〈観光最前線〉忘れられない音のはなし

2017年10月21日(土) 配信

民宿「いわさき」さんで心温まる一夜を過ごした

 口承で語り継がれてきたアイヌ語を、初めて音として意識したのは2年ほど前。「60のゆりかご」という子守歌をWebで聴いたときだ。聞き慣れない音の繰り返しに、普段使わない感覚が起こされるように思えた。「癒しと畏(おそ)れの同居」。後にぼんやり考えると、そんな言葉が浮かんできた。

 先日、福島県喜多方市の農家民宿に泊まった。囲炉裏を囲み飲み交わす地酒や、心づくしの料理も忘れがたいが、抑揚が独特の会津弁が一番の思い出になった。言葉遊びではないが、こちらは「やさしい声でもつれを解いてもらう」感じ。

 地域の魅力を伝える手だてとして「画像」が注目されている。そんなときだからこそ「音」を題材にした企画や広報もおもしろいのでは。

【鈴木 克範】

No.475 47都道府県の観光関連予算を調査 宿泊者数・消費額とのバランス探る

2017年10月24日(火) 配信

【お詫びと訂正】

1689号(2017年10月21日付号)1面特集掲載の表「17年度一般会計予算(総額に対する予算の割合)」の一部に間違いがありました。以下URLに正しい表を掲載いたしました。

本紙1690号(11月1日付発行号)にも掲載いたします。

 

 旅行新聞新社はこのほど、47都道府県の「2017年度観光関連予算」(「予算」)と「17年度一般会計予算総額に対する予算の割合」(「予算の割合」)を独自に調査した。観光予算と消費額・宿泊者数の関連はどのようになっているのか?費用対効果の一例を示すために、16年(1―12月)の宿泊旅行統計調査より、日帰り旅行を除いた国内旅行消費額(「消費額」)と延べ宿泊者数(「宿泊者数」)をピックアップし、比較した。なお、「予算」と「予算の割合」をもとにした順位づけは行っていない。

【編集部】

17年度観光予算合計は852憶円 一般会計における平均比率0.204%

 本紙の調べによると、2017年度、各都道府県の観光関連予算合計は851億6417万円。前年度と比較して約20%の200億円ほど減少した。各都道府県の平均は18億1200万円で、こちらも前年の22億4919万円を2割下回った。今回、16年の宿泊旅行統計調査(※1・2)における、国内旅行消費額(「消費額」)と延べ宿泊者数(「宿泊者数」)もピックアップ。各地域の「予算」、一般会計に対する予算の割合(「予算の割合」)と比較することで、観光関係にかけた費用と、観光の収益のバランスを視覚化した。「各地域はどれだけ観光に予算をかけ、どのくらい観光で収益を得ているのか」参考としてほしい。なお観光関連予算は、各都道府県の観光課に直接ヒアリングした、本紙独自の調査によるもので、国内旅行消費額は日帰り旅行を除いた数値である。…

※ 詳細は本紙1689号または10月26日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

温泉旅館で過ごす最適の季節 「フルーツの宿」の出現を待ち望む

2017年10月21日(土) 配信

秋のフルーツを楽しめる宿は贅沢だ

 旅をするには、いい季節になった。とりわけ、日本の温泉旅館でゆったりと過ごすには最適の季節だ。旅先で美味しいものが食べられる楽しみもある。

 先日、東北の山間の温泉旅館に泊まった。街を抜け、山に入ると、色づき始めた紅葉が太陽の淡い光を遮る。大きく深呼吸をすると、少し冷たい秋の匂いを含んだ空気が肺の中に流れ込んだ。都市生活者にとっては、日常生活からの解放感を味わえる瞬間だ。湿った落ち葉を踏むと、微かな靴底の音が静かな空間をより一層際立たせる。鳥の声を聞きながら、微かな白い湯気が立ち昇る温泉に浸かると、全身が温かく包まれる。入浴後、よく冷えたビールを飲み、美味しい地元の魚介や山菜料理、採れ立てのフルーツなどをいただき、ふんわりとした清潔な布団に大の字に寝転がると、そのまま深い眠りの世界に入っていった。これらを一度に体験できる温泉旅館が日本各地に存在していることに、感謝したくなる季節でもある。

