井波の新名物はガチャポン!?

 富山県の南西部、かつて瑞泉寺の門前町として栄え“木彫りの里”として知られる井波(南砺市)。その木彫刻の匠の技に触れることができる「井波彫刻総合会館」で、今ちょっとした木彫りグッズが人気を集めているという。

 会館前に設置された「獅子ガチャラ」がそれ。いわゆるガチャポンだが、カプセルに入っているのは「木彫りの獅子」。1個ずつすべて手作りのオリジナルグッズだ。

 井波彫刻をもっと身近に感じてもらおうと2010年から始めたものだが、1回500円という手軽さと、ここでしか手に入らない希少性が徐々に評判を呼び、今では遠方から買い求めに来る人がでるまでに。すべて手作りのため生産量が少なく、ときには品切れになることもあるとか。気になる方はぜひ事前に電話で確認を。

【塩野 俊誉】

旅行消費額9千億円弱、人あたり17万7428円支出(15年4―6月 訪日消費動向)

 観光庁がこのほど発表した訪日外国人消費動向調査(4―6月)によると、「訪日外国人1人あたりの旅行支出」は17万7428円で、前年同期の14万3903円から23・3%増加した。1人あたりの旅行支出と訪日客数を掛け合わせた「旅行消費額」は同82・5%増の8887億円にのぼり、6期(6四半期)連続で最高値を更新した。

 1人あたり旅行支出が増加した主因は、他の国籍・地域に比べて1人あたり旅行支出の高い中国(28万5306円)からの訪日外国人数が同137・1%増の125万5231人と大幅に増加し、結果的に全体数値が上昇したことが挙げられる。中国の1人あたり旅行支出も同34・7%増と大きく増加している。中国は訪日外客数と旅行支出が前年同期に比べ大幅に伸びたことから、旅行消費額は前年同期比で3倍以上拡大した。

 地域別の旅行消費額は中国が3581億円(構成比40・3%)、台湾1470億円(同16・5%)、韓国645億円(同7・3%)、香港606億円(同6・8%)、アメリカ526億円(同5・9%)の順。上位5カ国で全体の76・8%を占める。

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文化財にストーリーを

デービッド・アトキンソン氏
デービッド・アトキンソン氏

 文化庁(青柳正規長官)が6月29日に東京都・東京国立博物館で開いた日本遺産フォーラムで、認定審査委員が文化財に対するストーリーの重要性やこれからの観光のあり方を語った。審査委員を務める小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏の話を紹介する。
【丁田 徹也】

 昨年の訪日観光客数は約1300万人で、今年中には1800万人は届くと予測されていますが、私が観光状況を分析したところ、文化遺産や自然、食などのコンテンツのある日本は、現時点で外国人観光客が5600万人は来ていてもおかしくないという結果が出ました。現在の国際観光客数ランキングで日本は世界22位くらいですが、5600万人と考えると世界4位です。

 国際観光人口は1950年で2500万人、昨年は10億人を突破しています。30年には18億人になるとも言われています。現状の訪日客数では、18億人に対して0・9%のシェアも満たしていません。対してトップのフランスは8473万人(13年)。5600万人ベースであれば、2030年には8200万人に成長しているはずです。

 欧州で日本と同じような歴史・自然を持つ国であれば、国民数の4―5割が来るのは普通です。

先進国から来ない理由

 日本の歴史・文化や地方に関心を持つ先進国からの旅行客は200万人程度です。これは、日本を観光してもその価値を理解するための仕組みが整っておらず、彼らは何がどうなっているのか、つまり文化財のストーリーがわからないことから、日本を観光の選択肢から外しています。

 少し前に京都の竜安寺に行きました。(※アトキンソン氏は竜安寺の保存活動に関わっている)石庭の前で海外観光客が座っていてこんな会話をしていました。「この寺に国宝の庭があるらしいよ」。石庭を前にしたこの会話からすると、花の咲くお庭を期待していることがわかります。さらに「みんなが見ているシミだらけの汚い壁はなんだ」と続きます。衝撃的だったのは「これはもともと駐車場だったのかなぁ」です。「砂利が敷かれて障害物が置かれている。駐車場だ」と連想されたのかもしれません。

 彼らにとっては全然違う文化です。日本の文化や日本の良さを説明しなければ理解されることなく、単なる汚い壁と駐車場のままなのです。

お金を落とす仕組みを作る

 お客さんにお金を落としてもらわなければ観光は成り立ちません。お金を落とすチャンスを用意しなければなりません。それは観光ガイドや宿泊であり、そのためには一日楽しんでもらうための深いストーリーが必要になります。さっと観光してそのまま移動されては敵いません。外国人旅行者の支出の26%はホテル代です。日帰りだとJRが儲かるだけで地元にはお金が入りません。

