10年遊園地・テーマパーク収入高

10年遊園地・テーマパーク収入高

 帝国データバンクがまとめた「遊園地・テーマパーク経営企業128社の実態調査」によると、2010年の収入高合計は前期比2・4%減の8483億3千万円だった。増収となった企業は128社中48社で全体の37・5%。一方、減収となった企業は58社で45・3%を占めた。「東京ディズニーリゾート」を経営する業界最大手のオリエンタルランドは、収入高が同4・1%減の3054億2500万円となるなど、大手企業の減収が目立ち、今後、震災の影響が懸念される。

<2.4%減の8483億円に、大手企業の減収目立つ>

 調査対象は、遊園地・テーマパーク経営企業のうち09―10年(1―12月期)の決算で2期連続で収入高が分かっている企業128社。

 規模別にみると、「収入高500億円以上」は4社すべてが減収。「収入高100億円以上500億円未満」は9社中6社が減収となり、全体的に減収傾向にあるが、とくに大手企業の不振が目立つ。

 128社のうち2期連続で損益が判明している77社について分析した結果、10年の黒字企業は61社で79・2%を占めた。赤字企業は16社で20・8%。このうち2期連続で黒字となったのは47社、2期連続で赤字となったのは8社だった。また、09年に黒字計上した55社の黒字総額が313億8300万円だったのに対し、10年に黒字計上した61社の黒字総額は494億7400万円と黒字額が大幅に増加。一方、09年に赤字計上した22社の赤字総額が62億2200万円だったのに対し、10年に赤字計上した16社の赤字総額は105億円とこちらも大きく増加しており、厳しい状況のなかで企業間格差は一段と広がっている。

 地域別にみると、収入高合計は、オリエンタルランドのある関東(東京を除く)が4914億5800万円でトップ。次いで、東京ドームのある東京が1367億3100万円で2位。上位2地域で全国の収入高の74・1%を占める。さらに、中部、九州、近畿と続く。

 収入高ランキングをみると、トップはオリエンタルランド。前年の25th.アニバーサリーの反動で来園者が減少し、同4・1%減の3054億2500万円。11年4―6月期決算では、東日本大震災の影響を受け、収入高は43・0%減の485億5100万円を計上。営業損益は30億4100万円の赤字となった。2位は西武鉄道、3位はユー・エス・ジェイ、4位は東京ドーム、5位はナムコと続く。

2年連続70兆円割れ、節約志向で客単価が下落

 日本生産性本部余暇総研がまとめたレジャー白書2011によると、10年の余暇市場規模は前年比2・1%減少の67兆9750億円で、2年連続70兆円割れとなった。景気低迷に加え、消費者の節約志向は強く、多くの業界で客単価の下落が止まらなかった。

<旅館の売上8%減少>

 余暇活動の参加人口順位は昨年に引き続き第1位は6290万人のドライブ。以下、2位が6150万人の国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)、3位が6040万人の外食(日常的なものを除く)、4位が5150万人の映画(テレビは除く)の順。長く第1位を維持してきた外食は昨年初めて首位を転落。今年は3位にとどまり、参加人口も減少している。

 一方で順位を伸ばしているのが文化・学習関連。「はやぶさ」帰還後の科学ブームなどもあり、動物園、植物園、水族館、博物館(ミュージアム)は4800万人の第5位、学習、調べものは3450万人の第13位に入った。

 余暇市場動向を部門別にみるとスポーツ部門は同1・4%減の4兆150億円。ブームが続くランニング関連用品・スポーツ自転車のほか、アウトドア用品が堅調に推移した。ファッショナブルなアウトドアファッションを身につけて山に登る若い女性「山ガール」が増加している。サービス市場ではゴルフ・練習場は伸び悩んだがフィットネスクラブはスクール会員が増えてマイナス基調が底を打った。

 趣味・創作部門は同6・3%増の10兆8840億円。映画の興行収入は同7・3%増加し史上最高額を更新した。「3D映画元年」といわれた09年に続きヒット作に恵まれ、客単価も伸びた。テレビも家電エコポイント制度の恩恵を受け、過去最高の売り上げを記録した。

