【特集No.610】エクセルイン名古屋熱田 稼働率40%でも収益出せる経営

2022年5月17日(火) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の10回目は、愛知県「エクセルイン名古屋熱田」社長の苅谷治輝氏が登場。稼働率40%でも収益を出せる“危機に強い経営体質”に変えていく過程で、取引業者の全面的な見直しや、清掃業者を立ち上げるなど、さまざまな改革を進めてきた苅谷社長と内藤氏が科学的な視点から語り合った。

【増田 剛】

 苅谷:1999年2月に父がビジネスホテル「エクセルイン名古屋熱田」を開業しました。元々は代々続く卸問屋で、私は5代目になるはずでした。
 当時は年商70億円ほどあったようですが、卸問屋を取り巻く経営環境が難しくなってきていたので、営業権を譲渡して倉庫を取っ払い、その土地に両親はさまざまな職種の中から、ビジネスホテル経営を選択しました。
 当時この付近にはビジネスホテルがほとんどなく、愛知万博(2005年)への期待や、近隣にある工場関連で、ビジネス需要を見込んでいたようです。開業から間もなく稼働は安定し、愛知万博のころは満室が続いていました。内部はボロボロでしたが、高稼働率で推移していました。
 その後、08年のリーマン・ショック、11年3月の東日本大震災で経営が悪化していきました。企業の出張が減るなかで、経営にも大きく影響が出ていたのです。 

 内藤:内部がボロボロとはどういう状態だったのですか。

 苅谷:例えば、レジのお金を盗むとか、夜勤のスタッフがパチンコに行っているとか、簡単に言うと、モラリティの欠如です。父もスタッフに任せきりで、内部の状態には無関心でした。でも、離職率はほぼゼロで、逆に言うと、スタッフにとって生ぬるく、あまりにも居心地が良過ぎる“最悪”の職場でした。
 震災後の11年5月に私は「FRINGE(フリンジ)」というWeb制作会社を立ち上げました。手始めに父が経営するホテルのホームページのリニューアルをやらせてもらおうと営業に行ったときに、従業員とも話す機会がありました。
 そのとき、愚痴や不満などが山ほど出てきて、一番中心的なスタッフから「このままではまずい。ホテルに帰れないか」と聞かれたほどでした。

 内藤:フリンジを立ち上げるまではホテルに入ることは考えてなかったのですか。

 苅谷:まったく考えていなかったですね。

 内藤:当時は何をされていたのですか。

 苅谷:大学を卒業してからは、主に大手製造業向けのコンサルティング会社で新規事業開発や中長期経営戦略のようなコンサル業に携わっていました。

 ――大学院では航空宇宙工学を専攻されていたのですか。

 苅谷:企業との共同研究で配電盤やモジュールの最適設計など、生産工学に近い研究をしていました。やがて、論文のための研究に没頭するのは、自分の中では「やりがいに乏しい」と感じ始め、外資系のコンサル会社や証券会社も受けて内定はもらっていました。なかでもコンサル業は「自分が想像していた以上に泥臭いことをやっている」という印象で、魅力的に感じました。
 その後、ベンチャー企業の手伝いなどもしながら、フリンジという会社を自分で立ち上げました。

 内藤:商売として成り立ってきたのはいつぐらいですか。

 苅谷:半年が経過したくらいからです。2年ほど経ち、ようやく軌道に乗り始めた13年の12月に、父から「ホテルの経営が厳しい」と相談されました。
 私が承継する条件として、「父が事業から一切手を引くこと」で受けました。32歳でした。
 翌14年のゴールデンウイークに準備をして6月に代表としてホテルに入りました。

 内藤:さまざまな問題があるなかで、どのように乗り越えていかれたのですか。

 苅谷:一番大きかったのは、人の問題です。社内ではモラリティの欠如、社外では取引先とのコスト意識のない契約ばかりでした。
 社内はコンサルの手法でいきなり抜本的に改革をしようとしたら、崩壊しました。「人」の案件は、単純に分かりやすい組織図に当てはめようとすると上手くいかないということを実体験として学びました。
 将来を担えそうな中核的な人材を選んで、マルチタスクの仕組みを説明し、「高額な報酬で優秀な人材を集めて最強集団にしていこう」と考え、それに付いていけない人は去っていきました。しかし、抜擢したスタッフも接客が本来得意なのに苦手な管理業務をやらせてしまったりして、結果上手く機能せず、本人も重圧に潰れてしまうなど、ズレが生じてきました。新しく入った人材もそのような環境に馴染めず、すぐに辞めていく悪循環が続いていました。

