もてなしの目的は「創客」 3都市でセミナー開く おもてなし経営研究所

2020年2月4日(火) 配信

おもてなしセミナーで講演する西川丈次氏

 おもてなし経営研究所(代表=西川丈次・観光ビジネスコンサルタンツ社長、大阪市淀川区)は、第16回「おもてなしセミナー」を1月21日に福岡市内で開いた。

 セミナーは仙台、東京でも開催され、福岡会場では観光・タクシー関係者など25人が参加し、熱心に受講した。

 講師の西川氏は、ホテル・旅館やレストラン、タクシー、バス、観光地などでの体験を基にしたホスピタリティ実践論「もてなし上手」を本紙「旅行新聞」に好評連載中。

 セミナーでは、自身が体験した感動サービスの事例を基に、すぐに実行できるおもてなし経営行動のポイントを伝授した。

 西川氏はまず、「良いサービスを受ける力のない人に、良いサービスはできない」と話し、「アンテナを高くして、良いサービスを受ける力を養ってほしい」とアドバイス。

 「(良いサービスの)花を咲かせるには強い根っ子が必要」と話した。

 また、「おもてなしを実行する目的は創客」と説明し、「お客様に喜んでもらい、お客様を作り続けることがおもてなし経営」と強調した。

 そのためには「販売者が売りたいときに、売りたい商品を、買っていただけるロイヤルリピーターが大切」と述べ、ロイヤルリピーターを育てる“個”に向かう「個客満足」の重要性を訴えた。

創業10年目の挑戦 温故知新、新しいホテルブランド「okcs(オックス)」立ち上げる

2020年2月3日(月) 配信

最初に手がけたホテル「瀬戸内リトリート青凪」

 創業10周年目の挑戦――。ホテルや旅館のコンサルティング・運営受託プロデュースを手掛ける温故知新(松山 知樹社長、東京都新宿区)は2月1日(土)、新しいホテルブランド「okcs(オックス)」を立ち上げた。

 併せて、新ビジョンに「地域の多様性の承継発展、そして豊かな未来の実現」を掲げ、地方創生にこれまで以上に注力する。

 新ブランドは同社が運営するデスティネーションホテル/リゾート4施設の総称。新たなホテルブランドの展開を見据え、立ち上げた。

okcsブランド 運営施設

・瀬戸内リトリート青凪(愛媛県松山市)
・海里村上(長崎県壱岐市)
・箱根リトリート fore〈フォーレ〉(神奈川県・箱根町)
・箱根リトリート villa 1/f〈ヴィラワンバイエフ〉(神奈川県足柄下郡箱根町)

シニアの約8割が宿泊でキャッシュレス決済 ゆこゆこ調査

2020年2月3日(月)配信

意識調査の結果、60代以上の94.6%がキャッシュレス決済の手段を持つと発表

 ゆこゆこホールディングス(吉田周平社長、東京都中央区)は2020年1月31日(金)、会員向けの意識調査を行った結果、60代以上の94.6%がキャッシュレス決済の手段を持ち、このうち77.2%が宿泊施設の決済時で利用すると発表した。

 同調査は19年12月3~13日の期間に、「ゆこゆこ」会員向けのメールマガジンを使用して実施したもの。同社は全国の20代以上の男女5132人に、キャッシュレス決済に関する意識調査を行った。

シニアに強い「ゆこゆこ」が、旅行でのキャッシュレス決済利用に関する意識調査を実施

 同社が運営する温泉宿泊予約サービス「ゆこゆこ」の会員は、シニア層が多く、60代以上が7割を占めている。19年10月からキャッシュレス決済を導入した同社として、シニア層は旅行でのキャッシュレス決済利用に対してどのような意識を持っているかを把握するために調査を実施した。

