「宿選び」 ― 館名のセンスや清潔な布団も大事

 「ここに泊まろう」とあらかじめ宿を決めている旅なら何の苦労もない。だが、何となく旅がしたくて、それでいて初めて訪れる地域の宿を選ぶときには、私は目の下にクマができるほど、探しまくる。1人旅ならまだいいが、これが家族旅行などの場合だと、もっと大変だ。

 例えば宿泊予約サイトから宿を探す場合、エリア別に掲載されている宿をサラリと検索して即決しようと最初は思うのだが、気がついたらネット上ですべての宿を隈なくチェックしている自分に気づき、「あぁ、また泥沼化している……」と充血した目を擦るのだ。

 けれど、私の苦労は決して無駄ではない、と思い込みたい。というのは、それだけ徹底して調べ上げた成果として、今まで「ハズレ」だった宿が奇跡的に少なかったからである、と重ねて思い込みたい。

 宿選びに際して、「館名」というものが、実は、とても重要な要素なのである。「名は体を表す」と言われるが、館名と宿の実体は、本当に密接な関係にある。

 館名の前に、「○○の宿」と修飾語的に説明を加える傾向が少し前にあったが(今もある)、宿にしてみれば、「○○館」だけではお客様に宿の性格が上手く伝わらないのではないかという不安があるのかもしれない。また、「お洒落なイメージを付けたい」といった、前向きな戦略もあるのだと思う。

 館名を変えて以来、売上が大きく伸びた宿も全国にはたくさんあるだろう。館名は平凡よりも、特徴的な方がいいし、誰もが行きたくなるような館名にした方が良いに決まっている。

 しかし、たくさんの旅館やホテルを探しているうちに、古い歴史を持つ宿ほど館名は簡潔に引き締まり、潤いや色気、気品がある宿が多い。それでいて、短い館名の中に、すべてを表し尽くしている宿が幾つも見られる。昔の文人もそうだが、短い言葉の中に、真理を言い表す術は、現代人よりも古えの人々の方が長けていたのだと思う。短いのに薫り高い館名はそれ相応の宿である場合が多い。時代とともに館名も変化していく。「キラキラネーム」も見られるが、自分のセンスとぴったり合う館名を選べば、最悪の選択ミスは防ぐことができると思う。

 館名がしっくりとくれば、料理や風呂、客室などの写真を見ながら、プランや料金などを細かく調べていく。そして、ある程度「この宿にしようか」と心が傾くと、やはり「クチコミ」を3―5つくらい見てしまう。

 人によって、クチコミのチェックポイントは千差万別なのだろうが、宿が清潔か、否か――というのが、多くの人の共通する最大の関心事ではないだろうか。

 以前、「布団に清潔感がなかった」というクチコミを見て、「これは宿にとっては大きな失態だな」と思ったものだ。

 旅人にとって、宿の滞在時間の約半分はベッドや布団の中で過ごす。おそらく宿に到着した旅人の体は長旅によってクタクタに疲れている。美味しい料理や、温かい温泉、スタッフの笑顔やおもてなし、そして気持ちの良い布団を想像して、旅人は宿の玄関を開けるものだ。

 客室や料理が勝負の分かれ目と思っている宿主が多いかもしれない。だが、清潔で、フワフワの布団も同様に数多の旅人を“骨抜き”にする事実も知ってほしい。

(編集長・増田 剛)

今でもタトゥ厳禁?

