観光地復興の事業を支援 専門家派遣で課題解決へ 観光庁

2020年9月28日(月) 配信

観光庁

 観光庁は10月16日(金)まで、「被災観光地の誘客多角化・収益力事業」へ参画したい地域を募集している。新型コロナウイルス感染症や豪雨などの災害で被害を受けた観光地の復興を目指す。観光地・宿泊施設が一体となった観光戦略の再構築や、地域の魅力向上など、課題解決に向けて、多様な分野の専門家を派遣する。

 各種施設の連携強化、個別施設の収益力向上などの取り組みを支援する。

 対象地域・申請主体は、今年度に災害救助法が適用された被災地における被災宿泊施設が参画した団体。

 宿泊施設を含んだ被災観光地の状況に応じた取り組みに必要な経費や、実証実験を行うために必要な経費などを支援する。

 支援の対象となる事業は、被災観光地の復旧計画の策定、先進事例を踏まえた観光戦略策定支援、観光地・マーケティング調査の実施、新規ツアー造成支援――など。

 なお、建物などの増改築費や、個別事業者の取り組み単体での申請は不可となる。

21事業を新たに採択 寺泊・城泊専門家派遣 観光庁

2020年9月28日(月) 配信

観光庁

 観光庁は9月24日(木)、城泊・寺泊による歴史的観光資源の活用事業(城泊・寺泊専門家派遣)について、城泊7件、寺泊14件の計21件を採択した。同事業は、城や社寺を管理・運営する事業者に、専門家派遣、初動支援、事業者フォローアップ調査などを行う。

 日本ならではの文化が体験できる宿泊施設として活用することに意欲がある事業者に、自治体への理解や、事業化を進めるためにサポートする。

 対象物件名、団体名、地名は次の通り。

城泊

▽小峰城
 白河市〈産業部観光課〉(福島県白河市)

▽岸和田城
 岸和田市魅力創造部観光課(大阪府岸和田市)

▽福山城
 福山市(広島県福山市)

▽松江城
 松江観光協会(島根県松江市)

▽丸亀城
 丸亀氏観光協会(香川県丸亀市)

▽臼杵城
 臼杵のんき屋(大分県臼杵市)

▽綾城
 BIOSOPHY ARCHIVES 七部会議(宮崎県・綾町)

寺泊

▽寶林寺
 黄檗宗眞福山寶林寺(群馬県・千代田町)

▽大聖寺〈実性院〉
 加賀市観光交流機構(石川県加賀市)

▽圓立寺
 圓立寺(福井県大野市)

▽法源寺
 法源寺(山梨県南アルプス市)

▽武井坊
 武井坊(山梨県・身延町)

▽方広寺
 大本山方広寺(静岡県浜松市)

▽妙泉寺
 妙泉寺(静岡県富士宮市)

▽覚成寺
 浄土真宗本願寺派覚成寺(岐阜県・安八町)

▽法皇山光明寺
 KOMINKA企画(滋賀県長浜市)

▽大泉寺
 大泉寺・路地ing(京都府京都市上京区)

▽立本寺
 ティ・エ・エス(同)

▽正暦寺
 正暦寺(京都府綾部市)

▽海蔵寺
 海蔵寺(和歌山県・那智勝浦市)

▽楞厳寺
 楞厳寺(同)

「公衆手洗い場」でおもてなし、銀座から始動 自由に手が洗える環境を整備 WOTA

2020年9月28日(月) 配信

中央が前田瑶介社長

 水処理装置の製造開発などを手掛けるWOTA(前田瑶介社長、東京都文京区)は9月25日、「公衆手洗い推進パートナーシップ」を発足した。同社が代表幹事となり、パートナー企業や賛同団体、自治体らと共に街中で自由に手が洗える環境を整えていく。第1弾として、同日から東京・銀座の街で「WELCOME WASH GINZA」を始動。おもてなしの1つとして、商業施設などに新規や既存含めて約100カ所の手洗い場を整備した。

