佐久平駅前に「アクアホテル プレミアム」開業 アサマリゾート

2023年9月13日(水) 配信

「記憶に残る時間」の提供がコンセプト

 アサマリゾート(柿沼秀明社長、長野県小諸市)は9月13日(水)、長野県佐久市のJR佐久平駅前にデザイナーズホテル「アクアホテル プレミアム」を開業した。“記憶に残る時間”の提供をコンセプトに、自然の美しいロケーションと自然や文化から着想を得た館内デザイン、地元食材にこだわったレストランなどを魅力にあげる。

 佐久平を取り囲む山の風景を館内各所に落とし込み、季節による植物の配色や規則的なパターンはファブリック表現した。エントランスは佐久藍染をモチーフにした装飾を施したほか、ロビーは中央に暖炉を配置してマウンテンリゾートを演出している。

 客室134部屋はすべて19平米以上の「デラックスルームサイズ」で、佐久平を囲む山々が望める。地元食材を使った料理を提供するレストランでは、こだわりの地酒もとりそろえる。

 また、8階には宿泊者専用の大浴場やラウンジ、展望テラスを用意。大浴場からは浅間山や八ヶ岳を一望できる露天風呂とサウナを設けた。湯上りはラウンジでくつろげる。

 宿泊料金は平日1人1泊、食事なしで8500円(税込)から。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その29-優婆夷宝明神社&薬師堂の神仏巡礼(東京都・八丈島) 南国独特の空気感じる神社 目・足・手の病に効く、薬師堂

2023年9月13日(水) 配信

 羽田空港から空路で約50~55分程度で到着する、伊豆七島の1つである八丈島は、東京都でありながら、南国の異国情緒に満ちていて、遠い土地へ旅したような境地になります。

 

 八丈島の歴史は深く、縄文時代から人が住んでいることが、湯浜遺跡や倉輪遺跡で確認されています。平安時代には源為朝が伊豆大島へ流罪となり、八丈小島で自害した伝説がありますように、流刑の島としての歴史もあります。

 

 また、1600(慶長5)年の関ヶ原の戦いで西軍の石田三成方に属した宇喜多秀家は、徳川家康により八丈島に流刑。秀家は八丈島で50年近く生活し、84歳で亡くなりますが、当時ではかなりの長寿。すでに、4代将軍・徳川家綱の時代になっていました。

 

 その長寿の秘訣は、八丈島の特産物の「明日葉」を食べていたこと。明日葉は、別名「八丈草」であり、伊豆七島に多く自生するセリ科の植物。明日葉には、老化を防ぐカロテンや抗菌、血行促進作用の高いカルコンという成分が含まれています。質素な食生活が、健康と長寿をもたらしたのかもしれません。八丈島に旅すると、お宿や飲食店で明日葉の天ぷらなどをいただく機会があり、こちらも島のグルメの楽しみのひとつです。

 

 現在でも子孫の家系が、秀家のお墓を守っています。詳しい八丈島の歴史については、八丈島歴史民俗資料館でも見ることができます。

 

 

 さて、今回の精神性の旅の一つ目の「優婆夷宝明神社(うばいほうめいじんじゃ)」は、八丈島・八丈小島・青ヶ島の総鎮守であり、島で唯一の神社庁管轄の神社。交通アクセスは、町営バスの「大里」のバス停近くです。空港からも車で10分程度。神社内には樹齢1千年の蘇鉄があり、南国独特の空気感に包まれていながらも、神聖なエネルギーを感じます。

 

 優婆夷とは、仏教で「仏・法・僧」の三宝に仕える女性のこと。お祀りされている、事代主神(コトシロヌシノミコト)様のお妃様である優婆夷大神(ウバイノオオカミ)様はその昔、八丈島に渡り、宝明神(ホウメイノカミ)様を産み、このお二方が八丈島を繁栄させたということで、島民のご先祖様であるといわれています。

 

優婆夷宝明神社

 

 この神社のエリアにある、「玉石垣の風景」も八丈島情緒を感じる場所。こちらは八丈島の象徴の一つとなっていて、丸みを帯びた石が規則的に積み上がっていて、防風の役割があり、流人たちが浜からここまで運んで来たという説もあります。

 

 八丈島では「石」が大切な役割を持っていて、防風目的だけでなく、信仰においても大切な役割を持っていました。八丈島の神社の社殿の裏手や周囲に、たくさんの家の形をした石の祠があります。これらは「イシバ様」という屋敷神様。島の人々は、家を建てる前に、イシバ様をお祀りして、工事の安全や病気の治癒を祈願したそうです。