 観光庁が開いた座談会で、エクアドル人留学生がタトゥを理由に温泉へ入れないことをとても残念がっていた。今秋、先住民族マオリの女性が北海道内の温泉施設で、顔のタトゥを理由に入浴を拒否されるという出来事があった。マオリ族は伝統的に顔へタトゥを入れる文化があり、アイデンティティや社会的な意味合いが強い。
 「郷に入れば郷に従え」。イスラム教が公共の場での男女の接触を禁じたり、複数の国が宗教施設での肌の露出を禁じたりするなど、世界にはさまざまな文化や宗教、慣習がある。その土地に行けば、そこのルールに従うのは当然だ。しかしタトゥは、ルールを守りたくとも、肌を見せる環境では隠しようがない。ルールは時代とともに変化する。今や日本でもタトゥは珍しくなくなった。タトゥ厳禁は何とかならないのか、日本文化に触れる多くの機会を奪っている。

【伊集院 悟】

大学生の感性に期待

 現地での体験を通して、大学生の視点から観光地の魅力や課題を分析し、自分たちで魅力ある旅行プランを旅行会社に提案する。JR西日本が地元自治体と連携して取り組む「北陸カレッジ」の報告会が先日、大阪市内であった。
 参加した学生たちは、今年夏に現地を訪れ、美しい風景や伝統文化、そして人々のおもてなしに触れた。その経験をもとに生まれた4つのプランは、SNSを活用したものあり、女子ならではの着眼点ありで、なるほどと思う部分も多かった。
 この取り組みは、商品化を目指しており、そのためにはもっと煮詰めなければいけない部分は多いだろうが、ぜひ若者のストレートな感性が生きた「旅って、やっぱりいいよね」と気付かせてくれる魅力ある旅行商品が生まれてきてほしい。

【塩野 俊誉】

観光庁と文化庁が協定、観光・文化振興へ連携

久保観光庁長官(左)と青柳文化庁長官

観光庁と文化庁はこのほど、2020年の東京五輪に向けた観光振興・文化振興の基盤整備のため、両庁の連携による相乗効果を狙い、包括的連携協定を結んだ。

11月20日の調印式には、久保成人観光庁長官と青柳正規文化庁長官が出席し、連携を誓約。(1)2020年東京五輪・文化プログラムの企画立案(2)地域の有形・無形文化財を保存しながら観光に活かす方策(3)文化庁メディア芸術祭などのイベントや各地の文化芸術創造都市の活動などと各種観光プログラムとの連携(4)成田・羽田・中部・関西などの主要国際空港での伝統工芸品の展示や伝統芸能の公演(5)海外展に併せたインバウンドプロモーションの実施(6)東アジア文化都市が国内外で開く取り組みでの連携(7)両庁が実施するイベントや保有するデータに関する情報共有――などを行う。そのほか、定期的に情報交換・意見交換を行い、具体的な施策を企画立案していく。

宿泊産業研究会が始動、海外への情報発信を議論(観光庁)

 観光庁は本紙の取材に対し、今秋に宿泊産業研究会を立ち上げ、4月の観光産業政策検討会提言で出された諸課題のうち、宿泊施設の外国人観光客への情報発信のあり方などについて議論していることを明かした。

 宿泊産業研究会は、現在観光庁が力を入れている旅行産業研究会の宿泊産業版といえるもので、10月中旬に第1回を開催。基本的に報道機関などに公開はせず、外部の関係有識者10人ほどを集め、政策検討会提言で出された諸課題のうち、初回は主に宿泊施設の外国人観光客への情報発信のあり方について議論した。観光産業課によると、「旅館とホテルでは、海外での認知度も違い、的確な情報発信方法も異なる」ので、今後は旅館とホテルとを別々で議論していくという。

 次回開催は未定。年度内にあと数回は開く予定だ。

大商談会で世界へPR、ツーリズムEXPOと同時開催に(トラベルマート2014)

 「VISIT JAPAN トラベルマート2014」が来年9月、日本観光振興協会の「旅フェア日本」と日本旅行業協会(JATA)の「JATA旅博」を統合した「ツーリズムEXPOジャパン」と、同時開催することが決まった。

 日本最大の商談会として世界に強くアピールすることが狙いで、トラベルマートの主体は現行の日本政府観光局(JNTO)のままという。詳細についてはこれから詰めていくことになるが、久保成人観光庁長官は、11月20日の会見で「ツーリズムEXPOジャパンとの同時開催という大きな冠で世界にアピールしていきたい」と力を込めた。

