「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(178)」文化資源を活用した地域づくり(福井県小浜市)

2019年11月25日(月) 配信

鯖街道の「まち」の拠点、芝居小屋「旭座」

 文化財の保全と活用は古くて新しい、しかも難しい問題である。だが、2016年3月に政府が示した「明日の日本を支える観光ビジョン」は、「保存優先から、地域文化財を一体的に活用する取組への支援に転換する」として、文化財活用に大きく舵を切った。日本遺産や日本博などの取り組みは、まさにその象徴である。

 「観光ビジョン実現プログラム2019」では、インバウンド客4千万人を見据えて、国立博物館・美術館の夜間開館、寺泊や城泊、スノーリゾートの再生など、地域の新たな観光コンテンツ開発に取り組んでいくことなどが示されている。

 他方、文化庁でも、18年の文化財保護法改正(今年4月施行)によって、都道府県による文化財保存活用大綱の策定、市町村の「文化財保存活用地域計画」の策定を支援する制度を創設した。この背景には、過疎化・少子高齢化などの中で、各地の貴重な文化財の滅失・散逸などが深刻な事態になっていることがある。同時に、有形・無形の文化財をまちづくりに生かし、文化財継承の担い手を確保し、地域社会総がかりで取り組める体制づくりを整備することで、地域文化財の計画的な保存・活用の促進、地方文化財保護行政の推進力強化をはかることが狙いである。

 これは、文化財行政を“見える化”し、市町村における文化財の保存・活用の総合的なアクションプランを示すことでもある。

漁村集落、田烏(たがらす)でのへしこ、なれずしの仕込み

 そんななか、全国に先駆けて、文化財保存活用地域計画の策定に取り組む福井県小浜市を訪ねた。小浜市は隣の若狭町とともに、11年に「小浜市・若狭町歴史文化基本構想」を策定した。「御食国若狭の継承、そして発展―若狭の文化・食にあり―」のタイトルに見られるように、かつての「御食国」をテーマに食を核とした基本構想を描いた。今回の地域計画は、この構想のいわばアクションプランでもある。すでに3回の地域計画策定協議会を開き、来年2月に最終取りまとめを行って文化庁の認定を取り付ける予定である。

 計画構想では、地理・テーマなどに基づく5つの関連文化財群ごとの保存活用区域を指定し、約10年間にわたる主要取組目標・事業を指定することになっている。その1つ、「京に繋がる鯖街道」のテーマは、15年に日本遺産第1号に認定された。鯖街道の海・町・道・山の拠点整備や、小京都の有名料理人の招聘、DMO「おばま観光局」との連携による京都からの誘客(御食国アカデミー)、養殖鯖(よっぱらいサバ)の新開発、へしこ、なれずしなどの鯖ブランドの発信など、すでに多くの成果を挙げている。

 観光において地域の歴史・文化資源は大切な素材であり、地域の歴史文化こそが観光のブランドでもある。観光業界においても、こうした地域の歴史文化を深く学び、日本の真のブランドの理解と発信をお願いしたい。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

1月に3都市でセミナー、おもてなし経営研究所、東京、福岡、仙台で

2019年11月25日(月) 配信

2020年 第16回 おもてなしセミナー開催

 おもてなし経営研究所(所長=西川丈次観光ビジネスコンサルタンツ社長、大阪市淀川区)は来年1月、観光関係者などを対象にした第16回「おもてなしセミナー」を、東京、福岡、仙台の3都市で開く。

 講師を務める西川氏は、各地での体験を基にしたホスピタリティ実践論「もてなし上手」を旬刊旅行新聞に連載している。セミナーでは、西川氏が実体験した感動サービスの事例を基に、顧客の立場から内容を「翻訳」し、要点を伝える。

 プログラムではセミナーに加えて、参加者同士の歓談や実体験の発表、懇親会も用意している。

 開催日は東京が1月16日、福岡が1月21日、仙台が1月23日。各会場ともセミナーは午後2―4時半、懇親会(自由参加)は午後5時半から。参加費は一般1万3200円(税込)、過去同セミナーに参加したことのある人は5500円(同)。懇親会は6千円(同)。参加特典として日々の気づきを記録できる「おもてなしノート」と、感謝を伝えるための「Thank you Card」をプレゼントする。

