民泊新法が最終局面 ― 「全国一律ではなく、地方に裁量権を」

 民泊新法(住宅宿泊事業法案)が最終局面を迎えている。3月10日に予定されている閣議決定を目前に控え、全旅連青年部は桑田雅之部長を先頭に2月22、23日に大規模な陳情活動を行った。また、22日には東京都内で開いた青年部の県部長サミットで、西村総一郎次期青年部長が「最後の踏ん張りどころ」とし、民泊新法の争点を整理して最終の確認を行った。

 まず、昨年6月2日に閣議決定された年間提供日数(180日)の算定方法では、旅館業界と、賃貸不動産業界との間で認識の乖離があり、大きな争点となっている。旅館業界は暦日単位で最大179泊180日を強く主張している。これは、「旅館業法の許可を持つ者と、住宅を旅行者に宿泊させて小遣い稼ぎする者との差別化のために、政府が180日を境に区別したから」という論理だ。

 一方、賃貸不動産業は、日数の算定を正午から翌日の午前11時59分を民泊新法の1日とカウントする考えだ。この180泊案では、年間360日の営業が可能となる。旅館業界は「360日営業が可能ならば、旅館業と住宅宿泊事業との区別が付かない」と猛反発している。

 もう一つ、旅館業界が強く求めているのは、「地方創生の観点から、すべての地方公共団体が条例により、年間提供日数などを独自に制限できるようにすべき」ということだ。平たく言えば、「地方のことは、地方で決めさせてほしい」と訴えている。全国一律ではなく、都道府県、市町村単位で地域によっては「家主不在型の民泊は許可しない」という裁量権を残してほしいという願いだ。

 これに加えて、東京オリンピックが2020年に開催されるが、五輪後に民泊新法をもう一度見直すことも求めている。

 旅館業界は、すべての民泊に反対しているわけではない。家主在宅型の民泊に対しては、「安全安心」の観点から賛成の立場をとっている。一方、家主不在型の民泊については、「それぞれの地域の実情やまちづくり、地域創生の意志を反映できる(柔軟な)仕組みにしてほしい」と求める。また、家主不在型では、マンションのセキュリティーや騒音、ごみ処理などの問題がすでに各地で起こっていることも危惧している。

 違法民泊の取り締まりは現状では、難しい。民泊を経営している人たちの住所や名前も分らないため、探すのが困難である。例えば、エアビーアンドビーのサイトの地図上に載っている民泊には住所が掲載されていないなど、特定できない問題点がある。違法民泊がはびこれば、消費税や所得税が支払われず、国の財政も厳しくなると指摘されている。また、格安な料金で宿泊させれば、価格競争も激化し、近隣の旅館やホテルが廃業するという事態も想像できる。

 一連の流れで、なんとなく気持ち悪いのが、「外国人観光客が急増して都市部のホテルが足りないから民泊を増やす」という表向きの理由と、人口減少に加え、相続税対策で賃貸物件がどんどん建てられるなかでの空き物件対策を無理に結合させようという意図が、あまりに不格好に映るからだろう。旅館業界は、孤軍奮闘している。自分たちしか旅館業を守る人はいないと感じただろう。旅館業は民泊との違いを明確にすべきである。まだまだ新しい可能性はあることを次回以降、書いていきたい。

(編集長・増田 剛)

東北交流拡大へ、外国人が東北を応援(復興庁)

メッセージを掲げる今村雅弘復興大臣(左)

 復興庁は2月14日、東京都内で「新しい東北交流拡大モデル事業報告会」を開き、同事業に選定された13事業者が1年間の成果を報告した。来場した国内に住む外国人100人の投票で決める「魅力的な東北周遊のモデルコースコンテスト」では、東武トップツアーズの「キラキラ感動★冬の東北とグルメ 満喫ツアー」が1位に輝いた。

 事業者から挙げられた東北の課題では、認知度の低さが最も多く、そのほかに2次交通や地域住民と訪日外国人客の距離感も指摘された。それぞれが「体験」や「東北特有の自然現象」などをテーマに課題解決に取り組み、ツアーを造成。2月10日時点で9821人泊を売り上げた。