 同時開催については、JATAの菊間潤吾会長が「旅フェア日本」と「JATA旅博」の統合を発表した11月8日の会見で、「トラベルマートも一緒に開催するのが望ましい。(JNTOの)決断を待っている」とラブコールを送っていた。

31・5%増で過去最高、韓国は20カ月ぶりの減少(10月訪日外客数)

日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)がこのほど発表した10月の訪日外客数推計値は、前年同月比31・5%増の92万8500人。10月の過去最高だった2007年を14万3千人上回った。1―10月の累計では前年同期比23・4%増の865万9600人。目標の1千万人は、前年比20%増を維持できれば達成するが、韓国が12年2月以来のマイナスとなるなど予断を許さない状況は続く。

市場別では中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナム、フランスが10月として過去最高を記録。タイ、マレーシアは通年の単月ベースでも過去最高を更新した。また、台湾、香港、タイ、ベトナムに続き、1―10月までの累計で、韓国、インドネシア、フィリピン、フランス、ロシアがすでに12年の年間累計を上回った。

市場ごとに詳細をみると、訪日外客数全体の4分の1を占める最大市場の韓国は同5・9%減の15万8300人と、12年2月以来20カ月ぶりのマイナスとなった。放射能汚染水問題の報道が影響し、11月以降も厳しい見通しだ。

10月として過去最高を更新した中国は同74・1%増の12万1400人。10月上旬の国慶節休暇に加え、日本への忌避感が薄れたことで、堅調な個人旅行に加え、団体旅行の回復基調が継続した。

台湾は同58・0%増の21万3500人と、10月の過去最高を更新し、9カ月連続で毎月の過去最高を更新中だ。円高是正を背景に、買い物目的の訪日旅行需要が拡大。また、仙台や山形へのチャーター便が運航し、地方への旅行需要も高く、今後も新規就航が予定される。

同じく10月の過去最高を更新し、9カ月連続で毎月の過去最高を更新中の香港は、同84・5%増の6万2400人となった。そのほか、東南アジア諸国は、査証緩和効果で引き続き高い伸びを示した。

なお、出国日本人数は同1・3%増の149万人で、9カ月ぶりに前年同月を上回った。

直販含め宿サポート、消費者へは旅館発信ハブに

篠塚 孝哉氏

WITグランプリの宿泊サイト「relux」

満足度の高い宿泊施設を厳選した会員制の宿泊予約サイト「relux」の運営などを中心に、ホテル・旅館向けのWebマーケティングサービスなどを展開するロコパートナーズ。今年のオンライン旅行業界の国際会議「web in travel(WIT)JAPAN2013」では、「relux」がグランプリを受賞し、10月のWITシンガポールで代表取締役の篠塚孝哉氏がサイトを紹介した。篠塚氏に起業の経緯やサイトの展望などを聞いた。
【飯塚 小牧】

≪ロコパートナーズ代表取締役 篠塚 孝哉氏に聞く≫

 ――会社の経緯や事業内容を教えて下さい。

2007年に新卒でリクルートに入社し、旅行事業の「じゃらん」に在籍して以来、旅行業界に身を置いてきた。しかし、11年に発生した東日本大震災を機に、自分自身に対し「チャレンジしていない」と感じ、一念発起して、同年9月に単独でロコパートナーズを起業した。当初は、ホテルや旅館のコンサルティングやマーケティングを展開していたが、半年前に宿泊予約サイト「relux」をオープンし、現在はこちらを中心に事業を行っている。

地域には、本当に良い旅館やホテルが多いが、日本には紹介するサイトがないことから、それらをまとめて紹介するものを作ればとても良いサイトができると思い、「relux」のサービスを開始した。現在、旅館を中心に全国の約80施設と提携している。