 問い合わせ=☎06(6885)6335。

【第16回 おもてなしセミナーのご案内(1/16:東京 1/21:福岡 1/23:仙台)】
https://www.omotenashi-nishikawa.com/%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%96%E5%9B%9E-%E3%81%8A%E3%82%82%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%81%97%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85-1-16-%E6%9D%B1%E4%BA%AC-1-21-%E7%A6%8F%E5%B2%A1-1-23-%E4%BB%99%E5%8F%B0/
~「真のおもてなし」を考える仲間の集い~

旅館ホテル数4万9502軒に 沖縄建設ラッシュ 4割増  厚労省18年度衛生行政報告

2019年11月23日(土) 配信

旅館ホテル件数の表

 厚生労働省がこのほど発表した「衛生行政報告」によると、2018年度末現在の「旅館・ホテル」軒数は4万9502軒だった。都道府県ベースではリゾート地として海外からも注目される沖縄県が、前年度比39・4%増と建設ラッシュが続く。簡易宿所は3万5452軒で、3001軒(同9・2%増)増えた。人気観光地での増加が全体を底上げした。【平綿 裕一】

 なお、改正旅館業法が18年6月に施行され、旅館とホテルの営業種別が1つになった。今回からは「旅館・ホテル営業」として数がまとめられている。

 全国の「旅館・ホテル営業」の施設数は、4万9502軒(同1・0%増)で、客室数が164万6065室(同3・1%増)となった。東日本エリアの都道県が、施設数と客室数のそれぞれで上位を占めている。簡宿は3万5452軒(同9・2%増)だった。

 簡宿は増加傾向にあり、ここ3年で合計8千軒以上増えている。とくに今年度は3千軒以上伸びた。厚労省の衛生行政報告担当者は、「北海道や京都、沖縄などの人気観光地に簡易宿所が多い。これらが全体数の増加に貢献しているのではないか」とみる。

 旅館・ホテルの施設数を都道府県ベースでみると、全国1位は静岡県(2928軒)。2位は北海道(2868軒)、3位は長野県(2669軒)となった。

 伸び率は沖縄県が約4割増と、他の地域を圧倒して全国1位となった。沖縄県の調査では2002年から17年連続で、宿泊施設の軒数が過去最高を更新し続けている。

 県の担当者によると、「好調な観光客数に伴い、那覇市を中心に宿泊施設は増えている。外資系の事業者などからも注目され、近年リゾートホテルの建設も多い」と話した。

 客室数は、都道府県別で東京都が17万5273室(同3・6%増)で全国最多となった。次いで北海道の11万1049室(同1・9%増)、大阪府の9万9983室(同11・6%増)となった。

 客室数の伸び率は、1位は京都府(同12・7%増)で、大阪府(同11・6%増)、愛知県(同10・3%増)の順だった。

 簡易宿所の都道府県ベースでは、沖縄県が3859軒で1位。2位は長野県で3725軒、3位は京都府の3498軒と続く。

 伸び率では、大阪府が同30・7%増で1位、岡山県が同28・5%増で2位。外国人旅行者にも人気な関西地域が上位に入っている。

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(11月号)」

2019年11月24日(日) 配信

http://zoomjapon.info

〈巻頭言〉

クロード編集長

 1年前のこの時期、本誌では日本酒特集を組みました。その後、フランスにおける日常的な日本酒の消費量が劇的に増えたわけではありませんが、フランスで日本酒普及に携わる人たちや、日本の地方自治体によるプロモーション活動も功を奏し、質の良い商品が身近に手に入る環境が整いつつあり、美食家たちの「sake」に対するイメージや認識が少しずつ変わってきたのは確かです。日本における輸入ワインの普及と比較すると、日本酒の輸出の歴史は始まったばかりと言えます。さて、今号では、現在第7次ブームが起きていると言われる、日本国内でのワインの動向に着目。全ページを通して日本のワインを特集しました。フランスでは、ワインの消費量が年々減少しているものの、量より質を求める傾向にあるため、経済的には上向きです。21世紀の日本人がワインに求めるものは?

