楽天トラベル、絶景プランが人気の宿ランキングを発表

2021年8月11日(水)配信

1位「ホテルオリオンモトブリゾート&スパ」 客室バルコニーからの眺め(一例)

 楽天トラベルがこのほど発表した「絶景プランが人気の宿ランキング」で、沖縄県・本部町の「ホテルオリオンモトブリゾート&スパ」が1位に輝いた。2位は大阪府箕面市の「大江戸温泉物語 箕面温泉 箕面観光ホテル」、3位は静岡県熱海市の「絶景掛け流しの宿 熱海月右衛門」が選ばれた。

 ランキングは、宿泊者からのクチコミの総合評価点数・件数がともに平均値以上の宿泊施設を対象に、一定期間中に「絶景」のキーワードを含む宿泊プランを利用した宿泊人泊数(宿泊人数×泊数)を集計したもの。宿泊期間は2020年8月1日(土)~21年7月31日(土)。

絶景プランが人気の宿ランキング TOP5

順位 都道府県名 宿泊施設名
1位 沖縄県 ホテルオリオンモトブリゾート&スパ
2位 大阪府 大江戸温泉物語 箕面温泉 箕面観光ホテル
3位 静岡県 絶景掛け流しの宿 熱海月右衛門
4位 静岡県 マヒナ・グランピング・スパ・ヴィレッジ
5位 兵庫県 洲本温泉 ホテルニューアワジ <淡路島>

 1位に輝いた「ホテルオリオンモトブリゾート&スパ」は、県内でも珍しい礁湖内にある「エメラルドビーチ」が目の前に広がり、全客室から真っ白な珊瑚砂と透明度の高いコバルトブルーの海を堪能できる。宿泊者からは眺望に関するクチコミが寄せられ、高い評価を得ているという。県内からの宿泊人泊数が前年同期比約4.7倍に増えていることから、県民からの人気の高さもうかがる。

 2位に選ばれた「大江戸温泉物語 箕面温泉 箕面観光ホテル」は、最上階にある天空露天風呂が棚湯となり、体を寝かせた状態で大阪平野を一望できる。時間帯を問わず高台からの眺望が楽しめるため、宿泊者からは眺望に関するクチコミが寄せられたという。年代別では、若年層の宿泊人泊数が伸び、10~20代の前年同期比が約1.5倍と伸長した。

 3位の静岡県「絶景掛け流しの宿 熱海月右衛門」は、熱海の中でも高台に建ち、源泉掛け流しの貸切露天風呂や客室露天風呂から、熱海の街並みと海を望める。プライベート空間でくつろぎながら絶景を楽しめるため、子連れ利用者からも支持されている。とくに1都3県からの子連れ利用は約1.8倍と好調という。

現代アートの島 直島に22年「直島旅館 ろ霞」開業 先行予約チケット売り出す

2021年8月11日(水) 配信

旅館イメージ

 A&C(佐々木慎太郎代表、岡山県美作市)はこのほど、2022年4月に現代アートの島として有名な直島(香川県・直島町)で開業する「直島旅館 ろ霞」の先行予約チケットを期間限定で売り出した。

 「直島旅館 ろ霞」は、客室露天風呂を備えたスイートルーム8室、プレミアムスイート2室、ろ霞スイート1室の計11室となる本格旅館。先行予約チケットを利用すると、一般の予約開始日となる2022年2月21日よりも3週間早い2月1日からの予約が可能になる。販売期間は、22年1月20日まで。

 関係者は、「22年4月から始まる瀬戸内国際芸術祭のシーズンは、直島中の宿の予約が取れなくなることは必至ですので、ぜひお早めにお求めください」とPRする。

 日本全国、世界中から訪れるアートファンに、3年に1度開かれる瀬戸内国際芸術祭とは違うアート作品やアーティストとの出会いや、アートファン同志の会話が生まれる場として、同旅館が日本現代アートの発信拠点になることを目指す同旅館。全客室とレストラン棟では、アーティスト描き下ろし作品による企画展が随時行われる。展示されるのは、国内の若手現代アーティストの作品が中心で、絵は購入も可能だ。