 

 八丈島の精神性の旅のもう一つは、大賀郷という場所にある薬師堂。正式には、横嶺山薬師堂。交通アクセスは、大脇前というバス停から徒歩2分程度。

 

横嶺山薬師堂

 

 南国の鬱蒼とした樹木やイチョウの木の中に、ひっそりと清々しい姿の薬師堂は、多くの人々から目や手、足に効く聖地として崇拝されています。病から人々を救済するという、薬師如来様がご本尊。目なら目、足なら足、手なら手という字を漢字、あるいは仮名で紙一杯に書いたものを何枚も綴り合せて、お供えしたそうです。

 

 境内にある、三原山からの湧き水を遠方からいただきに来るとのこと。こちらに来て、病を治癒するという、フランスのカトリックの巡礼地である、ルルドの泉を思い出しました。薬師堂の清らかな湧き水で、心身の健康回復に良い旅をされてみてはいかがでしょうか。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

「あまちゃん」の舞台となった久慈でモニターツアー 参加者募集中

2023年9月12日(火)配信

小袖海岸

 岩手県久慈市は現在、9月29日(金)~30日(土)に行われるモニターツアーの参加者を募集している。

 久慈市は、現在再放送され話題になっているNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台となった場所。今回のモニターツアーでは、メインロケ地の小袖浜海岸や上山琥珀工芸の琥珀坑道などドラマゆかりの場所を巡る。加えて、久慈地下水族科学館もぐらんぴあ内「もぐらんぴあ水族館」での「南部もぐり」の潜水実演と「北限の海女」の素潜り実演の見学や、郷土料理のまめぶ作り体験などを通じ、久慈の魅力も体感できる。

 今回のモニターツアーでは、「サスティナブル」もテーマの一つとなっており、「久慈バイオマスエネルギー」、「越戸きのこ園」で脱炭素エネルギーについて学ぶ時間も用意。きのこ園で収穫したシイタケは、まめぶ汁の具材として使用する。

 モニターツアーは、二戸駅集合、解散となり、同駅までの交通費、個人的に追加した飲食、土産代などを除き料金は無料となる。

 申し込みは、以下のリンクから

JTBハワイ法人、ホノルル・レインボー駅伝 5年ぶりの開催

2023年9月12日(火) 配信

過去の大会のようす(イメージ)

 JTBグループの米国現地法人であるJTBハワイトラベル(梶原友幸社長、米国・ハワイ州ホノルル市)は、2024年3月10日(日)に「ホノルル・レインボー駅伝(EKIDEN)」を5年ぶりに開催する。

 レインボー駅伝は、2013年3月にハワイで初のアマチュアランナー対象の市民駅伝として幕を開け、地元ハワイから“市民運動会”のように楽しまれている。19年3月に行った第7回の前回大会には、総勢134チーム700人を超えるランナーが参加。加えて、会場で繰り広げられる各種パフォーマーや参加者の応援者もあわせて総勢約1500人が集まり、大会を盛り上げた。

 コースは1周約5㌔を5周する周回コース。全ランナーが同じコースを走るため、待ち時間に仲間のランナーを応援できるのも魅力で、7歳から参加でき、家族単位のグループ参加も歓迎する。今回から、12歳以下の子供を対象としたキッズレースも新たに始める。

 駅伝を共催するJTBは、マウイ島復興と経済的支援を目的に、マウイ島のほかの地域を含めたハワイ州への渡航機運を醸成する施策を行う。駅伝の開催期間中、ハワイへ渡航するJTB募集型企画旅行商品、受注型企画旅行の申込者は、レインボー駅伝の参加費が不要になるキャンペーンを実施する。

 また、駅伝参加費の一部をハワイの教育関連施設、スポーツ振興団体に寄付するほか、独自でもマウイ島への救援金の受付を開始した。救援金はハワイの非営利団体であるJTBグッドウィル財団を通じて寄付を行うことで、西マウイの学校コミュニティ救援活動や復興支援などに使われる。