(編集長 クロード・ルブラン)

特集 「ワイン特集」

田崎氏によると日本ワインは特色があるものが多い

 日本におけるワインの歴史は浅い。国内で初めてワインが飲まれたのは、開国後、明治時代だ。しかし、外国から届いたこの酸味の強い赤い酒は、日本人の口に合わなかった。その後も長い間日本人のワイン作りへの意識は低く、国内では、ブドウジュースにアルコールと砂糖を加えり、食用の傷物ぶどうを原料にしたり、輸入物の安いワインをブレンドしたりしながらワインの生産を続けていた。近年、ワイン用のぶどうを栽培するワイナリーが増え、2015年からは国産ぶどうのみを原料にしたものを「日本ワイン」と呼び、輸入ぶどうを用いて国内で生産される「国産ワイン」と区別されるようになった。日本ワインの品質は年々世界的にも知られるようになってきている。■自らもワイナリーを経営するエッセイスト・玉村豊男氏が語る日本におけるワインの移り変わり。■世界のソムリエ・田崎真也氏にインタビュー。■フランスでワインを学び、岡山で自然ワインを造る大岡弘武氏を取材。■アマチュア向けのワイン試飲会で参加者に話を聞いた。■漫画、映画……。ポップカルチャーに見るワイン。■東京のワインバーで聞いたおすすめ日本ワイン。■日本ワインの中心地、甲州をたずねる。

〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉今、おにぎりが熱い

編集室のある施設内で食べられる定食のおにぎりも人気

 本誌の2017年6月号で取り上げたフランスでのおにぎりブームの予兆から2年強、とうとう本格的なブームの到来です。現在のブームを遡ると、印象に残っているのは2013年に日本人女性2人がパリ10区にオープンした「ムスビ」。まるい色鮮やかなお結びを中心としたおしゃれなお弁当が話題になりました。2015年、パリで本格的なおにぎり販売を打ち出したのは、当時から人気のうどん店、国虎屋を営む野本将文さん。パリ日本文化会館内にも、イクラや鮭が贅沢に入ったボリュームあるおにぎりの専門店を開店しました。同じころ、市内11区に登場した「からあげや」のシンプルなおにぎりは消費者の底辺を広げ、2017年には日本のブランド「おむすび権兵衛」がパリ市内に出店、ブームに勢いがつきました。以来、手軽に作れ、グルテンフリー、ベジタリアンという近頃の若者の食の傾向にも問題なく応えることができ、コストパフォーマンスの良いこの日本のソウルフードは、フランスの地方都市ばかりでなく、ヨーロッパ内でも確実に存在感を強め、目下、おにぎりを扱う店が続々とオープン。Onigiriという言葉が辞書に載る日も遠くないかもしれません。

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

【広島県竹原市】12月、竹原港から「うさぎ島」へ定期船就航  新航路生かし市内周遊を 

2019年11月23日(土)配信

もふもふ感を求めて多くの人が訪れる(大久野島)

 瀬戸内海国立公園に浮かぶ大小さまざまな島のなかでも、若者や外国人観光客から特に人気を集めているのが広島県竹原市の大久野(おおくの)島だ。通称「うさぎ島」と呼ばれる周囲4・3㌔の小島には、約900羽もの野生のウサギが生息し、癒しや交流サイト(SNS)の「映え」を求める観光客を引き付ける。

 竹原市内からのアクセスは忠海(ただのうみ)港からフェリーで15分ほど。さらに12月からは竹原港発の定期船が就航する。市は新しい航路の誕生を契機に、安芸の小京都と呼ばれるたけはら町並み保存地区や湯坂温泉などのPRにも力を入れ、観光客の周遊を促している。

竹原港から定期船就航

 呉湾艦船巡りやチャーター船を運航するバンカー・サプライは12月14日(土)、大久野島-竹原港間に定期船を就航させる。土・日・祝日、GWは基本1日8往復、平日(火・水は運休、但し、水が祝日の場合は運航し、翌日運休)は同6往復する。所要時間は片道約25分。

 往復利用が基本で、運賃は大人1600円、子供800円。(片道利用の場合は乗船窓口で申し出る。運賃は往復料金の半額)。航路開設に合わせて、新装した50人乗りの船「くれないⅢ」が就航する。

 竹原港へのアクセスは、JR呉線・竹原駅から、たけはら町並み保存地区近くの「道の駅たけはら」を経由し、バスで約10分。

「うさぎの想い出」航路就航のお知らせ
https://www.takeharakankou.jp/news/212
竹原市観光協会が運営する公式観光サイト「ひろしま竹原観光ナビ」。最新のトピックス&お知らせはこちらをチェック!「うさぎの想い出」航路就航のお知らせの情報です。

