異業種コラボの可能性、4企業と討論で探る(全旅連青年部)

「旅館改善劇場 旅沢直樹」の寸劇
「旅館改善劇場 旅沢直樹」の寸劇

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(山口敦史部長)は2月18日、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで13年度第3回県部長サミットを開いた。旅館アカデミー委員会が「旅館改善劇場 旅沢直樹」を通じてダメ旅館からの経営改善策を示したほか、異業種コラボ事業委員会が「コラボが生む新たな可能性」と題してパネルディスカッションを行った。

 パネラーには東急ハンズ、資生堂、よしもとクリエイティブ・エージェンシー、ぐるなびの4社の代表者が登壇し、異業種コラボ事業委員会の柴田良馬委員長と、新たに協力できる事業について語り合った。

 ぐるなびとは、「結婚記念日の旅行」をともに需要開拓していく案などが出された。よしもとクリエイティブ・エージェンシーとは、吉本芸人とめぐる温泉ツアーの企画や、温泉旅館の若旦那100人を集めたユニット結成などのアイデアで盛り上がった。資生堂とは、温泉地の美容やヘルシーを求める女性に「メーキャップレッスン」などの企画が人気を呼ぶのではないかという意見もあった。また、東急ハンズとは売場を活用したさまざまな販売コラボの可能性を探り合った。

 山口部長は討論後、「他業界のブランド力との相乗効果が期待できる異業種コラボによって、旅館業界のレベルアップ、魅力アップにつなげていきたい」と締めくくった。

異業種コラボのパネル討論
異業種コラボのパネル討論

客観的な視点を

 日本有数の源泉数、湧出量を誇る一大温泉地。昨年から懐かしのアニメキャラクターを起用し、温泉地をPRしているが、最近ではバーチャルアイドルを使ったイベントを開催。温泉に付加価値を付けるため国内外で有名なアニメを呼び水に・・・・・・ということだが、正直言うと温泉地のイメージにそぐわず、少し安易な印象を受ける。キャラクターの乱立もさることながら、作者の出身地だとか、作品の舞台になっているなど、関連性があれば説得力があっただろう。若い世代やファミリー層を取り込もうという意図は理解できるが・・・・・・。それより温泉の数や泉質など詳しい情報がまだ消費者に行き届いていない気がする。温泉地として抜群の魅力があるのは事実。抜本的な政策も必要だが、一方で客観的な視点も忘れないでほしい。

【市沢 美智子】

成約手数料ゼロに、今夏、直販ビジネス参入(ヤフー!トラベル)

 ヤフーは2月26日、国内宿泊予約事業について、宿泊予約事業者から提供を受けた宿泊施設情報を掲載するこれまでのビジネスモデルに加え、宿泊施設と直接契約を結び「ヤフー!トラベル」に掲載する直販ビジネスへ参入することを発表した。システム使用料や成約ごとにかかる手数料などを無料に設定。宿泊施設側の負担は、宿泊客に付与する5%以上の「Tポイント」のみで、ポイント手数料0・3%を含んだ5・3%からサービスを利用できる。10%程度の手数料を取る宿泊予約サイトが多いなか、業界に新たな風を起こす。プラン販売開始は今夏を予定。

【伊集院 悟】

 「ヤフー!トラベル」ではこれまで、「一休」や「たびゲーター」などの宿泊予約事業者を間に挟み宿泊施設情報を掲載していたが、今回、直販ビジネスへ参入。宿泊施設と直接契約を結び、同サイトに情報を掲載し、販売する。すでにプロモーションサイト(http://bizpromo.travel.yahoo.co.jp/dhotel)で宿泊施設の契約受付を始めており、今夏を目途に宿泊プランの販売開始を目指す。

 通常、成約に関する手数料は旅行会社の店舗販売で15%程度、宿泊予約サイトで8―12%程度が一般的だが、同サイトの掲載にあっては、システム利用料や初期費用、年・月額の固定費、成約による手数料などはすべて無料。宿泊施設側が負担するのは、宿泊客に付与される5%以上の「Tポイント」とその手数料の0・3%のみとなり、宿泊施設側にとっては魅力的なサービスとなる。ポイント付与は5―14%の間で宿泊施設側が自由に設定可能だ。

 また、契約施設に対しては「ヤフー!トラベル」から外部リンクを無料解放し、施設の自社サイトへの集客として活用できるようにする。同サイトの収益は、手数料モデルから広告モデルへの転換となる。