「街のデッサン(244)」ジャック・アタリの「観光」思想 破壊と世俗化から、地球持続と高品位化へ

2021年8月11日(水) 配信

旅する子供たちが、地球を護る

 私の研究の基盤は国々を巡る比較民俗の旅にあるから、レヴィ・ストロースのようなフランス系の学者に親和性がある。その流れで、哲学、思想分野ではジル・ドゥルーズなどに影響を受けた。もう1人、理論だけではなく実務的なセンスを持つジャック・アタリの考え方に強く共鳴する。とくに彼の「危機とサバイバル」という本の日本語版序文で、日本の21世紀を生き延びる最大の課題は「人口減少と高齢化」にあるとして、何点か政策提言をしている。そのポイントの押さえ方はシャープで、日本では在野エコノミストの竹内宏が「人口減少亡国論」を早くから唱えていたのに注目していたが、アタリのそれはさらにクリアだ。

 ミッテラン政権以来、政府の補佐官を務めたアタリは、フランス国家の多様な人口増加政策を進め、今では合計特殊出生率が2.0を超えるようになり、その趨勢に力がある。観光立国を目指す日本は、コロナ禍もあって2020年の出生率が1.34の低水準が続き、高齢化社会を支えることも、水準の高い観光サービスや将来の顧客創造にも陰りがある。

 フランスの人口サバイバルを演出したアタリが、日本経済新聞(21年6月10日号)に珍しく「観光産業の未来」について意見を寄せている。短いエッセイだが含蓄に富んでいる。幾つかの論点があるが、第1点はコロナ危機以前の観光業の実態に戻すべきではない、というものである。コロナ感染拡大から得た教訓は、疫病の蔓延を防ぎ、化石燃料の消費を減らし、文化遺産や自然環境を保護するには内外旅行などの観光を規制する必要があるということだ。これまでの観光スタイルは疫病を蔓延させ、温暖化を招き、地球環境の破壊の原因を生み出していた。既に多くの国々で、業界の関係者を始めこの事態を深く憂慮している。

 第2点は、社会問題に貢献できる顧客は、コロナ後には「観光を楽しめる富裕層だけ」ではないかと、アタリは指摘する。正規の航空運賃を支払い、供給制限されるホテルの高額な宿泊費を負担できる人が観光を享受できる。この発想に唸らされるが、Go Toキャンペーンのような1人でも多くの観光客を増やそうとする発想と真逆である。

 第3点は、観光業の本質である「ホスピタリティの精神と技術」は、コロナ後の高齢化を迎えた介護市場などに大きなスピルオーバー効果を齎すというもの。本来、ホテルもホスピタルも同類だった。人間の社会だけでなく地球全体を治癒し、安全・安心な持続する宇宙を支える観光産業をアタリは構想しているのだ。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

ホテルメトロポリタン鎌倉 「レストラン ミッシェル ナカジマ」のディナーコースが付いた宿泊プランを売り出す

2021年8月10日(火) 配信

レストラン ミッシェル ナカジマ

  ホテルメトロポリタン 鎌倉(神奈川県鎌倉市)はこのほど、「レストラン ミッシェル ナカジマ」のディナーコースが付いた宿泊プランを売り出した。

スペシャリテ

 シェフのスペシャリテと前菜3種、⾁と⿂それぞれのメインやデザートなど全9品が味わえる。スペシャリテは、滑らかに仕上げた季節の野菜のフォンダンに、軽くボイルしたオマール海⽼を乗せて、オマール海⽼のコンソメジュレをかけた1品。

 「レストラン ミッシェル ナカジマ」は、鎌倉野菜や産地から届く新鮮な⿂介類などをつかう本格フレンチレストラン。シェフの中嶋秀之⽒は、ミュンヘン⽇本国総領事館公邸料理⼈として渡独経験があり、当時の河野外務⼤⾂より優秀として表彰された人物だ。

プレミアムコーナールーム(客室)

 料金は1部屋あたり2人利⽤で、1 室3万7120円から(サービス料・消費税込み)。また同ホテルでは、ホテル⾞寄せからレストランまでの⽚道を俥夫が案内するオプションも用意している。料金は9000円。

「チームラボ 東寺 光の祭 – TOKIO インカラミ」 平安京の現存唯一の遺構をインタラクティブな光のアート空間に

2021年8月10日(火) 配信

講堂に咲く増殖する無量の生命

 東寺(京都府京都市)で9月19日(日)まで、「チームラボ 東寺 光の祭 – TOKIO インカラミ」が行われている。

 創建およそ1200年、平安京の現存唯一の遺構である同寺をチームラボが、人々の存在によって変化するインタラクティブな光のアート空間に変容させる。

 瓢箪池の水面にはランプが浮かび、人がランプの近くを通るか風に吹かれて傾くと、強く輝き音色を響かせる。強い輝きは、その周辺のランプも次々に呼応し、光を輝かせ音色を響かせ、連続していく。

