【はとバス・中村靖社長インタビュー】 インバウンド強化へ、五輪後見据え「10年ビジョン」

はとバス・中村靖社長
はとバス・中村靖社長

 はとバスの新社長に東京都交通局長などを歴任した中村靖氏が昨年9月25日付で就任した。同社は東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた「10年ビジョン」を策定中で、これまで以上に、インバウンドの対応に力を入れていくという。中村社長に就任の抱負や同社の2014年度(14年7月1日~)の動向、専門である東京の交通についてうかがった。
【伊集院 悟】

 ――社長就任の抱負をお聞かせください。

 東京都交通局時代に仕事のパートナーとして、はとバスを外からみていて、とても堅実で高品質なサービスを提供し、まさに「東京観光の顔」というイメージがあった。プライベートで妻と富士山に登るコースに参加したことがあるが、スタッフの対応はとても親切で気持ちの良いものだった。

 はとバスのなかに入ってみると、それが努力の賜物であったことを痛感。お客様アンケートをすべてチェックし、サービスの向上をはかろうと日々努力している。はとバスは東京を代表するブランド。先人が築き上げ長年保ってきたはとバスブランドを維持・発展させていくことが私の役割だと思っている。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定や円安など良い流れが来ており、近年、日本を訪れる外国人観光客が増えている。はとバスをもっと海外の方に知ってもらい利用してもらうべく、インバウンドの対応にはこれまで以上に力を入れていきたい。13年度の英語・中国語コースの輸送人員は約6万7千人で、約3割増のペースで推移している。東京五輪の20年までには、これを約20万人にまで増やしていきたい。

 はとバスはこれまで3年ごとの戦略を考えてきたが、今、五輪後も見据えた「10年ビジョン」を策定しており、1月に発表する予定だ。五輪の時期だけでなく観光業を発展させていくことが重要で、その後を見据えた戦略が必要になってくる。

 就任のあいさつでは、「やる気・根気・元気・本気」をテーマに挙げた。やる気は現状に満足せず前向きにチャレンジする気持ち、根気は1日たりとも基本のルールを疎かにしてはいけないという安全面を担うドライバーなどの愚直なまでの地道な努力、元気は明るく健康第一であること、本気は成果が出るまで本気で取り組む大切さなど。

 ――2014年度の動向を教えてください。

 14年度7―10月の利用人員は、前年同期比7・7%減の39万7千人。定期観光の日本人が同9・6%減の27万6千人、外国人が同24・1%増の2万8千人、企画旅行が同9・0%減の9万3千人。12年度はスカイツリー効果で東京観光が大幅に伸び、13年度もその追い風で好調に推移し、今年度はその反動で少し落ちている。この冬シーズンはよりお客様のニーズに合ったコース設定に変更し、イルミネーション観光などで盛り返していきたい。

 インバウンドは順調に伸びている。7―10月の利用人員は、英語コースが同20・1%増の2万2千人で、中国語コースが同41・8%増の6千人。とくに、中国語コースは対前年比でみると4割増と大幅に伸びている。ただ、英語コースに比べて母数が少なく毎日の運行ではないので一概に比較はできないが、両コースとも当初の目標より好調に推移している。

 14年度(14年7月―15年6月)の利用人員目標は前年度比0・2%増の124万1千人。定期観光の日本人が同1・1%減の83万9千人、外国人が同14・5%増の7万7千人。企画旅行は同0・6%増の32万5千人を目指す。

 ――5年後に東京五輪を控え、東京の交通環境整備を不安視する声も一部でありますが、東京都交通局時代からの専門である東京の交通についてどのように捉えていますか。

 たとえば鉄道の新線などは間に合わないので、柔軟性の高いバスの機動力を発揮して、東京五輪という需要の瞬間風速に対応していくことになると思う。これは当社だけの話ではなく、路線バスも含めた全バス事業者が協力して体制を整えていく必要がある。

