参加者を受け付け中 創立10周年の特別セミナー(観光ビジネスコンサルタンツ)

2019年1月7日(月)配信

 観光ビジネスコンサルタンツ(西川丈次社長、大阪市淀川区)は、創立10周年を記念した特別セミナーを2月15日、東京都千代田区区の東京ステーションホテルで開く。現在参加者を受け付けている。

 西川氏はおもてなし経営研究所所長として、ホテルやレストラン、タクシー、バス、観光地などでの体験を元にしたホスピタリティ実践論「もてなし上手」を旅行新聞に連載し好評を得ている。  

 セミナーでは、人とホスピタリティ研究所代表でザ・リッツ・カールトン・ホテル初代日本支社長の高野登氏、東京ステーションホテルマーケティング部セールスマネージャーの岡泉幹雄氏、そして西川氏の3人が登壇し、「『おもてなし経営』と創客ビジネス」をテーマに講演する。

 午後1時開始で5時に終了。参加費は1人3万2400円(税込)。

 問い合わせ=電話:06(6885)6335。

「もてなし名脇役 25」タトゥー隠せる スキンカバーシート

2019年1月6日(日)配信

カラーもナチュラルなど3色から選べる

 昨年、日本を訪れた外国人旅行者は過去最高の3千万人を超え、日本政府観光局が統計を取り始めた1964年以降、最多となりました。このようななか、温泉旅館におけるタトゥー(入れ墨)がある宿泊客への対応も急務となっています。

 タトゥーについて、外国人と日本人で考え方に文化的な違いがあります。観光庁も一律に「入浴をお断り」するのではなく、留意点や対応事例をまとめ、個別の対応改善を促しています。その1つが、シールなどで入れ墨部分を覆うという工夫です。

 グランブルー(千葉市)が販売する「肌かくしーと」はタトゥーや傷あとなどを隠せる、肌に貼るタイプのスキンカバーシートです。このほど旅館ホテル向けに業務用30枚セットが発売されました。極薄0・02㍉のシートで、汗や水に強いほか、貼る時に水が不要なのも特徴。パッチテスト済みなので安心して使えます。サイズは通常判と大判の2種類です。

 卸専用の公式HPには、温泉入浴時の注意やシートの使い方を紹介した外国人向けのポップも用意されているので、こちらの活用も。

肌かくしーと卸用サイト

「観光革命」地球規模の構造的変化(206) 新しい時代の始まりと日本観光

2019年1月6日(日) 配信 

10月には消費税増税も予定されている(画像はイメージ)

 今年は新しい時代の始まりを象徴する年になる。平成天皇は4月30日に退位され、皇太子に生前譲位される。新天皇の即位に伴って新たな元号が定められるので、平成時代が終わり、新たな時代が始まる。また今年は統一地方選や参議院選挙などが予定されており、10月には消費税増税が予定されている。

 2018年に日本を訪れた外国人旅行者は昨年12月中旬に3千万人を超えた。18年末までの1年間の合計が3100万人程度になると予測されている。菅義偉官房長官は記者会見で「20年インバウンド4千万人の目標が射程圏に入った」と述べ、誘致拡大に向けて関連予算を増やす意向を表明している。

 昨年12月下旬に閣議決定された19年度政府予算案では、観光庁予算が約666億円(東北復興枠を除く)になり、前年度比2・4倍増という驚異的な増額だ。新たに導入される国際観光旅客税(いわゆる出国税)の財源から485億円が充当されるためだ。観光庁予算の主要な内訳は、①ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備に278億円②我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化と観光産業の基幹産業化に148億円③地域固有の文化・自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上に224億円。

 観光庁予算の大半はインバウンド振興を意図している。インバウンド振興は日本の観光立国の根幹を為しているが、一方で国内観光の低迷は深刻である。10月に消費税増税が実施されると、内需の冷え込みが懸念されており、国内旅行の冷え込みが危惧される。また宿泊業や運輸業における人手不足は深刻度を増しており、インバウンド激増に的確に対応することは容易ではない。そういう状況の中で、昨年末に改正入管難民法が成立した。宿泊業の人手不足を外国人労働者で補う意味で期待されているが、数多くの解決すべき課題を抱えていることも事実だ。さらに昨年は数多くの自然災害によって観光分野はさまざまな被害を受けた。世界気象機関(WMO)は気候変動の加速による強烈な異常気象の発生頻度がさらに増加すると指摘している。