 今回のパートナーシップの背景には同社のアンケート調査で、出先で手洗い場に困っている人が約8割にのぼることなどがある。同日、会見を開いた前田社長は「公衆手洗いの社会実装を推進するまちづくりのパートナーシップ」と紹介。「公衆手洗いを通じて市民と事業者、社会の三方よしのまちづくりを目指す。市民一人ひとりの健康維持の行動を面でつなげ、経済活動の活性化と社会の公衆衛生の改善を両立させたい」と意気込んだ。

 具体的には誰でも無料で手が洗える設備の開放と、手洗い場所のマップ化とサインの導入、衛生備品の補充や清掃などを行う。

 会見には銀座の商業施設や事業に賛同する団体らも参加し、事業への期待や参加の理由などを語った。

GINZA SIXの入り口に設置された「WOSH」

 新設の手洗い場は、同社の水道に依存しない独立型の手洗いスタンド製品「WOSH」も導入する。内部で飲料水基準に準じた再生処理が行われ、20㍑の水があれば、繰り返し使用できる。前田社長は「独自技術などにより、浄水場の機能を数十分の一のコンパクトにして詰め込んだイメージ」とアピール。メンテナンスも水の補充やワンタッチのフィルター交換のみで極めて簡易なことを強調した。

 なお、WOSHには今や「第3の手」と呼ばれるスマートフォンのUV除菌機能も搭載する。手を洗っている約30秒間で、スマホの表面についた菌の99.9%以上が除菌可能という。

九州離島を巡る企画が観光庁長官賞に JTB、ジャパン・ツーリズム・アワード受賞

2020年9月28日(月) 配信

九州離島を専用機で巡る

 JTB(山北栄二郎社長、東京都品川区)はこのほど、「第6回ジャパン・ツーリズム・アワード」(主催:日本観光振興協会、日本旅行業協会、日本政府観光局)で、九州の離島観光の新たな素材創出を目指した事業が観光庁長官賞を受賞した。

 同事業は、地域航空会社のオリエンタルエアブリッジ(ORC、日野昭社長、長崎県大村市)と連携し、九州の五島列島、対馬、屋久島、奄美大島を専用機で巡る企画「JTB 九州&離島アイランドホッピングプロジェクト」を開発し、路線維持に貢献していくもの。

 旅行期間中は、クルーの機長と副機長、客室乗務員も専属で、屋久島到着日は機長主催のディナーパーティーを開催するなど、独自性の高いコンテンツも盛り込んだ。

クルーも専属でサポート(イメージ)

 離島が多い九州では、2016年に「福岡市九州離島広域連携協議会」の設立に合わせ、福岡県と長崎県、鹿児島県の離島6市町が共同で「Re島プロジェクト」を開始。広域連携で地域活性化を進めている。2017年には「特定有人国境離島新法」が施行され、これらをきっかけに同事業を進めてきた。

 ツアー担当者でJTB福岡支店の三嶋孝氏は、今回の受賞に際し、「取り組みを広く知ってもらう機会をいただき感謝している。今後もさらに商品に磨きを掛け、離島のディステネーションバリュー向上に貢献していきたい」とコメントした。

 ジャパン・ツーリズム・アワードは、ツーリズムの発展・拡大に貢献し、「ツーリズムEXPOジャパン」とのシナジー効果に寄与、または国内・海外の団体・組織・企業の持続可能で優れた取り組みを表彰するもの。

 なお、表彰式は2021年1月に開催の「ツーリズムEXPOジャパン東京商談会」で行う予定。

【静岡県西伊豆町】日本初!釣った魚を自治体が「地域通貨」で買い取り  三密を避けたレジャーを企画

2020年9月28日(月)配信

ツッテ西伊豆で手ぶら船釣り

 静岡県西伊豆町と釣りアンバサダー兼ツッテ編集長の中川めぐみ氏は、2020年9月8日(火)から「ツッテ西伊豆」企画をスタートした。地元の釣り人や観光客が遊漁船で釣った魚を、西伊豆町が今年5月にオープンした西伊豆産地直売所「はんばた市場」で、西伊豆町内で使える電子地域通貨「サンセットコイン」と交換する。釣り人や観光客の釣った魚を自治体が主導して買い取る企画は、日本初の試みだ。