町並み保存区に分散型ホテル開業

「幸せのハート」型の格子

 国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されている「たけはら町並み保存地区」は、今も人が暮らす生活の場だ。掛け声勇ましい店舗は皆無だが、蔵をリノベーションしたカフェなど、空間を楽しめる個店が町中に溶け込んでいる。民家の門前には花が飾られ、まるで観光客を迎えるかのよう。この空気感こそ、竹原流の「もてなし」か。

 当地でガイド歴30年という鈴川律江さん(たけはら観光ガイドの会)は、「工夫された格子や屋根かわらに江戸の息遣いが感じられます」と、その魅力を紹介する。今年6月にはアイドルグループの嵐が出演するコマーシャルで、「幸せのハート」型の格子が紹介され、注目を集めた。

NIPPONIA HOTEL 竹原製塩町の夕食(イメージ)

 8月には、築100年以上の建物を改装した「NIPPONIA HOTEL 竹原製塩町」も開業した。バリューマネジメント(他力野淳社長、大阪市)が運営する分散型ホテルで、町中にフロント・レストラン棟と宿泊棟2棟が点在している。

 旧銀行を改装した客室では、金庫をリビングにするなど、往時のようすを想像するのも楽しい。夕食は製塩で栄えた文化を題材に、フレンチの料理人が和のテイストを取り入れ腕を振るう。ワイングラスで楽しむ地酒とのペアリングもおすすめだ。客室は全10室、レストランは50席。

復活した塩づくり体験

釜で攪拌しながら煮詰めていく

 江戸時代に始まった竹原の塩づくりは、需給と価格の安定を目的とした塩の専売制により、1960(昭和35)年、310年の歴史に幕を下ろした。それを2005年に復活させたのが、NPOネットワーク竹原(佐渡泰理事長)だ。

 かつて塩づくりに携わった人たちが高齢になるなか、「技術を教わるのは今しかない」(佐渡理事長)と声を上げ、「たけはらの塩再生プロジェクト」を立ち上げた。市内吉名(よしな)町で製塩を行うなか、体験学習も受け入れている。

 製法は、竹の枝を組んだ「枝条架(しじょうか)」に海水をかけ、流れ落ちる間に水分を飛ばすことを繰り返し、海水の塩分を濃縮。濃度が18-20%になると灰汁(あく)とりや攪拌(かくはん)を行いながら煮詰めていく。

 最後に「遠心分離機」でにがりを取り出すと完成だ。体験は通常、攪拌作業など、工程最後の2時間程度で行い、できた塩は小袋に入れて持ち帰ることができる。10人程度まで対応可。料金は1人1千円(税込)。

黒滝山からの絶景を

瀬戸内の穏やかな景色が眼下に

 標高266㍍の黒滝山(くろたきさん)は、瀬戸内を一望できる「絶景スポット」だ。JR呉線・忠海駅から中腹の登山口(駐車スペース小型数台有)まで徒歩20分、さらに山頂まで30分の道のりだ。

 途中、陸軍大将・乃木希典が周囲の風光に歓声を放ったという「腰掛岩」や、日本画家・故平山郁夫さんが登り、スケッチを行った場所も。登山道や山頂からは、大久野島や芸予諸島、遠く四国連山まで一望できる。

 山は忠海町のシンボルで、地元の誰もが登るという。「黒滝山を愛する会」という組織もあり、登山道の整備や案内を行っている。

「トラベルスクエア」ラグビーW杯客が観光地を変える

2019年11月23日(土) 配信

地方分散開催のラグビーワールドカップによって日本各地に多くの外国人が訪れた(写真はイメージ)

 ラグビー・ワールドカップの試合が多く開催された大分方面から伝わってきた話題だ。
 
 アジアでのラグビー国際大会の開催を疑問視する声もあったけれど、結果的には多くの外国人が押し寄せて、日韓問題などで韓国からのインバウンド客数減の影響が懸念されていたけれど、なんとか帳尻があった。
 
 いや、入国者数そのものよりも、欧州やオセアニア、米国などからやってきた人たちが、開催地の雰囲気によく溶け込んでくれたようすで、それを率直に喜びたい。
 
 とくに多くの温泉地を背後に持つ大分では、温泉や地元グルメにはまる人が多かったようだ。時に騒ぎすぎの例もあるけれど、彼らの開けっぴろげで、楽しく地元民と交流してくれたこと自体が、観光地の夜の姿を変えてくれたという。
 