 また、金堂には、「空書」が書かれていく。チームラボが創立以来書き続けている空間に書く書のこと。このほか境内では、さまざまな作品を楽しむことができる。

 開催時間は、9月4日(土)までが午後7時から、9月6日(月)~19(日)までが午後6時30分から。平常時間は8月31日(火)までは午後9:00で、9月は後日発表。 8月20日(金)、21日(土)、9月5日(日)は休みとなる。

 料金は、大人が平日1600円、土日祝2200円、小中学生は平日600円、土日祝800円で、未就学児は無料(8月13日~16日は土日祝料金)。

ソラシドエア、長崎県五島市と協定 特別運航機終了を契機に

2021年8月10日(火)配信

写真左からソラシドエア髙橋社長、野口市長

 ソラシドエア(髙橋宏輔社長、宮崎県宮崎市)は8月6日(金)、長崎県五島市(野口市太郎市長)と地域社会発展に寄与することを目的とした包括的連携協定を結んだ。

 五島市は、ソラシドエアの地域振興・機体活用プロジェクト「空恋~空で街と恋をする~」の27番目のパートナーとして、2019年12月から約1年間半、特別塗装運航機「五島へGO!号」を運航していた。このほど同運航機のフライトを終えたことを契機に、包括的連携協定を締結する運びとなった。

 両者は今後も一層連携を強め、観光や地域産業、地域文化の振興、地域貢献を目的として、さまざまな取り組みを行っていくとしている。

オンラインツアーで島根への移住体感 初回は8月21日に開催

2021年8月10日(火) 配信

新たな移住交流イベントに

 島根県とふるさと島根定住財団は8月から、県内の8市町村をオンラインで訪問するツアー型移住交流イベント「しまね移住体感オンラインツアー」を開始する。特設サイトを8月4日(水)にオープン。初回のオンラインツアーは8月21日(土)に、「雲南市編」を実施する。現在、サイトで参加者を募っている。

 同ツアーは、県内初の取り組みとなるツアー型の移住交流イベント。「臨場感」と「双方向性」をテーマに、移住経験者や自治体担当者との対談、交流を通して各市町の実際の暮らしが体感できる。

 参加者には事前に旅のしおりを送付するなど、自宅でも楽しめる工夫をほどこし、コロナ禍の新たな移住交流イベントのモデルとして発信していく。

〈観光最前線〉1981年の初代タイガーマスク

2021年8月10日(火) 配信

初代タイガーマスク関連書籍

 1981年4月23日、蔵前国技館で衝撃のデビューを飾った初代タイガーマスク(佐山サトル)が、新日本プロレスのマットに登場して40年が経過した。デビュー戦の相手は、これまた伝説の外国人レスラー、ダイナマイト・キッド。試合は9分29秒、ジャーマンスープレックスでタイガーマスクが初勝利した。

 ここ数年の間に初代タイガーマスク関連の書籍が数多く出版されている。文庫化された「1984年のUWF」「真説・佐山サトル~タイガーマスクと呼ばれた男」、同時代にライバルだった3人のレスラーに焦点を当てた「〝黄金の虎〟と〝爆弾小僧〟と〝暗闇の虎〟」、発刊されたばかりの「証言・初代タイガーマスク~40年目の真実」など次々と発売され、いまだに初代タイガーマスクの人気の高さがわかる。

我が家のプロレス関連書籍コーナー

【古沢 克昌】

 

LINKED CITYの全容に迫る① 「点在する光を結び付け地域に人を呼ぶ」(鈴木裕会長)

2021年8月9日(月) 配信

鈴木裕会長

 国際観光施設協会(鈴木裕会長)の旅館観光地分科会(川村晃一郎分科会長)は今年3月、観光型スマートシティ「LINKED CITY」構築に向け研究会を発足した。地域資源とAI、IoTデジタルオープンプラットフォームによる事業インキュベーションで雇用を創出。都市と地域、地域と地域をつなげることによる分散型社会の構築を実現させることが狙いだ。「観光とは国の光を観ること。日本全国の光をITで結び、全国に発信したい」と、さまざまな可能性を模索する鈴木会長に話を聞いた。