「VIVANT」ロケ地の特設サイト開設 ロケ地マップも配布開始 島根県

2023年9月12日(火)配信

ロケが行われた島根県庁

 島根県は9月11日(月)、TBSで放送中の日曜劇場「VIVANT(ヴィヴァン)」の県内ロケ地をまとめた特設サイトをしまね観光ナビ内に開設した。

 福澤克雄監督とドラマに出演する堺雅人さん、阿部寛さんの3ショットインタビュー動画やロケ地の詳細情報などを掲載している。

 ロケは、松江市の島根県庁周辺、松江城大手前堀端、旧大谷小学校、本庄小学校、出雲市の出雲大社、奥出雲町の櫻井家住宅、大原新田付近、鬼の舌震で行われた。

 ドラマは堺雅人さん扮する主人公・乃木憂助の実家が奥出雲という設定だ。9月10日(日)放送の第9話では乃木憂助の父親、乃木卓(ノゴーン・ベキ)の生い立ちが説明されるなかで、出雲大社での結婚式のようすや砂鉄と木炭を用いる日本古来の製鉄法「たたら」が丁寧に描かれた。

 福澤監督は特設サイトに寄せたメッセージで、「日本を代表する役者さんたちにドラマに出演いただき、世界に向けて投げかけたい。そのためには島根の映像が必要だった」と述べている。

 県は特設サイト開設のほか、ロケ地マップも作成し県庁や各観光協会、県内観光施設などで配布を始めた。

 

JTBがロケ地巡るオフィシャルツアー実施


 JTB(山北栄二郎社長、東京都品川区)は、「VIVANT」の島根県ロケ地を巡る2泊3日のオフィシャルツアーを10月27日(金)~29日(日)と31日(火)~11月2日(木)の計2回実施する。

 参加希望のエントリーを15日(金)まで受け付け、抽選で参加者を決定する。募集人員は各回40人。

 「VIVANT」の福澤克雄監督とドラム役を演じる富栄ドラムさんが県内ロケ地など一部行程に同行する。

 ツアーは松江駅(同県松江市)と出雲空港(同出雲市)を発着する。初日はロケ地巡りと奥出雲たたらと刀剣館(奥出雲町)の観光、夕食・トークイベントで、宿泊は玉峰山荘(同)となる。

 2日目はロケ地巡りと松江市内自由観光、宍道湖クルーズ船の乗船、夕食・トークイベントで、宿泊は松江エクセルホテル東急(松江市)。

 最終日は出雲大社(出雲市)の自由観光となる。

 福澤監督とドラムさんは初日のロケ地巡りと昼食、1・2日目の夕食・トークイベントに同行・参加する。

 料金は3人1室で1人16万8000円、2人1室で同17万1000円、1人1室で17万8000円。朝、昼、夜それぞれ2回ずつの食事が含まれる。参加地からの松江駅あるいは出雲空港までの往復交通費は別途自己負担となる。小学生未満の参加はできない。

 参加者特典としてオリジナルパンフレットと「VIVANT」最終話の台本ノート、乃木&野崎のオリジナル名刺カード、ヴィヴァンちゃんオリジナルポストカードをプレゼントする。

三朝温泉の復旧アピール とにかく明るい安村さんが温泉大使に

2023年9月12日(火) 配信

平井伸治知事(前列左)、とにかく明るい安村さん(前列右)

 鳥取県(平井伸治知事)は9月8日(金)、三朝温泉(三朝町)の台風被害からの復旧をアピールするため、お笑いタレントのとにかく明るい安村さんを鳥取県「温泉はいれますよ!」アンバサダーに任命した。

 同日、任命式が同温泉の名物の混浴露天風呂「河原風呂」で行われた。安村さんは英国のオーディション番組で注目を集めた全裸に見えるお決まりのポーズを披露し、元気な三朝をアピールした。安村さんは「初めて三朝温泉に来たが、川もあって素晴らしい。家族旅行でまた来たい」と話した。

 県は「安心してください!はいれますよ!」を復興のキャッチコピーとしてきたが、これは安村さんのネタをパクったもの。安村さんが「勝手に使わないでくださいよ」とツッコミを入れると、平井知事は「申し訳ありません。みんな頑張っておりますので、お許しいただければ」と謝罪。安村さんは「知事安心してください、応援してますよ」と笑顔を見せた。