 新しい時代の日本観光がさまざまな課題を解決しながら、各地域の発展に寄与し、世界の平和に貢献することを祈念している。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(96) 人が集まる職場づくり 「サービス業の価値は」

2019年1月5日(土) 配信 

冷蔵庫でお預かり(画像はイメージ)

 サービス業の価値は「人」で決まります。人を育てるには、時間もコストもかかりますが、人に依存するビジネスも、働き方改革によって難しい時代になってきました。ただ、これを言い訳に人を育てることから逃げてはなりません。

 先日に伺った旅館では、人が価値を創造すると強い決意を持ち、大卒の仲居さんを積極的に採用して、この10年間で平均単価を2倍にしました。しかも、採用エントリーは5―10人に対して、250―300人の応募があったということです。人が活躍できる環境を創造できれば、働きたい人を集めることはできるのです。

 先日、東京でのセミナーを終えて帰阪するときに、スタッフが東京駅で土産品を買いました。冷蔵だったので、帰りに必要な時間の保冷剤をお願いし、新幹線の出発までの待ち時間で、他の店も見て回ろうと考えていたとき、店員から「もしほかに行かれるのでしたら、お帰りまで冷蔵庫でお預かりしましょうか」と、驚くような提案をしてもらったそうです。

 2、3時間の保冷材は無料で、それ以上は有料が普通です。保冷バッグも有料です。この店もそれは同じようでしたが、一旦買った商品を、店で預かってくれることは、ほかではありません。

 仮に、預かりをお願いしても、まず断られます。ただお客様は、まずお目当てのものを買って、残りの時間でほかに良いものがないかを探したいのです。ほかを見ていて、時間が無くなり、お目当てを買えなくなることだけは避けたいわけです。

 だから、冷蔵品と分かっていても、重い荷物とともにそれを持って、他の店を見て回っているのです。このお店の店員は、お客様が自社の商品を一番に買ってくれるうれしい想いを受け止めて、提案をしてくれたのです。

 「そんなことをしたら、冷蔵庫がいっぱいになってしまう」「取りに来られなかったらどうしよう」「忙しいときに取りに来られても困る」「取り間違えてお渡ししてしまったら…」など、私たちも同様に起こるかもしれないリスクを一生懸命に考えて、手間の掛かることから逃げようとしていないでしょうか。

 やると決めて、リスクに対応する術を考えた方が楽しいのではないでしょうか。ビジネスの目的は、創客にあります。一瞬の出逢いであったとしても、その出逢いの中に感動を創り出せれば、またあなたに逢いたいという方を呼び寄せることができるのです。

 こうしたお客様を創り出していくために、不満を与えないそこそこの満足度を提供するより、一度の出逢いで次の来館を決定づけるようなサービスを考えて実行する「考動」できる環境が、働きたい職場を生み出すものなのです。

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

「登録有形文化財 浪漫の宿めぐり(93)」(佐賀県唐津市) 旅館綿屋 ≪堅牢で凝った造りの建物は炭鉱王の別荘≫

2019年1月4日(金) 配信 

重層の瓦屋根が美しい玄関付近。2階屋根の棟には風圧を弱める隙間が作られている

いくつもの屋根瓦の重なりが見事だった。前庭の木々の緑と相まって、落ち着いた瓦の色や桟格子のある窓などが和風建築の良さを漂わせていた。

 建物は木造3階建て、桟瓦葺きで寄棟造り。もともとは唐津の炭鉱で財を成した田代政平が別荘として建てたものである。建築は1905(明治38)年頃とされ、その建物を綿屋が入手したのが1933(昭和8)年頃。後に増改築はあったが、当初部分の外観に大きな変化はない。

 綿屋を営む川添家は、江戸期に唐津市木綿町で綿花の販売をしていた。同時に鮮魚なども扱い、料亭でもあったため、1826(明治9)年の割烹わたやの創業につながった。現在の旅館名は綿の小売業や、店のあった木綿町に由来するなどの説がある。旅館としての登録は1951(昭和26)年にされている。

 割烹わたやの創業から数えて、現在の主人の川添晃さんは5代目にあたる。田代政平から建物を取得した川添次郎は3代目。「商才があったのではないか」と今の女将の悦子さんは言う。それは割烹旅館で資金を蓄えて今の建物を購入し、間もなく3階の増改築などを行ったことからも推測できる。太平洋戦中・戦後の接収を乗り越え、料理のうまい唐津の一番旅館との評を得るまでになった。