小澤隆生ヤフーショッピングカンパニー長
小澤隆生ヤフーショッピング
カンパニー長

 2月26日に開いた会見で、ヤフー執行役員の小澤隆生ショッピングカンパニー長は「宿泊施設が抱える負担をなるべく軽減して、多くの施設へ門戸を開き、市場規模全体を盛り上げていきたい」と今回の直販参入の理由を説明。施設側のハードルを下げることで「これまでOTAで扱われていなかった在庫の掘り起しにつながるかもしれない」と話した。同社のこれまでの掲載施設数は約1万3千社だが、「なるべく早く大手OTAの2―3万施設に追いつきたい」と先を見る。

 検索サイトでの旅行関連の検索が非常に多いことを紹介し、施設側へのメリットとして(1)手数料の圧倒的な低さ(2)システムの使いやすさ(3)検索との連動――、消費者に対しては5%以上のポイント付与――を挙げた。

 また、エクスペディアが行う最低価格保証については「今回は実施には至っていないが、非常に興味はある」と含みを持たせ、「5%以上のポイント付与があるので、実質的に一番安いとも言えるのではないか」と語った。

久保長官 「好調な滑り出し」、汚染水報道の影響ほぼ終結

 久保成人観光庁長官は2月19日の会見で、1月の訪日外客数が前年同月比41・2%増の94万3900人となったことを受け、「好調な滑り出しだが、旧正月時期変動の影響が強いので、2月の結果も見て、動向を判断する」と語った。また、韓国の汚染水報道の影響はほぼ収まった模様だ。

 1月の好調な要因に、旧正月時期の変動に加え、昨年から続く円安傾向にともなう訪日の割安感浸透や東南アジアでのビザ緩和効果などを挙げた。放射能汚染水報道の影響を受け13年10月以降3カ月続けてマイナスの伸び率となっていた韓国は、同9・0%増とプラスに転じた。久保長官は「旧正月時期の変動の影響もあるので正確には分からないが、汚染水報道の影響はほとんどなくなってきている」と分析した。

 昨秋から、取消料や旅程保証など現在の環境変化とのズレが指摘されている標準旅行業約款の見直しや、手配旅行の取り扱いなど、現行制度の見直しの方向性や今後の旅行産業の在り方などについて議論してきた旅行産業研究会は、3月中に終回を開き、3月末までに取りまとめとなる。取りまとめの方向性としては観光庁で結論を出すのではなく、議論のなかで出てきた意見の集約にとどめる模様。

 久保長官は「観光庁として何か結論を出したりはしない。議論のなかで出てきた幅広い意見を取りまとめ、その後は関係者で相談のうえ進めていく」とした。

41%増の94万4千人、旧正月時期変動で大幅増(1月訪日外客数)

2014年1月訪日外客数
 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した1月の訪日外客数推計値は、前年同月比41・2%増の94万3900人。これまで1月の過去最高だった11年を23万人上回った。単月でみると、過去最高の13年7月(100万3千人)に次ぐ2位。中華系人口の多い市場での旧正月休暇時期の変動が大幅な増加につながった。

 中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、米国が1月として過去最高を記録。オーストラリアは年間を通じ単月として過去最高を更新した。同国はスキー旅行の需要が拡大し、2カ月連続で過去最高を記録している。

 韓国は同9・0%増の25万5500人と、13年10月以降3カ月連続で続いたマイナスの伸び率がプラスに転じた。日本の安全性の情報発信による放射能汚染の風評被害の緩和に加え、旧正月休暇時期の変動が訪日旅行者数を押し上げた。

 同じく台湾も同76・8%増の19万6900人、中国も同115・3%増の15万5700人、香港も同103・0%増の6万3400人とそれぞれ、旧正月時期の変動により大幅に伸びた。

 そのほか、訪日市場が拡大している東南アジア諸国をみると、タイは同68・9%増の2万7200人。反政府デモが続き1月21日に非常事態宣言が出されたが訪日旅行のキャンセルはない。シンガポールは同53・3%増の1万900人、マレーシアも同84・0%増の1万4千人と好調を維持している。

 なお、出国日本人数は同8・0%減の125万2千人となった。

60周年事業をPR、「エコ達人村」で相談実施(国際観光施設協会)

中山庚一郎会長
中山庚一郎会長

 国際観光施設協会(中山庚一郎会長)は2月18日、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれた「第42回国際ホテル・レストラン・ショーHOTERESJAPAN2014」の特設ブースで、60周年事業オープニングイベントを行い、「美しい日本文化とエコ技術」をテーマとする創立60周年事業の紹介や、「エコ達人村」など協会の活動をPRした。