 県はこのイベントの模様をまとめた動画を公式SNSで配信するほか、温泉街に安村さんの等身大パネルを設置するなど、誘客回復に努めていく。

 8月15日(火)に襲った台風7号の影響で温泉街を流れる三徳川が氾濫し、川沿いにある河原風呂に大きな被害が出た。懸命の復旧作業で9月5日(火)に再開した。

赤城山山頂周辺でデジタルスタンプラリー 前橋観光コンベンション協会がアプリ開発

2023年9月12日(火) 配信

赤城神社

 前橋観光コンベンション協会(群馬県前橋市)はこのほど、デジタルを活用した観光周遊促進を目的に、イー・フォース(東京都中央区)と無料スマートフォンアプリ「AKAGIサイクルスタンプラリー」を共同開発した。第1弾として、11月15日(水)まで、赤城山山頂エリアのスタンプラリーを実施している。

 赤城大沼周辺の飲食店やカフェ、観光スポットなどを中心に21カ所をスタンプスポットに設定。スタンプスポットを巡ると、スタンプ獲得数に応じて「まえばし赤城山ヒルクライム大会優先出場権賞」や、オリジナルグッズを抽選でプレゼントする。

 同エリアは初心者にも最適で、AKAGI e-Bikeをレンタルすると鳥居峠まで難なく登れるという。シンボルの大沼湖畔では、飲食店や土産物店が並び、休憩も楽しめる。

 今後、第2弾として9月下旬から、道の駅まえばし赤城周辺コースや前橋市まちなかコース、赤城山1周ライドコースを追加予定。こちらは来年1月中旬までのイベント開催を予定している。なお、開催期間終了後も地域の店や観光スポットを巡るサイクルツーリズムアプリとして利用できる。

【宮城県鳴子温泉】おおさき食楽まつり 10月1日(日)開催 4年ぶり、ご当地の「うまいもん」が集結

2023年9月12日(火) 配信

ご当地グルメや県内・近県の食が一堂に

 宮城県大崎市で2023年10月1日(日)、ご当地グルメや県内・近県の食が一堂に会する「おおさき食楽まつり」が4年ぶりに開かれる。会場は鳴子温泉街の「ゆめぐり広場」。 

 会場には市内の食を代表する店舗が集結。仙台発祥の牛たんや、大相撲の宮城野部屋直伝のちゃんこ鍋をアレンジした「なる子ちゃんこ鍋」などが楽しめる。このほか、地元の新鮮な野菜や三陸の海産物などの特産品を販売するほか、「食の応援団」として山形の郷土料理「芋煮」や岩手のB級グルメ「北上コロッケ」なども登場する。

 ステージでは「鳴子伝統踊り」の披露(午前中)や、食楽俳句コンクール入賞披露会、バンドの演奏(いずれも午後)なども行われる。

【ANTA支部長から~届けメッセージ~】和歌山県旅行業協会 青木査稚子理事長  地域活性化の旗振り役に

2023年9月12日(火) 配信

青木査稚子理事長

 コロナ禍で我われの業界は大変厳しい3年間を過ごしました。その間、「会員の皆さんの役に立つ旅行業協会」の思いを胸に、諸々への施策の対応や陳情を含め、和歌山県庁に足しげく通わせていただきました。

 頻繁に顔を出したことで観光関係部署の人たちと懇意になり、和歌山県観光のあり方などを話し合える関係になったことは、コロナ禍での大きな成果だと思っています。

 当協会が事務局を務める「わかやま12湯推進協議会」は和歌山県の温泉をベースに、県内にある観光資産を広く県内外に知ってもらうことを目的として、コロナ禍の2020年2月に発足させました。

 こちらについても、今では温泉に関する事案があれば、県の方から相談を受けるという関係を構築できたほか、12湯を通して和歌山大学や地元企業とも親しくなることができています。

 今年度は読売旅行からお声掛けのあった、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」として、和歌山の温泉を巡る湯めぐり事業にも取り組んでいます。

 当協議会の目玉事業である「わかやま12湯サミット」はこれまで自粛しながらの開催でしたが、10月4日(水)に開催する「第3回わかやま12湯サミットin白浜温泉」はコロナ禍を抜けての初めての開催なので、なんとしても成功させたいと思っています。

 今年2月には、東京ビッグサイトで開かれた全旅連青年部主催の旅イベント「宿フェス―宿観光博覧会」に出席し、和歌山県ブースで菅義偉元首相らに12湯をアピールしてきました。

 これからも和歌山県バス協会や、和歌山県旅館ホテル生活衛生同業組合の人たちの協力を得ながら、行政機関に旅行業協会会員にとってメリットがある働き掛けを実施し、常に「会員のために」を念頭に置きながら、地域活性化の旗振り役として、さまざまな事業を実施していこうと思っています。