 娯楽部門は同4・7%減の43兆5610億円。パチンコ市場は大きく減少しついに20兆円を割り込んだ。

柳田研究員
柳田研究員

 観光・行楽部門は、同1・0%増の9兆5150億円。旅行業の取り扱いは同2・9%増加した。国内旅行の同2・1%減に対し、海外旅行は同12・1%増と大きく伸びた。ホテルの売り上げは9760億円の横ばい。旅館は同8・1%減の1兆4570億円と落ち込みが大きかった。稼働率が下がっており、客単価も長らく減少が続いている。施設数の減少は続いており、ついに客室数はホテルが旅館を上回った。遊園地・テーマパークは全般に厳しいなかで「東京ディズニーリゾート」は過去最高の売り上げを記録した。全会員制リゾートクラブは最大手「リゾートトラスト」の1人勝ちで市場規模は拡大している。乗用車市場は、エコカー減税やエコカー補助金の効果が年頭から持続し、長期低迷から一時的に回復した。

<震災後のレジャー>

 緊急特集では、3月11日発生した東日本大震災により強大な衝撃を受けた国内のレジャー産業を分析。レジャー・観光産業は消費自粛の影響を正面から受けた。旅行業においては、訪日外国人客は激減し、東北地方を中心に国内旅行客も減少した。宿泊産業においては、震災直後は宿泊客が見込めず営業自粛するケースが目立った。外国人の予約キャンセル、需要減少が全国的に大きな痛手となった。

 一方で今回の震災は、レジャー観光産業の社会的役割が問い直される機会にもなった。社会的役割として、(1)元気づける(2)日常を支える・取り戻す(3)きずなを深める(4)文化の掘り起こし、発信(5)「生活のリズム」をつくる(6)ソフトパワーの発揮(7)リスクに備える――の7つを抽出・整理。例えば(5)の「生活のリズム」をつくるは、電力需要ひっ迫の関係から輪番休業や長期休暇、サマータイムなどへの企業・業界の取り組みが増加、人々の「仕事―余暇時間」の枠組みが大きな影響を受けた。

 企業の取り組み次第では、積年の課題である年次有給休暇取得促進問題に風穴を開ける可能性も出てきた。こうしたいわば「社会実験」を「生活のリズム」に定着させていくには、レジャー産業が主導する受け皿作りが必須と指摘する。

<レジャーの「デジタル化」>

 特別レポートのテーマは、スマートフォンやツイッターなどの情報通信機器やサービスが急速に普及するなかで確実に進むレジャーの「デジタル化」。レジャー活動種目単位別のデジタル活用度を調査。これは本来の参加率に対する情報通信機器を使って参加した割合を算出したもの。第1位は62・8%で「サッカーくじ(トト)」。以下、「学習調べもの」(59・1%)、外食(日常的なものは除く)」(55・3%)の順。

 上位20種目のなかには「公営競技系」「ゲーム系」「創作系」「鑑賞系」などの種目グループが見られた。柳田尚也研究員は「デジタルの中で自己完結する楽しみ方ではなく、デジタルがリアルの参加を促し、相互に活性化する展開が生まれている」と語った。

第3回観光甲子園、グランプリが決定

グランプリの富良野緑峰高校
グランプリの富良野緑峰高校

<グランプリは富良野緑峰(北海道)と油木(広島)>

 高校生が主役となって地域の観光資源を再発見・再発掘して作り上げた「地域観光プラン」を競い合うコンテスト、第3回「観光甲子園」の本選大会が8月21日、兵庫県神戸市の神戸夙川学院大学を会場に開かれた。同大会組織委員会(委員長・石森秀三北海道大学観光学高等研究センター長)が主催し、同大が共催。文部科学省、観光庁など21団体が後援した。

 本選では全国35都道府県から、大会に参加した72校が提出した134観光プランの中から予選審査を行い、突破した10校の生徒が、8人の審査委員を前にプレゼンテーションを展開。グランプリの文部科学大臣賞に北海道立富良野緑峰高校、観光庁長官賞に広島県立油木高校が輝いた。ほかに準グランプリ3校、優秀作品賞5校が決定。10校以外から6校に特別賞が贈られた。

 毎年、高校生らしいユニークなプランが発表されるなか、グランプリ2校は富良野緑峰が「定住」、油木は「ミツバチ」をテーマに選んだ。

 緑峰高校のプランは「へそのまちがええじゃないか!~ふらの人になるSUMMER&WINTER Wツアー~」。富良野の魅力をより深く理解してもらうため、20―40歳代の夫婦・家族を対象に移住に向けた観光を提案。夏、冬2回実施し、宿泊施設はお試し住宅を利用。富良野での生活、農業を体験し、地元の人と交流をはかる。

