既存施設の活用を、訪日客4千万人受入れへ、日本商工会議所国交省に意見書

須田寛氏
須田寛氏

 政府が取りまとめている「観光立国に向けたアクション・プログラム」に対し、日本商工会議所(三村明夫会頭、515会議所)は4月21日に常議員会で観光基盤の整備などに関する具体的な取り組みなどの意見をまとめ、同日、石井啓一国土交通大臣、田村明比古観光庁長官に提出。須田寛観光委員会共同委員長は訪日外国人旅行者4千万人達成には宿泊施設と観光資源の拡充が不可欠であり、とくに「既存の施設を活用することがすべての土台である」と強調した。
【後藤 文昭】

 今回の意見書は大きく分けると4つの柱で構成されている。このなかで重点となるのは「宿泊施設と、観光施設の拡充」だ。

 宿泊施設の拡充に関しては、「現状旅館の全国平均稼働率は37・8%とは低く、旅館にもっと外国人や日本人が泊まれば、最低限度の増強で済む可能性がある」と分析。しかしそこには商慣習の違いや旅館とホテルの適用法律の違い、旅館のコストの高止まりによる価格上昇などの障害があり、客が利用を敬遠している現状がある。このような観点から簡単には旅館の活用ができないが、旅館やホテルなどを一律に規制できる法整備の実行と経営改革、宿泊地の分散や休暇の分散化、民泊の制度化を国にも協力してもらい改善していけば、須田氏は「最低限度の補強で4千万人を受け入れることは可能」とした。

 「観光施設の拡充」では、新たな施設をつくるのではなく、今ある施設を活用することが重要だと強調。(1)街並みの整備や観光資源化、道路整備などの空間活用(2)若者層など観光に接する層の拡大(ユニバーサルツーリズム)(3)テーマ別観光(道や駅など資源の見方を変える)――など3つを土台にし、足りない部分を開発で補うことが重要だと主張した。そのうえで、「政府が文化財や国有財産の活用を明文化したのは、非常に大きな意味がある」と評価し、地方自治体の働きにも期待した。

 また「観光拠点都市」「観光特区」のような都市を全国で数カ所指定してほしいと、改めて要請。これは、政府が1月29日に「観光立国ショーケース」として、北海道釧路市、石川県金沢市、長崎県長崎市の3都市を選定したことに関し、名称の変更やこれを全国に広げ、商工会議所のネットワークなども活用して広域観光圏を形成するという構想だ。

 また、今ある観光資源の活用や観光基盤のためには、「現行法の緩和や整備など、国からの支援も重要になる」と述べた。

 以前から提言していた観光に関わる安全対策に関しても、再度要請をした。とくに定住人口より観光人口の方が多い都市の休日の日中を想定し、大震災発生時の訪日外国人を含む観光客の危機管理体制整備を重要視。「帰宅不能者受入体制などの整備が進んでいない状態を非常に危惧している」とし、「誘客したのなら、責任上最低限度命を守ることを念頭に置かなければならない」と受け入れる側の心構えを提示した。

 このほか、出入国手続きの改善にも言及した。

 これらの意見に関して田村長官から「今回の意見書の内容は、相当部分盛り込みたい。法制度に関しても根本から見直しをしていきたい」との回答を得たという。

 須田氏は最後に「観光は文化活動であり経済行動である。必要不可欠な産業だと旅行業に携わる一人ひとりが認識することが必要だ」と強調した。

小田氏、大西氏ら受賞、16年度観光関係大臣表彰(国交省)

25人が表彰された
25人が表彰された

 国土交通省はこのほど、2016年度観光関係功労者国土交通大臣表彰受賞者を発表。旅館業経営者では加賀屋の小田禎彦氏、阿寒グランドホテルの大西雅之氏ら6人、旅館業女将では畠ひで子氏ら2人、ホテル業経営者4人、ホテル業従事者9人、旅行業経営者2人、観光レストラン業経営者1人、観光レストラン業従事者1人の合計25人が受賞した。4月25日には同省内で表彰式を開き、石井啓一大臣は受賞者に地域の振興や功績に敬意を表し、今後の活動に期待を込めた。

 受賞者は次の各氏。

 【旅館業経営者】大西雅之 日本旅館協会理事、阿寒グランドホテル代表取締役社長(北海道)▽戸田邑江 野付戸田観光代表取締役(北海道)▽堺健一郎 月岡ホテル代表取締役会長(山形県)▽小田禎彦 元国際観光旅館連盟中部支部理事、加賀屋代表取締役相談役(石川県)▽箸尾享嗣 日本旅館協会関西支部連合会理事、平城代表取締役(奈良県)▽湯通堂温 いぶすき秀水園代表取締役社長(鹿児島県)【旅館業女将】阿部多加子 亀や監査役〈女将〉(山形県)▽畠ひで子 吉川屋専務取締役〈女将〉(福島県)【ホテル業経営者】清原當博 ホテルオークラ東京代表取締役会長(千葉県)▽東伏見韶俶 日本ホテル協会信越支部理事、ホテルハイジ代表取締役(長野県)▽清水嗣能 全日本シティホテル連盟会長代行、ホテルあけぼの代表取締役社長(福井県)▽小川矩良 ホテルオークラ神戸代表取締役社長兼総支配人(兵庫県)【ホテル業従事者】工藤一幸 北海道ホテル取締役総料理長(北海道)▽卯都木孝 ホテルオークラ東京飲料部副部長(茨城県)▽風間秀夫 プリンスホテル、グランドプリンスホテル高輪営業兼品川プリンスホテル営業(神奈川県)▽佐藤信也 藤田観光ホテル椿山荘東京副総支配人(静岡県)▽田中健一郎 帝国ホテル専務執行役員総料理長(東京都)▽水野勉 ホテルグランドパレス宿泊部接客課参与(東京都)▽岩崎剛 阪急阪神ホテルズホテル阪急インターナショナル宴会部専任部長(京都府)▽多田隈賢二 リーガロイヤルホテル広島取締役総料理長(広島県)▽小﨑實千雄 いわさきホテルズオペレーション指宿いわさきホテル取締役調理長【旅行業経営者】菊間潤吾 日本旅行業協会副会長、ワールド航空サービス代表取締役会長(東京都)▽林田建夫 元エヌオーイー代表取締役会長(千葉県)【観光レストラン業経営者】三保二郎 国際観光日本レストラン協会常務理事、かなわ代表取締役(広島県)【観光レストラン業従事者】梶田賢治 なだ万執行役員西日本調理部長兼中之島なだ万調理長(大阪府)