 ツッテ西伊豆では、提携する釣り船で釣れた、品質管理をしっかりと行った魚のみを買い取る。提携する釣り船には「道具はすべてレンタル」「レクチャー・サポート付き」という初心者歓迎プランもあり、釣り人から初心者・女性・家族連れまで、誰でも気軽に楽しめる。

 買い取りの際にはプロが目利きを行い、商品として扱えるものだけを厳選する。こうして買い取られた魚は品質面が担保されていることはもちろん、一本釣りの魚として価値があり、町内の飲食店や宿はもちろん、町外へ販売する商品としても活用される。

 西伊豆町は観光と漁業を産業の中心としてきたが、新型コロナウイルス感染症への対策として4月11日(土)から観光事業者へ自粛を求めた影響により、観光客が激減した。また町全体で少子高齢化が進み、現役で漁に出る漁師の数が減ったことで、漁獲量も年々減少している。ツッテ西伊豆では、観光客にレジャーコンテンツを提供しつつ、漁師の代わりに魚を獲ってもらうという、2つ新しい試みを同時に進めていく。釣った魚を「サンセットコイン」で買い取ることで、釣り客が町へ立ち寄り、食事や温泉・土産の購入などを楽しむきっかけを作りたいという。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(188)」 観光はマネージメント力(広島県呉市)

2020年9月27日(日) 配信

平清盛ゆかりの遣唐使船(復元船・長門造船資料館)

 観光の成功は必ずしも「資源」の優劣ではない。事実、優れた資源があるのに、観光的にはほとんど無名の地域も少なくない。逆に、いわゆるA級の資源はなくても多くの観光客を惹きつけ、成功している地域もある。この違いは何なのか。

 結論は、地域における「マネージメント力」の差であろう。顧客価値の変化を捉え、観光としての資源性を見抜き、新たな価値創出のために編集加工する。同時に、これらを持続的な事業として組み立て「稼ぐ力」を生む。これが広義のマネージメント力である。

 言うまでもなくマネージメント力の源泉は「ヒト」。つまり、優れた人材を発掘し、育てることができなければ事業は成功しない。観光の究極の資源は「ヒト」と言われるが、それはこういうことなのである。

 そんな観光人材育成のため、各地で「人材塾」に関わっている。その1つが広島県呉市「くれ観光未来塾」。2016年に始めた第1期では、観光にとどまらず、産業、都市計画、農漁業、土木など17課30人の若手行政職員が集まった。その狙いは、第2期から始める民間塾のための行政側のサポート人材、体制の構築であった。

第3期くれ観光未来塾の期末発表風景

 民間事業者が新たに観光事業に乗り出そうとすると多くの「壁」がある。事業が道路・河川・港湾などに係る場合は、その使用許可が必要だ。古い建物をリノベーションしてホテルや商業施設に転換する場合は、用途変更や建築基準法などの手続きが不可欠。こうした制度条件を比較的短時間でクリアするには、行政側からの支援や誘導が大きな力となる。

 呉市には旧海軍鎮守府時代からの誠に貴重な近代化遺産が数多くある。戦艦大和を建造したドック跡、旧鎮守府庁舎、司令長官官舎跡などもそのまま残っている。呉最大の観光資源である「大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)」は、こうした鎮守府(海軍工廠)時代をテーマとする稀有な博物館である。これらの資源は、他の鎮守府都市(横須賀、佐世保、舞鶴)とともに、日本遺産に認定された。その固有資源と物語をどのように新たに価値付けをしていくのか。新たな関連資源の発掘も進み、かつての戦艦大和の試射場(亀が首)などの整備も進んでいる。

 他方、音戸の瀬戸の外側に広がる島嶼部には、平清盛の時代から造船業にゆかりの倉橋島がある。北前船で栄えた重伝建地区・御手洗や朝鮮通信使の蒲刈などがある「とびしま海道」は近年、海外客にも徐々に人気になりつつある。