 イベントの開会に先立ち、中山会長は「60年前は終戦8年目の貧しい時代で、21世紀がとても明るい未来に見えた。ものづくりは明るい未来を目指して社会に提供する責任がある」と力強く語り、LEDや断熱技術などの発明・発達とエコロジーの関係を述べた。

 来賓の国土交通省大臣官房審議官の若林陽介氏は「観光は自然・環境を考えなければ発展できない」と述べ、国産材を使うことの重要性などを強調した。

 続いて、同協会副会長の涌井史郎氏の基調講演「明日の生き方を探し、足元を確かめるために旅に出る」を行い、天変地異のある自然との共生や地方を観光で支えていく必要があることを述べた。

 会場では、(1)自然と共生する建築・まち(2)エコの現代技術(3)木の力(4)美しいしつらえの文化(5)エコ達人村――の展示ブースを用意し、各ブース担当者が展示紹介を行った。そのほか、林野庁林政部木材利用課長の阿部勲氏の講演「木づかいでの『おもてなし』のススメ」などを開いた。今回で5回目となった「エコ達人村」では、18―21日まで旅館・ホテルを対象に、エコ達人による「エコ・小」の無料相談を行った。

第1回実務者協議開く、サーチャージ等問題提起

 国土交通省航空局と観光庁、定期航空協会、日本旅行業協会(JATA)はこのほど、燃油サーチャージなど航空関連の諸問題を話し合う実務者レベル協議の第1回を行った。

 観光庁によると、旅行業界側が長年抱えてきた燃油サーチャージの問題などを中心に、航空関連の諸問題について航空業界関係者へ説明、情報共有を行ったという。次回以降については未定だが、これまで両業界がこの問題について同じテーブルに着いたことはなく、確かな一歩となるか、今後の展開に期待がかかる。

ベジタリアンを研究、誰もが食を楽しめる街に(東京・浅草)

藤井まり氏
藤井まり氏

 外国人旅行者向けの観光ガイドを行う「トラベリエンス」(橋本直明社長、東京都台東区)は、浅草商店連合会と「訪日外国人旅行者の食満足度向上による商店街活性化プロジェクト」を展開している。2月24日には、浅草文化観光センターで「外国人観光客の食のトラブル防止勉強会」を開いた。今回は「ベジタリアンフードのメニューづくり」をテーマに、米国や英国、フランス、マレーシアなど世界の食の問題を熟知する精進料理家の藤井まり氏が登壇し、セミナーに出席した浅草商店街の飲食店オーナーらと外国人観光客を受け入れる飲食店のやるべきことなどについて、質疑応答を中心に意見交換を行った。

 藤井氏は「フランスでは動物愛護の観点からベジタリアンが多い」「味噌汁が世界中で人気が高い」ことなどを紹介。さらに、ベジタリアンに対して「天ぷらでエビなどと同じ油で野菜を揚げることは可能か」との質問には、「できるだけベジタリアン用の別の小さな鍋で揚げた方がいい」などのアドバイスをした。

橋本直明社長
橋本直明社長

 トラベリエンスの橋本社長は「ベジタリアンは米国では10%、英国も10%、台湾も10%、インドでは30%を占めるといわれている」と説明。そのうえで、宗教上や身体上、食の制限がある旅行者も旅先のレストランで食事をしたいが日本では情報も少なく、言葉も通じないことが多いので困っている旅行者が多いことなどを紹介した。

 同プロジェクトは、「誰もが食を楽しめる浅草」を目指しており、昨年10月には「ハラルフード」(イスラム教の立法に則った食べ物)をテーマとした第1回勉強会を開いている。

韓国へ300万人目指す、菊間会長らが韓国訪問(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は2月4―6日の2泊3日で、韓国に訪問団を派遣した。菊間潤吾会長を団長にJATA役員ら18人が参加し、韓国側と2014年の韓国への日本人渡航者数300万人を目指すことを確認した。

 韓国観光公社のデータによると、2013年の日本から韓国への渡航者数は、円安や政治問題などで前年比21・9%減の約275万人と大幅に減少。観光市場への打撃はさらに大きいことから、JATAは韓国観光公社の協力のもと、昨年11月から韓国一般旅行業協会(KATA)と韓国旅行の再興に向けた話し合いを開始。協議を重ねるなかで、今回の訪韓が実施された。