 東京、ひいては日本の交通機関は時間に正確で、きれいで清潔。そして、困っている人がいれば助けようとする「おもてなし」精神も溢れている。ただし、外国人にわかりやすいかといえば必ずしもそうではない。バリアフリーや外国語表示などを徹底し、外国人も含め、高齢者や妊婦、障がい者など、すべての人に優しい交通機関になっていければ良いと思う。五輪に向け、全交通機関で輸送量はカバーできるはずなので、そういったソフトの部分の充実が求められていると思う。
 道路交通という点では、関東首都圏は放射線状に道路が広がっているので、交通渋滞などを考えると、都心の通過交通として、迂回する環状線が必要とされている。

 また、航空交通では、羽田空港が五輪後には発着枠が飽和するので、滑走路の拡張や飛行経路の見直しなど、成田空港とセットで、総合的に議論していく必要があると思う。

 ――プライベートで興味のあることや趣味を教えてください。

 健康のためジョギングをしている。あとは、孫が生まれたので、その成長がとても楽しみ。いつの日か成長した孫とはとバスに乗ってみたい。

初の国際線就航へ、2年以内に黒字化目指す(ジェットスターJ)

鈴木社長(中央左)と桐谷さん(中央右)
鈴木社長(中央左)と桐谷さん(中央右)

 ジェットスタージャパン(鈴木みゆき社長)は昨年12月3日、東京都内で会見を開き、2月28日から初の国際線を就航すると発表した。大阪―香港線を週3往復6便運航する計画。国際線の就航を弾みに2年以内の黒字化を目指す。

 鈴木社長は11月28日に、カンタス航空と日本航空から70億円の増資を受けたことを報告。状況に応じてさらに40億円追加される計画があることを明かし、「株主から当社への長期にわたる支援の意思の表れと成長への期待だと受け止めている。財務基盤の強化をはかり、成長戦略を積極的に推し進めていく」と述べた。2014年6月期の決算で111億円の最終損失となったが、関西国際空港の増便などで、足元の収益は改善しているという。「増資が完了し、1日最大108便の運航も可能になった。国際線の就航というさらなる成長戦略で前を向き、2年以内の黒字化を目指す」と意気込んだ。

 このほか、冬期運航スケジュールの国内線運賃を最大約20%下げるほか、機内持ち込み手荷物の制限を10キロから7キロに変更。搭乗・降機をスムーズにすることで定時運行率を上げ、顧客満足度の向上をはかる。

 会見には、同社のブランドアンバサダーを務める女優の桐谷美玲さんも登場し、「香港で食べ歩きや夜景観賞、足つぼマッサージをしたい」と香港線への期待を寄せた。

14年外客1300万人見込む、今後は地域と季節分散を(久保長官)

 観光庁の久保成人長官は昨年12月17日に開いた会見で、2014年1―11月の訪日外国人旅行者数が前年同月比28・2%増の1217万7500人となったことを受け、14年の訪日客数は1300万人を超える見込みだと言及した。好調に数字が伸びる一方、今後の課題として「地域分散」と「季節分散」の重要性も強調した。

 好調の要因は、アジアの経済成長や五輪決定などでの日本の注目度の向上、受入環境の整備、日本政府観光局(JNTO)らによるプロモーションを挙げ、継続的な取り組みが功を奏していることを示した。市場別では、「台湾は260万人を超えた。1つの国から260万人というのはとても大きい」と述べ、東アジアの好調ぶりに触れたほか、米国とカナダの北米で100万人を超えていることなどに注目した。

 今後は「より多くの地域、季節に訪れてほしい。政策としても進めていく」とし、地域への流動については「北陸新幹線の開業などは、違う流れができる。ゲートイン、アウトが変わるのは大いに推奨する」と語った。また、季節分散はJNTOなどのプロモーションにより、夏に一点集中していたものが春の桜や秋の紅葉時期にも旅行者が訪れるようになったことを評価した。

 なお、2015年の訪日外国人旅行者数の数値目標は未定という。

「安心して阿蘇に」、火口1キロ以上は通常営業(熊本県)

 熊本県は昨年12月2日、阿蘇山の11月25日からの噴火活動について、8月30日以降の中岳第一火口から1キロ圏内の立ち入り規制以上の変化がないことを改めて発表。火口周辺の規制区域外の施設も通常通り営業していることを強調した。