 呉市は今年から観光振興計画づくりに着手する。都市インフラや2次交通などの骨太施策は行政主導だが、多くの観光事業は、これらを担う民間事業者の存在が前提である。新たな「官民協働」の成功には、官のリードとともに、民間人材の存在が不可欠であり、これが地域の観光地域づくりの鍵を担っているものと言える。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

「トラベルスクエア」HTBの神近さんご逝去

2020年9月26日(土) 配信

 

 2001年4月から04年3月まで、窓を開けると眼下に広がるのはオランダの町と海のパノラマというところに住んでいた。

 なんのことはない、01年長崎国際大学という大学に教授として着任した僕に社宅として与えられたのが、ハウステンボス(以下HTB)を見下ろせる丘の上に立てられた新品のマンションだった。大学はそこから歩いても15分くらいのところにあった。

 本当に贅沢な待遇で、HTBの景観は見飽きなかったし、教職員、学生には無料パスが支給されているので、朝から晩まで自由に出入りできた。

 やはり、HTBは朝ぼらけが一番。パーク内のホテル居住者と僕らのような関係者だけが正式開門時刻前に入ることを許された。午前7時前くらいにパークに入ると、爽やかな風が通り抜け、お店は1つも開いていないが(本当はよい香りのするパン屋さんくらい開いていてほしかったけど)、レンガの道を踏む自分の足音がきれいにリズミカルに聞こえる。

 これがHTB創業者の神近義邦さんが作りたかった静謐で、心豊かで、清々しく、エコロジカルな都市というものだろうな、と感じてたものだ。神近さんはそれを千年王国と呼んでいた。

 当時、東京ディスニーランドをしのぐスケールで開業したHTB創業者、神近さんが9月5日、長崎県・西彼町で静かに息を引き取られた。

 今振り返ると、この2200億円の巨費を調達した時の神近さんは、50歳になる前だった。その若さで興銀から融資を引き出し、自分の夢を実現した体力、気力は大変なものだ。僕は雑誌の編集者としても、大学関係者としても神近さんにお会いする機会が多々あった。とくに、エコロジーに関する弁舌は熱意があふれていたなあ。

 護岸をコンクリートにせず、石積みで行った結果、白鳥なども容易に上陸できて一つの景色になったし、排水を真水に戻す水質管理システムは今でも日本のトップクラスではないか。排出するCO2を森に還元することなどもやっていた。

 神近さんは、それなりのあくの強さを感じないこともなかったが、帰り際にさりげなくプレゼントをしてくれた。高価なものではなく、売店で売っているようなものを、但し、神近さん自ら相手の履歴、好みを事前に推測して選んでいたそうだ。やはり、人心収攬術は一流だった。

 その後、さまざまな経緯を経て現在はHISの経営のもと、次々と娯楽施設を導入し、大規模アミューズメントパーク化しているのは、ご案内の通り。

 神近さんは潔く一切のコメントを発しなかったようだ。神近さん、千年王国の夢を、こころいくまでみてください。

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

 

2021年度は33%減の460億円要求へ 観光再生と新たな展開目指す 観光庁予算概算要求

2020年9月25日(金) 配信 

観光庁

 観光庁は2021年度予算の概算要求で、前年度予算比33%減となる460億570万円を求めた。このうち、一般会計は167億5700万円、東北復興枠は3億円と前年度予算並みを要求。税収が減少した国際観光旅客税(出国税)を活用した観光施策の展開には、290億円(同43%減)を計上した。観光の再生と新たな展開として、主な事項要求に「働き方改革とも合致した『新たな旅のスタイル』の普及・定着」など3点を求めた。【馬場 遥】

 

 

 21年度予算はなるべく簡略化する目的で、要求額は基本的に対前年度同額とし、そのうえで、新型コロナウイルス感染症への対応や緊要な経費については、上限額なしの「事項要求」として、別途所要の要望を行うことができる。今後の感染状況や観光需要の動向なども踏まえ、国際観光旅客税の歳入見通しも考慮し、年末に向けて予算編成過程で検討する。