 油木高校のプランは「花咲く神石高原町・ミツバチの里夢プラン」。人口1万1千人の町の学校は生徒数が200人という地元密着の農業高校。耕作放棄地を花畑に変えて「ミツバチ」を飼育し、蜂蜜を活かした加工品を製造。れんげ祭りで観光客を呼び込み、蜂蜜創作料理でもてなす。

 審査委員長の石森氏は「高校生が真剣に地域と向き合って、さまざまな観光プランを練り上げてくれることに深く感動している」と感想を寄せた。

 グランプリ以下は次の通り。

 【準グランプリ】私立清真学園高校(茨城)▽佐賀県立嬉野高校(佐賀)▽山形県立鶴岡中央高校(山形)【優秀作品賞】松江市立女子高校(島根)▽大阪府立能勢高校(大阪)▽京都府立桂高校(京都)▽埼玉県立秩父農工科学高校(埼玉)▽愛媛県立弓削高校(愛媛)

10月から南九州DC、“のんびり過ごす極情の旅”

3県代表し蒲島・熊本県知事があいさつ(中央)
3県代表し蒲島・熊本県知事があいさつ(中央)

 熊本と宮崎、鹿児島の3県とJRグループは10月1日から12月末まで、3県デスティネーションキャンペーンを展開する。九州新幹線の全線開通を機に、全国から誘客を目指すもので、〝のんびり過ごす極情の旅〟をキャッチフレーズに、3県が誇る「温泉」「自然」「観光列車」「伝統」「美味」の観光素材と温かい「極上の人情」でもてなす。

 8月31日に熊本市内で行われたJR、3県の共同記者会見で、JR九州の唐池恒二社長は「3県の境を取り払い、九州新幹線で全国から多くの観光客をお迎えしたい。最速の新幹線と、3県を走る7つの観光列車によるスローな旅の魅力を全国発信する」と述べた。

 3県を代表し蒲島郁夫熊本県知事は「東日本大震災の被災地へ南九州から元気を届け、日本再生の原動力になるようなキャンペーンにしたい」と力を込めた。

 DCでは全国のJR主要駅で5連張りポスターを掲示し、無料のガイドブックを52万部配布。熊本城で10月8日から10日まで開幕イベントを開催し、3県の郷土料理を提供する「南九州くいだおれ博覧会」や、ギネス記録に挑戦する3千人の和太鼓演奏、女子高生による「書道ガールズ甲子園」で盛り上げる。

 総計153人に3県の温泉宿泊券などが当たるほか割引特典付のガイドブックを配布し、旅行商品購入で各県のプレゼントがもらえる。熊本県では定期観光バス「もりめぐりん」「みずめぐりん」が半額になるほか、天草ではガイド付イルカウォッチングが登場する。

 宮崎県では周遊観光バス「ぐるりんひむか号」の乗客に特産品をプレゼント。日南市では食べあるき・まち歩きマップを割引販売する。鹿児島県は霧島神宮温泉のお得な湯めぐり券や、指宿をお得に満喫できる企画もある。

 DCと連動してJR九州が来年3月末まで、「列車でめぐる極情の旅 南九州キャンペーン」を実施。10月8日に「あまくさみすみ線(三角線)」に新特急「A列車で行こう」を運行させるほか、熊本―宮地間を走る特急「あそぼーい」を、10月15、16日、11月19、20日、12月23、24、25日の7日間、特別に博多―宮地間で運転する。

 新幹線駅や主要駅から気軽に観光できる30コースのタクシープランや、指宿・霧島・阿蘇地域で1日乗降自由の「のったりおりたりマイプランバス」も設定する。

震災後半年を振り返って――、みやぎおかみ会5人に聞く

(左から)一條さん、高橋さん、四竃さん、磯田さん、佐々木さん
(左から)一條さん、高橋さん、四竃さん、
磯田さん、佐々木さん

 東日本大震災から半年。「みやぎおかみ会」(磯田悠子会長=ホテル松島大観荘女将)は「集合の美」をモットーに女将たちの結束をはかり活動を続けてきたという。

 PR活動については「否定的な反応があったのも事実。だが、それは元気な私たちの役目。来館いただくお客様がいる限り、前を向いて進んでいきたい」(高橋知子若女将・秋保温泉・篝火の湯緑水亭)