――宿泊予約サイトは他社もさまざま展開していますが、「relux」の特徴は。

高級な宿をまとめているサイトはあるが、満足度は十分加味されていないと思う。海外では同様のビジネスモデルはあるが、日本で競合するものはないと考えている。

施設にとっては結果、予約が増えるというメリットが一番大きいが、サイトに載ること自体がブランドになり、名前の浸透に役立つと価値を感じていただいている。今、「relux」では1泊2食付きの渾身の1プランしか紹介しない仕組みにしている。とはいえ、ほかのプランを見たいという方が多いので、施設のホームページリンクを貼っているが、こちらは副次効果を生んでいる。他のサイトでは、リンクも電話番号さえ載っていないことが多いが、我われは直販を含めて総合的にサポートしていきたいと考えている。その分、手数料は15%と他社と比べて高いが、ご理解いただいている。

サイトへ掲載するうえでの審査は厳しく、審査項目は100項目以上ある。一定以上の基準がないと参画できないので、お断りすることも多い。審査にあたっては、我われや信頼の置けるパートナーが実際に体験したものをもとに行っている。

一方、一般消費者へのアプローチについては、SNSを利用しており、フェイスブックの運用がとても上手くいっている。フェイスブックで編集記事として毎日違う旅館を紹介し、ファンが約4万人(11月末現在)と国内高級サイトでは圧倒的な人気がある。会員には、有料広告なしのメールマガジンを配信し、好評を得ている。30―40代の利用者が多いが、意外と旅館を知らないので、旅館の認知度向上のハブになれればと思っている。

――今後の展開については。

提携施設は、来年度400―500施設まで増やし、2年後には1千施設を目指している。現状、旅館が中心だが今後はホテルの取り扱いを広げていく。また、今は宿泊料金が2人で最低5万円以上の高級で高満足な宿をご紹介しているが、将来的には料金に関わらず、満足度の高い宿としてペンションや民宿も扱っていきたい。

――インバウンドに関してはいかがですか。

このほど海外向けに英語と中国語のサイトをオープンした。先日、シンガポールのWITに参加したが、海外オンライントラベルエージェンシー(OTA)からもいい反応だった。今後は、現地のアウトバウンド会社と提携することも考えたい。

日本文化というのは本当に素晴らしい。こういう事業を通して世界に発信していきたいと、シンガポールで改めて強く思った。それは日本人にしかできないことだ。「relux」は国内の方には日本を“再発見”してもらうためのツールとして、海外の方にとっては“新発見”のツールとして使ってほしい。旅館ごとにプロモーションが上手い下手はあるが、そこは旅館の仕事ではなく、我われの仕事だと思っている。紹介の仕方で魅力は絶対に伝わるはずだ。とくに、インバウンドで成功している旅館はごく限られているので、そこをしっかりサポートしていきたい。

東南ア2国に数次ビザ、ラオスとカンボジア

 外務省は11月18日から、ラオスとカンボジアの両国に対し、短期滞在数字ビザの発給を開始した。

 今回の緩和は、安倍晋三首相が11月16―17日に両国を公式訪問し、相互ビザ緩和に合意したことに基づく。両国とも滞在日数は15日で、有効期間は最大3年間。両国内に居住する国民であることが条件となる。

 これによりASEANでビザの緩和がされていないのはミャンマーだけとなった。ミャンマーについて、久保成人観光庁長官は11月20日の会見で「年末の特別首脳会議までに緩和の結論を得られるよう働きかけていく」とした。

第39回「100選」決まる、新たに7施設入選、1月11日発表

11月26日に行われた100選選考審査委員会

表彰式は1月24日

旅行新聞新社・100選選考審査委員会は11月26日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第39回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考審査委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞「日本の小宿」10施設を決定した=写真。

「第34回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第23回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2014年1月11日号紙面および、同1月11日に更新する旬刊「旅行新聞」ホームページで発表する。

今回の総合100選では、新たに7施設が入選。表彰式は来年1月24日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

「第39回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万6563の旅行会社(支店や営業所含む)を対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定した。主催は旅行新聞新社で、毎年実施している。今年も10月1―31日まで投票を受け付けた。

 今回も旅行会社の皆様からのたくさんのご投票ありがとうございました。