No.289 震災から6カ月 - 難局乗り越え 元気な姿勢で

震災から6カ月
難局乗り越え 元気な姿勢で

 3月11日に発生した東日本大震災から6カ月が経過した。未曾有の震災直後から、被災地の旅館ホテルはどのようにして難局を乗り越えてきたのか。福島県・磐梯熱海温泉のホテル華の湯代表取締役社長の菅野豊氏は、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長も務める。被災者の受け入れ、金融問題、原子力損害賠償、風評被害対策……など、さまざまな問題に立ち向かってきた。「元気な姿勢でお客様と接することが一番大事」と語る菅野氏に話を聞いた。

【増田 剛、鈴木 克範】

旅館は地場産業地域で必要な存在に

 3月11日午後2時46分。私は当館で福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の会合をしていた。長く大きな揺れを感じたが、幸い旅館は固い岩盤の上にあるため、ガラスが2、3枚割れた程度で済み、大きな被害がなかった。震災から半年近く経つが、旅館経営者として1日も営業を休むことなく続けられたことをうれしく思っている。

ホテル華の湯代表取締役社長
菅野 豊氏

※ 詳細は本紙1433号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

野田内閣発足 ― 観光は外交政策の柱(9/11付)

 9月2日、野田連立内閣が発足した。通常、新たな内閣が発足した場合、各大臣の就任あいさつを深夜まで見ていたが、今回はなぜか興味も湧かず、読書をしていた。野田内閣に期待をしていないわけではない。ただ、毎年新内閣が発足するので、もはや新鮮味がなく恒例の役所の人事異動程度の関心しか抱けなくなってしまったのだ。それでも一昔前の、2―3世議員ばかりが顔を連ねた内閣に比べれば、雲泥の差だ。ジャン=ジャック・ルソーも「社会契約論」の中で「世襲議員による政治は最悪」と指摘している。 野田内閣の最大の使命は「東日本大震災の復興」と「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応」。そして、とりわけ「福島の再生なくして日本の再生はない」と語る、その言葉通りだと思う。また、発足直後の2日の初閣議で内閣の9つの基本方針が決定した。一番目に「国民の生活が第一」の政治を実現――をあげているが、その真骨頂を忘れないでほしい。生活者の視点が抜け落ちた政治家の言葉は非常に薄っぺらいので、信用しないことにしている。
 さて、歴史を紐解くと、国内でごたごたが続くと、隣国がその空隙を突いてさまざまな利権に手を伸ばそうとする。日本はこの半年間、東日本大震災と原発事故の対応で手いっぱいだったが、外に目を向けると、尖閣諸島の中国漁船衝突事件、韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題を抱えたままである。さらに、沖縄の米軍普天間基地移設問題、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の是否決定も迫る。まさに内憂外患。
 鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相も外交、防衛については暗かった。野田内閣の玄葉光一郎外相、「私は安全保障の素人」と発言した一川保夫防衛相も経験不足が心配されるが頑張ってほしい。「毎年変わる大臣なら、ヘンにかき乱されるより素人の方が扱いやすい」と官僚に思われては困る。それこそ政治が軍事に優先する文民統制も怪しくなる。そして、言うまでもなく、観光は外交政策の重要な柱の一つ。場当たり的ではない、戦略的な観光政策を望む。
 今回の民主党代表選には5人が立候補したが、幾つかの討論番組は国家観ではなく「親小沢か、反小沢か、脱小沢か」が主な論点だった。これでは日本の政治家の外交力や見識も磨かれない。

(編集長・増田 剛)

農協観光協力みのり会が30周年

農協観光の協力団体「農協観光協力みのり会」(会長理事・岩原繁弘オホーツクバザール社長)は9月14日午後4時30分から、宮崎県宮崎市・宮崎観光ホテルで創立30周年記念式典を開く。農協観光が昨年から取り組んでいる「がんばろう宮崎キャンペーン」の一環として宮崎市で開催する。

会は、河野俊嗣宮崎県知事をはじめ、農協観光の田辺豊社長、農協観光協定旅館ホテル連盟の藤本武夫会長など多くの来賓を招き、参加者は約560人の予定。

問い合わせ=農協観光協力みのり会 本部事務局  TEL 03(5297)0352

国際陶磁器フェスティバル美濃’11(9月16日から10月23日)

