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〈旬刊旅行新聞3月21日合併号コラム〉陳腐化しやすい現代社会 長い歴史の年輪を刻んだ建築物こそ貴い

2021年3月20日
編集部:増田 剛

2021年3月20日(土) 配信
 

 帝国ホテル東京が建て替えの検討に入るというニュースが流れた。フランク・ロイド・ライトが設計したかつての本館など、世界のVIPを迎え入れる「迎賓館」としての役割を担ってきた同ホテルが新装されることは、期待に胸が躍る。

 
 3代目となる現在の建築物は50年を過ぎたばかり。しかしながら「老朽化」が建て替えの大きな要因になっていることにも驚いた。

 
 欧州などのホテルは、ゲーテやモーツァルトが宿泊したホテルなどが当時のままに残り、修復しながら現在も活躍している。数百年の歴史を積み重ねるホテルも珍しくない。

 
 湿気の多い気候や、地震などの天災、戦火による消失など単純に比較はできないが、スクラップ&ビルド文化が強い日本には「長い歴史の年輪を刻んだ建築物こそ貴い」という感覚が希薄に感じてしまう。もちろん、木造建築を大切に磨き続ける宿も日本には多く残っており、そのような宿には敬意しかない。

 
 まだまだ先のようだが、今後新築される帝国ホテルは、世界中の旅行者を魅了する日本らしいデザインと、これから数百年先の未来にもしっかりと残る、宿泊業界を代表する“日本の顔”になってほしいと願う。

 

 
 さて、コロナ禍が長引いており、私も必然的に家で過ごす時間が増えた。それで、背もたれの長い、リラックスできる1人用のイスを買った。2人掛けのソファと違い、座るとひじ掛けもあり、包まれ感が強い。そうなのだ、私はこの包まれ感の強いイスを探し求めていたのだ。

 
 このイスに座って何をするかといえば、何もしない。照明を落とした夜に気に入った酒か、コーヒーを飲みながら、ただぼんやりと家具を眺めるだけだ。

 
 大正ロマン風のランプを幾つか配置し、薄暗い部屋で木製家具の陰翳を楽しむ。リビングにはプラスチック製品を極力置かないようにしてから、骨董家具店などを巡って、ようやく長時間眺めていても飽きないデザインの家具がそろった。

 

 
 プラスチック製品はとても便利だが、それを眺めながら酒を飲むことはできない。しかし、時の洗礼を受けた木製やアイアンの家具は、歴史を背景とした佇まいや、味わいに浸ることができる。

 
 最近は、旅館やホテルに宿泊する際に、ホームページや予約サイトで「客室のデザインの高さ」を基準に選ぶことが多くなった。旅先のホテルで過ごす時間には、非日常空間であるがゆえの、ある種の“陶酔感”が必要だと考える。なにも、「高級な家具に囲まれたい」といったものではなく、このホテルや旅館“らしさ”をわずかにでも醸し出す思想のようなものを感じたいと思っている。

 

 
 家のリビングには、大きな長方形の水槽が置いてある。水槽は柔らかい色のランプでライトアップされている。中には、ヒガシヘルマンリクガメが1匹入っている。2億年近い古代から進化を忘れたような、こんもりとしたフォルムの小さなカメが、ノコノコと首を上げて歩く。この変化の激しい時代において、化石のような、長い年月不変を貫く頑ななデザインに凄みを感じる。移り変わりが早く、陳腐化しやすい現代社会で、壮大な歴史の凝縮形を見る気分だ。歴史を刻む家具を眺め、カメという不思議な生き物を眺め、私はただぼんやりと酒に酔う。

(編集長・増田 剛)

 

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