21社局が連携へ、訪日客に東京の情報発信、「ぐるなび」など

21社局が集合
21社局が集合

 ぐるなび(久保征一郎社長)と東京急行電鉄(野本弘文社長)、東京地下鉄(奥義光社長)は4月13日、東京都内で「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYOグランドオープン記者発表会」を行い、3社が参画企業21社局と共同構築を進めていた訪日外国人向けワンストップガイドサービスが、同日よりサービス開始となったことを報告した。同サービスでは、訪日外国人の主目的である、(1)観光する(2)食べる(3)買う(4)泊まる――の4ジャンルの情報を提供していく。

 同記者発表会には、参画企業の代表者ら21人も出席。冒頭、ぐるなび創業者の滝久雄会長は、同サービスの情報発信者は、東京で事業を営む人たちであるとしたうえで、「2020年に向け訪日客を受け入れるなかで、東京が訪日の中心となり、文化交流の柱になる。このサービスは訪日観光の1つのレガシーになるように展開していきたい」と述べ、21社局が枠を超えて連携し、常に最新の情報を発信していくことを誓った。

 同サービスは、トップページなどは基本的に日本語を含む8カ国語(英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語・マレーシア語・インドネシア語・タイ語)に対応しており、(1)施設ガイドサービス(2)便利機能サービス(3)情報コンテンツ――の3つの機能をもとに、東京中の情報が1つに集約されている。施設ガイドサービスでは、観光・食・ショッピング・宿泊の4ジャンルから、各施設の特徴や概要、連絡先、位置情報を取得し、SNSで共有することが可能。

 また、施設ガイドサービスの最大の特徴として、(1)今日のイベント情報(2)今日の空席/空室情報(3)今日の入荷/販売情報(4)今日のクーポン情報――の4つに分類される「LIVE情報」で、東京の〝今〟を楽しむための情報をリアルタイムで得ることができる。

 便利機能サービスでは、訪日中の訪日外国人のニーズに応えるべく内容を構成。(1)Wi―Fiスポットなどを探すことができる「便利マップ」(2)経路検索やフライト情報などを確認できる「交通案内」(3)訪日中に不測の事態に陥ったときに役立つ「緊急時ページ」――により、訪日外国人が“1人歩き”できるよう21社局を中心に旅のサポートを行っていく。さらに情報コンテンツでは、トレンドや文化、マナーに関する情報を発信。すべてのページが日本語への変換が可能なため、もてなす側の日本人にも役立つ機能になっている。

 来賓で出席した観光庁の田村明比古長官は、3月30日に政府が「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において示した3つの視点について触れ、「世界一快適な滞在環境の実現を目指して、無料Wi―Fi環境の整理や、通信環境の拡大、多言語での情報発信が今後の柱になってくる。このサービスが、日本を訪れるきっかけになってほしい」と期待を込めた。

緊急ダイヤル開設、訪日外国人の会話サポート

10カ国語で無料利用、熊本地震

 4月14日に発生した「2016年熊本地震」の被災地支援のため、福岡県福岡市に本社を置く多言語コールセンターの運営会社・ビーボーン(鬼木敏之社長)は、外国人観光客や外国人住民のための無料の「緊急通訳ダイヤル」を4月17日から開始した。

 被災地となった九州中部エリアは、熊本から黒川、湯布院、別府を結ぶ外国人観光客に人気の九州横断ルートで、旅行や滞在中に被災し緊急時のコミュニケーションで不自由さを味わっている人は多いという。

 緊急通訳ダイヤルは、ホテル・旅館や交通機関、観光地、避難所などで対応するスタッフや自治体、自衛隊関係者が、外国人とのコミュニケーションで困ったときに、専用ダイヤルに連絡するとコールセンター担当者が通訳して、日本人スタッフに伝えるという2地点3者間通訳方式。

 英・中・韓・タイ・ベトナム・インドネシア・ポルトガル・スペイン・フランス・ロシアの10カ国語に、24時間対応する。事前契約や事前登録も必要なく、無料(通話料は利用者負担)で利用できる。無料対応の終了はホームページで掲載する。

 緊急ダイヤルは092(687)5137。

相互協力の協定結ぶ、地域活性化の人材育成を(跡見女子大×群馬・長野原町)

山田徹雄学長(左)と萩原睦男町長
山田徹雄学長(左)と萩原睦男町長

 跡見学園女子大学(山田徹雄学長)と群馬県長野原町(萩原睦男町長)は4月19日、相互協力に関する包括協定を結んだ。地域活性化のための人材育成を目指し、インターンシップでのイベント実施などを計画するほか、教員が長野原町を対象にした学術研究「長野原学」を行い、成果を町に還元する。

