修旅生を観光大使に

 愛媛県松山市は修学旅行で同市を訪れた小・中学生を「観光大使」に任命する事業をスタートさせた。全国初の取り組みという。

 任命期間は20年。生徒一人ひとりに進呈するオリジナル記念証で、道後温泉本館入浴や松山城天守観覧、坂の上の雲ミュージアム観覧などが本人に限り20年間無料となる。

 松山再訪のきっかけにしてもらったり、SNS(ソーシャルネットワークサービス)など中・高校生の高い情報発信力で口コミを広げようというのが狙い。

 昨年11月に第1号として、8年連続で松山を訪れた愛知県の高校2年生約300人を任命した。

 市では2006年度から修学旅行誘致に本腰を入れ、現在では年間約1万人の生徒が松山を訪れている。

【土橋 孝秀】

“日本が続々選出”、16年に訪れるべき観光地

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、ロンリープラネットなど海外大手旅行雑誌などによる「2016年に訪れるべき観光地」に日本が続々と選出されていることを発表した。

 選出は国としてのみならず、「北海道」や「九州」といった地方が選ばれるケースもあり、日本各地への関心の高まりが感じられる。

 ナショナルジオグラフィックトラベラーの「2016年に訪れるべき旅行先」では、20の国・都市・地域が選定されるなか、「北海道」が選出され、主にスキーの魅力が紹介された。また、トラベルアンドレジャーの「世界の訪れるべき旅行先―都市部門」では読者投票により、「京都」が2年連続で1位を獲得した。

 JNTOでは日本各地への誘客をはかるため、各地の多様な魅力に焦点をあてたプロモーション事業を実施。ビジット・ジャパン事業の重点市場のうち、欧米豪地域の9市場(米国・カナダ・英国・フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・スペイン・豪州)からの訪日客数は15年1―10月の累計で、前年同期比15・8%増の207万9千人と過去最高を記録。米国については、同14・7%増で推移しており、年間の訪日者数で初の100万人突破が期待されることから、同事業が、日本各地の認知度向上や需要喚起に結びついていると言える。

新レストランが誕生、バイキングの常識超える(別府・杉乃井ホテル)

100種類のメニューを提供する「シーダパレス」
100種類のメニューを提供する「シーダパレス」

 大分県別府温泉の杉乃井ホテル(佐々木耕一総支配人)は昨年12月25日、和洋中100種類のメニューを提供するワールドダイニング「シーダパレス」をオープンした。かつての「スギノイパレス」の劇場を全面改装し、子供から大人まで楽しめる演出、設備、料理にこだわったバイキング形式のレストランとして誕生させた。

 レストランの広さは1364平方メートルで、客席は472席。中央には直径3メートル、高さ4メートル、水量約18トンの大型水槽が設置され、別府湾や豊後水道に生息する約24種類の魚が200匹以上泳ぎ回る。

 ライブキッチンスタイルのレストランは、空間全体が南イタリアの最大都市「ナポリ」のイメージで統一。別府の景観がナポリに似て「東洋のナポリ」とうたわれたことから、街並のイメージとして取り入れた。

 街並の建物は明るく鮮やかな色彩で描かれ、天井は100台もの照明を駆使して昼、夕、夜と色が変化する空を表現。風に吹かれて動く雲や夜空に輝く星を再現して、ナポリの街角で食事をするような開放感を演出する。

イタリアの石釡で本格ピザ
イタリアの石釡で本格ピザ

 キッチンで提供する料理は、本場イタリアから取り寄せた石窯を使い、福岡のナポリピッツァの名店で修業した調理人が焼く本格ピザや中国で初代高級技師に選ばれた料理人が作る本格中華料理などが並ぶ。

 フカヒレラーメンやフォアグラ丼などの高級食材を使った料理に、パエリア、ブイヤベースといった洋食メニューのほか、地元B級グルメのとり天やだんご汁、中津唐揚げも提供する。

 また、9種類の野菜に6種類のドレッシングを用意したサラダコーナーやステーキコーナー、パスタコーナー、キッズコーナーに離乳食コーナーまでそろえ、デザートもさまざまな種類をそろえる。