 会には有識者としてジャーマン・インターナショナル代表のルース・マリー・ジャーマン氏と、跡見学園女子大学准教授の篠原靖氏、東洋大学准教授の矢ヶ崎紀子氏が参加。各事業者の報告に対して講評を行った。ジャーマン氏は「それぞれのプレゼンテーションで成功している地域は、当事者である外国人を企画段階から巻き込んでいる」とし、「これからの時代は外国人をパートナーにして一緒に発信していくことが重要」と参加者にメッセージを送った。

 今村雅弘復興大臣は「東北は日本の良さを凝縮していると思う」と述べ、「東北や日本の素晴らしさを把握し、国外にアピールしてもらえれば日本にとって大きな力になる」と外国人に東北を訪れてもらう意義を語った。外国人から今村大臣に対し、東北応援メッセージも贈られた。

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 モデルコースコンテストの2位以下の受賞者は以下の通り。

 2位 TOHOKU SNOW MONSTER(東北7新聞社協議会)

 3位 「東北で笑顔に会う旅~あなたの家族の話を聞かせてください~(近畿日本ツーリスト)

 審査員特別賞 山形のひなまつり&丸ごと山形体験(ダイヤモンド・ビッグ社)

100人による投票

〝消費も回復傾向〟、春節の伸び率25%増に(観光庁 田村長官)

 田村明比古観光庁長官は2月15日に行った会見で、今年の春節の動向について、「訪日数はおおよそ25%増加している」と報告した。増加要因として、今年の春節は1月27日―2月2日と、昨年(2月7―13日)よりも1月側にずれ込んだことにより、堅調に推移したとみられる。また、免税販売状況も前年と比較し、客数・売上ともに増加していることから、消費も回復傾向にあるとの見解を示した。

 また、2月24日から始まるプレミアムフライデーについては、旅行需要では近距離の海外や国内旅行においては、一定のプラスになると言及。そのうえで、我が国の働き方改革について田村長官は、「プレミアムフライデーにとどまらず、有給休暇取得のための対策に、政府一丸となってこの課題に取り組んでいかなければならない」と語った。

都心で天然温泉を楽しむ

 以前から気になっていた東京郡品川区の銭湯、武蔵小山温泉「清水湯」に行ってきた。460円の銭湯料金で2種類の天然温泉が堪能できるため、正午からの営業開始直後だったにも関わらず、男湯はすでに満員御礼状態だった。

 都内で琥珀色の黒湯と源泉かけ流しの黄金の湯の2種類の天然温泉が湧き出る銭湯はおそらく清水湯だけではないか。1994(平成6)年に第一源泉の黒湯温泉の採掘成功。当時、大田区などで黒湯は存在していたが、品川区では出ないと云われていた。

 2007(平成19)年に第二源泉の黄金の湯を掘削したところ、都内屈指の療養泉が湧出。銭湯でかけ流しがあってもいいじゃないかと全浴槽をかけ流し(一部循環併用)にし、現在の「お客様第一」で「地域に貢献」の武蔵小山温泉が誕生した。

【古沢 克昌】

1月訪日客230万人、単月では過去2番目に(JNTO)

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した1月の訪日外客数推計値によると、1月は前年同月比24・0%増の229万5700人となり、16年1月の185万1895人を44万人以上上回り、1月として過去最高を記録した。単月では、16年7月(229万6451人)に迫る過去2番目の数値となった。

 今年は旧正月が1月末から始まり、中華圏の国や地域を中心に訪日旅行者数が増加した。1月の市場別では、韓国と豪州が単月として過去最高を記録。そのほかロシアを除く17市場が1月として過去最高となった。とくにマレーシアが70%台、インドネシアが60%台と年初から高い伸びを示している。

 1月の重点市場の動向をみると、韓国は同21・5%増の62万5400人で単月として過去最高を記録。旧正月(ソルラル)休暇が今年は1月に移行したことや、複数の航空路線が増便されたことなどが要因となり、訪日需要を押し上げた。

 中国は同32・7%増の63万600人で1月として過去最高記録した。春節が1月に移行したことで、その前後を含め訪日者数が増加。また、春節期間のチャーター便運航による航空座席供給量の増加や、旺盛なクルーズ需要なども訪日者数の押し上げに寄与した。