 萩原町長は、昨年から考えはじめた地方創生による総合戦略を今年から実行に移すにあたり、「地方を救うことができるのは若者のマンパワーと覚悟、女性の力。そのうえでも今回の協定は非常に意味がある」とし、「かたちだけや単発的なもので終わらせてはいけない。ビジョンをしっかり持ち、長期的に受け継ぐものにしていきたい」と意気込んだ。

 一方、跡見女子大は長野原町に研修所を設けており、文京キャンパスと新座キャンパスに続く「第3のキャンパス」と位置づける。2015年度には観光コミュニティ学部を開設したことから、「観光」と「コミュニティ(地域)」の観点で、地方が直面する過疎化や観光客減少などの課題解決能力を身に付けた人材の育成を目指していく。山田学長は「グローバル化が進むほど、コミュニティの重要性は増してくる」と持論を展開。「本学の教員や学生が長野原町のお役に立てば嬉しい」と話した。

 今後の具体的な取り組みは、学生は現地視察を通して観光企画などを考える一方、教員は地道な地域研究に力を入れ、問題を掘り下げて地域の課題解決を目指していく。

ブックカフェ誕生、本とコーヒーの“大人空間”(二十四の瞳 映画村)

大人の雰囲気漂う書肆海風堂
大人の雰囲気漂う書肆海風堂

 香川県・小豆島の「二十四の瞳映画村」内に4月21日、映画関連の書籍などを集めたブックカフェ「書肆海風堂(しょしうみかぜどう)」がオープンした。

 村内にある「ギャラリー松竹座映画館」の2階(約120平方メートル)を改装。土壁や梁が剥き出しのレトロでありながらスタイリッシュな空間に、不朽の名作「二十四の瞳」関連はもちろん、映画や旅、小豆島、瀬戸内関連の書籍約2千冊を並べる。絶版本などは閲覧のみだが、多くの書籍は販売する。

 1954年公開の映画「二十四の瞳」で大石先生役を演じた昭和の大女優、高峰秀子さんの作家としての一面を紹介する「高峰秀子ギャラリー」も備え、写真パネルのほか直筆生原稿や愛用のバッグ、文具、カップソーサー、一輪挿しを展示。

 「劇団☆新感線」とのコラボによる、DVD&戯曲本コーナーも設置し、演劇を映像化した「ゲキ×シネ」のシリーズ作品のDVDなどを販売する。壁面には「ゲキ×シネ」のPR映像を流す大型テレビのほか、同劇団を主宰するいのうえひでのり氏、看板俳優の古田新太氏、同劇団の舞台に数多く出演する女優、天海祐希氏のサインが飾られる。「ゲキ×シネ」DVDの常設販売は国内唯一という。

 「うみかぜ珈琲」では、塩キャラメルラテやしょうが紅茶、オリーブコラーゲン入りフルーツジュース、イタリアの炭酸清涼飲料「マカリオ」など、こだわりの飲み物を提供。ソファとカウンターの計10席を備え、カウンターの窓越しには瀬戸内海の絶景が広がる。

 インテリアとしても印象的な波動スピーカーからは心地良いジャズが流れるなど優雅な大人の空間で、映画村の有本裕幸専務理事は「瀬戸内海の海を見ながら、本とコーヒーをゆっくり楽しんでください」と話している。

民泊の健全発展へ、“ヤミ民泊”の取締り強化、「民泊サービス」のあり方検討会

検討会のようす
検討会のようす

 民泊市場の健全な発展のためヤミ民泊の取り締まりを――。厚生労働省と観光庁は4月12日に東京都内で8回目の「民泊サービス」のあり方に関する検討会を開いた。今回の検討会では、前回の検討会で取りまとめられた中間整理(案)への対応として、Airbnbなどの民泊仲介サイト運営事業者に対して、「いわゆる『民泊サービス』の取扱いについて(要請)」と題した要請書を通知し、民泊市場の健全な発展のため、同運営事業者に旅館業法の許可を得ていない〝ヤミ民泊〟などを取り扱わないよう要請していくことを明らかにした。
【松本 彩】

 今回の検討会では、中間整理に対する関係者からのヒアリングとして、特区民泊の許認可取得者などを正会員とする民泊協会(高橋延明代表理事)と、特区民泊や農家民泊の実績がある、とまれる(三口聡之介社長)がプレゼンテーションを行った。民泊協会の高橋代表理事は中間整理への問題提起として、「近隣住民に対する配慮は早急に行うべき課題だ」と述べ、民泊サービス事業者はトラブル対応などを含め、民泊サービスに関するガイドラインを作成する必要があると訴えた。

 とまれるの三口社長は、簡易宿所の緩和により報道などで「民泊解禁」と報じられたことについて、「簡易宿所の緩和だけでは民泊市場拡大には限界がある」と主張。そのうえで改善余地のある規制として用途規制の改善を挙げ、「管理者、プラットフォームの責務と同様に、適切な規制を検討すべきである」と述べた。

 また、民泊市場の健全な発展のために、旅館業法の許可制度などの規制を無視している“ヤミ民泊”の早急な取り締まりが必要だとし、「ヤミ民泊を適性に取り締まり、公認民泊の規制をある程度緩和することができれば、民泊市場は発展していくと思う」と語った。

 なお、「いわゆる『民泊サービス』の取扱いについて(要請)」の要請書には、(1)民泊サービスを有償で行う場合、旅館業法の許可が必要であることの周知(2)民泊サービス提供者に対する許可取得の呼びかけ(3)民泊サービスが禁止されている物件が登録されないよう登録サイトなどへの注意喚起(4)警察からの登録者に関する情報提供が求められた場合の対応――の4つが記されている。