 和食特別料理コーナーも設け、ブランドの関サバ、関アジ、城下カレイなどを使った造りや寿司など1人前1千円で味わえる。

 バイキング料金は夕食で平日5500円、土・日曜日、祝日は6500円となる。

 佐々木総支配人は「一流の食材で一流の料理人がつくる上質なバイキングを提供し、お客様に新しい感動を与えたい」と意気込みを表した。

静岡県が一般競争入札、伊豆の国市内 温泉宿泊施設を売却

「寿荘」外観
「寿荘」外観

 静岡県は、県が所有する温泉宿泊施設「寿荘(ことぶきそう)」(伊豆の国市長岡字尾之上71番、95番2)の土地(宅地・鉱泉地、地積3536・01平方メートル)と建物を、一般競争入札により売却する。伊豆長岡温泉街に立地していることを考慮し、落札者は、ホテルまたは旅館営業をすることを契約の条件とする。予定価格(最低売却価格)は税別で9500万円。

 入札の受け付けは2月29日午後5時まで。入札は3月15日午後3時30分から東部総合庁舎(沼津市)で行う。なお2月4日には現地説明会が「寿荘」所在地で午後1時から開かれる。

 「寿荘」は、温泉付きの老人休養ホームとして、1960年の開業以来、高齢者を対象に低廉で健全な休養の場を提供してきた。社会ニーズの変化にともない、2014年3月に営業を終了している。建物は2棟で、1997年に全面改築した本館(鉄筋コンクリート3階建・延床面積2653・22平方メートル)と、南館(同2階建・791・96平方メートル)からなる。宿泊定員118人、客室27室。源泉を所有し、トイレ・廊下・階段などがバリアフリー対応となっている。

 詳細は、県管財課ホームページ(http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-120/kenyuchibaikyakutop.html) からも閲覧できる。

 問い合わせ=静岡県経営管理部管財課 電話:054(221)2122。

“ひなた”プロモ始動、泉谷さんら8人が応援(宮崎県)

河野俊嗣知事(左)と泉谷しげるさん
河野俊嗣知事(左)と泉谷しげるさん

 宮崎県は全国有数の日照時間や快晴日数を誇る同県の“ひなた”をキーワードに物産や観光をプロモーションする「日本のひなた宮崎県」の始動を記念し、昨年12月7日、東京都内で記者発表を開いた。同県出身で俳優の永瀬正敏さんやモデルの蛯原友里さんなど、ゆかりの芸能人8人による応援団「ひなたオールスターズ」も結成され、当日は代表して歌手の泉谷しげるさんが駆けつけ、同県の魅力をアピールした。

 河野俊嗣知事はプロモーションについて、「宮崎には“ひなた”が生み出す美味しい海山の幸、そして“ひなた”のような人々のあたたかさがある」とし、「観光誘客や移住振興も視野に、全国そして世界へ本県の魅力を発信していきたい」と狙いを述べた。

 泉谷さんは青森県出身だが、2010年から毎年、県内で口蹄疫復興イベントを開くなど、同県と深い関わりを持つ。当日は知事とともに特産の宮崎牛や宮崎ブランドポークなどを試食し、「何度も宮崎に行っているが、食べ物が本当に美味しい」とPR。「農家の方の科学者のような知力と判断力、口蹄疫にも負けないプライドの高さなど、魅力的な人も多い」と語った。

 プロモーションは「あなたを、ひなたへ。」をキャッチフレーズに展開。同7日には専用の「ひなたポータルサイト」がオープンし、歌手の「GReeeeN(グリーン)」が書き下ろしたテーマソングとともに、県民やひなたオールスターズが県内外にフリスビーをつなぐショートムービーなどを閲覧できる。同県の魅力を紹介する冊子の配布やポスターの掲示、全国放送局でのテレビパブリシティ、県外でのプロモーションイベントなども予定する。

地方の魅力を浅草で、「まるごとにっぽん」開業

小笠原功社長
小笠原功社長

 東京・浅草で地方の魅力が体験できる商業施設「まるごとにっぽん」が、昨年12月17日にオープンした。全4フロア50店舗のうち、約8割が東京初進出。地方のモノ・コト・ヒトの魅力を発信し、実際に地方へ足を運ぶきっかけになることを目指す。

 施設のテーマは「風土巡礼」。全フロアを巡ると日本の暮らしが分かる構成で、「見て」「食べて」「持ち帰って」旅気分を味わえる。12月14日に開いた報道関係者向けの内覧会で小笠原功社長は「運営理念は地方創生の拠点になること」と語り、「日本の各地域と触れ合って、最終的にはその地域へ行ってほしい。そうしたつなぎ役になっていきたい」と述べた。