ゆのくに天祥・新滝英樹社長インタビュー 「団体も個人客の集合」  “共有空間での過ごし方”重視

2023年9月12日(火) 配信

ゆのくに天祥代表取締役社長 新滝 英樹(しんたき・ひでき)氏

 

 ゆのくに天祥(新滝英樹社長、石川県・山代温泉)は今年6月、創業60周年を迎えた。コロナ禍で個人客に対応する客室や、食事処などの高付加価値化に取り組む一方、徐々に需要が戻りつつある団体旅行の需要取り込みにより、平日の稼動維持につなげる戦略だ。また、共有空間での過ごし方を重視し、社員からのさまざまなアイデアをかたちにしている。働きやすい職場環境へ、生産性向上やITを駆使して業務の省力化にも取り組む。北陸新幹線の福井敦賀への延伸を来春に控え、新滝社長に今後の宿の方向性などインタビューした。  【聞き手=編集長・増田 剛】

 

 

 ――ゆのくに天祥の歴史を教えてください。

 

 創業は1963(昭和38)年6月で、今年60周年の「還暦」を迎えることができました。

 

 建築関係に携わっていた祖父が木造2階建て10室の旅館を開業したのが始まりで、その後、増改築を繰り返していきました。団体客中心に観光や宴会の需要が伸び、1980年代には90室500人収容規模となりました。

 

 先代(父)も観光ブームのなか、88年には「加賀 伝統工芸村ゆのくにの森」をオープンさせるなど、業容を拡大していきました。

 

 3代目となる私は、1995(平成7)年に宿に入りました。阪神淡路大震災が発生した年で、当時大阪で銀行勤務をしていました。

 

 震災が宿に入るきっかけとなりましたが、大規模化していくなかでバブル崩壊後の財務的な課題も山積しており、これらの整理に注力していかなければならない状況にありました。

 

 当時は団体旅行が中心で、小グループ化への兆しが現れている時期でした。団体自体も目的型へと変化しており、03年に新築した「天祥の館」は、全館48室が特別室で、また、大規模なコンベンションホールや宴会場も整備し、MICE需要も積極的に取り組んできました。

 

 その後、マーケットの変化を見ながら、湯めぐりを楽しめる3つの大浴場や「天祥の館」の24室をスイート客室(うち12室を温泉露天風呂付き客室)にリニューアルし、特別フロアを新設、新たに自家源泉を開湯するなど、時代に合ったかたちで商品整備を進めています。現在は全156室(700人収容)です。

 

 ――コロナ禍ではどのような取り組みをされましたか。

 

 当館がターゲットとしているファミリーのお客様の温泉露天風呂付き客室の需要が高まったため、22年には観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」事業を活用して、「白雲の館(2号館)」24室を温泉露天風呂付き客室にリニューアルしました。

 

 23年も同様に「高付加価値化」事業を活用して、「白雲の館(1号館)」16室を個人客向け客室に改修し、食事処なども整備する予定です。

 

 コロナ前は、団体4:グループ2:個人4という割合でしたが、徐々に団体の割合が減少傾向にあります。

 

 新型コロナが個人・グループ客中心に切り替えるきっかけになりました。スムーズに移行できたのは、コロナ前から食事処のリニューアルや、個人客に対応できるオペレーションの導入に取り組んでいたことも大きかったと思います。個人客への接遇のレベルアップを目指して、社員教育研修なども頻繁に実施しています。一方で、団体客の需要回復に向けた準備も整えています。

 

 ――高付加価値化に向けては。

 

 施設、サービスの充実に加え、利用形態を問わず高付加価値化と単価アップも目指しています。

 

 個人客はもちろんですが、「団体のお客様も個人客の集合」と捉え、これまで以上にご満足いただけるようなサービスの提供を目指しています。

 

 個人客への対応を基本に、平日はグループや団体の需要を取り込んで、上手くバランスを取って稼働を平準化していきたいと思っています。

 

 コロナ前に比べて客数が戻り切れていなくても、付加価値を高めることによって売上や収益率が改善するだけでなく、館内も落ち着いた雰囲気となります。お客様から「ゆったり過ごせた」という高い評価をいただくことも増えました。

 

 ――食事の提供方法に変化はありますか。

 

 コロナ禍を機に、ビュッフェと部屋食をやめました。接触回避という面もありますが、ハード部分を改修していく過程で、パントリーなどもスタッフが提供しやすい“効率的なオペレーション”へと、細かく見直していきました。今は夕食も朝食も会席料理を提供しています。