 取材で訪れ、「もう一度泊まりたい」と思う宿がある。それら宿に共通する点が1つある。それは、滞在中、テレビを一度もつけない宿である。

 繁華街のビジネスホテルに宿泊するときには、反射的にリモコンを手に取り、ほぼ100%テレビをつける。いつもと変わりないバラエティー番組が画面に映し出され、テレビから大きな笑い声が響いてくる。チャンネルを変えても似たような番組が続く。シャワーを浴び、テレビの前で缶チューハイのフタを開け、いつの間にか自分の笑い声がシングルルームに響いている。心地よいが、他のホテルでも同じことはできる。

 リゾートホテルでも経験上だが、ビジネスホテルに比べてテレビをつけることが少ないような気がする。滞在中、なんとなくテレビをつけないで過ごしてしまう宿には、目に映る景色、聞こえる音、森林や潮の香り、快適な室温、温泉、美味しい料理などが、五感にバランスよく心地よさを与えてくれているのだろう。人が作る料理も周囲の環境とマッチしたものでなければ調和は崩れてしまう。

 海外のリゾートホテルなどでは、客室にフルーツの盛り合わせを持ってきてくれるところがある。窓の外の青い海を眺めながら、食べきれないくらいのフルーツを摘みながら、くつろぎの時間を過ごすのは贅沢な気分になれる。タグ付きのカニやエビ、A5ランクのブランド牛を提供する宿は全国に数多ある。しかし、親しみやすい価格で食べきれないほどの地元のフルーツを提供してくれる宿を見つけるのは難しい。

 秋は、果物狩りの季節でもある。ブドウや梨などを観光農園で楽しむ旅行者も多いだろう。だが、果物は短時間にそれほど多く食べられるものではない。でも手近にあればいつでも食べられる。宿に到着して疲れた体を潤す桃やブドウ、梨などの果実があればうれしい。湯上りの喉の渇きを満たし、ワインなどのお酒にも合う。夜中に目が覚めてしまったときに手を伸ばし、甘いブドウを口に含むと再び心地よい眠りに入れる。目覚めにはグレープフルーツなどが爽やかな気分にさせる。客室や、ラウンジなどで好きなときに味わえる空間があれば旅人は虜になるはずである。この秋にも果物が存分に食べられる「フルーツホテル」が現れないかな。

(編集長・増田 剛)

広域連携進め誘客を 豪雨を受け報告会開く 由布院温泉観光協会

2017年10月21日(土) 配信

由布院温泉の今後について考えを共有した
桑野和泉会長

 大分県由布市の由布院温泉観光協会(桑野和泉会長)は9月28日、大阪市内のホテルで旅行会社や報道関係者を招き、7月の九州北部豪雨で観光客数が落ち込むなか、現状と今後の展開などを説明する「おんせん県おおいた由布院温泉の今、そしてこれから」と題した報告会を実施した。

 冒頭、由布市まちづくり観光局の生野敬嗣氏が、九州北部豪雨の影響で県全体の宿泊客数が8月以降、1―2割減で推移していると説明。豪雨で橋が流失したJR久大本線の日田―光岡間では不通が続き(来年夏開通予定)、博多―由布院を結ぶ「特急ゆふいんの森号」は現状、小倉経由のルートで運行し所要時間は約5時間かかる。しかし、これは各駅でダイヤ調整のため待ち合わせ時間が多く発生していることが原因で、ほかの特急や在来線を乗り継げば、小倉―由布院は約2時間で移動できる。生野氏は「博多から5時間というイメージが広まっているが、他の特急などを乗り継けばそれほど時間はかからない」と強調した。

 桑野会長は由布院温泉のコンセプトや今後の方針を説明した。

 滞在型保養温泉地づくりに取り組む同温泉では、組合加盟の宿泊施設が約100軒あり、宿泊料金も8千円から6万円とさまざま。桑野会長は「多様な旅のスタイルに対応できるのが由布院の特徴。近年は温泉街の飲食店も充実し、1泊朝食プランも出始めている。スイーツのお店も豊富で、女性客に喜ばれている」と話し、由布院の新しい観光スタイルを紹介。

 また、「由布院の魅力は由布院だけで成り立っているのではない」として、周辺の観光地との連携を強化する考えを示した。既に由布院と熊本県阿蘇を結ぶ観光道路「やまなみハイウェイ」のエリア7市町村で、「やまなみハイウェイ観光連絡協議会」を今年2月に設立。今後、黒川温泉などと連携し情報発信や企画を展開するという。

 来年2―3月ごろには、JR由布院駅に「由布市ツーリストインフォメーションセンター」がオープン。由布院だけでなくオール大分の観光情報を発信するほか、旅の図書館なども設け、交流拠点として活用する。