 4月25日には、東北新幹線・東京―仙台間が再開し、おかみ会からも16人が仙台駅での「出迎え式」に出席した。このニュースが全国に伝わり、5月連休以降、宿泊客が戻ってきた。「被災地へ応援に来られた方から、私たちの姿を見て『逆に元気をもらった』と言って頂いた。かけがえのない仕事に就いている」(一條千賀子女将・白石鎌先温泉・湯主一條)と実感した。

 日本全体で今、絆という言葉の再認識やライフスタイルの変化などが言われている。「お客様の価値観も変わってきたのでは。私たちもそれに対応していかないといけない。モノがあふれている状況でいいのか。それを望む方には、きちんと対価をお願いしていくことも大事」(四竃〈しかま〉明子女将・白石小原温泉・旅館かつらや)と訴える。

 まもなく秋の行楽シーズンを迎える。東京都は9月から、被災3県への旅行に対し1泊あたり3千円、5万泊分の事業予算で、旅行者への助成を始めた。大切なのは1人でも多く東北、宮城に来てもらうこと。

 「暑い夏のおかげで、今年の秋の紅葉はきっと鮮やか。ぜひ皆さんに見ていただきたい」(佐々木久子女将・鳴子温泉中山平・うなぎ湯の宿琢琇)と、PRにも余念がない。

 「浜通り(石巻、気仙沼など)はまだまだ人手が必要。頑張れる私たちが元気をアピールし、今はまだ復興に取り組んでいる仲間のことも伝えたい。残された者はその使命があると思う」(磯田会長)。

【鈴木 克範】

地域のシンボル取り戻す、復興支援の集い

主催者の大塚陸毅会長
主催者の大塚陸毅会長

 財団法人日本ナショナルトラストは8月29日、国立新美術館(東京都港区六本木)で「復興支援の集い―地域(まち)の“シンボル”を取り戻すために」を開いた。

 東京大学副学長で日本ナショナルトラスト観光資源専門委員を務める西村幸夫教授が進行役を兼任し、元文化庁長官の林田英樹国立新美術館館長と銅版画家の山本容子さんの3人が「地域(まち)のシンボルを取り戻すために」をテーマに、鼎談を行った。

 林田館長は大震災後の文化財の復興について「指定文化財に指定された物件は国の援助が入っているようだが、指定されていない物件への対応がこれからの課題」と提起。西村教授は「予算など援助が行き届かないのは、祭りや行事などが地元振興には大切ということがまだまだ認識されていないから」と話した。山本さんは「祭りや建造物、文化を通して『日本』を知ることが重要」と、震災によって再認識された「日本人の心」や「ふるさと」について言及。「震災に関係なく、滅びようとしていた文化や伝統があるという重要なことに日本人は気づいていなかった」と話した。また、祭や文化などが形骸化していくことに危惧を示し、「神輿を担いで楽しむだけというのは違う。大事なのはその後ろにある歴史的背景や意味、精神性を知ること」と強調。イギリスの詩人モリスの言葉「必要なのは失われたものを再建することではなく、残ったものをそのまま残すことが大切」という言葉を紹介し、「そこに宿る精神を伝えていくことが重要」と語った。

 予算などについて、林田館長は「行政は地方や民間と連携しながら裾野の広い活動をしてほしい」と要望。また、「修復だけでない、その先を熟考した活動や地域振興をからめた動きなど、熱意のある人をつなげるネットワークが重要」と語り、ネットワーク作りなどナショナルトラストが担うべき役割に触れた。山本さんは人材・人の力・人の技への資金援助の重要性を訴え「人が人に伝えていかなくてはいけない心のある『技』や、熱意・愛を持った人への援助にスポットを当ててほしい」と力説。「『このお金が使われたことで、左官技術の伝承ができ、この建物が存続できた』などストーリーのある顔の見える資金の使い方を」と話した。西村教授は「都会に住んでいると伝統芸能とか別世界の話のように感じるが、今回の震災で皆があらためて日本の伝統芸能の重要性に気づかされた。今夏、お盆に帰省する人が増えたのも、無意識にでもそこに気づいたからではないか。この震災は日本の文化を再認識していくきっかけなのでは」と結んだ。