 建物内部は書院造りを基本にした和風の装い。登録有形文化財は玄関やロビー回りなどのほか、全12の客室のうちの8室。なかでも建築当初の面影が色濃いのは1階の浦島と1つだけある洋室の赤獅子だ。8畳間の浦島は1間幅の床の間に北山杉天然絞り丸太の床柱があり、書院欄間は熨斗をかたどった透かし彫り。秋田杉を使った平天井は、大きな一枚板のように継ぎ目が見えない。手掛けた宮大工の面目躍如である。造りも堅固で、2005年に起きた震度6弱の福岡県西方沖地震でも瓦が少し落ちただけだったという。

 洋室の赤獅子は離れの趣で羽目板張りの外壁に白ペンキ塗り。かつての入り口だったドアの蝶番にまで彫り物があるのは、見えにくいところに技を用いた職人の心意気だろう。室内は3㍍余りの天井高で開放感があり、シャンデリアの下がる部分にはヒマワリをかたどったような木製の飾りがはめ込まれている。白漆喰塗りの壁とクラシックな上げ下げ窓。玄関脇に応接室を作るのが流行った昭和初期の時間が息づいている。
 客室以外の見どころは玄関付近だろう。起りのある入母屋造りの屋根には、真綿を束ねた模様が彫られた鬼瓦が乗る。旅館の歴史を伝えるものだ。玄関の天井は亀甲型に組んだ格天井で、屋久杉を用いた天井板の木目が面白い。

 宿泊の中心は50歳台以上のゆとりある人々だが、この数年は若い女性客も目立つ。若年層には古い造りが新鮮なようだ。技術と意匠の美しさにも目が向けられるといい。

 

コラムニスト紹介

旅のルポライター 土井 正和氏

旅のルポライター。全国各地を取材し、フリーで旅の雑誌や新聞、旅行図書などに執筆活動をする。温泉、町並み、食べもの、山歩きといった旅全般を紹介するが、とくに現代日本を作る力となった「近代化遺産」や、それらを保全した「登録有形文化財」に関心が強い。著書に「温泉名山1日トレッキング」ほか。

 

【まえばし発酵めぐりの旅】新たな魅力再発見 風土が生んだ発酵食品

2019年1月3日(木) 配信

元祖焼きまんじゅう「原嶋屋総本家」

 群馬県・前橋市の「前橋観光コンベンション協会」は昨年、首都圏からの誘客宣伝事業として、首都圏在社のメディアを対象としたモニターツアーを開いた。同市には風土が育んだ味噌や日本酒、チーズなど数々の発酵食品が存在する。ツアーでは、同市の新たな魅力再発見として、その風土が生んだ発酵食品を食べ歩く「まえばし発酵めぐりの旅」に関連する施設などを実際に訪問し、今後の情報発信に役立ててもらうのが狙いだ。主な観光素材を紹介する。

【古沢 克昌】

 前橋観光コンベンション協会が主催した「まえばし発酵めぐりの旅」モニターツアーは、東京駅八重洲口の「丸の内鍛冶橋駐車場」からバスで移動する日帰りツアーとして企画された。

 まず到着したのが、前橋市街にある1857(安政4)年創業の元祖焼きまんじゅう「原嶋屋総本家」。江戸時代の古民家を復元した店舗内に入ると、目の前で竹串に刺されたまんじゅうが焼かれ、味噌だれが塗られていた。味噌が焼ける香ばしい匂いが食欲を刺激し、出来立ての焼きまんじゅうを試食した。群馬県民にとっては子供のころから当たり前のように食べている「ソウルフード」なので、県外者は群馬県民になった気持ちで食べてみるのも一興か。

 原嶋屋総本家の営業時間は午前10時30分から売り切れじまい。定休日は火曜日。駐車場あり。

 続いて「中央前橋駅」に移動し、登録有形文化財に指定されている上毛電気鉄道「デハ101」に貸し切り乗車。デハ101は1928(昭和3)年に製造され、動く電車としては現在日本で一番古い電車といわれている。営業当時の昭和初期を思わせるそのレトロ感あふれる角ばったデザイン、モーターが吊り掛け式と呼ばれている古典式で「ウーウー」と唸るような独特の低駆動音が車両に直に伝わり、鉄道愛好家だけでなく一般マニアからも人気が高い。