 厚生労働省と観光庁は、英語訳版と中国語版を作成し、欧米や中国などの民泊仲介業者などを対象に通知を行っていく。

【特集No.429】ベッセルホテル 内製化で柔軟な対応が可能に

2016年4月21日(木) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第2回は、ビジネスホテルを全国展開するベッセルホテル開発専務取締役事業本部長の瀬尾吉郎氏が登場。全体のプロセスをシームレスにつなげる「内製化」によって、柔軟な対応を可能にし、サービスの品質を上げた現場の取り組みなどを語った。

【増田 剛】

 瀬尾:当社は福山通運の創業者でもある澁谷昇が1924(大正13)年に土建業として創業しました。その後、運送業や印刷、ビルメンテナンスなど幅広く事業を展開し、ホテル業としては1974年に福山キャッスルホテルを福山駅前に開業しました。

 内藤:なぜ創業者はホテル業をやろうとされたのでしょうか。

 瀬尾:運送業で成功したあと、「地元・福山に還元したい」と地域貢献の想いから婚礼や宴会ができる受け皿として迎賓館のようなものを作ろうとしたそうです。

 内藤:旅館業はしばしば伝統産業だと言われますが、昭和30―40年代に鉄道網の整備で出張や観光が増え、多くの観光民宿や駅前旅館などができ、意外に新興産業なのです。
 そのようななか、御社がビジネスホテルの展開を始めたのはいつからですか。

 瀬尾:2000年からです。その前に、2代目の社長である父が米国にホテルを視察する機会があり、そこで感銘を受けた米国の郊外型のビジネスホテルチェーンと提携を結んで多店舗展開していきました。国内では岡山以西の開発権を得て、倉敷、熊本、都城、北九州空港が開港した苅田などに郊外型ビジネスホテルとして展開していきました。
 郊外型だったので半導体工場などの出張利用が主な顧客ターゲットだったのですが、08年のリーマン・ショック以降、一気に厳しくなりました。開発地域の制約が枷となっている部分もあり、10年1月末にその契約を解消し、現在のベッセルに名前を変えました。

 内藤:「郊外型で、客室が広め」というコンセプトですね。

 瀬尾:そうですね。ベッセルホテルの特徴は基本的に郊外型で、強みとしては①朝食無料②駐車場無料③18歳以下の添い寝無料――というサービスです。
 実際駐車場を無料にすることで、車利用者がたくさん来られています。福山も倉敷もそうですが、全体の8―9割が車利用です。

 内藤:ベッセルのほかにも新しいブランドも展開されていますね。

 瀬尾:郊外型のベッセルが都市部に進出する際には広大な駐車場を無料にすることは実質不可能で、それに客室はシングルが21平方㍍、ツインが26平方㍍、ベッドも幅150㌢と統一しているため、東京や大阪など都心部への出店を難しくしています。
 今後日本の人口が減少し、ビジネスマンも減少していくことを考えると、外国人観光客が訪れやすい駅前や空港の近くという立地を選ぶ必要が出てきます。
 さらに統一規格という特徴のため、現在は新築のみですが、今後中古のリブランド物件が増えていくことも予想され、「ベッセルイン」というブランドを新たに作りました。その後、この2つ以外に高級ブランド「カンパーナ」を作りました。 

 内藤:出店する場所が決定したあとに、立地条件に合ったブランドを決めていくという流れですね。現在準備を進めているものも含めて、今後どのような場所に出店していきたいですか。

 瀬尾:都市部には「ベッセルイン」ブランドをメインに、政令指定都市にはすべて出店していきたいです。そのほか、ディズニーランドの近隣なども視野に入れています。
 ベッセルホテルはツインの部屋だと大人2人、子供2人で宿泊しても、18歳以下の添い寝は無料。子供は朝食も無料のため、家族利用がすごく多いのが特徴です。12歳以下添い寝無料というのは多いですが、ホテルチェーンで18歳以下まで無料にしているのは当社だけです。
 「本当に18歳以下は無料でいいんですか?」と、しばしばお客様から聞かれますが、「家族に優しいホテル」というイメージアップにもつながっているので、今後も継続していこうと思っています。カンパーナも18歳以下無料で、ベッセルインは12歳以下に設定しています。

 内藤:家族旅行には喜ばれますね。
 一方で、宿泊層に子供連れが増えていくと、一般的に静かに過ごしたい高齢の夫婦やカップルなどが敬遠したりするケースも見られると思いますが。

 瀬尾:60歳以上のお客様には10%のシニア割引も行っているので、今のところ客層間で大きな問題にはなってないですね。設備面で遮音も考えており、子供が騒ぐといった苦情もほとんどありません。カンパーナも京都と沖縄本島で展開していますが、日本屈指の観光地なので、添い寝は3歳以上や6歳から料金を取る宿が大多数のなか、18歳以下無料の当館は家族利用がすごく多いですね。

 内藤:グループ全体の稼働率はどのくらいですか。

 瀬尾:当社は現在16店舗ありますが、15年度は12月末までで、90%を超えて推移しています。

 内藤:ビジネスホテルのビジネスモデルは大きく変貌してきました。80―90年代は、東急インとワシントンホテルが一世風靡しましたが、その後スーパーホテルや東横インなど宿泊特化型が現れ、さらにビジネスホテル型は大浴場を設置したり、今は浴槽と洗い場を別にしてお風呂をさらに広くするような流れに変わってきています。
 宿泊業界では一つのビジネスモデルは10年もたない。裏を返せば市場が成熟していないので、まだまだ進化し改良の余地があるということです。
 一方、リゾートホテルは比較的安定しています。このようなビジネスモデルの新しい流れをどのように見ていますか。