 1階の「にっぽん食市場 楽市」はセレクトグルメフロアで、全国から22店舗が出店。直営店舗の食品館「蔵」は、約1500種類以上の地方のドリンクや調味料などが並び、日本酒など酒類は約300銘柄そろえる。2階の「暮らしの道具街 和来」は、地域発の生活用品・雑貨の店舗が軒をつらねる。

 また、3階の「たいけん広場 浅草にっぽん区」は“旅の窓口”がテーマのフロアで、市町村が特産品の販売、PRを行える「【Event space】おすすめふるさと」は17市町村が出展している。このほか、郷土料理の作り方などが学べる料理教室や日本初のふるさと納税窓口、移住・定住相談窓口などを設置する。

 4階の「ふるさと食堂街 縁道」は厳選した地域の食が楽しめるレストランフロア。

【Event space】おすすめふるさと
【Event space】おすすめふるさと

台鉄と友好協定結ぶ、海外の鉄道事業者とは初(東武鉄道)

記念出発式(中央が今度支社長)
記念出発式(中央が今度支社長)

 東武鉄道(根津嘉澄社長、東京都墨田区)と台湾鉄路管理局(周永暉局長、台湾台北市)は昨年12月18日、友好鉄道協定を締結した。台湾で締結式を行ったほか、同日は、記念エンブレムを掲出した列車の記念出発式を両鉄道で実施した。東武鉄道が海外の鉄道事業者と友好協定を結ぶのは初めて。

 東武スカイツリーライン浅草駅で行われた出発式で、営業部スカイツリーラインの今度祥一営業支社長は「東武グループはこれまでも、東京スカイツリーが台北のランドマークの101と友好関係を締結するとともに、東武ワールドスクエアに101の展示物を新設するなど、台湾との観光友好関係を築いてきた。台湾からのお客様だけではなく、東武沿線から多くの方に台湾を訪れていただく機会になればと考えている」とあいさつ。また、台湾鉄路管理局の周局長は「今回の友好鉄道協定締結を機になお一層の交流を深めたい」とメッセージを寄せた。

 協定締結を記念し、両者共通デザイン台紙の記念乗車券の発売と相互乗車券交流サービスの2つの乗車券交流を実施。記念乗車券台紙とエンブレムには、東武鉄道の「日光詣スペーシア」と台鉄の「普悠馬」の2つの特急をデザインした。

 相互乗車券交流サービスは、日本の乗客が東武の指定企画乗車券の乗車袋を台鉄・台北の瑞芳駅に持っていくと「平渓線1日フリー乗車券」がもらえ、台湾からの乗客には台鉄・自強号乗車券提示で「浅草・東京スカイツリー(R)観光記念往復きっぷ」のプレゼントか「台鉄専用日光往復きっぷ」の割引販売を行う。期間は2016年12月18日までの1年間。

第27回「全国女将サミット」鳥羽で開催、「鳥羽を日本中にPRしたい」(鳥羽あこや会)

伊勢志摩サミットに続き・・・
第27回「全国女将サミット」鳥羽で開催
「鳥羽を日本中にPRしたい」(鳥羽あこや会)

 今年7月5日に、三重県鳥羽市の鳥羽シーサイドホテルで第27回全国旅館おかみの集い(全国女将サミット)が開かれる。運営委員長は第8回全国女将サミットでも委員長を務めた中かほる女将(伊勢志摩旅荘 海の蝶)で、大会テーマは「今を活きる女将、心のふるさとに集合~日本の伝統文化は旅館(ここ)にあり~」。地元・鳥羽旅館組合の女将会「鳥羽あこや会」(会長=迫間優子・鳥羽ビューホテル花真珠女将)のメンバーが中心となり大会運営を担う。メンバー7人のうち、5人が参加し、鳥羽あこや会の活動や、全国旅館サミットへの意気込みなどを語ってもらった。

【増田 剛】

 

※ 詳細は本紙1614号または1月6日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

田村観光庁長官「光と影が見えた年」、16年は産業育成に注力

 観光庁の田村明比古長官は2015年12月15日に開いた会見で、就任初年である昨年の所感と、16年への期待や課題を語った。15年を「光と影が見えた年」と評し、16年は観光産業の育成の強化を目標に挙げた。

 田村長官は9月に観光庁長官に着任してからの訪日動向について、「外国人の旅行消費額はおそらく3兆円を超える規模になり、自動車部品と肩を並べるほどの輸出産業になってきた。今年は記憶に残る年になる」と、観光産業が経済に大きな影響を与えるようになったことを高く評価した。