 デハ101車内では、あかぎ駅までの移動中に昼食タイム。創業1890(明治23)年の味噌漬けの老舗「たむらや」の「和豚もちぶた弁当」をいただく。餅のように柔らかい豚肉をオリジナル味噌に漬け込んだ人気の弁当だ。価格820円(税込)。

上毛電気鉄道「デハ101」車内

 午後からは1877(明治10)年創業「栁澤酒造」を見学。代表銘柄は「桂川 上州一」で全国的にも珍しい「もち米四段仕込み」で造られる贅沢な甘口の本醸造だ。こちらでは酒蔵見学と4種類の酒を試飲。5代目の栁澤清嗣さんは「赤城南麓では夏は農作業、冬は養蚕と1年中、肉体労働が多い土地なので、仕事後は夕食の前に毎晩必ず酒を飲みます。甘口の酒は酒自体に味わいがあり、つまみがなくても飲めるので、疲れた体に活力を与えてくれる甘口の酒が好まれたのだと思います」と語る。しかし、「近年は甘口の酒は絶滅危惧酒(種)です」と笑いを誘う。純米酒以上の酒も造っているが、伝統のもち米を使った本醸造を大切にしつつ、少量の仕込みで高品質を維持しているという。

「栁澤酒造」で酒蔵見学

 続いて、2013年にオープンしたチーズ工房「スリーブラウン」を訪問。「牛を飼ってチーズを作りたい」という夢を持ち続けた松島俊樹・薫ご夫妻が、11年に赤城南麓で牧場をつくり、酪農を開始。ブラウンスイス種の3頭の牛から飼育を始めて、現在は5頭の世話をしながらチーズ作りをしている。店舗では「モッツアレラ」「カチョカバロ」など、ミルクの優しい味わいをしっかり感じることのできる手作りチーズを販売している。

チーズ工房「スリーブラウン」

 前橋に来たらぜひ立ち寄りたいのが、国の重要文化財にも指定されている「臨江閣」。本館と別館、離れの茶室が渡り廊下で結ばれている。本館は1884(明治17)年、当時の群馬県令である楫取素彦(かとりもとひこ)や市内の有志らの協力と募金により迎賓館として建築された。1910(明治43)年に建てられた別館は、壮麗な外観が目を引く。大広間は詩人の萩原朔太郎の結婚式にも使われたという。

 別館1階の「かふぇあんきな」では、明治時代当時の味を再現した「維新珈琲セット」がおすすめ。季節の和菓子付きで900円。深入りローストコーヒー豆を細かく挽き、和三盆を三温糖に置き換えてシナモンを煮出したコーヒーだ。飲んだ後は萩焼の茶碗をそのまま持ち帰ることができ、珈琲以外に緑茶セットも用意されている。

 臨江閣の見学時間は午前9時―午後5時(入場は閉館時間の30分前まで)、定休日は月曜・祝日の翌日、12月28日―1月4日。入館料無料。

 モニターツアーの最後は、昼食で弁当を食べた味噌漬け専門店「たむらや」前橋南部店に立ち寄り。1階売店では群馬土産に最適な味噌漬けを販売。たむらやオリジナル味噌「さざれ石」を使用した「焼きまんじゅう」や「みそソフトクリーム」の軽食コーナーもある。2階レストランでは最大120人まで受け入れが可能。群馬ならではの「ソースかつ丼」「和豚もちぶた丼」「舞茸天ぷら」などが食べられる。近隣には物販のみの千代田本店、若宮店、高崎飯塚店もある。

たむらやの「和豚もちぶた弁当」

* * *

 前橋観光コンベンション協会は、健康食品として注目される発酵食品を切り口に、2020年春の大型観光キャンペーン「群馬デスティネーションキャンペーン」に向け、新たな誘客戦略を打ち出そうと初めて企画した。19年2月には一般市民を対象としたモニターツアーを、実際の有料ツアーは19年5月下旬―6月の間に(募集開始は年度末より)実施する予定だ。