相手の立場になる

 ここでもう一つポイントです。「来てもらいたい」という気持ちはわかりますが、相手の立場に立つことが大事です。単に「来てもらいたい」「お金を落としてほしい」というご都合主義では通用しません。

 遠い海外から来て、有休を使い、何時間も飛行機に乗り、そして何十万円のお金を使っていく、そんな人たちのために何をするのか、何を伝えればいいのかということを真剣に考えるべきです。深く長いストーリーを作らなくてはいけません。

スリッパや風呂桶で200人熱戦、ご当地温泉卓球全国大会(雲仙温泉)

ご当地ラケットを手に戦う
ご当地ラケットを手に戦う

 風呂桶やスリッパをラケットにして温泉地ならではの卓球を楽しむ「第3回ご当地温泉卓球全国大会」が7月12日、長崎県雲仙温泉の雲仙湯元ホテルを会場に開かれた。雲仙温泉をはじめ、黒川温泉(熊本県)、嬉野温泉(佐賀県)、湯田温泉(山口県)、馬路温泉(高知県)、こんだ薬師温泉(兵庫県)、まっかり温泉(北海道)が加盟する「ご当地温泉卓球新興協議会」の主催。

 当日は、北は北海道、南は宮崎県から集まった100組200人がダブルスのトーナメント戦に参加。入湯手形、鍋ぶた、スリッパ、木うちわ、風呂桶と、それぞれご当地のラケットを手に熱戦を繰り広げた。試合は10点マッチで、2点獲得ごとにラケットを交換するルール。山口県長門市から参加したペアが優勝し、賞品の雲仙温泉ペア宿泊券を受け取った。

 雲仙温泉のウンゼリーヌ、嬉野温泉のゆっつらくんなど、各温泉地のゆるキャラによるエキシビジョンマッチや、次回開催場所をかけた各温泉地対抗ダブルス戦も行われ、湯田温泉が次回開催地の栄誉を勝ち取った。

台北オフィスを開設、台湾での誘客拡大促進(アルピコHD)

 アルピコホールディングス(掘籠義雄社長、長野県松本市)は、今後さらなる訪日観光市場の拡大が見込まれる台湾での誘客を促進するため、7月1日にアルピコグループ台北オフィスを開設した。現地プロモーション会社へ業務委託する形式で、現地には選任担当者が着任する。

 アルピコグループが提供する交通サービスや宿泊施設の訪日客利用拡大に向けて、一昨年11月にバンコクオフィスを開設し、以来重点的にタイを含む東南アジアの旅行会社や個人旅行客に対して、長野県と同グループのPR活動を展開してきた。今後は台湾を中心とした中華圏と東アジアも含め、現地市場の特性を踏まえた効果的なプロモーションを展開していく考えだ。

 また、同日に同グループのインバウンド事業を統括する「インバウンド推進室」を同社内に新設。台北オフィスとバンコクオフィスを所管する。

 同社は「信州の交通・観光を牽引するグループとして、アジア全体を見据えた営業・広報活動の強化を進めていきたい」と意気込みを語った。

販促会議に1100人参加、青森県・函館DC(2016年7-9月)

三村申吾青森県知事
三村申吾青森県知事

 来年7―9月の青森県・函館デスティネーションキャンペーン(青森県・函館DC)に向けた、全国宣伝販売促進会議が7月15日、青森市内のホテルでJR関係者や旅行会社など約1100人が出席して開かれた。

 主催者の三村申吾青森県知事は「前回のDCは東日本大震災直後で新幹線も復旧していないなかでのスタート。成果はある程度あったと思うが、やはり消化不良だった。今年度末の北海道新幹線開業後のDCとしてリベンジしたい」と述べ、「古くから青森と道南は行き来があったが、新幹線の開業で一つの大きな観光圏ができあがる。DCでは前回を超える数のコンテンツを用意し、おもてなしの心でお迎えしたい」と結んだ。

 島田修JR北海道社長は「青森県や東北新幹線、北海道新幹線を盛り上げていくきっかけになるようJRグループ一丸となって取り組んでいく」と述べた。

 会議では地域の魅力を青函連絡船「八甲田丸」の機関長だった葛西鎌司氏や、函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長ら、青森と道南の関係者が7つのテーマに沿ってプレゼンテーションした。ホテル内には青森県、道南の各エリアの観光情報や食などのPRブースや各旅行会社との商談ブース、さらにミニ金魚ねぶた製作やおぼろ昆布削りなど6種類の体験コーナーも設けられた。