 観光庁はこの枠組みのなかで、感染症・自然災害などで大きな打撃を受けた観光産業の事業継続や雇用維持に「引き続き全力を尽くす」と、支援を続ける意向を示した。そのうえで、金額を示さない「事項要求」で、地域経済を支える観光の再生に係る取り組み・支援や、インバウンド再開を見据えた取り組み、その他必要な施策について増額を求めた。

 このほど示した3点以外の追加事項要求について、観光庁総務課の野口透良企画官は、「Go Toキャンペーンに充てられた予算は1・35兆円となる。始まってまだ2カ月ということもあり、まずはこれを使い切っていくのが至上命題」との考えを示した。

 出国税は例年では前年度4~3月の出国者実績で算出している。例年の算出方法を踏襲しながらも、新型コロナ感染拡大による渡航制限でインバウンドが99・9%減という現状を鑑み、昨年8月~今年7月までの出国者数(約2900万人)で算出した。

 21年度の出国税を充当する予算に関しては、既存政策の財源の単なる穴埋めをするのではなく、①受益と負担の関係から負担者の納得が得られる②先進性が高く費用対効果が高い取り組み③地方創生を始めとする日本が直面する重要な政策課題に合致する――の3点を基本的な考え方とした。

 具体的な施策・事業については、硬直的な予算配分とならず、毎年度洗い替えが行えるように、観光戦略実行推進会議において、民間の有識者の意見を踏まえつつ検討を行い、予算を編成する。

 

税制特別支援措置 運輸局と求める

 今回観光庁独自の税制改正要求はなく、運輸局ともに、新型コロナ感染拡大によって需要減となった観光業・交通運輸関係業界に対して、税制特別支援措置を求める。

 施策の背景として、貸切バスは運送収入が前年同月で7割減となった事業者が84%、航空業界は国際線輸送人員が97%減となった。宿泊業界においては、売上が前年同月5割減となった事業者が61%にのぼり、80%を超える事業者・施設が資金繰り支援を活用した。

 このことから、今後とも税制支援措置などを活用した資金繰り対策が必要不可欠として、資金繰り対策に資する所要の措置を要望した。

 

 

事項要求の3本柱


観光再生・新展開へ 新しい旅のスタイル 

 新たな施策イメージとして、「働き方改革とも合致した『新たな旅のスタイル』の普及・促進」を挙げた。

 民間企業において長期休暇が取得しづらい、特定の時期に一斉に休暇を取得する、宿泊日数が短い――などの問題点を挙げ、特定の時期や場所に集中して混雑や密が生じやすかった旅行需要の平準化を目指す。

 テレワークの普及も踏まえて、リゾート地や温泉地などで余暇を楽しみつつ仕事を行うワーケーションや、出張などの機械を活用し出張先で滞在を延長するなどして余暇を楽しむブレジャー、企業や団体の本拠から離れたところに設置されたオフィスで仕事を行うサテライトオフィスなどの普及も促進させ、より多くの旅行機会を創出する。

 

DXでサービス変革観光需要の創出目指す

 デジタル技術と観光資源の融合で、従来の形に捉われない新しい観光コンテンツ・価値を生み出し、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」を実現する。

 オンライン空間上でのツアーを通じて観光地の情報収集や消費の機会を提供する。

 高精度測位技術(位置情報などに使用される)や5Gなどのデジタル技術を複合的に活用し、文化芸術や自然などの既存の観光資源を磨き上げ、新しい観光コンテンツや価値の創出を目指す。

 観光エリアの経営・マネジメントの変革も行う。ホテルの部屋の施錠やショッピングに顔認証を活用し、鍵や財布を持たない「手ぶら観光」を提案する。また、予約・購買・行動などに関するビッグデータの利活用拡大などの可能性を調査する。

 