国際陶磁器フェスティバル美濃’11
国際陶磁器フェスティバル
美濃’11

 「国際陶磁器フェスティバル美濃’11」が9月16日から10月23日までの38日間、岐阜県多治見市のセラミックパークMINOをメイン会場に開かれる。1986年以来3年ごとに開催され、今年で9回目を迎える。世界最大規模のコンペティションには57カ国2777人が出品。期間中は選ばれた優秀作品約200点が展示される。多治見市や土岐市、瑞浪市などで窯めぐりや作陶体験などさまざまなイベントも計画している。公式ガイドブックも販売している。

 
 
 
 
 
 
 

沖縄県系が集う、第5回世界のウチナーンチュ大会

 世界各地に移住した沖縄県系人が5年に1度母県に集う「第5回世界のウチナーンチュ大会」が10月12―16日、沖縄セルラースタジアム那覇エリアと沖縄コンベンションセンターエリアで開かれる。日本有数の移民県である沖縄では、多くの県民が海外へ雄飛し、南北米をはじめ、世界各地に約40万人の県系人が存在。世界のウチナーンチュ大会は、沖縄県の人的財産である海外県系人の世界的なネットワークを形成しようと1990年にスタートした。第1回に2379人、第2回に3922人、第3回に4325人、第4回には世界21カ国・3地域から4937人のウチナーンチュ(沖縄人)が集まった。 今回は、15―16日に「世界エイサー大会2011」を開催。沖縄の伝統芸能であるエイサーの新たなスタイルを創作し、島・命・愛する人を想う「うむい(祈り)」と、飛躍する心で演舞し感動を与える「ちむどん(感動)」、新しい自分や仲間との出会いが生まれる「しんかぬちゃー(交流・仲間)」をテーマに、世界に誇る新しい21世紀型のエイサーを目指す。15日は午後0時―午後8時、16日は午前11時―午後8時。会場は奥武山運動公園(沖縄県那覇市)。入場料無料。
 詳しくはURL=http://www.wuf5th.com/

医療観光事業を開始、共同で事業会社設立

 長崎県佐世保市のリゾート施設・ハウステンボス(澤田秀雄社長)は8月10日、ガンなどの難病の治療・予防などに対するソアラ療法の提供や情報支援、普及など行うソアラメディカル(白石章二社長、本社・東京都港区赤坂)と共同で医療観光事業(滞在型ウェルネス事業)に乗り出すと発表した。 国内外で健康への関心が高まるなか、予防医療のアプローチによる体質改善・痩身のプログラムと、県北部の一次産品や観光資源を結びつけた滞在型ウェルネス事業を展開。8月中に事業会社・TBソアラメディカル(白石章二社長、設立時資本金6千万円)をハウステンボス内に設立する。
 ウェルネスプログラムでは、体温を1、2度上昇させて自律神経のバランスを整え、免疫力などを高める技術・ソアラ療法や東洋医学に基づく生活習慣とヨガの呼吸法、地元有機野菜使用の完全菜食の食事管理、ホテルでの滞在や本格的スパメニュー、寺での座禅や瞑想など盛り込む。
 また、佐世保観光コンベンション協会と連携の周辺観光資源アクティビティ、地元医療機関でのメディカルチェックも組み込む。
 料金は3泊4日で25万円、6泊7日で45万円程度を予定。9月上旬から予約を受け付け、11月中旬に開始する。客層は国内外の30―50代のハイインカム層と、60代以上の資産家層を想定。年間利用客500人、年間売上高1億5千万円を目指す。

熊本・宮崎・鹿児島DC、くいだおれ太郎がPR隊長

南九州で“くいだおれ”
南九州で“くいだおれ”

 熊本・宮崎・鹿児島の南九州3県がJR6社と連携し今年10月から実施するデスティネーションキャンペーン(DC)のPR隊長に「くいだおれ太郎」が就任し8月4日、大阪市内のホテルで就任式が行われた。

 DCの実行委員長を務める熊本県の佐伯和典観光経済交流局長は「九州新幹線全通から5カ月。熊本県内でも関西弁を聞く機会が増えてきたが、浮かれてばかりはいられない。南九州には新幹線沿線以外の地域にも魅力はたくさんある。2次、3次アクセスを駆使して、開業効果を全域に広げていきたい」とあいさつした。

 就任式では、くいだおれ太郎が「大阪名物くいだおれ」元女将の柿木道子さんと一緒に登場。佐伯委員長からPR隊長のタスキを贈られると、早速「南九州で“くいだおれ”ですねん」とアピールした。