<調査概要>

調査期間:2019年12月3~13日

調査内容:旅行時のキャッシュレス決済利用に関する調査

調査方法:会員向けメールマガジンを使用したアンケート調査

調査対象:20代以上の男女5132人

回答者:20代0.3%、30代1.3%、40代7.9%、50代23%、60代39%、70代以上28%、無回答0.7%

60代以上の94.6%がキャッシュレス決済の手段を持ち、そのうち77.2%は宿泊料金を支払う際に利用している

年代を問わず、9割以上がキャッシュレス決済の手段を持っている

 調査の結果、キャッシュレス決済は60代以上のシニア層の94.6%が利用し、このうち77.2%のシニアは宿泊施設の決済時にキャッシュレス決済を利用していた。若年層だけでなく、多くのシニア層もクレジットカードを含めたキャッシュレス決済の手段を持ち、宿泊料金を支払う際に利用していることが分かった。

シニア層の方がキャッシュレス決済の使用可否が影響する結果に

 シニア層がキャッシュレス決済を利用する理由は、「カード会社のポイントや特典が付くから」という理由が47.2%と半数を占める。続けて、「宿泊料金が高額で現金を持ち歩くのが不安」が20%、「オンライン事前決済機能が便利」が18.5%という理由も挙げられた。

 キャッシュレス決済を「あまり利用しない」と答えた人は、「そもそもキャッシュレス決済をほとんど使用しない」「キャッシュレス決済ができない宿が多いから」と言った理由が挙げられていた。

60代以上の宿泊予約では、キャッシュレス決済の使用可否がとくに予約に影響する結果に

宿泊料金の支払いでキャッシュレス決済を利用する人は、年代問わず約8割も

 19年10月からキャッシュレス決済を導入した同社では、「キャッシュレス決済ができる宿に予約をしようと思った」と回答した60代以上のシニア層は64.1%という結果になった。シニア層向けの宿泊予約については、キャッシュレス決済が利用できると予約につながると分かった。20~30代の若年層では、宿泊予約時にキャッシュレス決済の利用可否を気にする人が56.3%だったのに対し、シニア層では宿泊料金を支払う際に利便性を気にする人が多いという結果になっている。

 なお同社会員は、旅行をする際、1泊旅行をする人の割合が63.9%、年間で宿泊を伴う旅行に3回以上行っている人が78.6%、夫婦で旅行される人が85.8%という結果となったと伝えた。

国交省、成田国際空港の滑走路新設など許可 滑走路3本で発着回数50万回へ

2020年2月3日(月) 配信

和田浩一局長(左)と田村明比古社長

 国土交通省は1月31日(金)、成田国際空港(NAA、田村明比古社長)に滑走路新設などを許可する「成田国際空港の更なる機能強化に係る航空法変更許可書」を交付した。これにより、滑走路は1本増え、合計で3本になる。発着回数は、現在の年間30万回から50万回へ大幅に増加する。

 現在、4000㍍のA滑走路と2500㍍のB滑走路があるが、B滑走路を1千㍍延伸し、3500㍍となる。さらに、3500㍍のC滑走路も新設する。これらに伴い、空港などの敷地面積が拡大し、誘導路を新たに設ける。

 今後は、埋蔵文化財の調査と地質調査を行い、工事を始める。完成は2029年3月31日を予定している。

 国土交通省航空局の和田浩一局長はNAAの田村社長に「地域には丁寧な対応をお願いします。1日でも早く完成させてください」と要望した。

 田村社長は「地域への対応は丁寧に進め、1日でも早く完成させたい。そのために、地域振興に関わっていく。空港事業は地域の発展に貢献できるようにしたい」と力を込めた。

JTB、「旅ナカ」コンテンツを充実 2020年度エースJTB新商品売り出す

2020年2月3日(月) 配信

「エースJTB」50周年ロゴマーク

 JTB(髙橋広行社長)はこのほど、国内パッケージツアー「エースJTB」の2020年度新商品を売り出した。「エースJTB」の販売開始から50周年を迎えた今年、旅行体験価値を高める「旅ナカ」コンテンツを充実させた。