宿・地域・事業者が連携し新たなビジネス

 宿泊施設を核とした、地域における新たな観光ビジネス展開を支援する。

 宿泊施設の取り組みとして、ゆったりと過ごせる客室や3密を避けた露天風呂付き客室の改修プランを作成し、高付加価値化を促す。

 非接触型チェックインシステムや、飲食スペース・大浴場などの混雑状況を見える化し、先進的な感染症対策を行う。

ワーケーション体制整備の改修などを支援する。

これらの取り組みで宿泊施設の魅力を向上させ、誘客増を目指す。

 宿泊施設、地域施設、旅行会社、交通事業者などがそれぞれ連携した、宿泊客がワンストップで多様な選択肢の中からさまざまな地域の魅力を選べる観光体験の提供を支援する。

 地域においての長期滞在を実現するための新たな観光ビジネス展開を促す考えだ。

 


 

 

前年度に続き訪日プロモにも注力する

 観光庁は、戦略的な訪日プロモーション施策では、8300万円の内数(JNTO運営費交付金)を計上した。

 新型コロナの収束を見極めつつ、2030年訪日外国人旅行者数6千万人などの達成に向けて、感染収束後の旅行動態の変化を見据えた取り組みを支援する。また、訪日客回復に向けた既存のプロモーションを強化する。

 なお、予定していた訪日プロモーションについて、入出国を伴う事業は来年度以降に延期(交付金は繰り越し)する。オンラインで実施できる事業などは、感染状況を確認しながら開催か延期の判断をしていく予定。

 教育旅行を通じた青少年の国際交流も、世界的な感染拡大の影響を受けているが、再開・回復に向けた取り組みを支援する必要があるとして、予算に300万円を要求した。

 訪日外国人旅行者受入環境整備に対し、多言語翻訳システム機器や無料Wi-Fiサービスの提供拡大、キャッシュレス決済の普及、バリアフリー化の推進などを進めていくとして、5620万円を計上した。

 サーモグラフィーや非接触体温計の導入などで、感染症対策において地方自治体、DMO、宿泊施設が行った先進的な取り組みはモデル事業として支援する。

 観光統計の整備は、「観光施策の企画・立案のために極めて重要」(同庁)として、前年と同額の653万円を求めた。都道府県や、さらに詳細な地域レベルの旅行者数などを把握することで、地方への誘客や消費の拡大など、地方創生に資する観光施策への展開を行う。

 日本人の旅行に関する意識調査も行い、旅行需要が減少するなかで、需要回復期にその勢いをより一層加速させる施策を行うため、定点観測により旅行に関する意向の変化を明らかにする。

 

 観光振興推進と災害に定員要求

 

▽「新たな旅のスタイル」の普及・促進事務
 本庁2人
▽「新たな旅のスタイル」に合わせた魅力的な滞在型コンテンツ造成のための事務体制
本庁1人、各地方運輸局10人

▽災害・感染症対策事務
 本庁2人、運輸局9人
▽訪日外国人旅行者の安全対策事務
 本庁1人、運輸局1人

▽改正バリアフリー法の成立に伴う事務体制構築
 本庁3人

▽宿泊施設の再生・再建及び投資促進に向けた事務
 本庁1人

全旅連、山口県で全国大会開く 情報発信の拡大へ強い意志示す

2020年9月25日(金) 配信

全国大会には一部の役員らのみが出席した

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長、1万5402会員)は9月24日(木)、山口県下関市の生涯学習センターで第98回全旅連全国大会を開いた。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、一部の役員など約40人が出席した。会員にはユーチューブを使ったライブ配信で会場のようすを伝えた。新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊業界は深刻な状況が続くなか、多田会長は「これまで各都道府県の理事長までだった情報発信の対象拡大を強い意志で実行する」と決意を表明した。

多田計介会長

 多田会長で冒頭のあいさつではコロナ禍での同会の役割として、厚生労働省や観光庁、自由民主党の観光産業振興議員連盟などに事業継続の支援を要望したことを報告した。

 結果として「厚労省の貸付制度の創設などの金融施策をはじめ、固定資産税とNHK受信料の減免が行われた」と実績を強調した。

 一方で一部会員からは「全旅連は働いているのか」という厳しい声も挙がったという。これを受け、多田会長は「これまで本部から各県の理事長まで情報を発信していたが、より広く伝えたい」と説明した。

