小田急電鉄、パリに駐在員事務所開設

2017年11月1日(水) 配信 

小田急電鉄パリ駐在員事務所が入居するビルの外観

小田急電鉄(星野晃司社長、東京都新宿区)は2018年2月1日(木)に、タイ・バンコクに続く海外2つ目の拠点として、フランス・パリに駐在員事務所を開設する。アジア圏だけでなく、欧州圏からの訪日外国人旅行者の誘致に力を入れる。

 日本政府観光局(JNTO)によると、近年、訪日フランス人旅行者数は好調に推移しており、2016年は過去最高の25・3万人(対前年比18・3%増)となった。16年度に外国人向け観光案内所「小田急外国人旅行センター」を訪問した訪日フランス人旅行者数は同39・2%と大幅に増加。「今後は訪日フランス人旅行者数のさらなる増加が期待できる」(同社)。

 これまで訪日外国人旅行者誘致に向けたさまざまな取り組みを行ってきた。今回、同社沿線への一層の誘致を進めるため、欧州の中でもとりわけ親日家が多く、日本食やアニメなどの日本文化が浸透している同国の首都であるパリに駐在員事務所を開設することとした。

 欧州圏の旅行代理店などとの関係を強化するほか、新宿や箱根、江の島・鎌倉などの各エリアの認知度を高めるPR活動を展開する。併せて、パリ駐在員事務所を拠点に、近隣国へのアクセスが容易という地の利を生かし、フランス周辺国においても同様の活動を推進していく。

駐在員事務所の概要

名称:小田急電鉄 パリ駐在員事務所

所在地:avenue de l’Opera 75001 Paris France

開設日:2018年2月1日(木)

主な活動内容:

現地旅行代理店および現地メディアに向けた当社商品の情報提供

現地旅行博覧会への出展等を通じた旅行者への情報提供

現地および近隣国での情報収集

「参考」フランスからの訪日旅行者誘致に向けたこれまでの主な取り組み

2015年6月・・・「箱根フリーパス」フランス語パンフレット対応

2017年3月・・・「丹沢・大山フリーパス」フランス語パンフレット対応

2017年11月15日・・・在日フランス人を対象とした箱根日帰りモニターツアーの実施(在日フランス人約20人)

今年のおすすめのイルミネーションは?じゃらん編集部が「イルミネーションスポット」ランキングを発表

2017年11月1日(水) 配信

イルミネーションスポットランキングを発表

リクルートライフスタイルが企画・編集するじゃらんはこのほど、じゃらん編集部が選んだ今年行ってみたい「イルミネーションスポット」ランキングベスト5を発表した。

 今年もあと2カ月。これからさまざまな場所で、色鮮やかなイルミネーションが街を彩り始める。同編集部が選んだ今年行ってみたいイルミネーションランキング1位には、圧倒的なスケールで毎年変化を遂げる多彩な演出が魅力の「ハウステンボス 光の王国」(長崎県)が選ばれた。

ベスト5にランクインした各スポットを紹介

毎年進化するイルミネーションをぜひ見に行こう

1位:ハウステンボス「光の王国」

開催期間:2017年11月3日(金)~2018年5月6日(日)

点灯時間:日没~営業終了まで

光の天空ツリー

 世界最大の1300万球のキラキラ輝く大スケールのイルミネーションは圧巻の美しさ。ガラス製の床から真下に光の世界が広がる「光の天空カフェ」や、音楽に合わせたイルミネーションショーが繰り広げられる高さ30㍍の「光の天空ツリー」など、今年もパワーアップした演出に注目だ。

2位:なばなの里「イルミネーション」(三重県)

四季折々の熊本の多彩なシーンが出現©2010熊本県くまモン 協力:熊本県大阪事務所 ※画像はイメージ
名物「光のトンネル」

開催期間:2018年5月6日(日)まで

点灯期間:日没ころ~午後9:00 ※時期により延長あり

 東海エリアを代表する花と緑のテーマパーク。里内がイルミネーションで輝くこの時期は、入った瞬間から光の洪水に圧倒される。毎年テーマを変えて登場するメイン会場は必見だ。今年のテーマは、くまモンと熊本の四季折々の美しい風景がモチーフ。阿蘇山や熊本城など、熊本の多彩なシーンが次々と出現する。

3位:第23回神戸ルミナリエ(兵庫県)

幻想的な神戸ルミナリエ©Kobe Luminarie O.C.