スノーリゾート活性化へ 具体的な施策検討 観光庁

2017年10月21日(土) 配信

推進会議のようす

 観光庁は10月6日に「第1回スノーリゾート地域の活性化推進会議」を行った。同会議では、2015年から今年4月まで行われていた検討会の最終報告に基づき、スノーリゾート地域全体の活性化に向けた具体的な施策を検討していく。

 日本人のスノースポーツ人口は、ピーク時だった1998年の1800万人から、2015年には740万人とおよそ4割にまで減少。同推進会議の構成員の北海道大学観光学高等研究センターの遠藤正氏によると、「今後日本人のスノースポーツ人口がピーク時の水準にまで戻ることはない」という。

 一方で2018年の平昌五輪、22年の北京五輪の影響からか、北海道を中心に訪日外国人観光客のスキー人口が増加。とくにニセコ地域では、アジア圏からの宿泊者が急増しており、14年から現在まで豪州からの宿泊者数を上回る勢いを見せている。

 遠藤氏は「スノーリゾート活性化のカギとなるターゲットはアジアである」と言及。そのうえで、中・上級者(豪州・欧米)と未経験・初級者(主にアジア圏を想定)ではマーケットが異なるため、未経験者・初心者にはスキーの面白さ、楽しさを伝えることが今後のリピーター増加につながっていくと伝えた。

外国語ができる日本人インストラクターが不足

 訪日外国人観光客によるスキー人口が増加するなかで喫緊の課題となるのが、外国語ができる日本人インストラクターが不足していることだ。現在、外国人スキー観光客対応のためのインストラクター確保については、スキーのできる外国人インストラクターを採用するなどさまざまな対策が練られている。

 しかし、外国人インストラクターを採用する場合は日本での実務経験が最低36カ月必要になるため、ビザの関係上困難を極めている状態だ。中長期的な対策として、外国語能力を有する日本人インストラクターの採用・発掘が重要となる。

 これら課題に対し構成員からは「首都圏にスキーインストラクターは1万人以上いる。そのなかには外資系企業に勤めている人もいるため語学ができる人はいると思う。まずは、首都圏のインストラクターのなかで語学ができる人を把握することが重要である」との意見が挙げられた。

 同推進会議では今年4月に取りまとめが行われた「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会 最終報告書」に基づき、第2回推進会議が行われる11月末までの間にアクションプログラムを策定する。

 アクションプログラムの柱となるのは「国内外からのスノーリゾートへの誘客に関する課題」と「スキー場の経営に関する課題」の2点。

 国内外からのスノーリゾートへの誘客について、構成員らから「幼少期からスキーなどのスノースポーツに触れることが重要である」などの意見が寄せられていることから、小中学生を対象にスノースポーツの普及活動を積極的に行っていく。

1日1組の貴賓室 「武家屋敷 桜御殿」が誕生 旅館花屋

2017年10月21日(土) 配信

貴賓室「武家屋敷 桜御殿」座敷10帖

 創業1917(大正6)年の長野県上田市の別所温泉「旅館花屋」は、6500坪の敷地に点在する建物ほぼ全館が登録有形文化財に指定されている純日本建築の伝統の宿。今年101年目を迎えた同館に8月、貴賓室「武家屋敷 桜御殿」が誕生した。2016年まで上田城近くに現存していた上田藩の上級武家屋敷が解体されるにあたり、建具や建材を譲り受け、随所に移築し、当時の雰囲気をそのままに武家屋敷の様式を忠実に再現した。

貴賓室「武家屋敷 桜御殿」玄関

 移築した武家屋敷は、昨年取り壊した上田城跡公園前にあった「河合邸」。花屋の飯島新一郎取締役は河合邸の取り壊しの話を聞き、このまま無くなってしまうのはしのびないと花屋への移築を決めたという。

 移築場所は同館内の北側奥。昨年、改築計画があった2部屋に今年2月着工。計画より2カ月遅れで完成した。

 飯島取締役は「武家屋敷を残したいという想いが結実した客室。細部に至るまで武家屋敷の様式を再現することにこだわりました」と話す。

 武家屋敷は花屋最上級の貴賓室で、玄関、取次の間、壱の間、書院座敷へと続く。西側の廊下からは坪庭が風情を添え、風呂は源泉かけ流し100%の檜造りの露天風呂を新設した。総床面積90平方メートル。