 噴火活動で、阿蘇全体が危険との風評があり、改めて正確な状況を発信し、観光への影響がないことへの理解を求めている。

 阿蘇山ロープウェー乗り場の「阿蘇スーパーリング」や「阿蘇火山博物館」、「草千里ヶ浜」周辺も噴火活動前と同じ状況で、多くの観光客が訪れている。

 また、10キロ以上離れた阿蘇・内牧温泉やJR阿蘇駅、白川水源はもちろん、15キロ以上の産山温泉、黒川、杖立温泉などもまったく問題ない。

 県では「これまで以上におもてなしの心をもって、お客様をお迎えしたい。安心して熊本・阿蘇にお越しいただきたい」と呼び掛けている。

 なお、阿蘇山の最新の噴火情報についてはホームページ(http://www.aso.ne.jp/~volcano/)から確認できる。

木曽への支援を、復興応援運動を展開中

 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の噴火で、観光業など地域経済に影響を受けている長野県では、関係団体が「木曽復興を応援する運動」を展開している。

 呼びかけ人は、県や長野県市長会、長野県町村会など。各団体は、木曽地域での宿泊や木曽の物産品の購入をPRしている。

 木曽エリアは現在、スキーシーズンを迎え、開田高原マイアスキー場(木曽町)などは運営中。御嶽山の噴火により、火口から4キロが入山規制となっており、「おんたけ2240」(王滝村)は営業を見合わせている。

 長野県大阪事務所では、南木曽町に伝わる防寒着「なぎそねこ」を販売中。手作りならではの着心地が特徴という。

 同事務所の松澤繁明所長は、「木曽エリアに多くのお客様に来ていただき、支援の輪を広げていきたい」と話している。
          
 九州観光推進機構と九州運輸局はこのほど、韓国・済州島発のトレッキング「九州オルレ」の新コースを3つ認定。2月までに随時オープンする。九州オルレは今回の認定で、全15コースとなる。

 第4次コースとなる今回の3コースは、八女コース(福岡県八女市)、別府コース(大分県別府市)、天草・苓北コース(熊本県天草郡)。

 すでにオープンしている八女コースは、山の井公園から始まる全9・2キロ。所要時間は3、4時間。童男山古墳、市指定記念物の犬尾城址などが見どころとなる。別府コースは、志高レストハウスから出発する全11キロで、所要時間は4、5時間。由布岳や鶴見岳を望む山上湖「志高湖」などを通る。2月28日にオープンする天草・苓北コースは、富岡港を起点とした全11キロ。所要時間は4、5時間。富岡城や白岩崎などを巡る。

クルーズシェア20%へ、新店舗、ブランドで強化 (JTB)

JTB首都圏・生田亨社長(中央)
JTB首都圏・生田亨社長(中央)

 JTB(髙橋広行社長)は2014年12月5日、クルーズ事業強化の一環でJTB首都圏(生田亨社長)にクルーズ専門店「JTBクルーズ銀座本店」をオープンし、東京都のJTB本社で、新ブランドの紹介や事業の説明を行った。新店舗展開や地域創生に着目した新規事業で2020年度のクルーズ取り扱いシェアを20%まで伸ばす。

 JTB総合研究所によると、13年度の日本のクルーズ人口は23万8千人で、JTBグループのシェアは14・9%(約3万5500人)。20年度には約60万人がクルーズを利用する見込みで、シェア20%(12万人)を目指す。訪日クルーズと合わせるとクルーズ全体で30万人が目標。生田社長は「日本は世界的にクルーズ事業自体が少ないが、昨今の観光需要の増加を考えると今後の伸び代が期待できる分野。さらに20年の東京オリンピックでも市場拡大が予測できる」と期待を寄せた。