 会場では、3県のご当地グルメの試食会も行われ、指宿温泉の温泉タマゴや地元食材を使った「いぶすき温たまらん丼」や黒豚豚汁(鹿児島県)、高千穂牛ステーキ丼や魚のすり身を麺状にした「日南魚うどん」(宮崎県)、熊本県産のトマトや牛肉、米を使った「阿蘇ハヤシライス」やだご汁(熊本県)などが振る舞われた。

 鹿児島県の武盛武士観光交流局次長は「食は歴史、文化とも切り離せないもの。すべてを含めたうえで、それぞれの土地の食を味わってほしい」とアピールした。

 熊本・宮崎・鹿児島DCは「のんびり過ごす極情の旅」をテーマに10月1日から12月31日まで実施。10月8日から10日までは、熊本城一帯で、3県の郷土料理や郷土芸能が集うオープニングイベントが開かれる。

旅行市場は新時代に 〈ニュー東京観光自動車・畑 幸男 社長〉

ニュー東京観光自動車・畑 幸男 社長
ニュー東京観光自動車
畑 幸男 社長

 貸切バス事業者として50年以上の歴史を持ち、業界では名門の1つとして数えられるニュー東京観光自動車。しかし、東日本大震災や国の「バス事業のあり方検討会」での議論など、バス業界を取り巻く環境は大きく変化している。長年、観光業界に携わってきた同社の畑幸男社長に震災の影響や現状の課題、今後の展望などを聞いた。
【飯塚 小牧】

<夏は8割まで回復、年度末には収支調整可能>

 ――東日本大震災による影響は。

 震災直後の(3、4月)の2カ月間の東京地区における貸切バス稼働状況は、前年比較で半減するところまで下がった。しかし、5、6月と回復し、7月にはほぼ前年近くまで戻ってきている。

 大きな要因は風評被害で、当社も3月は昨年を上回る稼働率を見込んでいたが、最終的に5割減まで落ち込んだ。とくに、修学旅行は東京を避けるように行き先が変更になってしまい、それによる落ち込みが大きかった。北海道地区は東京を越えて大阪方面に行き、九州も、名古屋も関西にシフトした。主要取引先の大手旅行会社の一般団体や法人旅行も同様で、大きく前年を割った。

 ――今後の数字の見通しは。

 4月は5割、5月は6割、7月は7割まで戻し、この3カ月の実績は予算の約60%といったところだ。今後はというと、第1四半期のマイナスは大きいが、7、8、9月の受注が8割まで戻ってきたので、期末の来年3月までには受注の回復と経費削減で収支調整ができるだろう。

 数字的にはある程度調整ができるところまできたが、仕事の内容が完全に戻っているわけではない。法人旅行は極端に減ってしまい、インバウンドは、大手旅行会社の欧米からのお客様を多く扱っていたが、すべて消えてしまった。ではなぜ需要が戻ったかというと、首都圏発の旅行が動き出したことと、特別需要だ。県主催のボランティアツアーや企業のボランティアツアーなどさまざまな形があるが、こういった特需で伸ばしているのが実態だ。特需は恐らく、年度末までは続くとみている。来年度以降は変わってくると思うが、その変化に合わせてメインの法人旅行や募集旅行などが回復し、バランスは取れると睨んでいる。東京中心の旅行会社をみても、同じような動きをしているので、ここに来て少しほっとしているのが本音だ。

 しかし、福島原発に関わる風評被害で、福島県はもちろん周辺の栃木や茨城、千葉などに影響が及び、行き先が西へ変更になっている。東北から北関東はバスツアーの主要観光地で、取引先の受注もこの方面からのものが多いので、これらの地域が戻ってこないと、本当の意味で法人需要は戻ってこないと考えている。

 ――自社の旅行商品については。

 自社内のニュー東京トラベルで、ハイキングや登山をメインにした「ポニーツアー」を展開している。会員を1万人持っているので、この会員に対し、ダイレクトメールなどで新商品のPRを行っている。特化している商品なので、震災の影響は少なかった。現在は関東周辺の近距離商品だが、今後は航空機を使って北海道や九州に行くなどロング商品の展開を考えている。今後もこのハイキング、登山の路線で拡大していく。