開催期間:2017年12月8日(金)~12月17日(日)

点灯時間:未定

 神戸の希望を象徴する冬の風物詩。昨年の来場者数は約325万人という巨大イベント。阪神・淡路大震災からの復興と再生への夢を願い、今年で23回を迎える。繊細なデザインが美しく、恋人との神戸デートで訪れてみては……。

4位:定禅寺通「2017SENDAI 光のページェント」(宮城県)

雪とのコラボレーションを楽しみたいイルミネーション©SENDAI光のページェント実行委員会

開催期間:2017年12月8日(金)~12月31日(日)

点灯時間:日~木 午後5:30~午後10:00 金・土 午後11:00まで

※12月24日(日)は午後11:00まで、31日(日)は午前零時まで点灯

 160本のケヤキに一斉に光が灯る瞬間には、歓声が上がるほど。並木道を明るく照らす、仙台の冬の風物詩。雪が降るとより一層幻想的な世界を作り出す。

5位:あしかがフラワーパーク「光の花の庭」(栃木県)

光の睡蓮はSNS映え抜群

開催期間:2018年2月4日(日)まで

点灯時間:午後4:30~午後9:00 土日祝 午後9:30まで

 広大な敷地に400万球のイルミネーションを装飾。5千本の光のバラが輝く様は、まさに「光の花の庭」。そのほか、大藤棚を再現した「奇蹟の大藤」や水辺に輝く「光の睡蓮」など見どころ満載だ。

5位: OSAKA光のルネサンス2017(大阪府)

今年のテーマは「ありがとう」

開催期間:2017年12月14日(木)~12月25日(月)

点灯時間:午後5:00~午後10:00 

※一部コンテンツは午後4:00~午後10:00

 「ありがとう」をテーマに5つの特別プログラムを予定。建物に映像を投影する人気の「ウォールタペストリー」は中央公会堂を舞台に新作を公開する。台南とのコラボで約1千個のランタンが輝く「光の廟」や大阪の食がそろう「光のマルシェ」も併せて楽しみたい。

外国人労働者受入へ、実務者視点のマニュアル作成(JCHA)

2017年11月1日(水) 配信

外国人スタッフ受け入れ時の思い出を語り合う5人

 全日本シティホテル連盟(JCHA、清水嗣能会長)は10月17日、東京都内で「外国人就労に関する座談会」を行った。実務者の視点でまとめた受入マニュアルの作成に加え、会員施設での外国人スタッフ受け入れやJCHAが行っているインターンシップ制度の活用促進をはかることが目的。インターンシップなどを通じ外国人労働者を受け入れた経験のあるJCHAの会員ホテル経営者ら5人が、これまでの体験を語った。

 外国人スタッフの受け入れは、日本人スタッフの語学習得や外国人旅行者の滞在環境整備などに効果があり、異文化交流による職場の活性化にもつながる。尼崎プラザホテルの中原一輝支配人は、新しい文化交流が生まれることをメリットとして提示。同ホテルを含む京都プラザホテルズでは、外国人スタッフの提案で、旧正月の期間中に台湾からのツアー客に旧正月のあいさつを実施、利用者に喜ばれたと説明した。

 一方で、在留にかかわる手続きに時間がかかることや国民保険の加入などの行政手続き、安心して働ける環境整備への配慮など、注意するべき点も多い。JCHA地域活性化委員会の藤橋由希子委員長は、「1度では就労などに関係する手続きは終わらない」としたうえで、入国管理局の審査のピーク時期などを説明。会員からは、行政書士に依頼することで手続きの効率化をはかれるとの事例報告もあった。

