グランプリは日旅・玉川氏、鉄旅オブザイヤー

グランプリに輝いた日旅の玉川淳さん
グランプリに輝いた
日旅の玉川淳さん

 旅行業界で魅力的な鉄道旅行を企画する人とその企画を表彰する「鉄旅オブザイヤー」が1月29日、埼玉県さいたま市の鉄道博物館で開かれた。3回目の今回は、日本旅行西日本営業本部JR営業推進部の玉川淳さんが企画した「北陸本線100周年記念号の旅」がグランプリに輝いた。

 同ツアーは、13年に全線開通100周年を迎えた北陸本線の記念列車運行を目的に、JR西日本金沢支社と共同で企画実施された。玉川さんは、同線敦賀駅から糸魚川方面で駅に長時間停車をする列車ツアーを企画。停車駅ではゆるキャラや名物を用意するなど、その駅・地域ならではのおもてなしを実施。玉川さんは「JRに大英断していただいて国鉄カラーの車両を新たに3両塗り直してもらった」や「現在少なくなった長時間停車を実現し、乗車時間より停車時間の方が長いかもしれないというツアーになった」などダイナミックな企画話を披露。

 準グランプリはクラブツーリズム第3国内旅行センターの小西美雪さんと「クラブツーリズム貸切トワイライトエクスプレス車両で稀有な刻 瀬戸の絶景・呉線『ランチクルーズ列車』の旅3日間」、ルーキー賞は北海道オプショナルツアーズの永山茂さんと「廃線探訪シリーズ『(1)定山渓鉄道』『(2)夕張・三菱大夕張鉄道』の2本」、審査員特別賞は日本旅行新規事業室鉄道プロジェクトの瀬端浩之さんが「ミッドナイト撮影会in銚子電鉄」と「広田泉さんと訪ねる 南三陸の今」の両企画でダブル受賞した。

 同表彰は旅行会社や鉄道会社関係者を含まず、鉄道・鉄道旅行が好きな審査員で構成し、消費者目線に近いことが特徴。今回は表彰式を前に、今夏運行を開始するJR四国の新観光列車「伊予灘ものがたり」の紹介も行われた。

過去最高の功罪

 沖縄県・八重山地方の2013年の観光客数が94万2964人を記録。昨年3月の新空港開港効果で、観光客が殺到し、07年の78万7502人を大きく超え、過去最高を塗り替えた。

 私は06年から毎年、石垣島を訪れているが、昨年9月に行ったとき、初めて違和感を覚えた。街にチャラチャラした若者が溢れ返っていたのだ。コンビニの前で缶ビール片手にたむろし、食堂では長い爪をしたギャルがスマホでパシャパシャとやっている。観光客に貴賤はないと言えばそれまでだが、格安航空の就航は良いことばかりでない。

 きれいな海と独特の伝統を持つ八重山が、このままでは渋谷や原宿、心斎橋のように都会化されてしまうのではないか。島の健全な発展を強く願っている。

【土橋 孝秀】

地元食材の料理セミナー、菊池と湯の児で開く(熊本県)

辻調理師専門学校の講師が講義
辻調理師専門学校の講師が講義

 熊本県観光連盟と熊本県旅連女将の会は2月5、6日、熊本県菊池市「菊池 笹乃家」と水俣市「湯の児 海と夕やけ」で、地元食材を使った料理セミナーを開いた。辻調グループと旅行新聞新社が企画・協力し、辻調グループの講師が、「えこめ牛」や「足赤えび」など地元の食材を使用した料理の提案や基礎を講義した。セミナーには周辺地域の旅館の女将や料理人、農水産業関係者などが集まった。

 同セミナーは、熊本県の食材を活用した料理に磨きをかけるため、改めて料理の基本的な知識を学び、新たな料理開発に生かすのが目的。2011年度から開始した事業で、1回目は12年3月6日に天草で開き、その後、阿蘇や山鹿、人吉と県内各地で実施してきた。

 今回のセミナーは両日とも、辻調理師専門学校西洋料理主任教授の木下幸治先生が講師を務めフランス料理をベースに、地元食材を使った料理の実演や講義を行った。5日の菊池会場では、地元のブランド牛「えこめ牛」や干椎茸「黒香」などを使用し、牛の焼き方を中心に紹介した。翌日の水俣・芦北会場では、「足赤えび」や「晩白柚(バンペイユ)」などを使った創作料理を披露。会場からは活発に質問があがるなど、参加者は熱心に受講していた。