 内藤:どのくらい続いたのですか。

 苅谷:2年目にようやく少し安定し始めましたが、14年に私が結婚し、結婚式の直前に脳梗塞になりホテルを離れた間に、現場でパワハラなども生じて、再びスタッフが離れていきました。
 そこで、私と妻がホテルに入り、日中は妻が、全体は私が管理する体制で張り付いて変えていきました。
 それ以降、比較的安定していますが、上手く回り始めたと思うと1年くらいで陳腐化していくサイクルが続き、これまでの経験上、適度にスタッフの入れ替えがないと、組織は腐っていくということを感じています。
 一方で、自分自身もあれだけ「改革しよう」と言いながら、安定を求め始めていることに気づきました。だからこそ過去の実績に固定してしまうことを避けるために、さまざまな会社を作り、自ら刺激を求めているのだと思います。ホテルの経営は安定しています。

 内藤:利益が出るようになった一番の原因は何ですか。

 苅谷:父が土地と建物を所有しそれを借りていましたが、法人として買い取り、損益計算書(PL)では億単位で増益となりました。高額な税金を払うかたちになりましたが、貸借対照表(BS)をベースに、いつでも払い戻しができる返戻率の高い生命保険などにも入り、コロナ禍のような危機が訪れた時に使えるように準備をしていました。
 取引先の業者はすべて見直し、収益はⅤ字回復をしました。

 内藤:具体的にどのようなことをやられたのですか。

 苅谷:清掃業者を別会社で立ち上げ自社ホテル以外にも清掃事業を始めました。社会保険労務士や税理士も変えました。アメニティやリネン会社も変え、その過程で新しいリネン会社が進出できていなかった名古屋への市場進出の手助けもしました。すべて全国から相見積もりし、安いだけではなく、一番マッチするパートナーを選定し、結果9割ほど変えました。

 内藤:オーナー企業の場合、相見積もりすらしません。

 苅谷:業種によっては談合があることも知りました。地元の付き合いも大事ですが、本当に品質が優れているのか、対応は迅速か、最新の技術を取り入れているかなどを見極める必要があります。今でも「他社はこんなサービスをやっていますが、どうですか」など、契約更新は厳しく行っています。
 24時間カスタマーサポートのサービスも今必要なければ切っていく。社外の部分でこのリースは本当に必要なのかなど細かく見直しています。

 内藤:慣れ合いではなく、互いの関係に緊張感が持てますね。

 苅谷:コンサルを経験していたことが大きいと思います。

 内藤:清掃を内製化したのは、どこに問題点を感じたのですか。……

【全文は、本紙1859号または5月25日(水)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】

〈旬刊旅行新聞5月11・21日合併号コラム〉今年はイベントも再開――女将サミットや旅館経営教室セミナー

2022年5月17日(火) 配信

 今年のゴールデンウイークは3年ぶりに制約のない状態で迎え、久しぶりに全国各地の観光地はにぎわいを見せていた。

 

 全日本空輸(ANA)はGW(4月29日~5月8日)国内線旅客数は前年同期比88・4%増の95万8724人、国際線は404・8%増の6万7375人と大幅に増加した。

 

 一方、日本航空(JAL)の国内線旅客数は同131%・4%増の91万6376人、国際線は同346・3%増の7万3039人とANAと同様に大きく伸ばした。

 

 海外旅行もハワイをはじめ、東南アジアや欧州を旅行する人たちも増え始めた。

 

 政府は新型コロナウイルスの水際対策について、1日当たりの入国者数を1万人から2万人程度まで緩和する方針を示しており、「鎖国」状態にあった国際観光の再開に向けて、ようやく動きだした感がある。

 

 かく言う私は、コロナ禍以前のGWの過ごし方に戻り、ほぼどこにも行かなかった。テレビの渋滞情報を見ながら、「糖質、プリン体ゼロ」の発泡酒を片手に、リクガメと遊んだり、読書したり、家具を眺めたり、いわゆる「おうち時間」を楽しんだ。

 

 初夏らしく暖かくなってきたので、バイクをピカピカに磨きながら、旅行新聞バイク部のツーリングコースはどこにするかを考えていた。

 

 