 さらに、外国人労働者と信頼関係を構築し、なんでも相談できる、話せる関係になることが成功のカギになると5人は口をそろえた。紋別プリンスホテルの林孝浩社長は、社員寮など生活基盤を整えることの必要性を強調した。明治屋の内山美樹支配人からは、休日の過ごし方や仕事面でカバーし合える関係が築けるため、「受入人数は2人がベスト」という意見もあった。

 清水会長は「言葉や手続きなどの問題はあるが、外国人スタッフを受け入れるメリットは大きく、ホテル自体も活性化する」としながら、「インターンシップなどを受け入れることで得られる価値や喜びをどうすれば会員に知ってもらえるかが大きな課題」と述べた。

 今回の座談会をもとに作成されるマニュアルは、年内に完成する予定。

山形の魅力を凝縮 「山形座 瀧波」 新装開業

2017年11月1日(水) 配信

3間続きの特別室「KURA01」

 山形県・赤湯温泉の「山形座 瀧波」が7カ月に渡る再生工事を経て、10月1日にグランドオープンした。全室源泉掛け流しの露天風呂付きで、趣向の異なる3タイプ19室が誕生。伝統とモダンなデザインが融合した、山形の魅力あふれる施設に様変わりした。

 8月のプレ開業で、旧館名のいきかえりの宿瀧波から改称した。花笠踊りをはじめとする芸能や天童木工の家具など、山形の魅力をずい所にちりばめた館内で、「座して、時をゆっくり過ごしてもらいたい」(南浩史社長)という。

女性スタッフによる「花笠踊り」

 客室は従来の35室から19室に。蔵を改装した「KURA」(7室)、室内から庭園と桜を眺められる「SAKURA」(6室)、山形の工芸品でコーディネートされた「YAMAGATA」(6室)の3タイプある。全室ツインルームだが、エキストラベッドの対応も可能。客室の露天風呂は1階が「蔵王石」、2階は「ヒノキ」の浴槽にした。

 食事は1階のレストランで。オープンキッチンを囲むカウンターは、食の魅力を存分に楽しめる特等席だ。庄内の魚介や米沢牛に加え、地元の農家が手塩にかけて育てた有機野菜を1品出しで提供する。

 ウェルカムドリンクには秘伝豆のずんだシェイク、女性スタッフによる花笠踊り、出羽かおりの十割そば打ちパフォーマンスや体験など、山形ならではのもてなしも魅力だ。

【平田観光・冨永CEOに聞く】異業種交流加速で “八重山の新しい旅”発信

2017年11月1日(水) 配信

平田観光 代表取締役CEO
冨永若子氏

 沖縄県の八重山諸島で主に離島ツアーなどを販売する平田観光(石垣市)。創業45年の歴史で培ったノウハウを生かし、近年では異業種と連携した新商品の開発などにも力を入れる。今年4月の経営体制変更に伴い、代表取締役CEOに就任した冨永若子氏に今後の展開などを聞いた。

【関西支社・土橋 孝秀】

 ――就任から半年が経過しました。取り組んだことは。

 前経営陣が八重山のヒト・モノ・コトをつなげ、新しい価値を創造するランドオペレーターの役割を強化してきましたが、それを継承し、さらに進化させるのが使命と考えています。

 就任後、自社のインスピレーションブックとムービーを制作しました。多企業に協力いただき、八重山の自然や祭り、歴史、食などの魅力を1冊に詰め込みました。1972年に平田つりぐ店として創業した自社の歴史には触れていますが、あくまで八重山ブランドの向上を目的としました。異業種交流のなかで新しい価値を生み出すという、当社の目指すべき方向を示しました。

 ――具体的な商品展開は。

 アルルウェディングと業務提携し、メモリアルプラン「美ら結」を展開します。

 新婚の方や既婚者の記念日、外国人観光客などを想定し、八重山の伝統文化を取り入れたメモリアルウェディングに、歴史や文化体験、島の希少素材にこだわったパーティーやディナープランなど、普段できないワンランク上の価値をご提供します。