報告者と鼎談者への質疑応答
報告者と鼎談者への質疑応答

 そのほか、筑波大学大学院の藤川昌樹教授と、気仙沼市教育委員会生涯学習課文化振興係の幡野寛治主幹、盛岡大学文学部日本文学科の橋本裕之教授による各地の報告も行われ、それぞれ「北関東における歴史的建造物被災調査報告」「気仙沼市における文化財の被災状況報告」「岩手県内における無形民俗文化財の被災状況と継承支援」について話した。

 なお、日本ナショナルトラストでは、東日本大震災で多くの自然・文化遺産が存続の危機に瀕している状況を鑑み、ひとつでも多くの自然・文化遺産の復旧・復興を支援し、地域そのものの復興への一助となるよう「自然・文化遺産復興支援プロジェクト」を立ち上げた。

バスとサイト分離へ、5カ年の経営計画開始(ウィラーグループ)

村瀬社長
村瀬社長

 高速ツアーバスを中心に移動ネットワークを構築しているWILLER ALLIANCE(村瀬茂高社長)は9月1日、グループ会社4社の再編などを行い、高速バス事業会社と移動ポータルサイト会社に分離した。同時に第2期成長戦略として、5カ年の経営計画を開始。5年後には現在の約3倍となるグループ売上300億円、営業利益30億円を目指す。

 同日、東京都内で開いた説明会で村瀬社長は「5年間の第1次成長期を終え、移動サービスの新しいステージに向け取り組んでいく」と宣言。第2期成長戦略のテーマとして、「高速バス・旅客船のさらなるサービスの進化と新たな市場の創造」「あらゆる交通機関を結ぶことで新たな価値を創造」「国内から海外へサービスを拡大」の3つを掲げた。

 村瀬社長は今後3年間を「中長距離交通機関の変革時代」と位置づけ、その要因として「国交省のバス事業のあり方検討会の中間報告に基づいた省令改正が年内にも行われるかもしれないが、そうすれば高速バス業界の競争も一時的に激化するだろう。国内線LCCの台頭もある」と語った。

 これらを踏まえ、今後に対応すべく今回のグループ再編を実施。これまでのWILER BUS西日本・東海・東日本の3社をWILLER EXPRESS(ウィラー・エクスプレス)、WILLER EXPRESS東海、WILLER EXPRESS東日本に商号変更し、この3社で高速バス事業を担う。一方、移動ポータルサイト事業はWILLER TRAVEL(ウィラー・トラベル)が運営する。

 ウィラー・エクスプレス3社は「日本最高の価値を提供する高速バス会社」をカンパニーミッションに、エンターテインメント性の高いシートの開発や観光地への新規路線などを計画。乗務員研修の強化もはかる。車両数は現在の110両から16年に210両まで増台し、乗員人数は現在の2倍の400万人を目指す。村瀬社長は「コスト削減のため、予約はインターネットのみだったが、今後は窓口販売や飛び乗りサービスの提供も考える」とシニア層などの新規顧客獲得に向け意欲を語った。

 ウィラー・トラベルは、「世界中のあらゆる交通機関を結ぶ移動ポータルサイト」をビジョンに、これまでのグループ内商品を中心にした販売ではなく、さまざまな交通と移動先の宿泊などをつなぐサイトを構築する。事業者側の予約から出発までのオペレーション業務がすべてできる基幹システム「WiLLシステム」を開発し、他社へのレンタルも展開する。さらに、訪日外国人客が安心して日本を移動できる受入体制の構築も目指し、今年12月にジャパンアクセスパスを売り出す。今後は12年6月にWiLL路線バス運行管理基幹システムの発表、移動ポータルサイトのリニューアルオープンなどを予定する。目標数値は16年に流通額が300億円、利用者が560万人。

