」を除くトヨタレンタリース各社はフランチャイズ・システムのもと、加盟店という位置づけです。最終的には、フランチャイザーであるトヨタ自動車のレンタリース部に話が回ってきました。

 当時、レンタリース部の責任者を務めていました。セルフドライブに対する需要の高さを知るなか、海外の旅行会社と契約を結ぶに至ったのです。シンガポールを皮切りに、香港や韓国、タイ、マレーシア、台湾の事業者と提携しました。現地旅行会社との協力体制は、各国のユーザー特性を把握する際に役立ちました。マーケティングの基礎を築けたのです。

 提携を通じ、手続きの簡易化も実現しました。ユーザーは現地で、支払いを済ませることができたのです。現在、Webサイトは多言語化され、海外現地から直接予約をすることが可能となっています。

地域に合った送客を

 ――訪日外国人旅行者(インバウンド)の占める割合について。

 金額ベースでは、1割(トヨタレンタリース東京)に迫ろうとしています。長期滞在するインバウンドも多いため、1回当たりの利用金額が大きいことが要因の1つです。家族で利用する場合には、バンやワゴンなど比較的大型の車両を使うことも珍しくありません。

 ――公共交通機関では立ち入り難いデスティネーションへのアクセス手段として、レンタカーが注目されています。

 受入先にとってもメリットは大きいと考えます。地域によっては、受入体制のキャパシティに限界があるのも事実です。レンタカーは一度の送客人数が少ないため、電車やバスによる送客規模には対応できなかった地域も、新たな来訪者増を望めます。

LCCとの提携も視野に

 ――羽田や成田、空港施設での取り組みは。

 東京五輪が迫るなか、レンタカー会社も、受入体制の充実を期待されています。増加する利用者への対応を果たすため、羽田空港では今年、新店舗を立ち上げる予定です。

 成田国際空港でも準備を進めている最中です。発着数などから、LCC(格安航空会社)を利用するFIT(海外個人旅行)客が、レンタカー利用を後押ししていると考えています。

 ――LCCとの提携の可能性について。

 発着便や利用者数がカギとなります。予算をレンタカーに費やすため、比較的安価なLCCを選ぶ方もいるようです。親和性は非常に高いという印象を持っています。

 LCCは、各社が独自の強みを持っていますから、ターゲット層や事業展開でマッチする部分があれば、提携の可能性は十分あるはずです。…

 

※詳細は本紙1700号または1月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

新春賀詞交歓会開く 「確実に前進している」 東旅協

2018年1月19日(金) 配信

鏡開きも行った

 全国旅行業協会東京都支部・東京都旅行業協会(駒井輝男支部長・会長)は1月16日に、ホテル雅叙園東京で新春賀詞交歓会を開いた。駒井会長は17年の旅行業界を振り返り、「確実に前進している。少しずつ明るいきざしが見えてきた」とあいさつ。続けて「皆様と支え合い、素晴らしい業界にしていきたい」と強調した。

 1月4日には改正旅行業法が施行された。取扱管理者の研修義務化や、サービス手配業の登録が始まっている。ただ、施行から日が浅い。「我われの責任として、改めて周知をはかる」(駒井会長)と、会員らに呼び掛けた。

 研修の義務化に対しては、1月29日の北海道・札幌会場から、2月中旬までに、全国10会場で定期研修会を実施。会員らのサポート体制も充実させていく方向だ。

“ブランド”支え育てる JTBとの連携強化へ 日本秘湯を守る会

2018年1月19日(金) 配信

星雅彦会長

 日本秘湯を守る会(星雅彦会長、177会員)は昨年12月20日、静岡県・熱海温泉の熱海大観荘で第43回定時社員総会を開いた。17年10月からスタートしたi.JTBが運営する旅行予約サイト「るるぶトラベル」との連携強化により、40年以上培ってきた“秘湯ブランド”を次世代につなげ、育てていくことを確認した。

 星会長は冒頭、「当会にとって大きな節目となる事業がスタートした」と報告。17年10月から、JTBの「るるぶトラベル」からも会員宿の予約ができるようになった。また、公式プランについては「秘湯スタンプ」の押印も可能となり、るるぶトラベルのポイントも付与される。星会長は「今はあらゆる場面でポイント付与が浸透している社会。会の営業戦略の柱であるスタンプ帳の価値を一層高めていきたい」と強調した。さらにスタンプを10個集めたお客様を無料招待するスタンプ事業は、同年4月から土・日・祝日に受け入れることも、一部の宿でスタートした。2年後には全会員の参加を目指している。

 星会長は「これらの取り組みはすべて会員の皆さんが次の世代に生き残っていく方策の1つ」とし、事業の協力に対して謝意を述べた。「旅館軒数が4万軒を割る厳しい環境のなか、日本秘湯を守る会の“ブランド”を支えていけるのは我われ177軒しかない」と語った。

佐藤好億名誉会長

 佐藤好億名誉会長は「地域で宿を経営する皆さんは文化遺産。一人ひとりの想いは目に見えない私たちの大切な財産。次の世代にしっかりとバトンタッチできるように、自身の頭と足で考え、行動していこう」と呼び掛けた。

 来賓として出席した朝日旅行の鶴田隆志社長は「テーマ性のある企画力の高い商品を提供している。今後もお客様、日本秘湯を守る会の会員に喜ばれる商品づくりをしていきたい」と語った。

 今年度は、るるぶトラベルとの連携強化の次段階として、スマートフォンへの対応ソフトを開発し、宿泊販売の増加を目指す。