源泉掛け流し100%の露天風呂

 1日1組限定。料金は1泊2食付きで1人5万円(税別)。夕食、朝食ともに部屋食となる。

 問い合わせ=旅館花屋 電話:0268(38)3131。

消費意欲好転の兆し 「若者の〇〇離れ」歯止めか 三菱総研mif

2017年10月21日(土) 配信

小川歌織氏

 三菱総合研究所はこのほど、2017年の「生活者市場予測システム:mif(ミフ)」調査の速報を発表。雇用環境の改善などで生活者の気分は上向き、消費マインドに好転の兆しがあるとした。今回は、20代の消費意欲の向上が顕著に現れた。昨今叫ばれていた「若者の○○離れ」に歯止めがかかる勢いもある。旅行消費にも意欲をみせており、とくに海外旅行は年1回以上旅行する人の割合が全体で11・5%なのに対し、20代は14・2%と上回った。

【飯塚 小牧】

 調査の説明を行ったエム・アール・アイリサーチアソシエイツのアナリスト、小川歌織氏は、16年までは「財布の紐は固い」「若者のモノ離れが進む」「変化から安定へ」などキーワードが暗い傾向にあったと紹介。それが17年は一転し、「雇用環境の改善などで消費者の気分が上向き始めた」と述べた。

 消費支出の項目をみると、教養娯楽費や交際費、衣類履物費が16年より上昇。これらは消費抑制時には節約対象となるもので、この項目の支出が伸びているということは節約志向が緩んだと考えられる。

 前年と比較した「暮らし向き向上感」は「向上している」が前年比2・2ポイント増の10・6%となり、「低下している」は3・5ポイント減の21・1%となった。

 今後の暮らし向きについては「良くなっていく」が2・2ポイント増の12・8%、「同じようなもの」は2ポイント増で52・1%。「悪くなっていく」は3・3ポイント減の25・9%。とくに20代は「良くなっていく」が21・3%、「悪くなっていく」が15・0%と、年代のなかで唯一「良くなっていく」の方が上回った。

 経済的ゆとりの実感に対しては、「かなりゆとりがある」「ゆとりがある」の合計が2・1ポイント増の23・8%となり、ゆとりを感じる人が増加した。

 こうした背景について小川氏は、日本経済新聞のデータから17年4―6月期は金融業を除いた上場企業の約7割で純利益が増加していることを提示。これにより、人手不足は正社員にまでおよび、パートを含む有効求人倍率がバブル期より高い数字となったことが好要因だと分析した。

 また、さまざまな分野で危惧されていた「若者の○○離れ」についても、結婚やモノ、旅行などの項目で上昇傾向にあることを紹介した。結婚は5年以内の結婚予想が20代で5・8ポイント増の36・2%、交際相手の有無は4・8ポイント増の30・5%と大幅に増加。「東日本大震災後に『絆』がキーワードになったが、その11年の数値を超えているのが特徴」という。

海外、国内旅行とも上昇

 旅行については、20代で年1回以上行く人の合計が海外旅行は3・3ポイント増の14・2%、国内旅行(宿泊)が5・5ポイント増の56・0%、国内旅行(日帰り)が4・7ポイント増の56・5%といずれも上昇。全体も同様に伸びてはいるが、増加率は20代が大きかった。

 コト消費についても、「友人・知人とわくわくする体験をしたい」「おもてなしなど特別なサービスを体験したい」などが全世代別で最も高く、20代が余暇活動の牽引役になると予測した。

 若者を中心に消費マインドが上向く一方で、長期的な不安感は根強く残っている。日本の向かっている方向を「良い」とする割合は10%程度で14年から横ばい状態だ。将来の生活への不安は「とても不安」が19・2%、「不安」が40・4%。小川氏は「『とても不安』の割合は11年の東日本大震災後と同程度になっており、看過できない重い結果」とし、中長期的な手立てが不可欠だと指摘した。

 

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(10月号)巻頭言」

2017年10月21日(土) 配信

http://zoomjapon.info

 今月号は、日本のパン食の特集です。戦後から日本に根づいたパン文化は、今も多様に変化しています。フランスの老舗パン屋の進出や、日本のパン消費の7割を占めるという日本特有の食パンの高級志向の高まりなど、近年のパン事情について多角的に取材しました。グルメページでも、京都とパンの深いつながりにスポットを当てました。文化欄では、昨今の日本のテレビや雑誌に見られる「日本スゴイ」現象を分析。旅行ページのレポートは、外国人に人気の安芸の宮島。地元の人たちが太鼓判を押すご当地グルメを紹介しています。