 さて、今年はこれまで中止、延期されていたさまざまイベントも再開される。

 

 「第31回全国女将サミット2022長野」が7月7日、軽井沢町のグランドエクシブ軽井沢を会場に開催する予定だ。19年に東京で開いて以来、3年ぶりとなる。30回という長い歴史を有しながら2020年、21年とコロナ禍で開催ができなかったが、31回目の新しい一歩を踏み出す大会となる。

 

 全国旅館おかみの集い運営委員会の委員長には、湯本英里・湯本旅館女将(長野県・渋温泉)が就任。今大会のテーマは「笑った分だけ幸せに!~あなたの笑顔が誰かの元気に~」。講演会や茶話会を通じて情報交換を行う。多くの女将に参加してほしいと願っている。

 

 

 旅行新聞新社主催、サービス産業革新推進機構(内藤耕代表理事)後援の第4回「旅館経営教室」現地セミナー&館内見学会も6月2~3日に、愛知県名古屋市のエクセルイン名古屋熱田を会場に開催する。

 

 同ホテルの苅谷治輝社長と内藤耕氏との対談は、本紙1面にも掲載している。コロナ禍や国際情勢、天災など、さまざまな危機的な経営環境が今後も予想されるなか、苅谷社長は稼働率40%でも収益を上げられる経営を実践されている。

 

 多くの旅館・ホテル経営者は売上を上げるために、集客につながるサービスを「足し算」で考えてしまいがちである。苅谷社長は低稼働状況でも利益を残すために、対外的な契約をシビアに見直すなど、「引き算」的思考によってムダの削減を徹底している。

 

 エネルギーや食糧などあらゆるコスト高の状況は今後も続くだろう。「なんとなく流行っているから」という潮流に乗って新しい施設やサービスに大きな投資をする前に、今回の旅館経営教室セミナーがもう一度「引き算」の視点で自らの施設を見つめ直すきっかけになればいいと考えている。ご関心があれば、ぜひ参加していただければと思う。

(編集長・増田 剛)

帯広支店がリニューアル 旅×アウトドア×ワークスペースの次世代型店舗(日本旅行北海道)

2022年5月16日(月) 配信

日本旅行北海道帯広支店 イメージ

 日本旅行(小谷野悦光社長)のグループ会社「日本旅行北海道」(清水伸一社長、北海道札幌市)は5月16日(月)、「帯広市元気な中心市街地づくり促進事業」を活用して、帯広支店をリニューアルオープンした。

 「旅×アウトドア×ワークスペース」をコンセプトにキャンピングオフィスをイメージした次世代型の旅行店舗へと改修した。内装はアウトドア気分を味わえる空間として、コワーキングスペースや会議スペースを設置し、市民や地元ビジネス層、ワーケーションなどで、多くの人に利用してもらえるように整えた。

 コワーキングスペースでは、アウトドア道具の利点を生かした地域防災研修などイベント開催の場として活用する。将来的には地元学生の自習スペース機能を設置したり、学生の進路や将来を見据えたイベントの場としても利用できるよう実証実験を予定する。

 同社は、「旅行会社の利点を生かし、ワーケーションなどで帯広を訪れる人や地域の方に、十勝観光素材の発信・情報提供や、帯広市発着の周遊ツアー・体験素材の手配も行い、観光産業の推進をはかる」考え。

長門市の老舗「枕水館」が破産 負債は約5億円に(帝国データバンク調べ)

2022年5月16日(月) 配信

 枕水館(水津弘人社長、山口県長門市)は4月19日(火)、山口地裁から破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると、負債は約5億円。

 同社は1831(天保2)年創業、1958(昭和33)年7月に法人改組した。湯本温泉最古の宿を「枕水(ちんすい)」の屋号で経営していた。比較的リーズナブルな料金設定が好評で、95年12月期には年間収入高約4億8700万円を計上していた。

 しかし、その後は景気低迷などで利用客が減少。年間収入高は1億円を割り込み、採算性も悪化した。設備改修などに伴う借入金が重荷となり、厳しい資金繰りが強いられていた。建物の老朽化も課題となるなか、新型コロナウイルス感染拡大の影響による緊急事態宣言の発令などで休業を余儀なくされ、事業継続を断念した。

津田令子の「味のある街」「だんご2本盛」――新宿追分だんご本舗(東京・新宿)