 ほかにも登山や歴史を切り口にしたり、インスタ映えするロケーションフォトプラン、島で有名なおもしろい人に会いに行くツアーなど、他にない八重山の楽しみ方を提案し続けていく、そういったプロデュース性の高さこそ平田観光が創業から45年間大切にしてきたもので、今後もきちんと継承していきたいと考えています。

 ――八重山を訪れる外国人観光客が絶好調です。

 沖縄県で先駆けとなる2002年から訪日外国人誘客の取り組みを進めてきましたが、次のステージへ舵を切る時期にあると思います。

 国内外のセールス拡大とより充実した受入態勢の構築に力を注ぎ、来てくださったお客様の満足度向上に取り組んでいきます。

 国別では当社の場合、LCCでつながる香港が多いです。英語の話せるアジア、そして欧州とつながるアジアの拠点としての香港は重要市場の1つと捉えています。

 社内では約半数のスタッフが英語を話すことができ、日本政府観光局(JNTO)認定のビジットジャパン案内所にも登録されています。

 「平田サロン」という取り組みも進めています。石垣島に住む外国人や異業種の方をお呼びする意見交換会で、交流を通して地域を巻き込んだ観光産業の盛り上がりを期待しています。

 ――国内観光客の誘客策は。

 インバウンドで賑わう一方、国内客の底上げが課題です。「質への転換」がキーワードで、八重山の本来の魅力を深く味わう高付加価値型の商品を増やすことを考えています。石垣島・バンナの森でのセグウェイツアーや沖縄の伝統木造船であるサバニ船でのクルージングは好評で、今後もテーマ性のある商品を展開していきます。

 高付加価値型の魅力を造成するには、スタッフのスキル向上も必須です。定期的に社内セミナーを行い、英会話や歴史、おもてなしなどテーマはさまざまで、広い知見を持ったスタッフ育成に注力しています。

 ――今後の展望は。

 女性目線での新しい八重山の旅スタイルを模索してきましたが、今後はメモリアルプランを皮切りにして具体的な商品造成とプロモーションに取り組みます。世間のニーズをしっかり把握し、常に新しいことにチャレンジする。八重山を訪れる人々が笑顔になれるよう、平田スピリッツを実践していきます。

優秀な人材確保を 「企画」「斡旋」「添乗」力求む(JATA)

2017年11月1日(水) 配信

JATA広報室長の矢嶋敏朗氏がコーディネーターを務めた

 既存旅行会社のトラディショナル・トラベル・エージェント(TTA)が、人材確保に力を入れている。日本旅行業協会(JATA)はツーリズムEXPOジャパン2017で「第6回旅行業界研究セミナー」を実施した。JATAに所属する若手社員5人が登壇しTTAで働く魅力を紹介した。オンライン販売全盛の昨今、実店舗を持つTTAで旅を手配するメリットを再確認。大学生ら250人に伝えることで、優秀な人材確保を目指す。キーワードは「企画力」と「斡旋力」、「添乗力」。

【謝 谷楓】

 ■TTAのメリットを伝えることが必要

 「日本のオンライン旅行市場調査第3版」によると、15年度のOTA(オンライン旅行会社)の販売額は約1兆7千億円。13年度と比較して約1・6倍の増加となっている。TTAのオンライン販売額を含む、オンライン販売総額は2兆3611億円であるため、OTAの販売額は約70%を占める。OTAが販売総額に占める割合は13年度から6・5ポイント増加しているのに対し、TTAは0・9ポイントのみの上昇。一方、TTAのオフライン販売額はOTAの3倍以上で、5兆5500億円。TTAの規模は揺るぎないが、13年度と比べ全体に占める割合は7・4ポイント以上と大幅に減少した。

 JTB総合研究所の「海外旅行実態調査」によると海外旅行の申込方法のうち60%以上がオンラインによるもので、店舗利用は16%しかない。オンライン販売の需要が伸びるなか、店舗を持ち、直接ユーザーに働きかけるTTAは、自身のメリットを伝えきれていない。