 国際国際観光施設協会はインキュベーションプラットフォームとして、会員企業のビジネスにつながるさまざまなことを一緒に研究してきました。

 LINKED CITYの研究は、2019年に東京ビッグサイトで開かれた国際ホテル・レストランショーから始まりました。協会のブースで、ホテルや旅館を起点とし、まちの施設やイベント、人をテクノロジーでつなぎ、周辺の活性化や地方創生を目指す「町じゅう旅館・ホテル」構想を紹介したところ、ソニーマーケティングの光成和真氏が興味を持ってくれました。その後同氏が参画してくれ、東京都台東区にある行燈旅館で実証実験を行いました。

 同構想の研究を進めていくなかでさまざまな意見があがり、深化したのが「観光型」のスマートシティ研究です。

 観光の語源は、国の光を観ること。日本は南北3千㌔に至る、雨に恵まれ四季のある温帯モンスーン気候の大変美しい国土です。

 しかし、同時に4つのプレートがせめぎ合う世界一の災害大国でもあります。そうした国土に育まれた2000年の美しくも悲しい風土と人間性、そこから生まれた伝統、文化が日本の光だと思います。そのような実情を残念ながら活用できているとはいいがたい状況にあるので、これらを国の光として磨き上げ、点在する個々の光を結び付けて地域に人を呼び込むことが狙いです。

 研究の軸は、ワーケーションとビジネスマッチングになります。自治体と地方民間企業を連携させ、各省庁の助成金も活用し、実現に向け知恵を出し合い共創します。

 現在同研究会には、多くの事業会社が参画していて、観光MaaSのプラットフォームの構築、地域の人が活躍できるコンテンツ作り、宿のソリューション構築、自治体のコンサルティング、ブランディングに関するアイデアを生み出すべく、知恵を出し合っています。

 スマートシティは①観光②教育③モノづくり④働き方⑤医療⑥モビリティー――の6つのアイテムで構成されます。この6つを結ぶのが、ジョルダンが持つ観光MaaSです。このMaaSは観光に関係することなら、観光施設情報の検索や、最適な移動ルート、電子チケットの決済などをすべが自己完結できることを目指し開発が進められています。

 6つのアイテムの中で一番重要なのは、「教育」です。全国にはその土地ならではの宝物がありますが、その多くが日の光を浴びていないと感じています。こうした郷土の歴史を高校生に発掘してほしい。そして発掘した「素材」を磨き上げ、世界に発信してもらいたいと思っています。

 そのために、東洋大学国際観光学部国際観光学科の徳江順一郎准教授に会員として参画いただき、アドバイスをしていただけるよう環境を整えました。

 モノづくりでは製品の原点を見るツアーを実現し、インバウンドを地域に呼び込んでいきたいです。医療では、外国人に日本の先進医療を受けてもらう医療ツーリズムや、僻地での遠隔医療の可能性についても議論をしてみたい。

 働き方に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で、「テレワーク」や、「リゾートテレワーク」の導入に向けた議論が進んでいます。重要なのは、住宅と事務所の境がなくなったこと。ホテルなども仕事場として考えられるようになってきているので、今までは仕事場ではなかった場所で仕事をするうえで便利になる新しい機能も考案する必要があります。

 一方で、一番難しいと考えているのが「モビリティー」です。2次、3次交通の問題として、駅から観光地まで、交通の利便性をどう向上させるかを、参画している相乗りサービス事業者NearMeなどと議論していきたいです。併せて、IT事業者に協力してもらい、交通量が少ない時間帯は車道を歩行者専用にするなど、町中の道を時間と移動量のバランスに応じて調整する方法もカタチ作れたらいいと思っています。

 LINKED CITYの研究の理想のカタチ、あり方は、色々な分野の企業、人に参画していただき、自由に発想し、その発想のもとに人と人を結びつけながら発展させていくこと。アメリカのポートランドでは、1人が何か新しいアイデアを出すと、業種に関係なくさまざまな人が実現に向けたアイデアを出し合う文化があります。
 アーキネティクス代表の吹田良平氏が、誰かがアイデアを入れると、実現に向けてさまざまな人が集まるアプリを開発しているので、このアプリをLINKED CITYと連携させたい。

 いずれにしても、この研究は、同構想の実現に向け、参画するSC企画・十勝CD・アーキネティクスの3社が「LINKED CITY Lab(仮)」を立ち上げたように、個々をベースに参画者同士で新しい分野に挑戦してもらうことも大切です。