 瀬尾:外国人需要と、観光需要が増えているので、意識的にシングル部屋よりもツインやダブルの部屋を多く作るようにしています。

 内藤:それ以外にも、食事をどうするかなど、さまざまな課題がでてきます。シンプルな食事しか提供しないところもあれば、シティホテルのようにしっかりとしたものを出すホテルもあります。今後、どの部分を強化して、差別化していかれるのですか。

 瀬尾:お客様の好みや需要は変わっていきますが、逆に変わらない部分もあります。私たちが大切にしている3つのことは「綺麗な客室」「親切な応対」「お客様の声に素早く対応しましょう」――です。これは不変的なものとして、丁寧にやっています。
 「綺麗な客室」では、改修・改装は小まめに行っています。グループチェーン展開すると、いずれなかには古びた施設も出てきますが、当社はどの施設であっても胸を張れるほど綺麗にしています。わずかな汚れや破損部分を見つけると、すぐに改修し「綺麗な客室」を維持します。細かな清掃ではまだ不十分な部分もありますが、ハード面の改修はしっかりと対応しています。

 内藤:それはもともと建設業から始まり、ビルメンテナンスも手掛けているからですか。

 瀬尾:父がキャッスルホテルの総支配人をやっていたときに、創業者澁谷昇とホテル経営に関することで意見の相違があったそうです。澁谷昇は運送業的な視点からいかにコストをカットするかに重きを置いていました。一方、父はクロスが破れたり、シミが目立ってくると「直しましょう」と提案するのですが、「汚れたところ、破れたところだけ貼り直せばいいじゃないか」と言われ、父は部屋の壁や天井がまだらになるので、すごく嫌だったという苦い思いがあるので、「自分が社長になったらすぐに綺麗にしたい」という思いが強かったのでしょう。「汚れたものはすぐに綺麗にする」「壊れたものはすぐに直す」と言う考えが浸透しているのだと思います。
 それに汚くなってから一気に改装するよりも、小まめに改装する方がコスト面でも安く済みます。壁紙が少し破れたりすると、ルームキーパーからすぐに支配人に連絡が入り、その都度、綺麗にしていきます。お客様が過って備品や施設を破損した場合には、お客様のサインをいただくと賠償保険の適用になる場合もあります。

 内藤:保険が適用になることを、知らない経営者も多いと思います。

 瀬尾:いつ壊れたか分からない場合は保険会社に報告できないですが、当社は昨日までになかった破損部分をルーム清掃担当の社員がすぐに気づくので、お客様に「何かございましたか?」とご連絡申し上げ、故意でない場合には保険会社に相談して、保険を適用することもあります。

 内藤:しっかりと小まめにチェックされているのはすごいですね。
 お客様満足に対するこだわりはどうですか。

 瀬尾:楽天とじゃらんのお客様評価点は常に意識しています。客室のお客様アンケートでは、とくにマイナスの声については全ホテルの幹部すべてが回覧し、問題点を共有して必ず直させます。
 それと、当社はフランチャイズでコーヒーチェーンを12店舗経営しているのですが、その本部からスーパーバイザーが月に1回チェックに来ます。当社もこのやり方を取り入れています。年3回本部の幹部が各店舗の現場に行って、「客室」「パブリック」「フロント」などに分けてチェックしています。問題点は期限を区切って改善していくシステムで、各店舗の支配人の評価などに反映しています。さらにベッセルグループ本部の監査役が年2回行き、指摘された項目がしっかりと直っているのかを社外の人間の目からチェックします。
 展開しているコーヒーチェーンも11年からスタッフの働きぶりを評価する取り組みが始まり、第1回のコンテストでは1113店舗のなかで1・2・3位は当社が運営する店舗が独占しました。その後も好成績を続けています。

 内藤:CSを追求して改善していくなかで、良いところを伸ばしていくことは、何か特別なことをやっていますか。

 瀬尾:客室のアンケートで月に1番名前が上がったスタッフには「アンケートインセンティブ」として報奨金を差し上げています。
 そのほかにも、カイゼン活動で稟議を1件上げると最低500円を支給しています。コスト削減に関しては2%と定めており、100万円コスト削減できると2万円還元しています。売上アップに関しては売上額の1%を本人に支給する制度を継続しています。
 カイゼン活動は04年から11年間継続しています。昨年1年間で3600件の提出があり、コスト削減が4千万円、売上増が3100万円と大きな効果が表れています。

 瀬尾:コスト削減は1分当たり27円で計算し、100分だと2700円になります。これに365日を掛けます。このカイゼン活動は正社員だけでなく、パートやアルバイトスタッフも提出できるシステムで、必ず経営トップが確認し、人事評価にも反映されるようになっています。社長から褒めてもらえる機会でもあり、スタッフたちも喜んでいます。
 また、以前、おごと温泉・湯元舘の針谷了会長が実施されているカイゼン活動のMVP制度をセミナーでお聞きしました。当社もカイゼン活動は取り組んで12年目になりますが、15年12月から月ごとのMVPを始めました。 