合格者1201人、40代が最多、13年度通訳案内士試験

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)はこのほど、2013年度通訳案内士試験の最終合格者を発表し、総受験者数4706人のうち合格者は1201人、合格率は25・5%となった。合格者のうち、外国籍は72人で構成比は6・0%。

 言語別の内訳は、英語が892人(合格率30・9%)、中国語が137人(同14・9%)、韓国語が52人(同15・5%)、フランス語が41人(同21・7%)、スペイン語が29人(同24・2%)、ロシア語が17人(同21・5%)、ドイツ語が13人(同25・0%)、イタリア語が12人(同20・0%)、ポルトガル語が6人(同12・2%)、タイ語が2人(同10・5%)。

 年齢別にみると、40代が336人(構成比28・0%)と最も多く、50代が330人(同27・5%)、30代が250人(同20・8%)、60代が155人(同12・9%)、20代が105人(同8・7%)、70代が20人(同1・7%)、10代が5人(同0・4%)と続く。

 通訳案内士試験は通訳案内士法に基づき、JNTOが国の試験事務代行機関として毎年1回実施。試験は外国語(10言語)、日本地理、日本歴史、一般常識に関する筆記試験(1次試験)と、外国語による口述試験(2次試験)で行われる。

感動と普通に良いものとの違いは?「感動」の言葉 世の中に氾濫

(左から)司会役のフリーアナウンサー・西尾由佳里氏、村上氏、澤田氏、小山氏
(左から)司会役のフリーアナウンサー・西尾由佳里氏、
村上氏、澤田氏、小山氏

 本業のビジネスの成果を通して社会に活力を与えるとともに、社会貢献にも寄与されたビジネスリーダーに贈る「シーバスリーガル18年ゴールドシグニチャー・アワード2014」の表彰式が1月17日、東京都内で開かれた(既報)。受賞者のエイチ・アイ・エス(HIS)会長、ハウステンボス社長の澤田秀雄氏と、放送作家、脚本家で「くまモン」の生みの親でもある小山薫堂氏、そして特別審査員を務めた作家の村上龍氏が「感動」などについて語り合った。
【増田 剛】

村上:東日本大震災は大きな災害でしたが、自分と仕事の関係や、自分が作っていくものなどポリシーに変化はありましたか。

澤田:あまりなかったですね。ただ、私は実業家であり、ビジネスマンなので利益は非常に重要視します。しかし、「ただ利益を出し、お金をたくさん儲けるというだけでは駄目」というポリシーをずっと持ち続けています。その意味では、ハウステンボスの再建事業を手掛けてからもっと鮮明に感じるようになりました。お客様に楽しんでいただく、喜んでいただく、感動していただくことによって私たちのビジネスも良くなっていくかなと思います。
 ハウステンボスの再建に取り組んで良かったと思っています。

小山:私はいつも自分が創り出したものが他の方の人生を良くする分岐点になればいいなと考えています。分岐点と言えば大袈裟ですが、ちょっとでもいい方に向くきっかけになる仕事を結果としてできたらいいなと思っています。

村上:澤田さんから「感動」という言葉が出ましたが、レストランが美味しいとか、映画が面白いといったような場合、ちょっと美味しいとか、面白いレベルでは人は他人に話すまではいかない。その料理やワイン、芸術作品に対して「驚いた」とき、「本当に感動した」ときに、人は誰かに「あれはすごかった」と話すのだと思います。それが口コミとなって広がっていくのだけれど、「これはすごい!」と感動を呼ぶものと、普通に良いものの違いはどこにあると思いますか。

澤田:人は基本的に新しいものや、感じたことのないものに触れたり、体にいい刺激を受けると感動すると思います。

小山:私は物語だと思います。物語とは、感情移入をさせることができるかどうか。愛妻弁当は他人が食べてもちっとも美味しくないが、自分の愛する人が作るその姿を想像したり、準備の苦労を考えたりするからこそ、食べたときに「美味いなぁ」と感じる。そこに辿り着くまでにどういう気持ちにさせるかという物語、シナリオが感動を生むのではないかと思っています。