2022年5月15日(日) 配信

新宿追分だんご本舗の「だんご2本盛」605円~▽東京都新宿区新宿3-1-22▽☎03(3351)0101。

 新宿追分だんご本舗は花園神社から徒歩3分の新宿三丁目駅近くにある。「追分だんご」の由来は、1455年に太田道灌が江戸城を築城中、品川の館から武蔵野に鷹狩りに行った帰り道、高井戸で中秋の名月のもとで宴を催していたところ、地元の名族から手つきの団子が献上され道灌は大いに喜んだ。その後も団子を所望したと記されている。のちに高井戸宿が甲州街道の始駅となり、団子屋は柳茶屋と号し茶屋として大いに繁盛。1698年に内藤新宿が伝馬の宿駅となり、道灌団子をあつかっていた柳茶屋も新宿追分に移転。「追分だんご」と呼ばれるようになったという。

 

 現在の追分だんご本舗の始まりは、1947年の夏、終戦間もない新宿三丁目に掛けられた「やなぎ家」という白い暖簾だという。創業者の藤井藤右ヱ門は、町の老輩に「追分だんご」の成り立ちを聞き、新宿追分の地にその味を復活させようと思い立ち店を開いた。伝統の味の継承と時代とともに変化する味覚を合わせた追分だんごは徐々に広まり、今では東京名物と呼ばれるほどになったのだ。

 

 先日、久しぶりに正午の開店時間を待って追分だんご本舗喫茶室に寄ってみた。いつものように「だんご2本盛」を注文すると、ほどなくして丸皿に2本が行儀よく載せられて運ばれてきた。毎回、一番人気の「みたらし」と定番中の定番「こしあん」をと決めているので、今回も同じものをいただいた。串に刺さっただんごが3つ。みたらしがたっぷりまぶされた1つ目のだんごを口に入れる。「なんというやわらかさだろう」と言いながら2つ目、3つ目と一気に平らげた。これほどまでにやわらかく、しかも美味しく、見た目も美しいだんごにお目にかかったことがない。向かうところ敵なしといっただんご界の王者の風格が漂っているのだ。

 

 勘定を終え、持ち帰り用のだんごを選びお土産用に包んでいただいた。春のお花(桜)見をすませた人々は、この店のだんごを持って今度は何を愛でにどこへ出掛けるのだろう。「季節の花と追分だんご」何とも素晴らしい組み合わせではないだろうか。

(トラベルキャスター)

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(136)お客様の心を掴むメッセージ 自慢のスタッフを紹介

2021年5月14日(土) 配信

 

 今年開催する大型イベントで、観光客を案内する添乗員向けの研修を依頼されました。1日目が座学で、「添乗員としてのお客様対応について」の話をして、2日目にバスを使った具体的な行動のロープレ研修を行いました。

 各地から早朝に集まった添乗員を、バスドライバーが笑顔で迎えます。全員が集合してバスに乗り込むと、1本のペットボトルと主催者からの短いメッセージカードが私の座席に置いてありました。

 ホテル・旅館に宿泊すると、こうしたサービスやメッセージカードをよく目にします。とくに、お客様それぞれに準備されたメッセージカードには感動します。ただ用意する側は、非常に手間が掛かります。

 お客様の反応やその効果を考えると、「やった方が良いのは分かるが」という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。

 メッセージカードの効果を高めるには、同じ文面ではなく、お客様への個別メッセージが重要であると思います。ただ、多くの宿泊者に個別のメッセージを書くのは大変なことです。

 今回の添乗員研修でもらったメッセージカードは、もうひとつのヒントとなるものでした。

 研修バス担当のバスドライバーは、乗降のたびに参加者と「お疲れ様です」「がんばってください」と言葉を交わしていました。

 添乗員のあいさつ研修のときも、ドライバーを紹介するたびに、運転席から帽子を高く上げて応えてくれました。こうした雰囲気だからこそ、添乗員は気持ちよく研修できたのです。

 1日の研修を終えたとき、「ここだ」と思って主催者から受け取ったメッセージカードを読み上げました。すると、多くの添乗員が涙を流しながら、ドライバーに大きな拍手を送ったのです。

 そのカードには、ドライバーが「今日ラストラン」であると、記されていたのです。出逢って数時間を共にしただけで、ドライバーに対してみんなが涙を流すような感動が生まれたのか。