 ――コスト削減と売上増の代表的なものは。

 瀬尾:先月のMVPは、当社グループのビルメンテナンスの会社のスタッフが提案したものです。広島県内の施設で客室の換気扇の音が大きいことに気づきました。外注に出すとコストがかかるので自分たちで綺麗にし、分解洗浄するときには、ファンを一つずつ洗浄しながら取り付けると相当な時間がかかるので、安いファンを10個購入して新しいものを取り付けました。外したファンは浸け置きし、翌日に戻すと作業は迅速化するということで、年間28万5千円の売上増となり、スタッフには2千円配分しました。
 もう一つは、ルームキーパーのスタッフが浴槽を洗うとき、タワシだと手が届かないので、長い柄のついたものにすると1室当たり2分の短縮となり、年間35万円のコスト削減につながると評価しました。このスタッフには2%の7千円を配分しました。
 また、石垣島の副支配人の提案ですが、客室のテレビを交換するときに、処分すると42万円の支出になるのですが、知人や友人、取引先の業者にタダであげたことで、処分代金の42万円がかからなくなりました。これにも1万円を配分しています。そのほかにも、仕入れている既存の商品を別の会社に替えることでコスト削減に成功した例などもたくさんあります。こういった事例は、本部が指示しなければ変わらないのですが、カイゼン活動によって、現場のスタッフからコスト削減や売上アップにつながるものを自分たちで考え、提案してくれますので、現場の働く環境は日々より良く変化しています。

 内藤:月に10件など決めてどんどん提出させた方がいいと思います。そうすると現場からさまざまな知恵が出てきます。
 これら地道な日々の業務のなかで気がついたことを突き詰めていくやり方もありますが、例えば、ご飯を炊いていたものを、家庭用の炊飯器を幾つか導入して小まめに炊くようにされたように、抜本的にプロセス自体を変えていった事例などはありますか。

 瀬尾:「見える化」では、冬の間雪がすごい札幌はロードヒーティングのスイッチのオン・オフがフロントとは別の所にあるのですが、フロントにボードで確認できるようにすることで年間700万円の光熱費のコスト削減につながりました。
 そのほかでは、フロントが客室をアサインする際には、清掃の手間が少しでも省けるように、廊下のコンセントに近い客室から埋めていくように指示しています。

 内藤:清掃とフロントが連携しているのですね。

 瀬尾:ルームキーパーの清掃効率を高めるために、月に1回キーパーさんと支配人、スタッフとの会議を開き、お互いの悩みを交換していますが、そこでもキーパーの意見を聞きながら改善策を探っています。

 内藤:1部屋当たりの清掃時間もチェックしているのですか。

 瀬尾:キーパーの責任者が月ごとに清掃時間と投入人員を記録しているので、毎月把握しています。
 清掃は内製化が半分、外注が半分です。

 内藤:内製化と外注にする判断の基準は、どこにあるのですか。

 瀬尾:ホテルの規模が一番です。またコストが高ければ、自分たちでやった方がいいと判断します。キーパーの外注が大変な地域は開業時から自分たちでやっています。

 内藤:普通は内製化が大変だから外注したりするのですが、逆ですね。

 瀬尾:外注業者は利益を出すために人が集まらなくても時給をなかなか上げません。人が足りないと応援部隊を呼んだりして午後3時に終わる約束が4時、5時、6時までかかる場合もあります。また、外注だと自社スタッフが手伝うことはできませんが、内製化にすることで給料を上げることも可能ですし、派遣スタッフを雇ったり柔軟に対応できるメリットがあります。また、自社でやった方が清掃レベルは高い。ただ、大型店になると社員だけでは大変なので、外注を入れていますが、長期的には内製化していきたいと考えています。

 内藤:フロントなどの多能工についてはどのように考えていますか。

 瀬尾:例えば朝食はフロントの朝番が作り、夜勤が朝食を仕込んでいます。新入社員にはキーパー研修も行い、週末など忙しい時にはヘルプに行きます。ですから、全員があらゆる部署を経験しています。外注している店舗はそれができないので、本当はすべて内製の方がいいと思います。
 そのほか、絨毯のクリーニングやワックスも内製化しています。

 内藤:面白いですね。数字上の労働生産性を上げるためには人を減らす必要があり、そのためには一部外注していくのがいいと言われた時代もありました。清掃の面で瀬尾さんがおっしゃっているのは逆の動きです。さらに人が集まらないのなら給料を上げて調整していこうとされています。以前からこのような考えでしたか。

 瀬尾:そうですね。繁忙期には、外注だとヘルプに行けないですが、内製だと可能です。

 内藤:外注していたものを内製化し、全体のプロセスをシームレスにつなげられるようにしています。内製化のメリットとしては、ノウハウが蓄積していくことが大きいですね。もう一つ、多くの会社では人件費を抑制するためにパート化が進みました。ベッセルではどうですか。

 瀬尾:当社は逆に人が集まらないのでフロントスタッフは契約社員の資格から、全員正社員化しました。

 内藤:人が集まらないから正社員化することと、もう一つ、長期雇用による能力の蓄積という効果もありますが一番大事なのはなんですか。

 瀬尾:それは、サービスレベルが上っていきますので、長く勤めていただくことが主眼です。今は人材募集の広告を出してもなかなか集まらないので延々と出し続けなければならない。そのコストを考えると、正社員として雇った方がいいという判断です。ニューキャッスルなどは、夜は宴会場の片づけなどに2―3時間だけ来てもらえるパートさんを雇っています。時給を高く設定し、近所の年配の方に来ていただき、片づけや翌日のバンケットのセッティングなどをやってもらい、上手くいっています。