 訪韓団は文化体育観光部や韓国観光公社、KATA、ソウル市などとそれぞれ会談の場を設置。300万人の日本人渡航者を送客できるよう双方が努力することや、そのために韓国側に国・行政のトップから日本人旅行者を歓迎するメッセージの発信や具体的な歓迎策などを要請した。日本側としても、できるだけ早期に韓国キャンペーンを展開し、旅行需要の喚起をはかっていくことを報告した。

 また、KATAとは地方都市観光など新たな商品の開発で合意し、今回の訪問では釜山コースと済州コースに分かれて観光素材を視察した。

 訪韓に参加した中村達朗理事長は2月12日に開いた定例会見で、菊間会長が各会談で「安心安全を実感した」と発言したことや、歓迎メッセージの要請について韓国側から前向きな回答があったことなどを報告。メッセージが得られれば各社のパンフレットに盛り込み、日本人旅行者に韓国から歓迎されていることをアピールするという。

大雪 ― 東京は雪に強い、山間地こそ弱い

 2月に入り、大雪が襲った。これほど首都圏で雪が積もったのは私自身初めての経験である。首都圏といっても私の仮寓は東京都心から相当に離れているので、雪もかなり深かった。道路にはタイヤの跡や足跡もなく、歩く人影もない道を、吹雪のように強い風が吹き荒れるなか、膝近くまで埋まりながら歩くのは、住宅街の中とはいえ、恐怖と孤立感を覚えた。雪は窓の中から見る分にはいいが、吹雪の中を歩くのは本当に恐いことなのだと実感した。

 2011年12月24日のクリスマスイブの日、私は家族と和歌山県の高野山にある名宿・福智院を訪れた。天気予報では、近畿地方で記録的な大雪になることを伝えていたので、私は前夜、オートバックスでチェーンを購入した。結構な出費となったが、命には代えられぬと、クルマの荷台に積み込んだ。23日は念願の和歌山県・湯の峰温泉や川湯温泉の仙人風呂に浸かり大満足だった。24日も昼過ぎに龍神温泉に到着するまでは順調だった。手ぬぐい頭に、ちらちらと舞う小雪にちょいと乙な気分に浸っていた時点までは良かったが、露天風呂に浸かりながら山の方を見ると、あっという間に白銀の世界に変わっていくさまを目にした私は急に激しい不安を覚えた。チェーンがあるとはいえ、ノーマルタイヤでこれから高野山を登らなければならないのだ。案の定、高野山に向かうスカイラインは峠道を進むごとに雪深くなった。チェーンを巻いたが、クルマはスリップしまくって生きた心地がしなかった。後続のノーマルタイヤのクルマはスルスルと滑り、側溝にクルマの半分が落ち込んでしまった。辺りが見えなくなるほどの大雪で、雪の怖さを骨の髄まで感じた旅だった。しかし、そのころの私は全国の秘湯巡りに命懸けで挑んでいたので、その後も性懲りもなく、晩秋の山梨や、群馬、長野、新潟の山深い秘湯の宿を目指してクルマを走らせており、峠を登って行くごとに、路面の凍結部分が広がっていく恐怖を何度も味わった。これら経験をした私は、今では少しの雪でも降ると「羹に懲りてなますを吹く」ような運転スタイルになっている。

 東京に大雪が降るたびに、テレビのコメンテーターは「東京はホントに雪に脆いですねぇ」などと笑いながら言うが、私は日本で東京ほど雪に強いエリアはないと思っている。ニュース映像では、雪にすべって転ぶサラリーマンやOLたちの姿を映したり、電車や飛行機が止まって駅や空港で困惑している人たちの表情や言葉を拾うが、そんなものは多少の混乱はあるだろうが、命に別条はない。街にはレストランや居酒屋がごまんとあるし、風雪を除ける巨大な高層ビルや、地下に潜れば迷路のように広がる地下街もある。夜は人口が少なくなるかもしれないが、朝になると若い元気な人間が一斉に集まって来る。その気になれば、全員で雪かきをすれば、道はすぐにできる。

 一方、山間の過疎地域は大雪が降れば道路は寸断されるし、歩いている人は途中で避難できるような高層ビル街や地下街もない。吹きさらしの中で倒れると誰にも気づかれずに凍死するしかない。食料や水も届かないし、停電すれば何日も復旧しない。本当に孤立してしまう。東京は圧倒的に雪に強い。人の手もなく、後回しにされてしまう、山間の集落こそが雪に弱いのだ。

(編集長・増田 剛)