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「提言!これからの日本観光」 “醸造”産業観光

2019年12月21日(土) 配信

醸造が行われる蔵も観光資源に

 愛知県の西三河から知多半島一帯にかけては、良港に恵まれ、大消費地であった名古屋へのアクセスも良好で、江戸時代ごろから物流の拠点となったため、醸造産業が盛んである。とくに酢と酒、醤油、味噌など、日常生活に身近なものが中心となっている。酢などは全国のトップシェアを保っていた時代があった。 

 最近、この地域では、醸造産業の拠点となっているまちが連携。「醸造」を新しい「産業観光」の観光資源とすべく、情報発信し、観光客の受入態勢を整備していくこととなった。

 食物の味には「甘味」や「辛味」のほかに「うまみ」があることに着目。このうまみは醸造で作り出されるため、醸造過程と製品をあわせて観光客に観せ、味わってもらうことも考えた。とくに醸造を研究する学者が参加する「東海発酵文化研究会」での熱心な研究と観光実現への働き掛けが原動力となった。

 常滑と半田、西尾、碧南4市の民間企業で構成し、同地域の観光を推進する「竜の子街道広域観光推進協議会」が、同研究会から提案と示唆を受け、観光資源化に尽力。この4市の自治体とも連携し、「新産業観光」として観光客に向けて受入体制を整備することとなった。

 この取り組みには、各市の「味噌」7蔵と「酢」1蔵、「醤油」11蔵、「酒」7蔵、「みりん」5蔵の計31蔵が参加。各蔵元が醸造現場の見学客受け入れ、一部の作業体験も可能とした。製品の試飲と試食も歓迎している。販売も行ってビジネスモデルを構築し、持続的観光を目指していることは言うまでもない。

 新しい観光のカギは適確なストーリーづくりと情報発信にある。このうち、ストーリーづくりでは、江戸時代からの地域の発展とともに、各地に立地してきた醸造産業の歴史がある。そして、物流拠点となった知多・西三河の4市と近郊地域の数多い醸造産業の蔵元が連携・協働を強化。自ら発展して、まちづくりにつながったことをストーリーにまとめている。

 醸造産業の長い歴史が残した多くの古い倉庫群や赤レンガの工場遺構産業資料館などの産業遺産など、幅広い観光資源の紹介にも努めている。

 知多・西三河の4市には醸造のほかにも、さまざまな見どころがある。常滑市はやき物、半田市は蔵、碧南は寺、西尾は抹茶が魅力的だ。

 各蔵元が4市の多くの観光資源を生かすべく、新しい観光で醸造以外の見どころを結びつける役割を果たし、幅広い西三河知多広域観光の実現を目指していることに注目していきたい。

 10月開催の“ツーリズムEXPOJAPAN”には、醸造観光ブースを出展し、全国への情報発信にも努め、多くの観光客を集めた。

 なお「醸造観光」の名は固すぎるとの声もあるので「『ファーメンテーション』という英語を使っては」との意見もあるが、しっくりしない。何かよい名があればぜひ、ご教示いただきたいと地元の関係者が期待していることを付記しておく。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏

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