【精神性の高い旅 ~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その4- 源頼朝の二所詣(2)三嶋大社(静岡県三島市) 頼朝の足跡に想像の翼を 三嶋大社と流刑の地蛭ヶ小島

2021年8月8日(日) 配信

 前回に引き続いて、源頼朝の二所詣の地を歩くことで、源頼朝の足跡とその想いに想像の翼を広げてみたい。

 
 頼朝は13歳のとき流罪となり、伊豆蛭ヶ小島にやってきたが、軟禁状態とはいえ、平氏とその勢力を二分した源氏の直系跡取り息子ということで、ぞんざいな扱いはされていなかったようである。

 
 平氏家来の監視下で、頼朝は父義朝をはじめとする戦で命を落とした人々の霊を弔い、信仰を篤くした。

 
 頼朝は、征夷大将軍になったのち、箱根権現、伊豆山権現に加え、この伊豆滞在時代に崇敬していた三嶋社(現在の三嶋大社)を含めて「二所詣」とした。頼朝は、権力の座に就いてからも、自分が最も辛い期間を過ごした地を毎年訪問していたということからも、一般に言われている血も涙もない冷徹な権力者というイメージよりも、実体は逆で己を冷静に見つめ直すことをやっていた人なのではないかと想像する。

 
 精神性の高い旅は、想像力を最大限に高めながら歩くのだ。

 
 

 三嶋大社は三島駅の南に位置し、湧き水がところどころにあるのを眺めながら、徒歩で行くのをお薦めする。私は春に訪れたが、満開のソメイヨシノが迎えてくれた。そのあと、枝垂れ桜も美しいそうである。また、秋には、頼朝もその香りを愛でたであろう樹齢1200年を数える金木犀も楽しめる。

 

三嶋大社の拝殿正面。彫刻が美しい

 かなり大きな本殿にまずは圧倒される。拝殿正面には立派な彫刻が施されている。中央は天照大御神が天岩屋戸から出てくるようすを表し、右側の彫刻は、吉備真備が囲碁をしているようす、左側の彫刻は、源頼政が妖怪を退治するようすを表している。

 
 三嶋大社は、頼朝にちなんで戦勝祈願に訪れる参拝者が後を絶たないが、単に賽銭を投げて手を合わすだけでなく、この彫刻を鑑賞して、戦いに勝つには、「知恵と勇気の両輪が必要である」ということを知るべきである。

 

蛭ヶ小島の頼朝と政子の像。富士山の方向を見つめている

 三島からさらに南に車を15分も走らせれば、流刑の地蛭ヶ小島に行くことができる。世界遺産に登録されている韮山反射炉のすぐそばである。大きな観光地にはなっていないが、頼朝と政子の像が迎えてくれる。ここにはこの2人の像と石碑しかないが、このような場所で頼朝が源氏再興を願い、政子と出会ったのだということを想像するには、何もない方が想像も膨らんでいく。田んぼが今も広がっていて、豊かな土地であったことを物語っている。

 
 文覚上人という怪僧もまた流罪に処され、この地に辿り着いた。文覚は父源義朝の髑髏を持ち、この地で源氏一門の霊を弔いつつ静かに暮らしていた頼朝に会いに来て、決起を促した。文覚と頼朝との交流は生涯にわたって続き、頼朝の全権掌握後、文覚は神護寺、東寺、高野山、東大寺、江の島弁財天など、各地の寺院の建物の修復に心血を注いだ。

 
 その文覚上人流寓跡が蛭ヶ小島の近くの山道を少し上っていったところにある。今は石碑と小さな祠と岩があるが、頼朝が蟄居していた蛭ヶ小島は見通しのいい平野にある一方、文覚がいた場所は山あいに入ったところである。

 
 きっと頼朝は、大事な話は蛭ヶ小島ではなく文覚のところで本音を吐露したに違いないと、その地に足を踏み入れて想像した。

 
 その地の料理に舌鼓を打つことも旅の楽しみである。全国的にはうなぎといえば浜名湖が知られているが、静岡在住の私の友人2人に聞くと、2人ともから三島のうなぎがうまいとのアドバイスをもらった。

 
 富士山から流れてくる清冽な湧き水が豊富な三島だからこそ、その言葉には説得力がある。三島では、歴史散歩と食の両方を堪能することができた。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授、日本国際観光学会会長。「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。