No.329 産官学連携が1つの形に - 熱海で高齢者に優しいまちづくり

産官学連携が1つの形に
熱海で高齢者に優しいまちづくり

 静岡県熱海市は、高齢者を「プラチナ世代」と位置づけ、高齢者にやさしいまちづくりを推進する熱海プラチナ世代応援プロジェクト「あたプラ」を立ち上げ、10月の1カ月間、高齢者に心と身体の健康や癒しを提供する体験プログラムや交流型イベントを展開した。同プロジェクトは産官学連携の地域活性化プロジェクト「大学生観光まちづくりコンテスト2011」でJTB法人東京賞を獲得した玉川大学高千穂ゼミのプランがもとになっている。関係者を取材した。

【伊集院 悟】

 静岡県熱海市は、高齢者を色あせず長年輝き続ける「プラチナ世代」と位置づけ、高齢者にやさしいまちづくりを推進する熱海プラチナ世代応援プロジェクト「あたプラ」を立ち上げた。

 10月の1カ月間、高齢者に心と身体の健康や癒しを提供する体験プログラムや交流型イベントを展開。認知症予防や脳と神経組織の発達を促進するといわれるDHAが豊富に含まれる新鮮な魚を食べて、船釣りなどの体験・交流を楽しむ「熱海おさかなフェスティバル」や、高齢者や運動習慣の少ない人にも負荷が少なく、安全な陸上と水中の2種類の運動・リラクゼーションプログラム「熱海養生法」、町歩き(ウォーキング)と足湯を使った簡単な足の運動とセルフマッサージという2種類のリラクゼーションプログラムを組み込んだ「温シェルジュが案内する、お散歩カロリーマップ町歩きと足湯養生法」などを実施した。

 

※ 詳細は本紙1487号または12月19日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

2012年の観光業界 ― 課題が見えた年だった

  「本紙見出しで振り返る2012年の観光業界」(4―5面参照)を今年もまとめた。10、11月は記憶に新しいが、1、2、3月など前半は過去の新聞をめくりながらさまざまな取材の思い出などが蘇ってきた。

 昨年は、東日本大震災という未曽有の災害が発生し、社会全体、そして観光業界も震災に関連した出来事や話題が多かった。しかし、今年は根底の部分で震災の経験をベースにした、新たな動きが芽生えてきた印象がある。観光業界でも電力不足による省エネへの取り組みが進んでいるほか、自然災害に対する防災意識の高まりも見られる。今年も7月に九州北部豪雨が発生し、広範囲で甚大な被害を受けた。5月には茨城県つくば市や栃木県真岡市などで竜巻の被害があった。沖縄にも大型の台風が襲った。数え上げるときりがない。本紙11月21日号で掲載したが、日観チェーン所長の安藤寛一氏が指摘するように、来年は災害が多発する「五黄」の年にあたる。「五黄」の年には、過去にも関東大震災、阪神淡路大震災、新潟中越大震災、プーケット大津波などが生じており、一層の防災の心がけが必要だろう。

 一方で、今年は4月には関越自動車道高速ツアーバス居眠り運転事故、5月には広島県福山市のホテルプリンスの火災事故、11月には万里の長城ツアー登山遭難事故などが発生した。いずれも業界の安全性が問われる事故となった。監督官庁も今後の対応について検討に入っているが、やはり業界自らが努力をして、自主ルールづくりをしていくことが大切である。また、12月に入って起こった、山梨県笹子トンネルの崩落事故は、今後日本のインフラ問題を考えるきっかけとなる悲惨な事故だ。道路や橋の新設は新たな動脈となる“メリット”ばかりではなく、継続的な補修費も莫大にかかる。これからの世代が負担しなければならなくなるという「負」の部分もしっかりと考えなければならない。

 明るい話題もあった。東京スカイツリーや東京駅舎復原などによって、新たな観光スポットが現れた。しかし、これらをどう生かすかが観光業界の課題でもある。

 近隣諸国とは領土問題が激化した年であった。政府も民間も外交力が試される年だ。13年が良い年になることを祈ろうと思う。

(編集長・増田 剛)