 一方で、「訪日客の急増で次のステップに進むために解決しなければならない課題も山積していることがはっきりと見えてきた。光と影の両方が見えるようになった年でもある」とも述べた。

 16年に向けては、観光産業の育成強化にとくに力を入れることを強調した。宿泊面では「訪日対応が遅れている施設も多く、我われがどういう支援ができるのか、また生産性の向上や、従業員の処遇の改善の実現性についても考えなければならない」と語った。

 また、旅行業界に対しては、「多くの企業がアウトバウンド一辺倒で成り立つビジネスモデルなので、インバウンドにも対応できる環境の構築も考える必要がある」と述べ、裾野の広い観光産業が観光地で有機的に連携できる体制を構築することが課題だとした。

 国内旅行動向については、14年の消費税増税の影響からの回復で、著しく国内旅行市場が伸長している状況ではないと説明した。

 国内の今後については、「全体に占める国内旅行の割合はきわめて大きいので、来年も増加するよう施策を考えていかなければならない」と答えた。

2016年の動向 ― 激変する新たな環境にも柔軟さを

 2016年新年号は例年通り、主要観光団体や大手旅行会社の経営トップによる年頭所感を掲載している。これを読むと、新たな年がどのように動くのかが大体掴める。もう一つ、JTBが毎年発表する「旅行動向見通し」も参考にしたい。

 その「JTB旅行動向見通し」によると、16年は「国内旅行を中心に旅行意欲は堅調」と見る。国内旅行人数は前年比0・7%増の2億9360万人、海外旅行は同0・3%増の1620万人と微増を予想。そして訪日外国人数は同19・0%増の2350万人と推測する。ちなみに昨年の同調査では、15年の訪日外国人旅行者数は同13%増の1500万人と予想しており、実際2千万人近くまで伸びたことは異常な伸びでもあったことを示している。「爆買い」が流行語大賞となるなど、中国やアセアン地域からの訪日外国人数の拡大に沸いた年でもあった。

 当然、予想もしなかった数の外国人観光客が一挙に押し寄せてきたので、「バブル」的な好景気となった地域や業種もある一方で、首都圏や関西圏を中心に福岡市などでもシティホテル、ビジネスホテルの客室の予約が取れなかったり、宿泊料金の高騰という現象が強まっている。そのようななか、違法な「民泊」が大きな社会問題としてクローズアップされた。安全性や近隣住民とのトラブルなど、さまざまな重要な課題が噴出してきた。国は経済的なメリットを語るのもいいが、まずは法的な整備のうえでの話である。

 16年の主な観光関連の予定を見ると、明るい話題が多い。

 2月には新東名高速道路「浜松いなさ―豊田東ジャンクション」が開通。3月26日には北海道新幹線「新青森―新函館」間が開業。そして、3月31日にはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、4月15日には東京ディズニーシーと、日本の2大テーマパークがともに15周年を迎える。5月26、27日には伊勢志摩で主要国首脳会議(サミット)が開かれる。8月は5日からリオデジャネイロオリンピックが開催され、11日は、国民の祝日として「山の日」が制定される。11月には東京・築地市場が移転し、豊洲新市場が開場するほか、松坂屋銀座跡地に銀座エリア最大級の商業施設が開業する計画で、首都・東京はますます魅力的なエリアへと変貌していくはずだ。

 また16年は日本シンガポール国交樹立50周年、日本フィリピン国交正常化60周年、日本国連加盟60周年を迎え、多彩なイベントも行われるだろう。

 今号の1面と6面でも紹介しているが、「全国旅館おかみの集い」が7月5日、鳥羽シーサイドホテル(三重県鳥羽市)で開かれる。運営委員長は、中かほる女将(伊勢志摩旅荘 海の蝶)が務め、地元の女将会「鳥羽あこや会」(迫間優子会長)が中心となって、準備を進めていく。開催テーマは「今を活きる女将、心のふるさとに集合~日本の伝統文化は旅館(ここ)にあり~」に決まった。

 また、本紙関連では、現場のさまざまな経営改革に取り組んできた旅館・ホテル経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏との対談シリーズ「いい旅館にしよう!」の第2弾が、いよいよ今春からスタートする。

 この激変する時代ではあるが、新たな環境にも柔軟さをもって対応していくことが大切だと思う。

(編集長・増田 剛)