 新たに「JTBならではのプライベートガイドプラン」が加わり、訪問地のテーマ性を追求したガイドと特別な体験で、お客に合わせたオーダーメイド型の旅を提供する。

 「JTBならではのプライベートガイドプラン」は、専用ガイドが付くだけでなく、普段は見学できないような場所の見学や体験が組み込まれている。全39コースのうち一例として、1日1組限定の「穂高神社奥宮特別参拝付! 上高地プライベートガイドプラン」は、穂高神社奥宮の特別参拝のほか、明神池では神事に使用する御船に乗船することで特別な時間が味わえる。

 ガイドの知識も豊富で、以前訪れたことがある場所でも、新たな発見があるかもしれない。料金は、ガイド料が1組(1―6人)2万2000円のほか、特別参拝料1人5500円が必要になる。

 北海道・白老町に4月オープン予定の「ウポポイ(民族共生象徴空間)」のプランでは、「白老アイヌ協会」公式認定ガイドの説明とともに見学することができる。アイヌ伝統楽器「ムックリ」の演奏体験も可能となっている。

 「エースJTB」は今年1月、販売開始から50周年を迎えた。「お得」やストレスフリーな旅のほか、同社ならではの体験を通じて、日本の魅力を伝えていく。

「穂高神社奥宮特別参拝付! 上高地プライベートガイドプラン」

明神池(イメージ)

 知識豊富なガイドが河童橋⇔明神池の道中を楽しく案内。折り返し地点の明神池では、穂高神社奥宮の特別参拝を体験できる。参拝・祈祷後に毎年10月8日の神事に使用される実際の御船に乗って、幽玄な世界へ誘う。時空を超えるような感動体験がJTBならではの1組限定プランだからこそ味わえる。

設定期間:5月1日~10月31日(10月8日除く)

料金:ガイド料1組(1~6人)22,000円、特別参拝料 1人あたり 5,500円※ガイド料金と特別参拝料はセットで申し込みとなる。

「『白老アイヌ協会』公式認定ガイドとあるくウポポイ(民族共生象徴空間)」

国立民族共生公園内(イメージ)写真提供:アイヌ民族文化財団

 2020年4月24日オープン予定の“ウポポイ”とは国の重要な文化でありながら、存続危機にあるアイヌ文化の復興・発展のための拠点となるナショナルセンター。JTB限定オリジナル企画として「白老アイヌ協会」公式認定ガイドが、国立アイヌ民族博物館内と国立民族共生公園内、周辺の森などをガイディングしながら、自然と共生する知恵についてなどを説明する。アイヌ伝承楽器ムックリの奏で方も伝授する。

設定期間:4月25日~10月31日(休館日:月曜、5月7日、8月11日、9月23日を除く。ただし、5月4日、8月10日、9月21日は開館)

料金:参加人数3~5人の場合、1人あたり(高校生以上) 9,600円、参加人数2人の場合、1人あたり(高校生以上)13,500円、参加人数1名の場合、1人あたり(高校生以上)25,400円

 

 

観光庁、新型肺炎の拡大受け 宿泊事業者向け相談窓口を設置

2020年2月3日(月)配信

写真はイメージ

 観光庁は1月31日(金)、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経営環境の変化に直面する宿泊事業者向けの特別相談窓口を地方運輸局内に設けた。中国からの団体旅行や個人向けパッケージ商品のキャンセルで発生する、外国人観光客の減少などの不安の解消をはかる。

 特別相談窓口は、地方運輸局と内閣府沖縄総合事務局内に設置。宿泊事業者から状況や要望を聞いたうえで、活用可能な支援策を紹介する。このほか、中小企業支援策や雇用調整助成金の活用を検討する宿泊事業者に、経済産業局や都道府県労働局の窓口を案内する。