共同企画、中国で好評、日帰りの体験メニュー

 日本旅行業協会(JATA)の外国人旅行委員会(田辺豊委員長)は、8月24―27日に中国の上海・杭州で、第2回JATA外国人旅行委員会の開催と現地関係者との意見交換会などを実施した。上海では、主要旅行会社にJATA会員共同企画商品の説明会も行い、好評を得たという。商品は、日帰りの体験メニュー中心で、築地市場場外見学など8コース。9月から販売を開始している。 国内・訪日旅行業務部の興津泰則部長は共同企画商品について「昨年から展開をしているが、北海道や沖縄などロング商品でなかなか難しかった。今年は日帰りの体験メニューを企画し、足で歩いて日本の本当の魅力をみてもらえる商品にした」と説明。上海の旅行会社15社からも「個人旅行化に向け魅力ある商品」などの意見があがったという。このほか、説明会ではJATAが観光庁に制作を依頼した日本旅館の利用マナーDVD「これで安心!訪日旅行」も併せて紹介し、旅行者へ旅館利用時のマナーの周知を呼び掛けた。
 一方、中国での震災後の日本の印象について「原発などの実態については、情報もよく収集していて理解をしていただいている。しかし、一般消費者は、福島と沖縄が隣にあるような距離感覚が拭えないという。食に対しても不安の声があった」と現状を紹介。「食への認識はまだ薄いので、国へアピールをお願いしたい」と語った。

カジノ基本法案決定、今秋の臨時国会へ提出

(左から)柿沢議員、岩屋会長代行、古賀会長、池坊議員
(左から)柿沢議員、岩屋会長代行、古賀会長、池坊議員

 カジノの合法化を目指す超党派議連の国際観光産業振興議員連盟(IR議連、古賀一成会長)は8月25日、衆議院第一議員会館で総会を開き、カジノ合法化に向けた基本法案を大筋で確認。今秋の臨時国会に提出する方針で一致した。

 法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」。古賀会長(民主党)は総会後の会見で「まずは基本法の推進法で進めていく。コンセンサスが広がれば、推進本部中心に作業が進んでいくだろう」と説明。「何としても今秋の国会に提出を」と力を込めた。

 同法案は、外国人観光客誘致や地域振興を目的に、カジノ施設、会議場施設、宿泊施設などが一体となった特定複合観光施設の推進をはかるための基本法。内閣総理大臣を本部長とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」を内閣内に設置し、2年以内に特定複合観光施設を運営するために必要な法制上の措置を義務づける。IR議連メンバーの柿沢未途議員(みんなの党)は、「政府内で法整備を検討・立案してもらう。内閣内に推進本部を作ることで、政府と国会がバラバラではなく目標を共有して進められる」と法案の意義を説明した。

 特定複合観光施設を設置できる区域は、地方自治体の申請にもとづき、国が指定。運営は民間で行うが、カジノ施設の許可・認可やその他の処分、監視、管理は、内閣府の外局として設置されるカジノ管理委員会で行うことも明記された。

 区域の選定に関しては、まったくの白紙状態とし、岩屋毅会長代行(自民党)は「特定の地域を想定して議論してきたわけではない。あくまで地域に手を挙げてもらい、国が審査する」と強調。IR議連メンバーの池坊保子議員(公明党)は「1人でも多くの外国人に日本に来てもらうのが一番の目的。今までの観光資源にプラスした、観光の総合施設として捉えている」と語り、「経済発展のためにも、日本の魅力の一つとしてのカジノ作りを進めたい」と意気込んだ。

 古賀会長は、シンガポールの事例を紹介し、「カジノにより26%の経済成長を達成した。参考にすべきところはたくさんある」と結んだ。雇用や経済への効果として、「施設の立地場所によって大きく異なる」と前置きしたうえで、関東近辺に施設を作った場合の試算として、5千億円の投資規模で10万人以上の雇用効果をあげた。

No.289 震災から6カ月 - 難局乗り越え 元気な姿勢で

震災から6カ月
難局乗り越え 元気な姿勢で

 3月11日に発生した東日本大震災から6カ月が経過した。未曾有の震災直後から、被災地の旅館ホテルはどのようにして難局を乗り越えてきたのか。福島県・磐梯熱海温泉のホテル華の湯代表取締役社長の菅野豊氏は、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長も務める。被災者の受け入れ、金融問題、原子力損害賠償、風評被害対策……など、さまざまな問題に立ち向かってきた。「元気な姿勢でお客様と接することが一番大事」と語る菅野氏に話を聞いた。

【増田 剛、鈴木 克範】

旅館は地場産業地域で必要な存在に

 3月11日午後2時46分。私は当館で福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の会合をしていた。長く大きな揺れを感じたが、幸い旅館は固い岩盤の上にあるため、ガラスが2、3枚割れた程度で済み、大きな被害がなかった。震災から半年近く経つが、旅館経営者として1日も営業を休むことなく続けられたことをうれしく思っている。

ホテル華の湯代表取締役社長
菅野 豊氏

※ 詳細は本紙1433号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。