日本といえば、お米の国というイメージが強いが、現在、パン食は米食に迫る勢いだ。織田信長もパンを食したという記録があるが、パンの業界紙「パンニュース」代表の矢口和雄氏によると、全国的にパン食が拡がったきっかけは、1950年代の食糧難とそれに伴うアメリカからの大量の小麦の輸入だという。以降、小さいころからパン食に慣れ親しんだ第1次ベビーブーム世代が、今でもその人気を支えている。また統計によると、女子高生の7割以上は米より低カロリーという理由で、朝食にパンを選んでいるという。一般的にも、伝統的な日本の朝ご飯を準備するよりも、トーストのほうが時間を短縮できるという忙しい現代社会ならではの事情もあり、パンの消費量は伸び続けている。コンビニやスーパーの他にその需要を支えるのは、全国にある数千のパン専門店。しかし、 実際に国内で消費されているパンの7割は食パンだという。矢口氏曰く、「この日本独自の食パンの柔らかさは、お米や餅菓子に通じ、その食感が日本人にとって親しみやすい」そうだ。こうした傾向を反映したパンの製造について、自動機会社「レオン」の製パン工場と、銀座の食パン専門店「Centre The Bakery」で話を聞いた。また、パリで修業を積み、東京でフランス伝統の味を売るパン職人や、日本に進出したフランスのパン屋の存在にも着目。多様に進化する日本のパンの伸び代は大きい。