 研修ドライバーの役割を一生懸命に果たしたことも大きな要因です。

 ただ、それ以上に「ラストラン」を伝えた、主催者のスタッフへの想いも忘れてはならないと思います。「チームスタッフを大切に想う気持ち」が、お客様の心を掴んだのです。

 今日書くメッセージカードに、自慢のスタッフを紹介してみてください。本人のやる気にもつながるでしょうし、お客様も逢ってみたいと思われるでしょう。

 カードを読む、お客様の心に残るメッセージとは、丁寧な文字で例文を書き移すことではないのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

阪急グループ21年度決算 営業損失57億円に

2022年5月13日(金) 配信

阪急交通社グループはこのほど2021年度決算を発表した

 阪急交通社グループ4社(阪急交通社、阪急阪神ビジネストラベル、阪急トラベルサポート、阪神トラベル・インターナショナル)は5月13日(金)、2021年度決算(21年4月~22年3月)を発表した。営業収益は604億1900万円と、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年(119億6000万円)と比べ、大幅に伸長した。

 営業損益は新型コロナの影響による旅行事業の売上減に伴い、「グループ全体でさらなる経費削減を進め、ソリューション事業の拡大に取り組んだ」(同社)として、57億4800万円の損失(前期は73億9700万円の損失)と16億4900万円改善した。

 国内旅行は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出で影響を受け、上半期は厳しい状況が続いた。21年10月以降は、集中的に広告量を増やし、フリープランや、添乗員同行の周遊型旅行、県民割を適用できる商品が伸長。第3四半期(21年10~12月)の3カ月間は、コロナ前の70%まで回復した。

 一方で、今年に入ってからはオミクロン株の流行によるまん防の発出があり、国内旅行の需要が伸びず、年間を通じて回復には至らなかった。

 海外旅行と訪日旅行は、各国の出入国制限や渡航制限措置で、前年に引き続き厳しい状況となった。

 今後の見通しについて同社は、「コロナの鎮静化には至っていないが、経済活動の活性化は進んでいる。安心安全を確保しながら、付加価値の高い商品を提供し、さらなる拡大を目指す」とした。

 また、22年度は国内旅行による収益拡大と、ソリューション事業の強化に取り組む考え。デジタル技術を活用したオペレーションの効率化や、デジタルマーケティングによるDX化を推進することで、「競争力を強化し、中長期的には旅行事業全体の最適化と生産性の向上に努める」意向を示した。[blogcardurl=”http://www.ryoko-net.co.jp/?page_id=17562″]

岡山県、地酒セミナー開催 メディアに県産酒米PR

2022年5月13日(金) 配信

伊原木隆太知事

 岡山県(伊原木隆太知事)は5月11日(水)、とっとり・おかやま新橋館(東京都港区)で岡山地酒メディアセミナーを開いた。「雄町」や「山田錦」など岡山産の酒米を使った日本酒をアピールした。

 伊原木知事は「雄町は全国の酒蔵がほしがる逸品だ。(現地に来て)ほかの米で製造された日本酒と飲み比べてほしい」と話した。

 また、7月にスタートする岡山デスティネーションキャンペーンと旬を迎える名産品のモモとブドウ、開催中の瀬戸内国際芸術祭2022に触れ、「贅沢に観光を楽しむことができる」と魅力を語った。

 講師にはSSI認定きき酒師兼日本酒学講師の市田真紀氏が登壇した。

市田真紀氏

 市田氏は冒頭、地酒について、「風土を醸し、特色を映し出した酒」と定義づけた。

 そのうえで、全国で生産される雄町の約95%は、岡山県産であることを紹介。県外への流通量は少ないという。

 さらに、「全国の酒蔵は、さまざまな日本酒の品評会で上位に入賞するためには雄町が欠かせないと評価している」と述べた。

 味については、やわらかく、独特の余韻を楽しめるとし、「ほかの品種にはない味わいを表現できる」とアピールした。 

 具体的な商品として、赤磐雄町や御前酒純米美作などを挙げた。

 また、市田氏は高田農産(岡山市)の酒米「山田錦」が4月に、「最高を超える山田錦プロジェクト2021」でグランプリを獲得したことも説明。「上質な酒質で、優しい口当たりを堪能できる酒を製造できる」とPRした。

 十八盛山田錦純米や燦然純米吟醸朝日などで使用されている。

田沢湖高原ハイランド山荘が破産 関係会社と2社合計の負債は約1億9800万円(帝国データバンク調べ)