 新店舗「JTBクルーズ銀座本店」を展開するクルーズ事業部は、14年10月にJTBロイヤルロード銀座事業部のクルーズ部門とPTSのクルーズ企画部門を中心に統合した新組織。新店舗やクルーズ強化店舗にはクルーズコンサルタントが常駐し、専門店としてのサービスを増強する。ブランドも一新し、JTBロイヤルロード銀座の「クルーズセレクション」とPTSの「PTSクルーズ」をひとつにした「JTBクルーズ」を販売する。高品質型の「プレミア」と価格訴求型の「バリュー」の2ブランドで商品の種類や価格帯を広げ、バラエティーに富んだ商品を展開する。

 商品発売日の1月9日時点でプレミア50コース、バリュー120コースを用意し、スポット別のコースも造成する。新商品発表はプレミアが4月と10月、バリューが1月と7月の各年2回。

 オープン記念商品として、プレミアから「憧れのクイーン・エリザベスで巡る欧州ショートクルーズ9日間」、バリューから「セレブリティイクノスで巡る東地中海9日間」が発売される。また、特別企画として「限界に挑船!!」シリーズを発表した。今回は「新造船 コスタ・ディアデマで航く西地中海周遊クルーズ11日間」で、燃油サーチャージ込みで18万8千円からの設定。同シリーズは四半期に1回発表する予定。

 今後の国内商品造成について、JTBクルーズ銀座本店日本船デスクの三宅明人総支配人は「北陸新幹線とのセットや船旅のメリットがある北海道や沖縄の島方面に注目している」と語った。

 JTBでは10月1日に新組織としてクルーズ事業部を設立し、現在は(1)クルーズ事業の強化(2)全国のクルーズ機能強化店整備とクルーズコンサルタントによるサービス(3)クルーズ専門店「JTBクルーズ 銀座本店」オープン――の3本柱で事業を進めている。また、「地域創生」への貢献として、日本の寄港地を活用した観光事業を自治体と展開する。生田社長は「地域の活性化の手段はこれまでは新幹線や高速道路だったが、これからはクルーズも手段になり得る」と提言した。

【お知らせ】第40回プロが選ぶ100選は1月11日発表

 弊社が主催しております、2015年の第40回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第35回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第24回「プロが選ぶ優良観光バス30選」と選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設が決定しました。

発表は
 1月11日付「旬刊旅行新聞」紙上および、
 1月11日に弊社ホームページ(当サイト)で公開いたします。

発表までいましばらくお待ちください。

日本最長「三島大吊橋」が来年開業、旅行会社に向け見学会(静岡県三島市)

富士山を望む大吊り橋の建設現場を見学
富士山を望む大吊り橋の建設現場を見学

 三島市観光協会(静岡県三島市)は12月18日、首都圏旅行会社を対象に、来年12月に開業予定の日本最長の人道吊り橋「箱根西麓・三島大吊橋」の現地見学会を開いた。大吊橋は、箱根峠から車で約10分の位置に建設中で、三島と箱根の新たな周遊観光にも期待がかかる。当日は21社23名が参加し、同市観光協会が実施する着地型ツアー「三嶋大社正式参拝ツアー」なども体験。オープンを1年後にひかえ、三島の魅力や首都圏からのアクセスの良さを、旅行会社にアピールした。

 大吊橋は現在、箱根峠近くの山中城址公園西側の国道1号線沿いに建設しており、完成すれば大分県の「九重“夢“大吊橋」(390メートル)を抜く、日本一長い全長400メートルの人道大吊り橋が誕生する。事業主は、アミューズメントや観光開発を手掛ける「フジコーグループ」(三島市)で、見学会では、同社の社員が建設現場を前に、進捗状況や今後の工程などを説明。開発事業部の大村正弘部長は、「橋上からは壮大な富士山を楽しめ、西側には夕陽と駿河湾の絶景も望む。箱根や伊豆へのアクセスもよく、新たな観光スポットとして立ち寄っていただければ」と力を込める。

 吊り橋の幅は、車イス同士すれ違うことができる1.6メートルで、往復の経路を予定する。ほかにも付帯施設として軽食や土産物、地場産品を販売する店舗、大型駐車場やトイレ、休憩スペース等も充実させる。