 連絡先は次の通り。

【北海道】

窓口設置場所=北海道運輸局観光部観光企画課

TEL=011(290)2700、FAX=011(290)2702。

【青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県】

窓口設置場所=東北運輸局観光部観光企画課

TEL=022(791)7509、FAX=022(791)7538。

【茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県】

窓口設置場所=関東運輸局観光部観光企画課

TEL=045(211)1255、FAX=045(211)7270。

【新潟県、富山県、石川県、長野県】

窓口設置場所=北陸信越運輸局観光部観光企画課

TEL=025(285)9181、FAX=025(285)9172。

【福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県】

窓口設置場所=中部運輸局観光部観光企画課

TEL=052(952)8045、FAX=052(952)8087。

【滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県】

窓口設置場所=近畿運輸局観光部観光企画課

TEL=06(6949)6466、FAX=06(6949)6135。

【兵庫県】

窓口設置場所=神戸運輸監理部総務企画部企画課

TEL=078(321)3144、FAX=078(321)3474。

【鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県】

窓口設置場所=中国運輸局観光部観光企画課

TEL=082(228)8701、FAX=082(228)9412。

【徳島県、香川県、愛媛県、高知県】

窓口設置場所=四国運輸局観光部観光企画課

TEL=087(802)6735、FAX=087(802)6732。

【福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県】

窓口設置場所=九州運輸局観光部観光企画課

TEL=092(472)2330、FAX=092(472)2334。

【沖縄県】

窓口設置場所=内閣府沖縄総合事務局運輸部企画室

TEL=098(866)1812、FAX=098(860)2369。

グランピング施設「THE BAMBOO FOREST」今春オープン 動物園に併設

2020年2月3日(月) 配信

「THE BAMBOO FOREST」2020年春オープン

 バンブーフォレスト(青木直之社長、千葉県市原市)は今春、千葉県市原市にアニマルグランピング施設「THE BAMBOO FOREST」をオープンする。ふれあい動物園「サユリワールド」に併設することで、「動物園ならではのアクティビティ」と「グランピング」を同時に楽しめる。

ロータスベルテント

 宿泊施設は、グランピング専用に作られた快適なドームテントと玉ねぎのような形をしたロータスベルテント、ツリーハウス型ロッジの3種類をそろえる。「動物の飼育体験」や「キリンと朝食」といった動物園併設の施設ならではの触れ合いコンテンツも用意する。

グランピングとは

 グランピングとはグラマラス(glamorous)+キャンピング(camping)の略で、自分たちでテントを張らなくても気軽に豪華に楽しむことができる新たなスタイルのキャンプだ。設備はホテル並みに充実しており、キャンプ初心者や女性同士でも気軽に楽しめる。

プロジェクト概要

用途:簡易宿泊所

規模構造:ドームテント3基、ロータスベルテント2基、ツリーハウス型ロッジ1棟

事業主:バンブーフォレスト

企画:コプラス

運営:ケイト

施設名:THE BAMBOO FOREST

開業:2020年春

所在地:千葉県市原市山小川790

アクセス:館山自動車道市原鶴舞I.C.から国道297号を勝浦・大多喜方面へ25㌔

駐車場:あり(午後3時~、無料)

宿泊時間:午後3時~午前11時

部屋料金(休日価格):

ドームテント1棟 4万5千円

ロータスベルテント1棟 4万2千円

ツリーハウス1棟 4万2千円

食事・アクティビティ費用:

大人1人 1万円

子供(5歳~小学生)1人 5千円

幼児(2歳~4歳)1人 3千円

乳児(0~1歳)無料

京都市、プラゴミ削減へ 市内1千カ所に給水機設置 WS社と協定

2020年2月3日(月) 配信

門川市長(右)と本多社長

 京都市(門川大作市長)は1月16日、水道直結式ウォーターサーバーのレンタル事業を行う「ウォータースタンド」(本多均社長、埼玉県さいたま市)と「マイボトル等で利用できる給水スポットの拡大に関する連携協定」を締結した。今後3年間で、京都市内の市営・民間施設や神社仏閣など約1千カ所に同社の水道直結式ウォーターサーバーを設置。マイボトルなどで給水できる環境を整備し、ペットボトルなどのプラスチックごみ削減を推進していく。

 同社は、これまでに、さいたま市(埼玉県)、葉山町(神奈川県)、所沢市(埼玉県)の3市町と同様の協定を締結しているが、関西圏の自治体では京都市が初となる。

 京都市に設置する給水機は、水の入ったボトルをサーバーにセットして使う従来型の水を“買う”方式のものではなく、サーバー内に水道水を引き込み、内蔵する高機能な浄水フィルターで高品質な水を“つくる”「サーバー型浄水器」と呼ばれるもの。環境負荷が低く、水道料金だけで使用できるのが特徴。

