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「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(201)」 日本遺産サミットと地域連携(石川県小松市)

2021年10月31日(日) 配信

「こまつの石」などを常設展示する小松市博物館

 2016年から始まった「日本遺産サミット」。今年は11月13~14日の両日、石川県小松市で開催される。

 日本遺産サミットは、日本遺産の意義とストーリーを地域の人々に身近に理解して頂くとともに、各認定地域の交流を通じて、日本遺産活用の事業手法などを相互に学び研修するという2つの意義を持っている。

 従って例年、講演やシンポジウムのほか、参加地域による公開講座やPRブースの設置など、日本遺産ブランドの広報活動が展開されてきた。今年の小松サミットでは、これらの定番プログラムに加えて新たに2つの取り組みが展開される。

 1つは、古くからの「ものづくり」技術をもとに、小松の現代の産業をアピールする「GENBAプロジェクト」の開催である。これは九谷焼をはじめ、古くからある多様な工場・工房のオープンファクトリー化の事業であり、3年前から準備を進めてきた。

GENBAプロジェクト拠点の一つ「EATLAB」

 小松の「石の文化」は、地元八日市遺跡など、約2300年前から続く碧玉、瑪瑙(メノウ)、水晶などものづくり加工技術を起源とする。良質の凝灰岩石材や九谷焼原石の陶石など優れた石の加工技術も生み出された。石の加工技術は、古墳の石室にも見られるが、近世以降は城郭や石蔵・石塀などの都市づくり技術にも多用された。今でも石材を切り出す幻想的な石切り場も残る。近世になると、金や銅鉱脈の存在から尾小屋鉱山や遊泉寺鉱山などの鉱山経営も盛んになる。これらの鉱山用の機械を製造した小松鉄工所が、今日の世界的重機メーカー、コマツの原点でもある。

 加賀前田家3代利常公は、産業政策とともに文化を重視し、九谷焼をはじめ瓦、茶、畳表、加賀羽二重(絹織物)などを奨励した。とくに絹織物(小松絹)は機業地としての勧業奨励が大きな後押しとなった。これらの産業をルーツとする現代の工場・工房を開放する「GENBAプロジェクト」は、今回の小松サミットの大きな特色である。

 もう一つは、日本遺産物語として共通テーマをもつ地域同士の研究交流分科会の開催である。小松の石の文化とも共通する宇都宮市、福井市・勝山市、笠岡市など備讃諸島、八代市などの「石の文化」。繊維・織物の文化をもつ八王子市、桐生市、与謝野町、倉敷市、十日町市などの「繊維・織物文化」。多様な食文化物語のある小浜市、北総4都市、湯浅町、高知県中芸、長崎市などによる「食の文化」である。

 日本遺産は地域の文化財などをつなぐ歴史文化物語であるが、これらは、もともと地域を越えて深いつながりを持ってきた。北前船のような「交易」をテーマとする物語だけでなく、それぞれの地域が今回のような機会をきっかけに研究を通じた地域間交流をするきっかけとしてほしい。

 小松の日本遺産サミットの「現場」に是非ともご参加頂きたい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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「「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(201)」 日本遺産サミットと地域連携(石川県小松市)」への1件のフィードバック

  1. 加賀藩は江戸時代大きな藩でしたものね。サステナブル素材も大きなものから考えてゆかないといけない。鉄鋼は工業素材の80%を占める必須のマテリアルですが高炉/電炉比率を変えないといけないという声が高まっています。電炉はLCAにすぐれCO2排出量も少ないのですが、日本は世界でも突出して高炉比率が高い。その原因は電炉で除去されにくく鉄鋼製造に有害な影響を与えるトランプエレメントと呼ばれる不純物成分を嫌ってのことなのですが、近年そのトランプエレメントをわざと合金化して成功した特殊鋼メーカーが現れその説もどうやら覆されたようです。この材料はプラスチックと組み合わせて摺動させると高性能な軸受や歯車ができるようです。この市場実験(SLD-MAGIC)の成功はもはや揺るぎないものとなっているようです。

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