 見学会後には、参加者と、市やフジコー関係者を交えた、旅行商品造成に向けた意見交換会を実施。三島市観光協会の山口賛事務局長は、「三島は首都圏から車で約1時間40分ほどでアクセスでき、箱根エリアからもほど近い。来年の大吊り橋開業を見据え、頂いた意見を生かし、三島への誘客を促進していきたい」と話した。

【JTB年末年始旅行動向】過去2番目の3045万人に、9連休でも“短めの旅行”

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 JTBはこのほど、年末年始(2014年12月23日―15年1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人の旅行動向を発表した。これによると、今年の旅行は9連休でも短めの傾向が強く、総旅行人口は過去2番目の3045万人にのぼると推計した。

 今年の年末年始は最大9連休となり、昨年に次いで長い連休が取りやすい日並びになり、総旅行人口も昨年の3053万人に次いで過去2番目の数値となった。一方、年末年始の平均旅行予定日数は3・5日と短い。「仕事が厳しいので昨年より日数を減らす」という意見が目立つことや、13年4月から一貫して所定外労働時間の対前年比が増加していること(厚生労働省・毎月勤労統計調査)から、業績回復傾向を背景に日々の仕事が忙しくなっていることが伺える。

 アンケート調査から旅行の交通手段をみると、「乗用車・レンタカー」が前年同期比4・2ポイント増の67・5%と1位。鉄道は「新幹線」が同3・7ポイント減の15・3%、「JR在来線・私鉄」が同4・5ポイント増の14・0%となった。また、宿泊場所については、「旅館」「ホテル」「民宿」「ペンション」を合わせると同1・1ポイント減で、「実家」と回答した割合が同3・3ポイント増。

 国内旅行は1、2泊の旅行が増え、3泊以上が減少したことが挙げられる。今年は長い休みを利用して長期旅行に行く動きが見られたが、来年の仕事始めが今年より1日早いことから、年末に旅行に行く傾向が考えられる。出発日のピークは12月31日の見込み。観光地はユニバーサル・スタジオ・ジャパンや富岡製糸場、富士山が継続して人気。

 海外旅行は、旅行人数が67・9万人、旅行平均費用が前年同期比2・3%増の22万2千円。出発日のピークは28日、次いで30日。帰国日のピークは1月3、4日の見込み。観光地は台湾やハワイが継続して人気が高い。最近ではベトナムやシンガポールも注目されている。

 同調査は、航空会社の予約状況と業界動向、グループ販売状況、1200人へのアンケートから推計。アンケート調査は10月31日―11月12日に、全国200地点の15―79歳までの男女を対象に実施した。

No.390 日本秘湯を守る会 40周年座談会 - 「情けの旅文化」~継承と共創~

日本秘湯を守る会 40周年座談会
「情けの旅文化」~継承と共創~

 日本秘湯を守る会(佐藤好億会長、179会員)が今年創立40周年を迎えた。1975年4月に東京・上野精養軒で33人の小さな仲間からスタートし、激変してきた観光業界のなかで、「情けの旅文化」や自然環境を守り続け、発展してきた。12月15日には、創立の地・上野精養軒で40周年記念式典を開く。本紙は「継承と共創」をテーマに佐藤会長をはじめ6人による座談会を開き、次世代へつなぐ「日本秘湯を守る会」の将来ビジョンを熱く語り合った。

【司会=本紙編集長・増田 剛】

 
 
 

地域の文化財として宿を守る

 ――40年前、日本秘湯を守る会創立時の社会状況はどのようなものでしたか。

佐藤:創立当時の昭和50年代は戦後からの復興の後半期。経済状況でいえば右肩上がりで、現在の「アベノミクス」の状況は当時と似ている面があると思います。そのような社会状況のなかで、観光地化できない湯治場では「未来がない。ビルディングのような館を追いかけていかなければ経営は難しい」と考えていました。そんな時代に、一山越えたところにひっそりとある宿はお互いに共通の認識や意識もあり、「秘湯とは人なり」という話を申し上げても通じ合えるものを感じました。囲炉裏端の灯りを提灯の中に取り込んで未来を考えようと語り合いながら、仲間づくりをしてきました。…

 

※ 詳細は本紙1571号または12月16日以降日経テレコン21でお読みいただけます。