 なにしろ、ラグビーファンは左手を常に空けておかないという不文律がある。左手はジョッキを持つためのもの。そして右手は敵味方を問わず、握手するためのものということだから、別府でも由布院でも、そういうビールで乾杯、握手の連続で実にフレンドリーな雰囲気になったという。
 
 ふだんのアジア系団体の皆さんは、夜は割とひきこもりがちで、地元民との交流も少ないが、今度の客層は違う。「観光地の雰囲気って、最後はお客さんが作るんだなあ」と、わざわざ携帯電話で思いを伝えてくれた経営者がいたほどだ。
 
 とてもポジティブでいいことだ。ワールドカップは地方分散開催で、それが良かった。2020年の五輪のマラソン・競歩が札幌開催になったのには釈然としない面もあるけれど、地方振興、これで納得。
 
 これをきっかけに、インバウンド何百万人と数を競うのではなく、やはり質を求めていくことをメインロードにしなければいけないと思う。
 
 ただ、「個人客狙い=高級客狙い」という考えだけではいけないと思う。たしかにラグジャリーマーケティングもありだが、最初からそれを狙うと鼻つく感じもある。
 
 品質を高めていったら、結果的に「ややお値段は高いけれど、とても有意義なお金だった」と言われるような作戦をとろうではないか。
 
 今年、巷で聞いた言葉で一番嫌だったのは「上級国民」という言葉だった。とある自動車事故を起こした老人が元官僚のお偉いさんで、上級国民に属するから起訴もされず、人名もさらされなかった、という怨嗟の念を表現したものだ。あってはならない言葉だが、一方で、そういう排他的なエリート集団ができつつあるような気もする。
 
 上級国民ではなく、高質国民、好質市民を目指したいと思うし、宿もそういう国民に支えられ、品のいいものになってもらいたいと痛感する。

 
 

コラムニスト紹介

松坂健氏

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

「女将のこえ228」鴇田玲子さん 亀山温泉ホテル(千葉県亀山温泉)

11月22日(金) 配信#女将のこえ

亀山温泉ホテル 女将の鴇田玲子さん

代替わり2年目の想い

 記憶に新しい、9月と10月に発生した大型台風は、千葉中央部に位置する温暖な君津市も通過した。亀山温泉ホテルは停電や断水、雨漏りなどの被害に遭い、一時的に閉じていたが、現在は元気に営業を再開している。
 
 洪水を阻止したのは亀山ダムだ。同館の創業者で旭日双光章受章の鴇田五兵衛氏が建設に尽力した。
 
 亀山温泉ホテルの看板であるチョコレート色の自家源泉は、ダム建設で高台移転したあとに再採掘した同館の宝だ。取材後、とろとろの珈琲に浸かっているかのような黒湯を楽しませてもらった。
 
 女将の玲子さんは群馬の出身。歴史に興味があり、京都の大学に入った時点で、今に続く女将への道が静かに始まっていた。
 
 「私は人と関わるのが苦手で、このままではよくないと思い、東山で仲居のアルバイトを始めたんです。すると性に合い、群馬に帰ってから『福一』さんに新卒採用してもらいました」。
 ここで、亀山温泉ホテルの3代目で、修業に来ていた英将さんと出会う。「最初は軽い人だなと思いましたが(笑)、『本気だから』と言ってくれて。一緒に働くうちに、頼りになる人間性に触れ、この人と人生を歩みたいと思いました」。
 
 2人で亀山温泉に戻り、約10年が経った昨夏、代替わりをした。英将さんが2代目の父に直談判したのだ。
 
 最初の改革は事務所の工事である。社長室を潰して開放的な空間にしたことで、場も人も明るくなった。表をよくするのは裏方だから、賢明な改善の一手だと思う。また、フロントと経理を柱に3人の正社員を採用し、今春からは30代の新調理長を直接採用。食材にこだわった料理でもてなしたいと、話し合いにも熱が入る。「料理長は、いずれは狩猟免許を取ってジビエも出したいと言っていて、将来が楽しみです」と玲子さん。とはいえ、「あまり急に変えるとスタッフがびっくりしますから、徐々にですね」と、働く人への気配りも欠かさない。
 
 責任を取る側になった今、外の仕事が多い英将さんと連携しやすいよう、アプリで互いのスケジュールを共有するようにしたそうだ。「私は旅館がうまく回るよう努めたい」。 
 
 前に2つの旅館で働いた経験から、スタッフの目線を理解している玲子さん。前述の台風被害では、顧客の優しさに救われ、スタッフの努力に助けられた。双方の幸せのためにも、「スタッフにとって開けた経営をしたい」とする。「楽しそうに働いている姿が一番うれしく、一番大切なことですから」。
 