 問い合わせ=前橋観光コンベンション協会 電話:027(235)2211。

「トラベルスクエア」あえてネガティブな予測を

2019年1月2日(水) 配信 

2019年の観光業界をあえてネガティブに予測する

 一般に未来予測というのは悲観的なことを言う方がコメンテーターとしては安全といわれる。

 というのも、「これから先好況が来ますよ」と楽観論を唱えて、それが当たらないと、「予想と違うじゃないか」と叱られてしまい、時によって恨まれてしまうことがあるからだ。これに対し、「うーん、先行き難しそうです」としかめっ面して言うと、人気はあまり出ないが、外れて景気が良くなると、予想を外していると批判されても、景気が良ければ結果、皆ハッピーになれるから、それほど叱られないですむ、という面がある。

 楽観論のハードネス、悲観論のイージネスというものだ。という前提で2019年を占うとなると、悲観論的な立場をとりたくなってしまう。イージーだろうと誹られても。

 表面的にはラグビーのワールドカップもあるし、20年を目前にして活気が生まれるかもしれない。大阪万国博、IRの話題もある。人手不足も18年度内に急ぎ決着をみた入管法改正で、外人労働者枠増大でやや緩和されるかもしれない。

 トピック的には結構、いいカードが手札に来ている感じがするのだが、やはり疑い深いジャーナリストの端くれ、ネガティブな面を見てしまう。

 まずはインバウンド景気。この正体は単純に巨大人口を抱える中国の景気がまだまだ健在だから、ということに尽きる。国力を伸ばしている国の隣国が観光で潤うのは、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ、グランツァー時代のころから不変の法則だろう。

 だから僕がいちばん懸念しているのは中国経済の減速。トランプさんが仕掛けている米中経済戦争の行方次第で、どうなるか? 他にも英国のEU脱退に伴う欧州の深刻な経済不安などもある。

 それからロボット化、AI化。メーカー方面の自動化はこれから2、3年の短いスパンで急速に進み、第2次産業から人手が余る。

 それも不況要員になるが、サービス産業は今の人手不足を外国人で補っていると、そこから出てくる優秀な人材獲得に後れを取ってしまう。それに20年を超えればホテル旅館は一気にオーバーストア化し、リストラ必至になるだろう。人手不足の今だからこそ、少数精鋭型オペレーションを確立しておきたい。

 そして今年秋の消費税10%化。相当なダメージになるだろう。駆け込み需要はあるかもしれないが、外食や旅行は買いだめできないからその恩恵は受けにくい。そして増税後、不要不急とされるレジャー支出の削減現象は結構、長引くと思っている方が正解だと思う。

 どれも当たってほしくない予想だが、僕自身は20年以降のサバイバルのために、最も大事な準備な年と位置づけている。

 

(跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健)

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 松坂 健 氏
1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年から跡見学園女子大学教授、現職。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

〈旬刊旅行新聞1月1日号コラム〉2019年の観光業界 海外旅行も順調に増加 健全な発展へ

 2019年1月1日(火) 配信 

2019年の観光業界 健全な発展を祈る

2019年は大きな出来事が控えている。

 年明けの1月7日から、国際観光旅客税(出国税)の徴収が始まる。出国するたびに1千円が徴収される。旅行動向への影響はほとんどなさそうだが、税収がどのように使われるのか、厳しい目が注がれるだろう。

 5月1日には新元号となる。これに合わせて、4月27日から5月6日までゴールデンウイークが10連休となり、祝賀ムードのなか、観光業界にとっては、大きな追い風となりそうだ。

 6月28、29日には大阪でG20首脳会議が開かれ、世界中の目が日本に集まる。

 9月20日から11月2日まで、ラグビーワールドカップが開催される。開催地は、札幌市、釜石市、熊谷市、調布市、横浜市、袋井市、豊田市、東大阪市、神戸市、福岡市、熊本市、大分市の12都市。参加国をはじめ、世界各国のラグビーファンが日本の地方都市を訪れる機会が増えそうだ。

 一方、10月1日から消費税が10%に引き上げられる。旅行意欲や消費の低下が予想される。

 プラスとマイナスの両面が見込まれる19年。JTBはこのほど、旅行動向の見通しを発表した。

 これによると、19年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の3550万人と予想。18年は12月18日に史上初の3千万人を突破したが、20年の4千万人に向け、大幅な伸びを見込む。

 国内旅行人数は良好な景況感と、祝日数の増加などが影響し、前年比1・5%増の2億9090万人と堅調に推移するもよう。

 海外旅行人数は同1・1%増の1910万人と過去最高に達する見通しだ。12年に1849万人を記録したあと、13年は同5・5%減の1747万人、14年は同3・3%減の1690万人、15年は同4・0%減の1621万人と低迷が続いた。