村上:今まで感動してきたものを振り返ると、「感動させよう」というような演出が感じられないものであり、感動させようという意図が見えてしまうと、なぜか白けてしまうんです。演出が見えてしまうものには感動しないことが多い。
 個人的には簡単には感動したくないと思っていますし、他の人も簡単には感動しないだろうから小説も丁寧に書いていこうと考えています。作り手には謙虚な姿勢が必要だと思っています。

小山:それは日本人の美徳というか、良い部分だと思います。ハリウッド映画では、「ここで泣け、ここで感動しろ!」という風に作りますよね。

村上:それぞれ世代も違いますが、昔はそれほど「感動」「感動」と言わなかったですよね。人がよく口にする言葉がその人に欠落していると言われますが、感動という言葉が世の中に氾濫している時代は、きっと本当の感動が減っているのではないかと思います。

小山:感動の閾値が上がっているのかもしれません。昔はバナナがおやつの王様と言われ、バナナでさえも人々は感動していました。

村上:感動の閾値が上がっている状態で、ビジネスや創作をしていくうえで一番大切なものは何だと思いますか。

小山:オリジナリティーではないでしょうか。いかに他と違うか、新しさがあるか。今のように情報が手に入れられるようになるとすぐに比較ができるので、そこではオリジナリティーが求められると思います。

村上:オリジナリティーをクリエイトしていくにはどうすればいいと思いますか。

小山:天の邪鬼のように常にどこか反対側から見る視点も大事です。

澤田:ディズニーもやらないような他でやったことのないオンリーワンのものや、日本一、世界一のナンバーワンを目指していきたいですね。

「1人旅ツアー」シニアに浸透(クラブツーリズム)

シニアに浸透する1人旅ツアー

“好きな時・場所に行ける”

 シニアに浸透する1人旅ツアー――。クラブツーリズム(小山佳延社長)はこのほど、旅行好きの50―60代のシニア世代の男女400人を対象に「旅行とシニアに関する意識調査」を実施した。これによると、80・6%が自分自身を「年齢の割に元気」と回答し、ポジティブに日々を過ごす秘訣として71・8%が「旅行(国内)」をあげた。このようなアクティブシニアに、全員が1人で参加する「1人旅ツアー」について聞くと、約半数の46・3%が「知っている」と回答し、参加者の95・4%が「また参加したい」と答え、シニア層に「1人旅ツアー」が浸透していることが分かった。

 さらに、参加を希望する理由(複数回答)については、「(自分の都合で)好きな日時に行けた、行けそう」が56・7%を占めトップに。次いで「(自分の都合で)行ってみたい場所に行けた、行けそう」(51・7%)などが続く。

 「春になったらやりたいこと」(複数回答)では、1位が国内旅行(85・0%)、2位がお花見(39・0%)、3位が海外旅行(35・3%)、4位が家庭菜園(20・0%)、5位が孫と遊ぶ(12・8%)――の順となった。

 また、4月からの消費税増税に対して節約したくないものの第1位が「旅行」(72・3%)となるなど、充実した日々を送るシニア層の旅行に対する強いこだわりが浮き彫りとなった。

「知覧からの手紙」、世界記憶遺産に(南九州市)

知覧特攻平和会館
知覧特攻平和会館

特攻隊員の遺品333点を申請

 鹿児島県南九州市は2月4日、第2次世界大戦末期に特攻基地「知覧」から飛び立った特攻隊員の遺品や遺書など知覧特攻平和会館が所蔵する資料のうち333点を「知覧からの手紙」として、ユネスコ世界記憶遺産に登録申請すると発表した。

 世界記憶遺産は人類の歴史的な文書や記録、絵画、音楽、映画など世界の資料遺産として保存・保護していくもので、世界ではナチスによるユダヤ人虐殺の悲惨さを伝える「アンネの日記」などが登録され、日本では筑豊の炭鉱のようすなどを描いた、福岡県田川市の「山本作兵衛絵画コレクション」など3件が登録されている。

 知覧特攻平和会館では特攻隊員1036人の遺品や関係資料約1万4041点が所蔵され、一般公開されているが、戦後70年近く経過し、当時を証言する人も年々減少。特攻隊員が残した家族や恋人に宛てた手紙などが、戦争の悲惨さや命と平和の尊さを世界に伝え、後世に語り継ぐ貴重な証言資料になるとして申請に踏み切った。