 会議翌日からは1泊2日の行程で青森県内や道南など9コースのエキスカーションも実施した。

来年は日本開催決定、ルレ・エ・シャトー世界大会

 国際的に権威ある高級ホテルや一流レストランが加盟する組織「ルレ・エ・シャトー」(本部=仏・パリ)は、2016年11月に開催予定の世界大会を日本(東京)で開くと発表した。アジア・パシフィック地域での開催は、1954年の協会設立以来、初めて。

 世界大会は毎年開催で3日間にわたり年次総会やガラパーティーなどのソーシャルイベントを催し、メンバー間の交流や結束を深める。

 2016年の東京開催では、世界各国から400―450人のメンバーおよび関連スタッフ、メディアの誘致を目指し、各イベントでは日本メンバーによる日本が誇る「おもてなし」で世界のメンバーを魅了するという。また、東京だけでなく、日本の各地方が放つその土地ならではのジャパンブランドを、世界の本物を知り尽くしたルレ・エ・シャトー加盟のシェフ・ホテルオーナーへ発信する機会にもしたい考えだ。

 現在、ルレ・エ・シャトーには、世界62カ国・約540軒が加盟。協会加盟には厳格な審査があり、ホスピタリティの高さを象徴する協会として知られる。日本加盟メンバーは1975年にアジア・パシフィック地域1号メンバーの加盟以降、現在はホテル・レストラン部門が7軒、レストラン部門が8軒の計15軒。

 加盟施設は次のとおり。

【ホテル・レストラン部門】
別邸仙寿庵(群馬・谷川温泉)
強羅花壇(神奈川・強羅温泉)
あさば(静岡・修善寺温泉)
扉温泉 明神館(長野・扉温泉)
べにや無何有(石川・山代温泉)
神戸北野ホテル(兵庫・神戸)
忘れの里 雅叙苑(鹿児島・妙見温泉)

【レストラン部門】
レストランモリエール(北海道・札幌)
オトワレストラン(栃木・宇都宮)
オテル・ドゥ・ミクニ(東京・四ツ谷)
レストランサンパウ(東京・日本橋)
青柳(東京・麻布台)
ヒカリヤニシ(長野・松本)
柏屋(大阪・吹田)
ラ・ベカス(大阪・淀屋橋)

2016年度版「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選」書籍発売!

16年度版100選本、8月から全国書店発売

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 2016年版「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選&日本の小宿」の書籍が、8月から全国の書店で発売されました。定価 は2,160 円(本体 2,000 円 + 税8%)、A4変形判、オールカラー 168ページ。発売元は自由国民社(東京都豊島区)です。

 今年1月に発表した「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」入選施設と、選考審査委員特別賞「日本の小宿」を受賞した歴代の宿、計109軒をセレクト。料理やもてなし、温泉など、各施設の魅力をカラー誌面でご紹介しています。一部の宿で「2次元バーコード」も掲載したほか、弊社が事務局を務める「ピンクリボンのお宿ネットワーク」加盟施設はロゴマークを付けてご紹介しています。

 巻末には「総合100選」のほか「もてなし」「料理」「施設」「企画」各100選の入選施設一覧をリストとして掲載しました。まさに、ホテル・旅館のガイドの決定版!といえる本です。ぜひお手にとってご覧ください。

 全国の書店、当ホームページ上部の「刊行物お申込み」から購入できるほか、
アマゾンや楽天
(自由国民社様の本書紹介ページへリンクしています)でもご購入いただけます。

上期訪日客914万人、主要19市場で過去最高(JNTO)

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 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した6月の訪日外客推計値によると、6月の訪日外客総数は前年同月比51・8%増の160万2200人となり、5割以上の増加で6月の過去最高を更新した。1―6月の上期累計では、前年同期比46・0%増の913万9900人と過去最高だった2014年を約290万人上回った。

 6月の市場別では、中国が全市場を通じ単月として過去最高を更新。また、米国は欧米豪市場で初めて単月で10万人を超えた。台湾、香港が単月として過去最高、インドネシア、英国、ロシアを除く17市場が6月として過去最高を記録した。

 上期でみると、過去最高を記録した市場は、ロシアを除く19市場。

 6月の重点市場の動向をみると、韓国は同21・2%増の25万1500人と過去最高を記録したが、15年上期で最も低い伸び率となった。中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大で外出自体が控えられ、海外旅行需要全体が鈍化したことが要因。