 ――国土交通省の「バス事業のあり方検討会」での議論に対し貸切バス事業者としての考えは。

 これはもともと、総務省が国交省に出した貸切バスの安全確保対策についての勧告のなかで、貸切バス事業の収受運賃の実態と公示運賃の検証、旅行会社への指導や監督の強化などについて指摘したことから、設置された検討会だと理解している。加えて、従来から都市間輸送を行っていた高速乗合バスと新規の高速ツアーバス間での課題などを話し合っている。6月に中間報告がでたが、前半は高速バスについての議論で、貸切バスについては後半に話し合われるようだ。

 貸切バスは2000年に規制緩和され、自由化になった。この際、規制が大きく撤廃され、新規参入が進みバス会社は2倍に増えた。これにより、需給バランスが崩れ取扱単価はこの10年、右肩下がりだ。届出運賃という正式なルールはあるが、現状はあまりにもかけ離れている。規制緩和以前にライセンスを取った会社は固定費がかかり過ぎ、この市場プライスについていけずに経営が困難だ。震災でそれに拍車がかかる恐れもある。

 また、規制緩和後は車両問題での事故対策も必要となり、新規参入会社は規制が緩い分、安全マネージメントやコンプライアンス、内部統制という面での対処方は、厳しいと思う。つまり、この価格競争についていけるような経営は安全運行とは矛盾がある。

 これらのことから、検討会には、高速バスの議論と同様に、貸切バスの新規参入会社にも規制を強めるような新しいルールづくりを話し合ってほしいと要請している。東京地区では、「屋根付き車庫と車掌の義務付け、中古車は5年以内」の3つの規制と国交省の安全マネージメントを徹底してほしいという要望を検討会の参加者である日本バス協会に提出した。また、各地区からも要望が出ている。

 ――今後の業界や自社の展望について。

 貸切バス業界としては、先程の検討会への要請で需給バランスが取れ、単価を上げてもらい、旅行会社とウィンウィンの関係が築ければそれがベストだ。それは宿に対しても同じで、業界が一体となって取り組む必要がある。しかし、震災後の状況もあるので我われは安全運行を確保しつつ、今は経営努力をしていくほかにないかなとも思っている。

 旅行業界全体を考えても、旅行会社は航空機のチケットレスや宿の直販化の進行、大規模団体の減少などで、店舗数を減らすなど市場に合わせて従来型の全国ネットワークの組織を大きく変えてきている。この変革に合わせて、国も制度変更などをしてきているので、それにリンクして目まぐるしい変化がある。さらに、今年はそれに震災が加わり、インバウンドや首都圏を中心にした関東の旅行市場は過去に類を見ない変革期を迎えている。来年は需要も平常に戻るだろうが、旅行市場そのものは震災前に比較して、新時代を迎えると思う。当社としては、それに対応し得る貸切バス会社になっていかなければならない。

JTB、インドに子会社設立、日系企業やMICE中心に

 JTBはこのほど、旅行事業を展開するための子会社をインドに設立することを発表した。 経済成長著しいインドには、大手を中心に日系企業が次々と進出し、業務渡航や企業の報奨旅行などの需要が増加。中間所得層の拡大に伴い、インド人の海外旅行も今後大幅な増加も見込まれる。初めは日系企業の出張手配業務とMICE事業を中心に営業し、段階的に日系以外の企業へも営業を展開する。
 また、ビジットジャパン事業との連携で、JTBグループの強みを生かした訪日事業や日印間地域交流事業に取り組む。

インターンシップ有償で、跡見女子大とKNT

 跡見学園女子大学マネジメント学部観光マネジメント学科と、近畿日本ツーリスト(KNT)はこのほど、長期人材プログラムの一環として、有償のインターンシップ研修プログラムを共同開発した。 今春卒業の大学生の就職率は4月1日現在、前年比0・8ポイント減の91・0%と過去最低となっている。このような厳しい就職戦線のなか、同大観光マネジメント学科では、大学の授業で学んだ理論を、自分でできる力に変える「実学」を重視した新たな業界研究カリキュラムや、研修メニューを開発した。一方、KNTも、企画提案型需要開発へとセールス基盤をシフトするなか、旅行需要を創出できる若い人材の育成が不可欠との考えから、今回の共同企画が実現した。
 インターンシップ研修プログラムは、観光マネジメント学科に在籍し、将来観光産業に就職を希望する2年生を対象としている。8月22―31日までKNTで研修を行い、その後、添乗員研修や観光まちづくりのノウハウを実務体験する。台湾での海外研修や、会津若松での現地研修も予定している。9月21日に総括をする。