旅行会社のオンライン販売比率

 ■「斡旋力」と「添乗力」通じ安心感を

 東武トップツアーズ東京国際事業部でクルーズ事業を担当する兼田純氏は「手配を行うには語学力が必要。しかしそれ以上に、タフな体力が、お客様の要望に応えるためには求められる」と強調する。日本旅行の新宿法人営業部に所属する米山幸輝氏は、営業職ながらクライアントに指名され添乗員として旅に同行することも多いと語った。

 店頭カウンターや旅先など、ユーザー・クライアントと直に接し、親身なコミュニケーションを通じたサービス提供こそ、TTAで働く魅力であり、利用者にとってのメリット。兼田と米山両氏の語った経験は、「斡旋力」と「添乗力」の具体例であり、2つの力を通じた安心感を、TTAは提供し続けて行かなくてはならない。

 ■「企画力」でユニークな商品造成を

 「誰もが簡単に航空券を取ることのできる時代だからこそ、旅行会社の果たすべき役割は大きい」と語るのは、JTBワールドバケーションズ東日本販売本部の市川翔子氏。ユーザーの心をくすぐるユニークなツアー造成を実現する「企画力」も欠かすことはできない。

 2016年の旅行会社数は約1万社。近年は増加傾向にあるが、就活生に人気な第1種は横ばいだ。インバウンド需要を狙う3種の増加が多く、オプショナルツアーを造成するベンチャー旅行会社の台頭も著しい。

 地域密着型で工夫を施したツアー商品など、ユーザーを惹きつける魅力あるコンテンツづくりを得意とするベンチャー企業。この姿勢こそ「企画力」の原点であり、「体験」を商品として扱う旅行会社のあるべき姿といえる。

 オンライン販売全盛のなか、高い「企画力」を生かしたユニークな商品造成を実現する人材が求められている。

就職セミナー参加企業を募集 来年3月20日に開催(JATA)

2017年11月1日(水) 配信

就職活動の活性化を目指す

 日本旅行業協会(JATA)と㈱ジャタは2018年3月20日、東京都墨田区のすみだ産業会館で就職セミナーを開く。1月19日まで30社限定で出展企業を募集している。旅行・観光関連企業であれば会員以外の参加も可能。参加費は10万円(税別)。

 旅行・観光業界を目指す熱意のある学生に対し、業界に特化したセミナーの場を提供することで就職活動の活性化を目指す。また、自社で就職説明会を開催することが難しい中小企業にとっては採用活動の大きな機会となる。

 学生の対象は19年3月卒業予定者。学生は12月22日までの参加登録で特典が付く。

“本物の日本を守って” リピーター対策が必要 『ズームジャポン』ルブラン編集長

2017年11月1日(水) 配信

クロード・ルブラン編集長

 本紙は6月21日号から、フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)」の特集記事の翻訳やフランスの最新情報などを紹介している。同誌創刊者で編集長のクロード・ルブラン氏は、日本を熟知する社会派ジャーナリストとして広く知られ、英国やイタリア、スペインでも日本の情報誌を展開している。ルブラン氏がこのほど来日し、日本の観光施策に対し「本物の日本を守り、インバウンドのリピーター対策をすることが必要」と意見した。

【飯塚 小牧】

日本は「大きな国」

 日本はヨーロッパ人にとってとても「大きな国」です。長い時間で培った歴史・文化、景観があり、それは北海道から沖縄までとても異なります。ヨーロッパ人にとっては面白いデスティネーションです。

 ヨーロッパから日本を訪れる人たちは初めての人が多く、一般的に東京と京都、広島などを周ります。しかし、今、京都は私から見ると「ダメ」になっています。ビジネスに走りすぎて、本物の日本文化が感じられなくなっている。例えば京都にはさまざまな国の人が大勢訪れていて、彼らは着物を着て清水寺の前で写真を撮っていますが、その着物が浴衣のようなペラペラのもので美しくないのです。京都は最も日本文化を感じられる街のはずですが「日本はどこ?」と思いました。とても危惧しています。