 第23回「人に優しい地域の宿づくり賞」では、厚生労働大臣賞に、月岡温泉旅館協同組合・月岡温泉観光協会・合同会社ミライズ(新潟県)の「月岡温泉まちづくり事業『歩いて楽しい温泉街へ』」が受賞した。

 表彰式では組織名と活動テーマを読み上げ、授与式などは見送った。賞状と記念品は各県の事務局に送付する。

 次回の開催地は福島県に決定した。東日本大震災から10年の節目を迎え、復興状況をアピールする。

来年は福島県で開催する

貸付制度など紹介 コールで結束も強める

 全旅連全国大会の前日には全旅連常務理事(各県理事長)・理事合同研修会を開いた。同会には各県の理事長ら約60人が参加した。

研修会には約60人が参加した

 登壇者は厚生労働省の医薬・生活衛生局生活衛生課課長の成松英範氏と観光庁観光産業課課長の多田浩人氏、全旅連ウィズコロナ調査研究会の大木正治座長。

 成松氏は新型コロナウイルスの影響を受けた宿泊施設に向けた貸付制度や、ガイドラインに沿った宿泊施設に感染防止対策取組店証のステッカーを配布することを紹介した。

 多田氏は、政府系金融機関の資金繰り支援策と雇用調整助成金の特例延長のほか、Go Toトラベル事業の制度などを説明した。

 8月24日(月)に発足したコロナ禍における組合員の資金調達や予約状況を調査する全旅連ウィズコロナ調査研究会(大木正治座長)は、8月31日(月)~9月17日(木)までに実施したアンケートの回答結果を発表した。

 これによると、20年8月の売上金額の調査が前年に比べて50%に満たない会員は54・6%に上ることが分かった。さらに、現在の予約状況が続いた際に許容できる期間については「年内いっぱい」が30・2%を占め、厳しい状況が浮き彫りになった。

 今後の活動として、「9月のシルバーウィーク多くの宿泊施設で予約数が増加している」(大木座長)として、具体的な状況を集計する。回答結果を踏まえて、厚労省や観光庁、自由民主党の観光産業振興議員連盟に要望書を提出する考えだ。

 最後には、参加者全員で「頑張ろうコール」を行い、結束を強めた。

頑張ろうコールのようす

潜在的旅行者に情報発信 えひめデジタル旅行博 愛媛DMO

2020年9月25日(金) 配信

えひめデジタル旅行博 配信内容例

 愛媛県観光物産協会(愛媛DMO)は10月11日(日)、「えひめデジタル旅行博」をオンライン上で開く。新型コロナウイルス感染拡大の影響で伝統行事や例年のイベントが中止となるなか、「完全オンライン」という新しい手法で愛媛の「旅マエ」情報を潜在的旅行者に発信する目的。

 愛媛への旅に関心を持つ、国内外の個人や全国の事業者を対象とする。

 配信内容は、サイクリングで巡る四国1周、オープンエアーのカフェ紹介、県内自治体・地域DMOによる観光地からの現地中継――など、ウィズコロナ時代の新しい旅の情報を発信する。

 出演者は愛媛DMO、同県内自治体・観光協会、DMO、県内メディア、インフルエンサーなど。出演者と参加者のコミュニケーションを促進する場を提供することで、愛媛の観光の周知を目指す。

 同イベントは、事前登録制で参加費は無料。一般・事業者の事前登録は「えひめデジタル旅行博2020 愛媛県観光物産協会」の特設HPから受け付ける。

 10月11日(日)の午後12時45分~午後5時45分に、公式EventHub上で開催する。

 また、イベント開催に先立ち、10月1日(木)からオンライン会場内で商談を含めた交流が可能。

 同協会は、「感染症対策と経済活動の両立に向けた機会を提供し、地域活性化を目指す」とした。