 同日に京都市役所で行われた締結式で、門川市長は「ペットボトルの水を飲むということが時代に合わないというライフスタイルを京都市から発信していく。環境と家計にやさしい京都市の水道水を飲んでいただくことで、ペットボトルの消費量を減らしていきたい」とコメントした。

 本多社長は「給水スポットの整備は、世界的に広がりを見せている。世界中から大勢の観光客が訪れる京都市に設置することで、グリーントラベルを推進していきたい」と意気込みを述べた。

「観光革命」地球規模の構造的変化(219) アイヌ民族とウポポイ

2020年2月2日(日) 配信

建設が進むウポポイ「国立アイヌ民族博物館」(2019年9月)

 麻生太郎副総理兼財務相が地元の福岡県直方市で開催した国政報告会で「2千年の長きにわたって、1つの民族、1つの王朝が続いている国はここしかない」と発言して物議を醸している。麻生氏は総務相時代の2005年にも「日本は1民族、1言語、1文化」と述べた過去がある。単一民族発言は、1986年の中曽根康弘首相や、2008年の中山成彬国土交通相などが行っており、自民党政権下で繰り返されてきた実績がある。

 言うまでもなく、昨年4月に成立したアイヌ施策推進法はアイヌ民族を法律で初めて「先住民族」として明記している。そういう意味では安倍政権の要職である副総理の麻生氏が、アイヌ民族の存在を無視する発言を行うのは言語道断であり、安倍首相の任命責任が問われる事態だ。

 政府は今年4月に北海道白老町ポロト湖畔にアイヌ文化復興・創造拠点として「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を開設予定である。愛称の「ウポポイ」はアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味している。

 ウポポイでは、アイヌ民族の歴史や文化を展示する「国立アイヌ民族博物館」、多様な体験プログラムを通してアイヌ文化を五感で楽しめるフィールドミュージアムとしての「国立民族共生公園」、アイヌの人々による尊厳ある慰霊を実現するための「慰霊施設」などが整備される。ウポポイは札幌から約1時間、新千歳空港から約40分の好アクセスであるために、政府はウポポイへの年間来場者数100万人達成を目指している。

 先住民族観光の未来にとって100万人入場を目指すウポポイは重要であるが、十勝管内の浦幌町アイヌ協会が国と道を相手にした訴訟も重要だ。現在、水産資源保護法などでサケの捕獲は厳しく規制されている。

 ところが浦幌町アイヌ協会のメンバーは昨年、アイヌ民族の伝統的儀式のためにサケを捕獲したが、規制違反で問題になった。そのため先住権に基づいて規制の適用がなされないことを確認する訴訟が行なわれているわけだ。

 政府はウポポイ事業の成功を目指して、巨額の国費を投入しており、先住民族観光が大きく進展する可能性が高い。この機会に日本の先住民族としてのアイヌの人々の歴史や文化が正しく理解されることを祈っている。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

〈観光最前線〉個人的に近くなった「松山」

2020年2月1日(土) 配信

松山道後秋祭り「鉢合わせ」

 関西支社にいたころ、営業で四国・松山に出向いた際、電話での言葉遣いについて、先様からお叱りを受けた。緑色の公衆電話を前に30分、いやもっと長かったか。言葉の怖さをつくづく感じた。

 以来松山は、心理的距離のある地だったが、天童荒太の近著「巡礼の家」を読んで、それがぐっと縮まった。

 本の舞台は道後温泉のへんろ宿。行く場所も帰る場所も失った少女が、宿の女将から声を掛けられる。「あなたには、帰る場所がありますか」――と。地元の人との交流を通じて、少女が自らの生き方を見つける物語だ。

 著者が松山市出身とあり、風景や食の描写にも興味をそそられた。とくにクライマックスで描かれる秋祭りの「鉢合(はちあ)わせ」は圧巻。本を手にぜひ訪れてみたいと思った。

【鈴木 克範】