 その点、今回私が訪れた大津市(滋賀県)は、パーフェクトです。京都から電車で10分という距離ですが本物の日本がありました。

 私にとって大切なのは「本物の日本を守ること」です。北海道や東北、九州など各地の小さな田舎に残っている日本のルーツを忘れないでほしいのです。

長期的な施策を

 観光庁や日本政府観光局(JNTO)のインバウンド対策は、リピーターに対する施策がみえてきません。これが大きな問題です。観光は日本にとって宝です。守ることが大切で、これにはマスツーリズムではダメです。数字目標だけを追いかけて初めての旅行者にばかり注力するのではなく、長期的に考えていかなければなりません。

 今、ポップカルチャーなどで日本に行きたい人が増え、ブームになっていますが、流行は明日になればなくなります。初めての人は着物を着て写真を撮って、SNS(交流サイト)にアップするだけ。日本文化は関係なく10分で終わりです。

 しかし、リピーターは日本への興味が強い人で、日本の将来のために最も必要な人です。フランスは世界で最も観光客が多く、リピーターを取り込んでいますが、これは本物の生活を紹介しているからです。日本も同じです。我われは「おもてなし」ではない、本物の文化や生活が見たい。寿司や天ぷらだけではなく、家庭料理もB級グルメも体験したいのです。日本人観光客と同じ体験を求めています。ヨーロッパからくる人たちは主にショッピングを目的にはしていません。遠い国から「知らない国を発見したい」という気持ちでやってくるのです。そこで日本の本物の“ソウル”を感じればリピーターとして戻ってきます。

日本文化に触れ合う

 旅館に泊まることは食べ物や地域の精神、景観など日本文化を知るために重要な経験だと思います。料金の面などから毎日泊まることはないですが、ヨーロッパの観光客はホテルや旅館、ゲストハウスなど滞在中に宿を組み合わせて旅をすることが多いです。

 また、日本の精神に触れるにはローカル線に乗ることが最適です。私は青森の五能線が好きですが、地域の人と自然に交流することができます。

日本のすべてを紹介

 国は人や社会、政治、経済、スポーツといろいろな面から成り立っています。2010年にズームジャポンを創刊したとき、日本のすべての問題を紹介していくことを理念としました。読者が日本を理解することで、国の間の交流はしやすくなります。ヨーロッパ人がその国に行きたいと思うには、国を理解することが必要です。観光の情報は付属に過ぎません。

 前回、日本の貧困問題を特集しました。私が初めて日本に来たのは34年前ですが、そのときと日本の現状はまったく違います。今は貧困や高齢化などの問題がありますが、それをありのまま紹介することが重要だと思います。私は日本が大好きだからこそ、負の部分も発信していきたいです。今後はドイツやロシアなどヨーロッパの他の国にも媒体を広げていきたいと考えています。

No.476 べっぷの宿ホテル白菊 オペレーションも個人化に対応

2017年11月1日(水) 配信

 

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気を探っていくシリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」。第16回は、大分県・別府温泉の「べっぷの宿ホテル白菊」の西田陽一社長と、取締役の緑・若女将が登場。早い時期から個人化の流れを意識して、料理の1品出しなどのオペレーションが定着していた同館。さらなる生産性向上の取り組みを探った。

【増田 剛】

西田社長:祖父が1920(大正9)年に別府で陶器の店を始めました。当時別府港から多くの観光客が訪れていたので、最も栄えていた流川通りにカフェー「サロン・ツルミ」を開業しました。1階がカフェーやバー、2階にダンスホールを備え、同じ敷地に小さな旅館も経営していました。

 流川通りから別府駅前に移って、5階建てのキャバレー「ボンツルミ」を始めました。50人規模のバンドが地下からステージに上がってくるなど盛大にショーアップし、ホステスも100人ほどいました。宴会場や会員制クラブなどもあって人が集まり、のちに大分市にも同じような店舗を開業しました。