 

 また、食事会場のほとんどを2階に集約し、地下2階の厨房とパントリーがエレベーターで直結しているため、スタッフは横移動のみとなり負担が大幅に軽減しました。

 

 従来はプラン数が多かった夕食は3プラン程度に絞り、素材の吟味と献立の工夫に努めています。団体の献立も個人客のメニューに準じたものを提供しています。

 

 食事会場は、個室やグループ客で利用できるレストランなど多種多様です。ほかのお客様に気を使わなくてもよいように小さなお子様連れのファミリーを集めた食事処なども用意しています。朝食は「満足度を高めたい」と考え、品質を上げて統一し、評価は上がっています。

 

 ――生産性向上の取り組みについて。

 

 デジタル化によって、フロントや調理のスタッフが、インジケーターで一元化した情報を共有しています。予約処理や各部課の手書き業務も、高度なデジタル化による自動化・省力化に取り組んでいます。

 

 社内チャットの活用も進め、画像も含めて伝達がスムーズになりました。情報共有のためのミーティングが減ったことで、社員に好評です。お客様に褒められたコメントなどは全社員に共有し、モチベーションの向上にも貢献しています。

 

 人手不足の問題もありますが、コロナ禍も一定程度採用を継続していたため、社員数は大きく変わっていません。IT化によりオペレーションが改善できた分、より丁寧なおもてなしに注力できるようになりました。生産性の向上へ業務改善を続けながら、働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。

 

 ――旅館での過ごし方も工夫されていますね。

 

 パブリックエリア(共有空間)での過ごし方はとても重視しています。試行錯誤を繰り返し、さまざまなアイデアをかたちにしています。具体的には、ロビーに午後3時から10時、朝は午前11時まで無料ドリンクコーナーを設けています。

 

 温泉旅館らしさを出すために、「温泉」と「自家製」にこだわり、自家源泉を活用した蒸し饅頭や、調理部がゼリーやスイーツなどを作ってお客様に振る舞っています。

 

 朝は温泉で蒸し立てのジャガイモやわらび餅、白玉ぜんざいなどの甘味もドリンクと一緒に楽しんでいただいています。

 

 生たまごをネットに入れて、お客様自身が温泉たまごを作って召し上がっていただくことも、大変好評を得ています。お客様満足度が上がっているだけでなく、厨房スタッフもやりがいを感じてくれているようで、さらに進化させていきたいと考えています。

 

2023年6月、ゆのくに天祥は60周年を迎えた

 

 ――他館との差別化していく部分は。

 

 おもてなしをどのように表現するかと考えたときに、「お客様を客室までご案内する」部分はしっかりと残していきたいという考え方です。

 

 当館は導線がやや分かりにくいこともありますが、お客様との接点を保つために館内の色々な施設を客室までご案内しながら、滞在中の過ごし方などを説明しています。

 

 ――省エネへの取り組みや効果について。

 

 東日本大震災後から環境負荷低減への取り組みを進めています。コロナ禍にも空調・熱源・LEDという3つの柱で省エネ投資を行いました。

 

 BEMS(ビルエネルギ―マネジメントシステム)を導入し、館内のエネルギー使用状況をリアルタイムで把握できるように「見える化」しており、どこに問題が発生したかも即時にピンポイントで原因が分かるため、対応も迅速にできます。

 

 ――来春北陸新幹線が福井敦賀へ延伸します。

 

 首都圏からのお客様は増えることが予想されますが、何よりも延伸効果を一過性ではなく、持続させていくことがとても大事です。地域の魅力の底上げや、商品の磨き上げが必要となります。

 

 ――今後の方向性について教えてください。

 

 お客様へ良いサービスを提供するためにも、最前線で接客する社員が働きやすい環境づくりを第一に考えています。

 

 お客様に満足していただくおもてなしこそが、ゆのくに天祥らしさを表現できる部分ですので、さらに強化していきたいと思っています。

 

 一方で、地域全体の魅力がなければ、お客様を呼び込むことは難しい。山代温泉の温泉街も魅力アップに向けた整備も着々と進んでいます。

 

 コロナ禍にも「温泉地全体を楽しみたい」というニーズを強く感じましたので、地域のイベントや事業と一体感を持たせて宿を運営するように心掛けています。

 

 ――ありがとうございました。