 内藤:「高単価」「短時間」「近隣」で、「多人数」によって一時的な繁忙期の波を乗り切っていくスタイルがいいと思います。時給850円で2時間だと集まらないが、時給1500円だと特定の時間帯だけ稼働に対応した労働投入ができる。また、近隣だと「ちょっと手伝って」ということが可能なので、主婦や農家、自営業の方々まで労働可能な対象が飛躍的に拡大します。そのように考え方が変わってきています。人が余っている時代は、とにかく「安く」という流れでしたが、人手不足の時代では、正社員で長期雇用に重きを置く一方で、多様な働き方ということも求められてきています。

 瀬尾:今、清掃会社は人が集まらなくて厳しいみたいですね。今後外国人の研修生を雇う必要性に迫られると思います。

 内藤:清掃会社もバックヤード部門なので、ホテルの生産性向上にどう貢献するかという視点を持って自ら生産性向上に取り組むべきですが、残念ながら実際は、低賃金でいかに人材を使っていくかという観点しかないので、作業の標準化も行われていません。この部門はまだまだ可能性は大きいと思っています。
 例えば、私は宿泊施設のベッドメーキングの仕方をできるだけ写真に残しています。布団の敷き方など「ここまでやり方が違うのか」と思うほど千差万別です。この部分を標準化していくだけでも、ものすごく生産性が上っていくと思います。標準化の最大のメリットは、従来のやり方と、新しいやり方の比較ができる点です。標準化しなければ評価もできません。
 トイレの清掃も、消毒済みというバンドを付けるか付けないか。また、シャンプーの置き方も、施設によってバラバラですよね。そういった部分ももっと標準化していけば、お金を使わなくて品質が上ってきます。そうすればムダにお金を使わずに済みます。清掃会社も低賃金から高賃金となり、人員流動が起こり、新しい雇用も生まれます。
 離職率はどうですか。

 瀬尾:14年度は20%代後半だったのが、15年度は現在まで12・7%まで下がっています。内藤先生がいつも言っているように、労働時間をこまめに管理し、また先生の本の中でご紹介があった「スタッフがちょっとした手待ち時間に行える作業のリスト」を全店で作成し、これを活用することで、残業も減らすようにしました。

 内藤:給料を上げると劇的に変わっていきます。多くの会社は人材を集めることばかりを考えますが、辞めないことを考える方が大事です。
 サービス業の評価についても個人で評価すると、競争意識が強まり、自分の持っているノウハウを出し惜しみする傾向があります。それよりもチームで協力する仕組みの方がいいと思います。
 とにかく人間はロボットと違い、入社した日から能力は上がっていきます。安定雇用、長期雇用の仕組みを考えていくべきですね。

 ――今後の展開は。

 瀬尾:50店舗を目指していきます。これまでは年に1店舗ずつ出店しているペースですが、5年以内には30店舗にしたいという目標を立てています。

 内藤:施設のオーナーがベッセルグループにホテル運営を依頼するメリットはなんですか。

 瀬尾:一つは地域貢献活動に取り組んでいることかもしれません。7日、17日、27日は各ホテルのスタッフがジャンパーを着てホテルの周辺の清掃活動を行っています。また、楽天、じゃらんでのお客様評点が比較的に高く、創業91年の歴史も安心感を与えているのかなと思っています。
 じゃらん、楽天の評点では古い店舗もある中で全店もれなく4点以上を取ると決めています。

 内藤:私は「4・4」辺りが適当だと思っています。「4・5」を超えるには何か突き抜けた特徴がなければならない。平均レベルを上げていこうと思うと、「4・4」が限界だと思います。また、「4・5」を超えると事前の期待値が上っていきます。

 ――リピ―ターはどのくらいですか。

 瀬尾:5割程度です。3年ほど前からお客様の顔と名前を覚える運動を取り組んでいます。お客様の顔を見たときに「○○様」と言えるように、毎月目標を掲げています。多い人は700―800人を覚えているスタッフもいます。2回以上の宿泊者は顧客登録していますので、顧客アンケートに「枕がもう一つ欲しかった」と書かれたお客様には次回以降は部屋にあらかじめ置くなどの対応をし、喜ばれています。

 内藤:お客様が評価するのはこれら地道な取り組みですよね。海外の展開はどうですか。

 瀬尾:調査などで東南アジアには毎月行っています。

 内藤:日本のビジネスホテルはグローバルな視点で見ると、特異なビジネスモデルだといつも思っています。宿泊特化型から始まる一連のスタイルは非常にシンプルで宿泊料金も安くて独特なので海外では支持されると思います。
 グループとしての強みも生かしていますね。

 瀬尾:当社のグループはビルメンテナンス会社も持っているので、ビルの管理のノウハウもあります。また、印刷事業も持っているので、各店舗のPOPやパンフレットなど印刷物を自社で内製化し、すべて本部が即時に作っています。
 また、女性客にはベッセルインではチェックイン時に化粧パックや化粧水などアメニティをフロントで好きなだけ取ってくださいというサービスをしています。
 あと、当社は「チャレンジを合言葉に」を理念として大事にしているので、副支配人の公募制をやっています。入社1年目でもいいですし、老若男女、学歴なども一切問わず、挑戦したい者は手を上げなさいと言っています。札幌、福岡、京都で3人副支配人が決まり、モチベーション高く頑張っています。そのほか外国人客への対応のため、英検3級以上を取得すれば3万円を支給しています。これによって3級を取る人が増えました。60歳くらいの男性の夜勤スタッフもこれをきっかけに準1級を取得し、次は1級にチャレンジしています。