 中国は、同167・2%増の46万2300人で、単月として過去最高を記録し、全市場を通じて初となる単月50万人に迫る勢い。クルーズ市場も好調で、30本が寄港した。

 台湾は、同35・8%増の34万5200人で、単月として過去最高を記録した。格安航空会社(LCC)との共同広告や旅行博出展などの訪日プロモーションと、継続する円安傾向や航空路線の増便などにより、安定した需要を確保した。香港は、同75・4%増の13万7千人と大幅に増加し、単月過去最高を更新。旅行価格の高騰を避けて夏休み前に訪日した旅行者や、韓国でのMERSの感染拡大を受けて訪問先を日本に変更した旅行者が需要を押し上げた。

 そのほか、東南アジア諸国の好調な伸びも継続し、タイは同19・5%増、シンガポールは同25・3%増、ベトナムは同52・7%増、インドは同15・9%増など。ベトナムは42カ月連続で各月の過去最高を更新。福島へのチャーター便がホーチミンから3便、ハノイから1便運航され、訪日客数増加に貢献した。

 なお、出国日本人数は同7・8%減の118万9千人となった。

ナショナルスタジアム ― 過去の記憶のない“未来型”は虚しい

 先日、埼玉スタジアム2002に末っ子の息子を連れて浦和レッズVSサンフレッチェ広島の一戦を観に行った。小学校も夏休みに入ったし、「たまには父親らしいこともしなければ」と思い、うだるような暑さのなか、神奈川県の相模原から埼玉県の浦和まで行ったのであった。通常は日産スタジアムで横浜マリノスのホームゲームに来る鹿島アントラーズ戦を観に行くことが多いのだが、Jリーグ日程表を見ると、マリノスのホームゲームはなく、近くでは味の素スタジアムでのFC東京VSモンテディオ山形戦も脳裏に浮かんだが、浦和レッズのホームゲームのサポーターの熱気を体感したい思いが勝った。

 スタジアムに着くと、当日券を購入した。アーチ状になったメインスタンドの最上部に近い座席だったので、遠くに東京スカイツリーも見えた。そういえば、旧国立競技場も最上部にいると、新宿の高層ビル群が見えた。埼玉スタジアム2002はアジア最大級のサッカー専用スタジアムなので、陸上トラックがない分だけ、選手を真上から眺めるアングルで臨場感があった。甲子園球場のアルプススタンドのような高さも心地よく、時折風が吹き抜けると、巨大スタジアムの壮大なスケールが持つ爽快感を覚えた。

 試合は浦和レッズが前半に先制点を取ったが、後半に入りサンフレッチェ広島が2点を奪い返し、逆転勝利を収めた。圧倒的なレッズサポーターに囲まれたスタジアムの中で、サンフレッチェがゴールを奪った瞬間、紫色のサポーターが歓喜する姿に「きっと首都圏で生活している広島出身の人がたくさんいるのだろう」と思った。アウェイゲームのため、数は少なかったがサポーターに愛されるサンフレッチェの選手たちは幸せだなと感じた。そして、目当てだった浦和レッズのサポーターの熱狂度はやはり日本を代表するもので、埼玉スタジアム2002は、まさにレッズサポーターの聖地と化していた。

 折も折、ザハ・ハディド氏による新国立競技場のデザイン案が白紙撤回になった。流線形が未来を感じさせるが、「未来型は流線型でなければならない」との厳格なルールでもあるのだろうかと思ってしまうほど、未来型は決まって無個性な流線形になってしまう。愛されるデザインの深部には個人、あるいは民族の記憶が織り込まれている。私は新国立競技場のデザインに、何の記憶も呼び起こされなかった。ツルンとした無色無臭のプラスチックのカプセルを手にしたように、脳を、胸を、刺激しなかった。

 個人的には10万人が入れば、シンプルなデザインでいいと思う。しかし、何が何でも莫大な金額を投入したいというのなら、日光東照宮の陽明門のような微に入り細を穿つ豪華絢爛さ、あるいは金閣寺のような凛々しき黄金のスタジアムの方がまだマシだ。日本建築の粋は細部に宿る。100年間愛されるナショナルスタジアムのデザインは日本人のDNA、記憶に響くものを望みたい、と書きながら未来型のデザインが嫌いな理由がわかった。それは過去から未来へのつながりの中に見出す現在性が存在しないからだ。過去と切り離されたデザインはどこか画一的で、一様に虚しい。それを新国立競技場のデザインに感じた。流線形の、いかにも未来型に惑わされてはいけない。

(編集長・増田 剛)