「ありがとうCP」展開、宿泊で1千円のクーポン券(岩手県宮古市)

宮古市の観光関係者
宮古市の観光関係者

 岩手県宮古市は11月1日から来年3月20日まで、“復興支援に感謝”と銘打って「宮古に泊まってありがとうキャンペーン」を展開している。宮古市内に宿泊(5千円以上)すると、1千円分のクーポン券がプレゼントされ、道の駅や、みやこ浄土ヶ浜遊覧船、浄土ヶ浜レストハウスなどをはじめ、岩手県県北バスやタクシー、ガソリンスタンド、レストランなどで利用できる。

 人気観光スポットの浄土ヶ浜では、来年4月に遊覧船とレストハウスを結ぶ遊歩道が完成する。浄土ヶ浜パークホテルでは魚市場のセリを見学できるプランなども設定し、「昨年よりも復興が進みおもてなしができるようになった」と話す。

 田老地区では、宮古観光協会が今年4月から「防災意識を高めてもらおう」と、被災地をガイドする1時間程度のツアーを実施している。防潮堤の上から30分程度津波被害を受けた田老地区についてガイドが説明する。さらに3階まで津波で被災した「たろう観光ホテル」の6階から撮影した映像を、同じ場所で上映する。1人から参加でき、料金は復興支援協力金として4千円(約1時間)。また、被災地では半壊した建物は撤去されていくなかで、たろう観光ホテルは保存の方針だという。

 11月28日に、休暇村陸中宮古やグリーンピア三陸みやこなど宿泊施設や、観光施設などの関係者13人が本紙を訪れ、毛ガニやウニ、ホタテなど宮古の冬の海の幸などたくさんの魅力をPRした。

ポスコン募集開始、オンライン投票を導入(第61回日本観光ポスコン)

 日本観光振興協会は12月28日まで、日本観光ポスターコンクールの募集を行っている。一昨年に60回を迎えた同コンクールは、昨年度、実施方法などの見直しで開催を見合わせたため、今回で61回目。今回から、選考過程に一般消費者のオンライン投票を取り入れ、Webサイト上でポスターをPRする機会も提供するなど、環境の変化に合わせた内容に変更した。

 募集作品は、2012年度中に制作されたものか観光宣伝に活用されたもので、本コンクールに未応募のもの。応募者の資格は地方自治体や観光協会、観光振興を目的として結成された協議会・実行委員会など。

 審査基準は(1)【表現性】観光地のコンセプトをわかりやすく明確に表現していることや写真、コピー、イラストの表現にすぐれているなど(2)【誘客性】一般消費者に「ここに行ってみたい!」と思わせるものが感じられる。旅の楽しさが伝わる(3)【地域性】地域の持つイメージとマッチしている。従来のイメージに捉われず新しい魅力をコンセプトにしているなど(4)【社会性】消費生活において旅の持つ社会的役割の向上に資するもの。新しい旅の提案――の4つの視点。賞は国土交通大臣賞が1点、総務大臣賞(予定)が1点、観光庁長官賞が1点のほか、日本観光振興協会会長賞や該当作品がある場合は特別賞、入賞を予定。

 応募はコンクール専用サイトの応募フォーム(https://contest.japandesign.ne.jp/applies/input/poscon2012 )から提出する。作品の規格はA0版、A1版、B0版、B1版。応募画像データはJPEG形式で、画像サイズは天地左右自由の880×620ピクセル以内(2枚目以降は600×450ピクセル以内)。容量は1枚500キロバイト以内(2枚目以降は200キロバイト以内)。色はRGBカラー。なお、1次審査通過作品は後日、現物を提出する。

 問い合わせ=電話:03(6222)2534。

「クレーマーの意義」発刊、本紙連載の奥野圭太朗氏(旅行新聞新社)