 内藤:日々努力を続けていますね。今後の進化も期待しています。

熊本地震 ― 観光産業として被災地を訪れる支援

 4月14日から熊本県を中心に大きな地震が相次ぎ、40人以上が亡くなった。安否不明者や負傷者、そして避難者の数も日に日に増えている。

 被災された多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。

 捜索・救出活動も全力で続けられているが、余震は今も続き、天候が悪化すれば大規模な土砂災害なども予想される。不安と恐怖から緊張状態が続き、心身の疲労も心配である。たび重なる大きな揺れへの恐怖から、避難所の体育館や自宅にも入ることができずに、屋外にテントを張って一晩を過ごされたり、車の中で夜を過ごされる家族も多いという。

 震災後すぐに全国から胸が熱くなるお見舞いのメッセージや、具体的な支援活動が始まった。とくに、東日本大震災や、新潟中越地震、阪神・淡路大震災などを経験した地域の方々は、「震災後被災者が一番困ること」や、「現時点では何が必要なのか」といったことを、身を持って経験していることもあり、例えば、支援物資には飲料水や食料だけでなく、赤ちゃんのオムツや粉ミルク、離乳食、生理用品などが不足しがちなことをアドバイスしたり、物資を送ったり、行動を起こされている。

 今はとにかく飲料水の不足が叫ばれている。全国から救援物資が送られてきているが、どうしても行き届かないエリアが生じたり、情報格差により、配布される時間や場所を知らない人もいる。

 観光庁は宿泊業界などに災害弱者を優先して避難者の受入れを要請。1泊3食5千円程度で受入れる準備を進めている。15日には、民泊サービス「Airbnb」も、無料で泊まれる緊急宿泊場所の提供を始めた。この災害緊急支援は、12年10月に発生したハリケーン・サンディの被災者に、ニューヨークのホストが家を開放したことから始まったという。世界的にこれらの動きは広まり、今後日本国内でも同様の支援活動が定着していくだろう。

 観光業界としては、九州方面のツアーなどに多くのキャンセルが出ているようだ。

 熊本県だけではなく、大分県にも被害は広がっており、九州全域が被災し旅行どころではないという印象が強くなっていくことを危惧している。

 九州各地の震源に近い自動車部品や液晶、半導体などの工場は生産を中止し、再開の目途が立っていないところもある。今後さまざまな経済的な悪影響も予想される。

 スーパーなどでは熊本産の野菜コーナーなどを設けており、購入することが支援につながる。被災地を訪れることを自粛したり、それほど被害の大きくなかった地域への観光を避けることは、さらなる「災害」となる。イベントの中止や、宿泊旅行の取りやめがいかに観光産業を苦しめるかは、観光産業にいる我われが一番理解している。

 災害の1日も早い終息を祈りながら、復旧・復興への動きへと変えていくことが大事である。交通インフラも少しずつ回復している。

 被災者が必要とする支援は時間とともに変化していく。本紙は被災地支援に向けて、自粛ムードによって観光旅行やイベントを中止するのではなく、被災地やその周辺を訪れることこそが支援につながるという、ムーブメントを作り出していきたい。

(編集長・増田 剛)

急がれるFIT対策、バス業界向けメニュー開発(高速バスマーケティング研究所)

参加企業の集合写真(中央が成定氏)
参加企業の集合写真(中央が成定氏)

 高速バスマーケティング研究所(成定竜一代表、神奈川県横浜市)は4月5日、東京都内で会見を開き、バス事業者に特化した訪日市場のFIT対策メニューを開発したと発表した。

 冒頭、成定代表は増加する訪日外国人の個人旅行者数と、旅先の拡大に対し、「専門用語」、「外国人観光客から多い質問」などを専門業者とやり取りする手間とコストの問題からバス業界のFIT対策が遅れている現状を示した。一方今後は、FIT市場の取り込みが業界の成長に不可欠であることから「大きな転換が求められている」と語った。

 そこで、現場オペレーションやバス業者のニーズを把握する同社が新サービスにおいてバス業界ならではの用語や使用場面に関わる監修を担当。外国人向けウェブサイトの構築や企業向け英会話研修、通訳サービスなどの分野で実績のある6つの企業がサービスを提供する。これにより各業者のコスト軽減や、業界全体の情報共有、サービスレベル向上の仕組み作りを実現。

 例えば、オーエイチが提供する「訪日外国人向け公式WEBサイトパッケージ」は、日本語版ホームページの必要な情報のみ翻訳。利用頻度の高い高速バスの情報は厚く、利用頻度の少ない地域バスの情報は絞るなど、情報過多にならないよう配慮。情報を取り出す頻度の高いスマートフォンにも対応させた。また質問サイトを別に用意し、外国語を話せる職員不在の企業にも配慮。初期費用は1からサイトを立ち上げる費用の5分の1程度の21万6千円で導入可能(使用料別)。

 またブリックスが提供する「予約センター電話通訳サービス」は、予約担当者と顧客、ブリックスの通訳担当による3者間通話を行うことで、会社窓口に専門スタッフを雇う必要を回避。3者間通話ができるのは専用回線プランだけ。また、数社共用回線を利用すれば2万円という低価格で回線開通が行え、使用料も12時間2万円と通訳スタッフを雇う人件費よりも安く設定している。同社は、万が一のときの保険として利用してほしいと売り込んだ。

 このほかにも、スマートフォンで簡単に設定、管理が行える「多言語運行情報告知システム(WillSmart提供)や、実践重視の「接客英語トレーニング」(ENGLISHOK提供)、スマホ・タブレットをテレビ電話として利用する「窓口・案内所向け通訳サービス」(国際興業提供)、GPSを活用した「自動ガイドシステム」(アドホック提供)が今回のバス業界向け「FIT対策メニュー」を構成。利用者が個々に必要なものを選択できるようにした。