(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)
 
▽住所:千葉県君津市豊田旧菅間田65▽電話:0439-39-2121▽客室数:14室、1人利用(日により)可▽創業:1950年▽料金:1泊2食付き11,000円~(税別)▽泉質:ナトリウム―塩化物・炭酸水素塩泉▽自家源泉100%掛け流し。地下深く堆積した植物を微生物が分解した腐植質によりチョコレート色の湯に。新年、貸し切り風呂が完成。
 

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

ブッキング、ペットツーリズム調査 4割がペット同伴ができるか否かで宿選び

2019年11月22日(金) 配信

ペットツーリズム調査

 ブッキング・ドットコム・ジャパン(アダム・ブラウンステイン代表)は11月22日、同日が「ペットたちに感謝する日」とされていることから、2020年の旅行のトレンド予測に基づいたペットツーリズムに関する調査結果を発表した。ペットの飼い主の42%(日本:31%)は、「2020年はペットを連れていけるかどうかで旅行先を選ぶだろう」と答えた。

 同社の調査によると、世界的にペットの飼い主の72%(日本:67%)がペットを家族の一員として見なしており、51%(日本:38%)が「ペットを旅先に連れて行けるなら旅行をより満喫できる」と答えた。

ペットは家族の一員
課題も

 「2020年には世界中のペットの飼い主が、ペットを旅の優先事項として意識し、大切な家族の一員として共に旅を楽しむようになることが予想される」(同社)とする。

 同社によると、飼い主がペットと一緒に楽しめる旅に望むものトップ5は①、ペットが走り回って遊べるスペース39%(日本:34%)②獣医によるサポート31%(日本:22%)③フレンドリーで温かい雰囲気の環境 26%(日本:22%)④ペットも楽しめるアクティビティ21%(日本:24%)⑤ペットシッターや散歩サービス19%(日本:16%)――となった。

 一方、ペットツーリズム需要に応えるには壁がある。飼い主の50%(日本:35%)が、「ペットとの海外旅行に関して、明確で質の高い情報が不足している」と答えた。

 飼い主たちが愛犬らと泊まれる施設情報を簡単に手に入るよう、受入側の態勢改善が必要になってきそうだ。

 なお、同社では、ペットと一緒に泊まれる宿泊施設も選択できる。施設・設備の欄から選ぶと、「犬の足跡」のマークが表示される。

 例えば、東京ではシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルやザ・ペニンシュラ東京、 ホテル椿山荘東京などの5つ星ホテルもペット同伴で泊まることができる。

ペットと宿泊可能なホテル(一例)

シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル ※画像はイメージ

 シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル の「ドッグフレンドリー ルーム」では、食事や買い物などの際には、 愛犬をその間預かってくれる施設もある。 ガレリアカフェのテラスでは、愛犬と一緒に食事を楽しむことができるほか、ドッグヨガなども用意している。(犬限定)

ザ・ペニンシュラ東京※画像はイメージ

 ザ・ペニンシュラ東京のペット同伴可能な部屋には、ザ・ペニンシュラのロゴが入ったペットボウルとペットバスケットを用意。 東京の中心部で愛犬と旅行・観光が楽しめる。(犬限定)

ホテル椿山荘東京※画像はイメージ

 ホテル椿山荘東京には、部屋だけではなく、アメニティ、空中庭園内の「プライベート ドッグパーク」を用意した。ペットシッターを依頼することもできる。

 ※同社による2020年における旅行のトレンド予想についての詳細は下記から

 ※調査は過去12ヶ月の間に旅行に出かけた、または今後12カ月間以内に出かける予定のある成人を対象に、同社が独自に行った。回答者は計2万2000人。(オーストラリア、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、日本、中国、ブラジル、インド、米国、英国、ロシア、インドネシア、コロンビア、韓国からそれぞれ1000人。ニュージーランド、タイ、アルゼンチン、ベルギー、カナダ、デンマーク、香港、クロアチア、台湾、メキシコ、オランダ、スウェーデン、シンガポール、イスラエルからそれぞれ500人)。 回答者は、2019年8月9日から8月28日までにオンラインで答えた