 申請された333点は、遺書や手紙、辞世、日記など特攻隊員の直筆サインや日付が記載されたものを厳選した。南九州市の霜出勘平市長は「二度と悲惨な戦争を起こしてはならないというメッセージを世界に発信するため申請した」と趣旨を語っている。

観光庁が事業アイデアを公募、VJの官民連携事業

 観光庁はこのほど、ビジット・ジャパン(VJ)事業の一環で12年度から始めた民間企業との連携による「官民連携事業」の事業アイデア案の公募を開始した。

 同事業は、海外進出日系企業やグローバル企業などの民間企業・団体が持つ海外ネットワーク、ブランド力、キャラクター、ノウハウなどを活用して連携し、訪日拡大を目指す。単発イベントではなく、現地旅行会社や消費者とのネットワークの維持、訪日促進効果が継続できる工夫がポイントになり、複数業界・企業との連携、複数国での事業実施も求められる。2月28日締め切りで、3月中旬ごろに採用の事業アイデア案を公表予定。

「ふるさとオンリーワンのまち」、理事会で名称変更決める

東京都千代田区の学士会館で理事会開く
東京都千代田区の学士会館で理事会開く

 NPO法人ふるさとICTネット(津田令子理事長)は2月7日、東京都内で2014年度第1回理事会を開き、法人名を「NPO法人ふるさとオンリーワンのまち」に改称することを確認した。

 津田理事長は冒頭のあいさつで、「今年度も引き続き事業の柱である『オンリーワンのまち』認定事業を中心に、地域活性化に取り組んでいく」とし、「年2回の認定を実施したい」と述べた。

 同認定事業は12年から年1回実施しており、認定第1号は千葉県鎌ケ谷市の「分水嶺モニュメント 雨の三叉路」、第2号は静岡県御前崎市観光協会の「地形を生かしたまちづくり~海と風と波と~」がそれぞれ受賞した。

 そのほか、会員拡大に向けては、ホームページ委員会を中心にホームページの作成や、広報委員がハンドブックの改良に取り組んでいくことなどを決めた。

No.362 滞在型の観光地へ - 「地域の中に旅館がある」考え方

滞在型の観光地へ
「地域の中に旅館がある」考え方

 2013年に訪日外客数1000万人を達成し、国は2000万人を目指す構えだが、さまざまな課題が残されている。とくに、日本人だけでなく外国人旅行者にも人気の高い温泉旅館は「1泊2食型」が中心で、滞在型観光客への対応が十分とはいえない。まちづくりや地域活性化など幅広く研究を行っている石井建築事務所名誉会長で、国際観光施設協会会長の中山庚一郎氏に、滞在型の観光地への変革に必要な考え方や、現在大きな議論となっているエネルギー問題についても聞いた。

【増田 剛】

 
料理部門をレストランに、宿泊客が他の旅館でも食事を

 ――日本の宿泊施設や観光地の現状について。

 海外のさまざまな宿泊施設に泊まったり、観光地を訪れて感じるのは、海外の宿泊施設では、料理も提供しますが、宿泊客がそこで食事をするとは限らない。街を歩き、自分で食事をする場所を探します。つまり、海外では街や地域の親切な人たちも一つの商品となっているのに、日本では旅館の「1泊2食型プラン」が旅行という商品の大部分を占めています。

 今後、日本の観光産業も国際マーケットで競争をしていかなければなりませんが、一つの旅館の施設と料理、お風呂だけで完結したプランを売っている状況では、国際マーケットに入っていくことは難しいと思っています。そして、現状の日本旅館が国際的にどのくらいの価値を持っているかということを知る必要があると思います。

 旅は宿に泊まるだけではなく、見たいものや、食べたいもの、体験したいものなどたくさんの要素が詰まっています。日本にはその一部分だけを切り取って商品化する、不思議な構造ができ上がってしまいました。団体旅行が主流だった時代には、このスタイルで良かったのですが、日本国内でも旅の形態が変わり、世の中の需要が変化しています。残念ながら一つの宿泊施設だけを売ろうとする姿勢は、旅行者のニーズと合わず、現状のような「時代に合わない」状態になっているのだと思います。

 国際観光施設協会はもともと建築や設備など、施設の整備を進める協会でしたが、現在は「地域の中に旅館がある」という考え方でさまざまな事業に取り組んでいます。

 

※ 詳細は本紙1534号または2月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。