【特集】「パンづくし」

食パン専門店「Centre The Bakery」はパリのマレ地区に出店予定だという

 日本といえば、お米の国というイメージが強いが、現在、パン食は米食に迫る勢いだ。織田信長もパンを食したという記録があるが、パンの業界紙「パンニュース」代表の矢口和雄氏によると、全国的にパン食が拡がったきっかけは、1950年代の食糧難とそれに伴うアメリカからの大量の小麦の輸入だという。以降、小さいころからパン食に慣れ親しんだ第1次ベビーブーム世代が、今でもその人気を支えている。また統計によると、女子高生の7割以上は米より低カロリーという理由で、朝食にパンを選んでいるという。一般的にも、伝統的な日本の朝ご飯を準備するよりも、トーストのほうが時間を短縮できるという忙しい現代社会ならではの事情もあり、パンの消費量は伸び続けている。コンビニやスーパーの他にその需要を支えるのは、全国にある数千のパン専門店。しかし、 実際に国内で消費されているパンの7割は食パンだという。矢口氏曰く、「この日本独自の食パンの柔らかさは、お米や餅菓子に通じ、その食感が日本人にとって親しみやすい」そうだ。こうした傾向を反映したパンの製造について、自動機会社「レオン」の製パン工場と、銀座の食パン専門店「Centre The Bakery」で話を聞いた。また、パリで修業を積み、東京でフランス伝統の味を売るパン職人や、日本に進出したフランスのパン屋の存在にも着目。多様に進化する日本のパンの伸び代は大きい。

〈ZOOM・JAPON 編集部発 最新レポート〉人気の日本酒イベント

エッフェル塔の目の前の会場には一般のフランス人も多く訪れた

10月7日から9日まで、今年で4回目を迎えたサロン・デュ・サケが開催されました。このイベントは、フランスやヨーロッパにおける日本酒マーケットの拡大を目的とした展示会。対象は主に現地のレストランやショップですが、一般客も有料で入場可能。期間中は、約450種に及ぶ日本酒や日本のビールの試飲と並行して、すでに日本酒を取り入れているフランス料理のシェフやソムリエ、パティシエの講演会やワークショップなども開催されました。日本からは鳥取県や広島県のほか、酒造メーカーや酒蔵も参加。毎年勢いを増すこのイベント、来年もさらに期待できそうです。

クロード・ルブラン編集長

 

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旬刊旅行新聞 編集部〉

 

 

 

 

 

オリジナルの特典付き 18年版「ピンクリボンのお宿」冊子

2017年10月21日(土) 配信

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」冊子

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(畠ひで子会長、事務局=旅行新聞新社)は10月1日、加盟する宿泊施設のお風呂情報などをまとめたフリーペーパー「2018年版ピンクリボンのお宿」を発行した。目的は、さまざまな方にお風呂を楽しんでもらうこと。宿紹介のほか、オリジナル特典クーポンも付く。全国の医療施設といった法人ほか、個人への発送も無料で行う。

 「入浴着をレンタルできる」や、「大浴場の洗い場に間仕切りがある」など、乳がん患者・体験者が求めるお風呂情報を網羅。禁煙ルームや食事への配慮を求める声にも、細かく対応する。

 A5判フルカラー84ページ。ハンドバックにも入りやすいコンパクトな仕様となっている。発行部数は10万部。

 冊子申込は、公式Webサイトでも受付中。宿検索や、特典クーポンの発行も可能だ。

 問い合わせ=ピンクリボンのお宿ネットワーク事務局(旅行新聞新社内) 電話:03(3834)2718。

魅力ある島しょへ 「二人三脚で進める」 しまぽ通貨

2017年10月21日(土) 配信

スタンプをスマホの画面に押すだけで、簡単に決済

 東京都はこのほど、東京の島しょ11島で使える「しまぽ通貨」サービスを始めた。7千円分購入すると、3千円分のプレミアムが付き、計1万円分となる。利用者側も事業者側も簡単に決済を行うことができる。伊豆諸島・小笠原諸島は1978年のピーク時から、観光客は3割程度まで落ち込んでいる。東京の魅力ある島しょ地域へ訪れてもらう「きっかけ作り」の取り組みを、東京都産業労働局観光部観光施策担当課長の齋藤順氏に聞いた。