 しかし、16年は同5・6%増の1712万人、17年には同4・5%増の1789万人と増加。18年には過去最高となる1900万人に迫る勢いだ。近年、訪日外国人旅行者数の増加ばかりが話題になっていたが、旅行業界の健全な発展には、海外旅行者数も順調に増加していくことが望ましい。

 JTBは19年の海旅について、「GWが10連休となることで、すでに販売が始まっている旅行各社の海外旅行の予約時期が従来よりも早まる傾向がみられる」とし、「欧州などの遠距離方面を中心に前年同期比で2―5倍の予約者数となっている会社もある」としている。

 18年12月8日に出入国管理及び難民認定法が改正され、19年4月から施行される。人手不足で悩む宿泊業界に外国人労働者の受け入れが本格化する。

 日本文化を守りながら、国際化する観光産業の最前線として、優秀な外国人労働者を迎え入れる。日本人労働者と力を合わせ、良好な労働環境を作り上げていくことが大きな課題となる。 

 宿泊業界は生産性向上への取り組みの加速も必要だ。バックヤードの省力化や、省エネへの取り組みは業界全体で共有化しなければ、さらなる発展が見込めない。本紙もさまざまな先進事例を紹介していきたい。

 18年は自然災害が多発したが、19年は防災、減災への意識を高めながら、観光業界全体が明るい年になることを祈っている。

(編集長・増田 剛)

石井大臣、20年にインバウンド4千万人「視野に入った」 2019年新春インタビュー

2019年1月1日(火) 配信 

新春インタビューに応える石井啓一国土交通大臣

石井啓一国土交通大臣は2018年に新春インタビューを開き、19年の抱負を語った。18年12月18日に訪日外国人旅行者数は初めて3千万人を超えた。政府目標とする訪日外国人旅行者数の2020年4千万人達成が「視野に入った」と好調な訪日需要に期待感を示した。羽田空港と成田国際空港の首都圏空港の発着容量の増枠については、関係自治体や住民らとの協力が大事だとした。

 19年にはラグビーワールドカップ、20年は東京オリンピック・パラリンピックなどが控える。「世界の目が日本に向く。 我が国の魅力を海外に発信する絶好のチャンスだ。これら機会も活用し、『明日の日本を支えるビジョン』に基づいて、新たな訪日需要を掘り起こす。今後は幅広い国・地域からの旅行者を確実に増やし、地方への誘客を促進していく」と強調した。

 1月7日からは国際観光旅客税(出国税)が始まる。19年度は税収が満年度化し、歳入は500億円となる。出国税も活用しながら「政府一丸、官民一体となって目標達成に取り組んでいきたい」と述べた。

 羽田・成田の両空港については、それぞれ20年に年間約4万回、計8万回の増枠へ取り組みを進めている。実現に向け、関係自治体や住民に対する丁寧な情報提供を引き続き進めていく。「できる限り多くの理解を得ることが大事。機能強化へ尽力していく」と話した。

【全国女将サミット 30回記念大会は東京で】 7月1日、京王プラザホテルで開催

2019年1月1日(火) 配信

2019年 年謹賀新年 旅行新聞新社 社員一同

 今年30回の節目を迎える全国旅館おかみの集い(第30回 全国女将サミット2019東京)は7月1日、京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催する。記念大会を企画・運営する全国旅館おかみの集い実行委員会の委員長には、小田真弓女将(石川県和倉温泉・加賀屋)が就任した。

 昨年12月に実行委員会を開き、会場と開催日を決めた。全国女将サミットは各地の女将たちが交流できる場を「自らの手で」作りたいという思いがカタチとなり、1990年3月に第1回大会を京都ホテル(京都市)で開いた。以後、「女将のための 女将による 女将の会議」という趣旨を軸にしながらも、時勢を反映して交流の場から勉強の場へ、さらに地域開催を通じて、日本の文化や伝統を学ぶ場として、参加者同士交流を深めてきた。これまで延べ4千人以上の女将たちが参加している。

 30回を迎える今年は記念大会と位置づけ、過去に参加いただいた女将の皆様はもちろん、初めて参加するという女将にも「楽しみの中に学びがある場」(小田女将)になるようプログラムを企画する。

 全国の女将の皆様、今夏はぜひ、京王プラザホテルでお会いしましょう。

※詳細は本紙1740号または1月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。