本紙で今年2月21日号から9月21日号まで連載していた奥野圭太朗氏の「旅行業界におけるクレーマーの意義に関する社会学的一考察」がこのほど、書籍化された。発行は旅行新聞新社。

 近代社会における経済関係は「生産者」と「消費者」に分離しているが、観光においては、「生産者」の側に立った研究がほとんどで、「消費者」側の研究はほとんどなされていないのが実情。

 この観点から、奥野氏は“本来のクレーマー”とは、「レストランやホテルなどの対象を、より良いものにしていこうとする『崇高な意志』のもとに、自らが犠牲になって、問題点を対象に嫌がられるのも覚悟で指摘する客のことを指す」と定義し、旅行や出張の多い環境のなかで、ホテルや航空会社、ガイドなどの具体例をあげながら、検証を続けていく。奥野氏自身が「本来のクレーマー」となり、さまざまなシチュエーションのなかで、ホテルや航空会社、旅行会社が対応していく過程を克明に辿り、実際に起こっている旅行業界の問題点をあぶり出すことに挑戦している。現場担当者には、息が詰まるような緊迫したシーンが個別事例として提示されている。

 「旅行業界にフィードバックされる形で役に立つことを願ってやまない」と著者がいうように、旅館やホテル、旅行会社、航空会社、さらには民間会社だけでなく行政機関にも参考になる事例が詰まっている。学術的な研究材料としても活用できる。

 A5判76ページ。定価は本体850円(税別)。送料含め980円。今後電子書籍化も予定している。

 問い合わせ=旅行新聞新社 電話:03(3834)2718。

首都圏300組に3万円提供、冬の三陸まるごと体験ツアー(さんりく基金)

 さんりく基金は、東日本大震災で被災した岩手県沿岸部12市町村の宿泊、飲食、買い物、交流プログラムに利用できる「三陸応援交流券」(3万円分)を抽選で首都圏に在住する300組に提供する「冬の三陸まるごと体験事業」を企画した。復興した宿に泊まって、岩手三陸地域の魅力を体験してもらう。募集期間は11月26日から12月15日まで。

 晴天の日が多い冬の三陸は、毛ガニ、アワビ、鮭、牡蠣など海の幸がもりだくさん。「三陸まるごと体験ツアー」は5コース、6つの日程で、来年1―2月に、岩手三陸の旅を提案する。洋野町、久慈市、野田村、普代村、田野畑村、岩泉町、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市の15軒の営業を再開した宿が参加。「三陸応援交流券」(3万円分)はツアー期間中の宿泊に加え、飲食、買い物、交流プログラムに利用できる。

 参加者には旅のレポート(写真と400字程度の文章)を書いてもらい、「三陸まるごと体験ツアー」ホームページなどで公開し、地域の魅力を発信していく予定だ。

 問い合わせ=めんこいテレビ内・三陸応援交流圏事務局 電話:019(656)3301。 

合格率が5・5%増、12年度旅行業務管理者試験(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)がこのほど発表した、2012年度総合旅行業務取扱管理者試験の結果によると、総受験者1万1534人のうち、合格者は3517人だった。

 合格率は前年度比5・5%増の30・5%。前年度に比べ、受験者は299人減少したが、合格者は561人増えた。

 合格者の内訳は、旅行業が40・7%と最も多く、大学生の17・9%、旅行関係以外の会社員の12・5%と続く。年齢別で最も合格者が多かったのは19―23歳の27・9%で、次いで30―39歳の26・5%、24―29歳の24・5%。最年少合格者は16歳、最年長合格者は73歳だった。

 受験区分別にみると、受験区分A(業法・約款・国内旅行実務・海外旅行実務)の合格者は前年度比46人増の823人。合格率は同1・7%増の14・3%。合格率が高かったのは、受験区分F(約款)で、合格率は同4・4%増の92・1%増、合格者は同188人増の538人。次いで、受験区分D(業法・約款)は同0・7%増の70・6%、合格者は84人増の990人。