2022年5月13日(金) 配信

 田沢湖高原ハイランド山荘(山本実社長、秋田県仙北市)と、関係会社の田沢湖トレッキングサービス(同社長、同所)は4月14日に、秋田地裁大曲支部から破産手続き開始決定を受けた。負債は2社合計で約1億9800万円。

 田沢湖高原ハイランド山荘は2009(平成21)年7月に設立。田沢湖高原で「ハイランドホテル山荘」の名称で観光ホテルを経営していた。帝国データバンクによると、同ホテルは当初、山荘(仙北市、09年8月破産)が経営していたが、経営不振から県外企業のグループ傘下として同社が引き継いだ経緯があるという。

 ホテルは客室数46室を有し、収容人数350人。かつては修学旅行客やスキー客でにぎわっていたが、スキー人口の減少や田沢湖高原自体の集客力の低下により、経営が破綻。同社が再生を目的に事業を引き継いでいた。

 しかし、近年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用者が激減。この間、赤字決算が続いていたほか、業績改善が見込めないことから、21年夏ごろまでに営業を停止していた。

 田沢湖トレッキングサービスは、09年1月に設立。田沢湖高原ハイランド山荘の業務と連動する事業を行っていたが、同社に連鎖するかたちで同様の措置となった。

 帝国データバンクによると、負債は田沢湖高原ハイランド山荘が約1億6100万円、田沢湖トレッキングサービスが約3700万円。

4月の宿泊業倒産は11件 倒産件数8カ月ぶりに10件超え(東京商工リサーチ)

2022年5月12日(木) 配信 

東京商工リサーチはこのほど、2022年4月の宿泊業倒産を発表した

 東京商工リサーチがこのほど発表した2022年4月の宿泊業倒産は11件(前年同月3件)だった。8カ月ぶりに前年同月を上回り、10件超えとなった。このうち、新型コロナ関連倒産は7件。負債総額も、25億1300万円(前年同月比31・1%増)となり2カ月ぶりに前年同月を上回った。負債10億円以上の大型倒産は発生しなかったが、5億円以上の倒産が2件、1億円以上が7件と、ともに増加した。

 

 地区別では関東の3件が最多となり、次いで東北と中部が各2件で続いた。

 4月の宿泊業倒産のおもな倒産事例として、枕水館(山口県長門市)が4月28日(木)、山口地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約5億円。

 同社は、温泉宿として1831(天保2)年創業の記録があり、山口県の伝統ある湯本温泉の中でも歴史の長い温泉旅館の1つだった。中国縦貫道の開通後には、関西からの団体旅行客や修学旅行需要が増加し、1987年には施設の増築で収容人数を200人に拡大。翌年の12月期は売上高約4億8000万円を計上した。

 しかし、バブル崩壊後は徐々に旅行客が減少。改装などで集客の回復をはかるものの赤字が散発し、信用保証協会の代位弁済を受けるなど厳しい資金繰りが続いていた。

 2020年以降は新型コロナ禍で回復が見込めず、事業継続を断念した。

 北海道帯広市でビジネスホテルを運営していたビジネスホテル宮崎は3月31日(木)に事業を停止し、釧路地裁帯広支部から破産開始決定を受けた。負債総額は約1億9000万円。

 同社は、北海道外の大学やスポーツ団体とのつながりで、スケートや自転車競技などの合宿需要で売上を伸ばし、ピーク時の1997年11月期には、売上高約2億4000万円を計上していた。

 その後、施設の老朽化や競合のビジネスホテルとの競争激化で客足が減少。食事や弁当などのサービス面の改善や、設備改修を行うなどで再建をはかったものの、2019年11月期には7910万円、21年11月期は6500万円まで売上高が落ち込んでいた。22年に入り、借入金の返済の目途が立たないことから事業継続を断念し、今回の措置となった。

 今年4月の旅行業倒産は3カ月ぶりに発生しなかった(前年同月は3件、負債総額10億1700万円)。

 同社は、「長引く海外への渡航制限などの影響による先行き不透明感は色濃いものの、雇用調整助成金などの支援策の継続で、旅行業の倒産が抑制された」と分析する。

 また、まん延防止等重点措置解除後初めての大型連休があり、宿泊需要は回復基調にあった。同社は、「訪日観光客の受け入れ解除については今後も段階的制限が続くと見られる。インバウンド向けを主力とする施設を中心に、本格的な復調には時間が掛かる」との見方を示した。