 台湾は同9・3%増の35万800人で1月の過去最高を記録。前年のトランスアジア航空の解散にともなうツアーキャンセルや、航空座席供給量減少による航空券の値上がりなどにより、伸び率は1ケタにとどまった。

 香港は同48・4%増の18万5500人で1月の過去最高を記録。旧正月休暇が1月に移行したことに加え、航空座席の供給量が、前年比で約2割増加したことなどが訪日需要を高めた。

 そのほか、東南アジア諸国は、タイが同6・7%増、シンガポールは同35・2%増、ベトナムは同46・0%増、インドは同4・8%増など。インドは1万100人で1月として過去最高を記録。例年1月は外国旅行のオフシーズンであるため、緩やかな伸びとなった。

 なお、出国日本人数は同1・9%増の130万人となった。

東南アジアで初の開催、WTTCサミット参加募る(日観振)

 日本観光振興協会(山口範雄会長)はこのほど、「世界旅行観光サミット」への参加呼びかけを始めた。今年の開催期間は4月26、27日で、場所はタイ王国の首都バンコク。

 世界旅行観光協議会(WTTC、英国ロンドン)が主催し、東南アジアでの開催は初の試みとなる。

 参加すれば、各国の観光業従事者らとの交流や、メディアへの情報発信を期待できる。日本からの参加申込を取り仕切る同協会では、通訳面などで毎年50人前後の参加者らをサポートしてきた。

 サミット本会議と会食費は無料で、参加者負担は、渡航費や宿泊費など。

 問い合わせ=日本観光振興協会 旅行振興部門 村上、中村(慎) 電話:03(6435)8334。

九州観光振興大会開く、九州観光を基幹産業に

九州全体で観光需要の喚起に取り組む

 九州観光推進機構(石原進会長)と九州観光振興議員連盟(近藤和義会長)が共催する第1回九州観光振興大会が2月10日、大分県・日出町の別府湾ロイヤルホテルで開かれた。九州7県の県会議員、行政、観光団体、宿泊・交通事業者など320人が参加した。

 九州観光振興議員連盟は、県境を超えた広域観光振興推進をはかるため、同日に各県関係議員が集まり設立し、同大会に臨んだ。

 近藤会長は「熊本地震では九州全体で75万件の宿泊キャンセルがあり、九州の観光産業全体が経済的なダメージを受けた。あらためて九州は広域的な周遊観光が主力であると痛感した」と述べ、「九州全体で観光需要を喚起するため、観光事業関係者と一緒に知恵を絞っていきたい」と決意を表明した。

 石原会長は「熊本地震の影響で、修学旅行は長崎が8割減、鹿児島、大分も6割減となり、九州全体が影響を受けた」と述べ、「九州ふっこう割で7月以降大きな復興ができた。熊本の阿蘇地域は以外は、ほぼ前年並みに戻り、インバウンドは前年比12%増の370万人となった」と報告。4月から、ふっこう割反動減対策として「九州ありがとうキャンペーン」を展開するとした。

 さらに、九州観光を基幹産業にするため「観光の売上げを2023年に国内宿泊・日帰り3兆円、インバウンド1兆円の計4兆円にしたい」と述べ「九州の自動車産業の売上げと同規模になってこそ、胸を張って観光が基幹産業だといえる」と訴えた。

 大会では、九州運輸局長の佐々木良氏と、グーグル合同会社の陣内裕樹氏による講演も行われた。

民泊法案に意見も、持続可能な観光地へ(サービス連合)

後藤常康会長

 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(後藤常康会長)は2月8日、帝国ホテル(東京都千代田区)で観光政策フォーラムを開いた。基調講演とパネルセッションを通して、「地方創生」「観光地域づくり」と「サービス・ツーリズム産業」の関係性を議論。今通常国会で法審議される民泊関係の法案では、地域の判断やルール制定の必要性、使い分けなどの意見が出された。

 後藤会長は「“真の地方創生”とこの産業の将来がどうあるべきか、“持続可能な観光地づくり実現のために何を重点的に進めていくべきか”について理解を深め、今後のさまざまな取り組みにつなげていきたい」とあいさつした。