 また、試験不合格者のうち、「国内旅行実務」「海外旅行実務」の科目の合格基準に達している場合、来年度に限り科目合格者として、当該科目の受験が免除される。今回の該当者は合計1053人。 

経常益276%増の187億円、海旅好調、大幅な増収増益(JTBグループ連結中間決算)

11月16日に国土交通省で開かれた会見
11月16日に国土交通省で開かれた会見

 JTBグループの2012年上期(4―9月)の連結決算によると、経常利益は前年同期比276・3%増の186億8500万円となった。海外パック「ルックJTB」や法人営業が好調に推移し、売上高は同16・4%増の6379億400万円。営業利益は404%増の171億1100万円、当期純利益は同408・1%増の103億9千万円と、大幅な増収増益となった。

 国内旅行の売上高は同11・7%増の2829億円。震災の影響により東北方面への旅行の一部で回復の遅れはあるものの、全体では順調に推移した。とくにスカイツリーなど新たな施設が多数開業した東京は、地方からの集客が大幅に増加。また、予約状況によって価格が変動するタイプの宿泊旅行が好調に推移した。

 海外旅行の売上高は同23・3%増の2734億円。企画商品「ルックJTB」は商品革新3年目としてパンフレット改革などを行った。主力のハワイ方面では現地巡回バスを投入するなどの取り組みもあり、夏旅の販売促進によって家族旅行が大きく伸長した。ロンドン五輪で沸いたヨーロッパなどのロング方面が好調に推移した。上期の取扱人員は202万人となり、初めて200万人の大台を突破した。また、海外旅行における同社の取り扱いは、日本人出国者数におけるシェアが21・3%(同1・7%増)となった。

 12年度の下期は震災の反動も一巡し、概ね前年水準で推移している。中国や韓国などとの国際情勢による下振れリスクも想定され、売上高の伸び率もやや鈍化傾向を見込むが、通期の売上高は、08年度以来となる1兆2千億円(前期比6・4%増)を上回る予想を立てている。営業利益は同39・3%増の158億円、経常利益は同41・8%増の180億円。従来予想の70億円を110億円上回る上方修正を行った。当期純利益は同139%増の80億円で、当初予想から60億円上回る見通しだ。

第38回「100選」決まる、新たに5施設入選

11月28日に行われた100選選考審査委員会
11月28日に行われた100選選考審査委員会

 旅行新聞新社・100選選考審査委員会は11月28日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞「日本の小宿」10施設を決定した=写真。

 「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第22回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2013年1月11・21日合併号紙面および、同1月11日に更新する旬刊「旅行新聞」HPで発表する。

 今回の総合100選では、新たに5施設が入選。表彰・発表式は来年1月18日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国約1万6800の旅行会社(支店や営業所含む)対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定した。主催は旅行新聞新社で、毎年実施している。今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 今回も旅行会社の皆様からのたくさんのご投票ありがとうございました。

やまなし女将の会設立、おもてなしを推進

設立総会には県内の女将が一堂に会した
設立総会には県内の女将が一堂に会した

 山梨県内の旅館・ホテルの女将たちが結束し、地域経済の活性化や観光振興をはかろうと「やまなし女将の会」(河野暢子会長・石和温泉「富士野屋夕亭」社長)を発足。11月6日に甲府市の常磐ホテルで設立総会を開いた。女将の会は県内の65施設、71人で構成される。

 山梨県は昨年12月、「おもてなしのやまなし観光振興条例」を制定。おもてなし週間を設けるなど、県内を訪れた観光客に向け感動のもてなしを提供すべく、取り組みを行っている。今回の「やまなし女将の会」は県内各地で活動していた女将会の統一組織とし、全県一丸となったもてなしの推進を強化していく。

 女将の会では今後、おもてなし向上に向けた勉強会や、ワインの講習会なども計画し、観光PR活動を行っていく予定。総会後には、おもてなしアドバイザーを務める、ザ・リッツ・カールトン前日本支社長の高野登氏による講演も行われた。