 57(昭和32)年に中島造船所の保養所の土地を買って4階建ての白菊荘を建てました。

 その後、祖父と父が73(昭和48)年に12階建てのホテル白菊を開業しました。

内藤:ずっと別府の社交場という役割を担っていたのですね。

西田社長:キャバレーは80(昭和55)年まで経営していましたが、時代も変わり、旅館業の方に軸足を移していきました。大型旅館全盛期の時代でした。

 私は1984年に旅行会社に就職し4年間、大阪で営業をしていました。87年11月に父が亡くなり、そのまま宿に戻ってきました。45歳だった06年に4代目社長に就任するまでの20年間は叔父が社長を務めました。

 ――旅行形態の個人化やインバウンドの拡大など、別府にも大きな変化がありました。

西田社長:2012年くらいから別府への観光客は少しずつ増加しています。海外からの個人旅行客が急激に拡大しているなかで、当館では外国人旅行者は1%もいませんでした。今はようやく5%弱というくらいです。

内藤:外国人ではなく、日本人客が大きく増えたのはどうしてですか。

西田社長:開業当時から旅行会社の団体客を主に受け入れていました。しかし、団体旅行が減り、個人旅行化していく時代に、当館は別府湾が一望できる最上階には直営フランスレストラン「ガーランド」、1階には別府割鮮料理「浜菊」という食事処を備えていました。これがほかの旅館にはない特徴として、個人のお客様にも対応できたのだと思います。

内藤:初代はどうして旅館にフランスレストランを造られたのでしょうか。

西田社長:61年に4階建ての白菊荘を建てて開業した当時は、大阪からフェリーで富裕層が多く来ました。1部屋に1人が担当して波止場までお見送りをする典型的な和の旅館でした。観光ブームが来るなかで、旅館のマーケットが大きく伸びると確信して白菊荘を壊し、73年に12階建ての現在の旅館を建てました。建物は新進気鋭のデザイナーが設計し、今でも「斬新なデザイン」と言われることがあります。

 祖父と一緒に経営をしていた父も、根っからの商売人でした。「他の宿ではやっていない、新しいこと」を常に考えていたようです。

 最上階展望レストランはビュッフェスタイルで、地元客向けに和・洋・中華など世界中の料理が楽しめる「ワールドディナーピック」というイベントを、夏季と冬季のそれぞれ1カ月間展開していました。前売券を販売するほどの人気で、つい最近まで続けていました。

 ――客室数はどのくらいですか。

西田社長:73年に81室の本館を建てたあと、80年に15室の東館、84年に24室の西館を建て増しして、現在は全体で120室あります。バブルが弾けたあとも90年代後半まで売上は伸びていきました。

内藤:個室料亭も造られましたね。

西田社長:個室料亭「菊彩香」は先代社長の叔父が計画し、私が社長に就任した後の13年にオープンしました。個人のお客様をターゲットにしたもので、専用の厨房を料亭内に配置しました。当時、別府では個人向けの料亭はほとんどなかったので、先駆けてやりたいという思いは、3代目の叔父と同様に私にも強くありました。

内藤:部屋食から、個室料亭での食事という流れは、多くの旅館でも見られます。しかし、実態は料理の内容を変えているのではなく、単に提供する場所を変えて団体料理を小分けにしているだけのところも多い。一方、オープンキッチンを導入している旅館も増えていますが、しっかりと使いこなせている施設は少ない。

 白菊では10年前にはすでに料理の内容や提供方法まで切り替えられたことに、とても興味があります。…

※ 詳細は本紙1690号または11月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

徳江氏講演会など 愛隣館の館内視察も 全旅連JKK

2017年11月1日(水) 配信

講師の徳江順一郎氏
稲熊真佐子氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、松﨑久美子会長)は10月16日、岩手県・新鉛温泉の「結びの宿愛隣館」で第2回定例会議を開いた。講演会では東洋大学准教授の徳江順一郎氏が「宿泊産業の生産性向上とホスピタリティの両立」に向けて、自動化・機械化やマルチタスク、サービスの選別など必要性を語った。事例発表では、労働改善委員会の稲熊真佐子委員(豊田プレステージホテル)が予約業務のペーパーレス化などによって省力化と時短が実現した取り組みを紹介した。翌17日は、愛隣館の厨房や自動チェックアウトシステムなど館内視察を行った。