大阪で「愛知・名古屋の観光物産展」 12月14・15日の2日間

2019年11月22日(金)配信

開催場所はせんちゅうパル広場(大阪府豊中市)

 愛知県は2019年12月14日(土)、15日(日)の2日間、大阪府豊中市のせんちゅうパル南広場で、「でら旨いもん県!天下一みどころ市!愛知・名古屋の観光物産展リターンズ」を開く。名古屋市などと連携して愛知県と名古屋市の魅力をPRし、関西圏からの誘客促進をはかる。

 なごやめしを始めとする、さまざまな愛知県の名産品を販売するほか、「徳川家康と服部半蔵忍者隊Ⓡ」と「名古屋おもてなし武将隊Ⓡ」の演武や、ご当地キャラクターのステージショーなどを実施する。

開催概要

当日は武将隊の演武やご当地キャラクターのステージショーを行う

開催日時:

 2019年12月14日(土)午前10時~午後6時まで

 2019年12月15日(日)午前10時~午後5時まで

会場:せんちゅうパル 南広場(大阪府豊中市新千里東町1-3)

主な内容:

◇愛知・名古屋の名産品の販売

◇手裏剣体験

◇大型ブロックコーナー

◇「名古屋おもてなし武将隊Ⓡ」の演武(14日)

◇「徳川家康と服部半蔵忍者隊Ⓡ」(15日)

◇ご当地キャラクター(ひでっちⓇ、はち丸、いなりん、まーちゃ)の出演

など

出展者及び主な販売商品(予定):

出展者と主な販売商品リスト(予定)

主催:愛知県、名古屋市、一般社団法人愛知県観光協会、公益財団法人名古屋観光コンベンションビューロー​

問い合わせ先:

愛知・名古屋の観光物産展事務局(株式会社シンク内)

 Tel:080-4934-6113(平日午前10時~午後5時まで)

関連サイト

「でら旨いもん県!天下一見どころ市!愛知・名古屋の観光物産展リターンズ」を大阪...
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kanko/aichinagoya1214.html
「でら旨いもん県!天下一みどころ市!愛知・名古屋の観光物産展リターンズ」を大阪で開催します!

KNT-CT、「着るロボット」で歩行支援 ハイキング体験ツアー実施へ

2019年11月22日(金) 配信

「HIMICO」を使用したハイキングのイメージ

 KNT-CT(米田昭正社長、東京都新宿区)は12月1日(日)、ロボットベンチャー企業のATOUN(藤本弘道社長、奈良県奈良市)が提供する歩行支援用の「着るロボット」を使用したハイキング体験ツアーを行う。2社は共同で「着るロボット」を活用した旅行サービスの事業化を目指す。

 「着るロボット」の体験ツアーは、クラブツーリズム(小山佳延社長、東京都新宿区)が企画・実施する京都の紅葉を見学するハイキングコースで行う。参加者は坂道や階段が多い社寺、国宝拝観の際に着用することで、歩行のサポートを体験できる。

 今回使用する「着るロボット」の「HIMICO」は、ロボット工学の技術により、坂道の歩行で最大19.0%、階段の上りで17.8%の支援効果があるとされる。重量は約2.5㌔で、着脱時間は約30秒となっている。より快適な着心地が得られるよう、小型軽量化や歩く姿勢など個人差を意識したアシスト制御手法の開発も進められている。

 KNT-CTは、これまでユニバーサルツーリズムを展開してきた。新たにAUTONの「着るロボット」を活用することで、歩くことが不安な人にも旅の機会を提供できるよう取り組んでいく。

「着るロボット」体験ツアー実施概要

コース名:「歩行支援用パワードウェア着用 紅葉の嵐山・嵯峨野と京都三尾じっくりハイキング」

出発日:12月1日(日)(1日限定)

旅行代金(1人):9,980円

募集人員:10人限定

コース番号:B2009-981

出発地:JR大阪駅、JR新大阪駅

旅行主催:クラブツーリズム関西テーマ旅行センター

※申込前にWebで詳細を要確認。

※行程内にサポート要員を配置する。

歩行支援用パワードウェア「HIMICO」仕様

想定装着者:身長155cm~190cm、腰回り100cm以下(服を着た状態での寸法)

重量:2.5㌔(仕様および外観は、予告なく変更されることがある)

稼働時間:1時間

着脱時間:30秒

使用機器「HIMICO」 詳細