 慶應義塾大学教授の片山善博氏は民泊について「地方自治体がローカルルールを設けるべき」と主張し、「受け入れるかは地域が判断するべきで、自治体は地域を守らなければならない」と語った。東洋大学准教授の矢ケ崎紀子氏は「最近は面白いところ、その地域にしかないところに泊まってみたいという声が増えている」とし、「民泊には需要創造がついて回るから、上手く活用するべき」と述べた。また、シームレス(つなぎ目のない)民泊などの事例も紹介。シームレス民泊は民泊物件を通常は宿泊場所として運用し、災害時には地域住民の避難場所に活用するもの。徳島県が整備を進めている。

 日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の越智良典氏は「1つの旅館でお客さんをすべて取る時代ではないので、長期滞在を促し、2―3軒の旅館でその地域をアピールし、地域づくりを行うべき」と現在の旅館運営に対して持論を語った。

さまざまな意見が交わされる

ANA新社長に平子裕志氏

平子裕志新社長

 全日本空輸株式会社(ANA、篠辺修社長)は2月16日に開いた臨時取締役会で、平子裕志取締役執行役員が4月1日付で社長に就任する人事を発表した。なお、篠辺社長は3月31日をもって退任し、翌4月1日よりANAホールディングス副会長に就任することが決まっている。

 平子 裕志氏(ひらこ・ゆうじ)1958年生まれ。59歳。81年東京大学経済学部を卒業し、全日本空輸に入社。2004年に東京空港支店旅客部長、06年営業推進本部レベニューマネジメント部長などを経て、10年に企画室企画部長、11年に執行役員となる。15年からはANAホールディングスで取締役も兼ねる。
 
 
 
 
 

「雪の回廊」を歩く、志賀草津高原ルート

第50代ミス志賀高原の荒木怜奈さん

今年で13回目、4月20日から

 長野県・山ノ内町と群馬県・草津町を結ぶ国道292号(志賀草津高原ルート)の冬期閉鎖解除の前日である4月20日の午前9時から志賀草津高原ルート「雪の回廊ウォーキング」が開催される。今年で13回目。主催は草津町・山ノ内町広域宣伝協議会。

 2月8日には、群馬県から草津町観光課の関亘係長、長野県から山ノ内町観光商工課観光商工係の養田武さんと第50代ミス志賀高原の荒木怜奈さん、銀座NAGANOの竹鼻栄二次長の4人が本紙を訪れ「雪の回廊ウォーキング」をPRした。

 高さ約7㍍を超える雪の回廊や標高2172㍍の日本国道最高地点からの雄大な景色を眺めながらウォーキングが楽しめるイベントで、当日のコースは3種類。【Aコース】志賀高原スタートコース(8・1キロ)は先着100人、【Bコース】白根火山ロープウェイスタートコース(8・1キロ)は先着150人、【Cコース】リフトで行く横手山頂らくらくコース(3・1キロ)は先着50人で、各コースとも午前9時受付開始、午後3時30―40分ごろにそれぞれの出発地に戻る予定。各コースの参加者を10人程度のグループに分け、各グループに1人ずつガイドが付く。

 参加料はA・Bコースが1人4千円(ガイド料・昼食・保険料・温泉入浴料・ロープウェイ料金含む)、Cコースが1人5千円(同+リフト代)。

 昼食には志賀高原で採れたネマガリダケを使った料理が提供され、ウォーキングのあとには草津温泉西の河原露天風呂(Bコース)、またはほたる温泉(A・Cコース)で入浴することができる。大会参加者にはキノコ汁などのサービス、参加者全員に記念品をプレゼントするほか、ゴール者に完歩賞を贈呈する。

 ミス志賀高原の荒木さんは「雪の回廊ウォーキングはもちろん、白根山ロープウェイから眺める絶景やイベント終了後の温泉も楽しめます。1年に一度だけオープン前に日本国道最高地点を歩ける貴重な体験なので、ぜひご参加ください」とアピールした。

 申し込みはスポーツエントリーを利用し、インターネット、FAX、電話から。3月31日まで受け付ける。

 https://www.sportsentry.ne.jp/event/t/68223、FAX=0120(37)8434、電話:0570(550)846(平日のみ午前10時―午後5時30分)。

 問い合わせ=草津町・山ノ内町広域宣伝協議会(雪の回廊ウォーキング事務局) 電話:0269(33)1107。