【平綿 裕一】

齋藤順課長

 ――しまぽ通貨について教えてください。

 これまで東京の島しょ地域で行っていた「東京島めぐりPASSPORT(しまぽ)」を電子化し、電子通貨機能を追加したかたちです。7千円分購入すると、3千円分プレミアムが付与され、1万円分として使えます。30%分のプレミアムが付いた旅行商品券と考えてもらえればいいと思います。利用できる地域は①大島②利島③新島④式根島⑤神津島⑥三宅島⑦御蔵島⑧八丈島⑨青ヶ島⑩父島⑪母島――の計11島です。

 事業開始時の加盟事業者数は156事業者。現在も増えており、当初想定していた200事業者を超える勢いです。

 加盟店にスタンプを配布して、それをスマートフォン画面の上に押すだけで、簡単に決済ができます。

 ――利用者と島の事業者のメリットは。

 3千円のプレミアが付くことと、多額の現金を持ち歩く必要がなくなることがポイントです。また、しまぽのスタンプラリー機能も電子化しているので、併せて利用できます。スタンプを集めれば、記念品贈呈や、プレゼント抽選に応募することができます。

 事業者はプレミアムが付くことで、島に来たことが無い人を誘客できる点です。電子決済はこれまでにない仕組みなので、使いづらいと感じられるかもしれませんが、新たな顧客層を掘り起こせます。同様のサービスは、長崎県で導入済みですが、日本では2番目の導入です。利用者への訴求の点で新鮮味が増すと思っています。

 一方で、宿泊して長く滞在してもらい、島での消費促進も狙っています。7千円分は宿泊施設で、3千円分は宿泊に加えて土産や飲食などにも利用できます。

 加えて決済額は1千円単位からとなります。この部分はデメリットのようですが、500円のお土産に、プラス500円分をセットして1千円にするなど、工夫をしてもらい、消費単価を上げることも可能です。

 このほか旅行会社と、「しまぽ通貨ツアー」をタイアップツアーとして設定しています。1泊1万円以上の旅行商品を申し込んだ旅行者に対し、3千円分の割り引きをします。お得感を出し集客力を上げることで、観光客と消費額の増加を見込めます。

 ――電子決済で顧客・動態などのデータを入手できると思いますが、活用方法は。

 登録時に、性別や年齢、在住地などの利用データを取得できます。顧客属性にある傾向が出れば重点的に攻め、逆に弱い部分があれば、新たな取り組みを考える際の参考資料になります。ここで得られるデータは、さまざまな事業で活用していく予定です。

 ――インバウンド対応は。

 今回は対応していません。日本人が対象です。

 外国人旅行者に対しては「まずは東京の島を知ってもらいたい」という思いがあります。現状では、東京に島の認知度が十分でないと感じています。

 今回のようなインフラを作ったとしても、実際に訪れるまで辿りつかない可能性があります。まず認知を高めることが、今は大事だと思っています。

 ――東京の島しょ地域の観光課題はありますか。

 伊豆諸島・小笠原諸島の観光客の推移は、1973(昭和48)年のピーク時に比べ、2015年は3割程度の45万人まで落ち込んでいます。とにかく、観光客数の減少を食い止め、上向きに持ち直したいと考えています。

 ――観光における東京の島しょ地域活性化の方向性などは。

 今回のサービスも含めて、旅行者に訪れてもらう「きっかけ作り」は我われでもできます。ここから先の部分、「実際に来た人が満足してもらえるか」は、島の人達に考えていただく必要があります。

 しまぽ通貨で東京の11の島を巡ることが可能です。旅行者から「あの島が良かったよね」といった声が聞こえてくれば、「じゃあ私たちもやってみよう」と、各島で競い合うこともあると思います。競争が生まれれば、観光地としての質の向上にもつながるはずです。

 そこで我われは、地域のインフラをはじめ環境整備を支援する補助金や、観光協会などの地域が主体的に取り組む観光まちづくりを支援するアドバイザーを派遣などして、ハード・ソフト両面で支援していく体制を整えています。

 今後は東京の島の「強み」を創出して、いかに認知させるかも大事なことです。さらにより気軽に訪れてもらえるような取り組みと、受入環境の整備も必要です。この「認知」「きっかけ作り」「受入環境整備」の3つがセットにならないと、満足度向上にはつながってはいきません。

 「東京都だけ」「島の人たちだけ」ではなく、「一緒になって、二人三脚で進めていく」ことが重要です。東京の島を旅行先として選んでもらうために、今回のしまぽ通貨のような新たな事業を、さらに展開していきたいと考えています。

 ――ありがとうございました。