【特集No.507】草津町・黒岩町長インタビュー 「科学」に基づいた迅速な対応へ
2018年11月1日(木) 配信
今年1月23日に発生した草津白根山の噴火以降、噴火警戒レベルが変動している。群馬県・草津町の黒岩信忠町長は「すべての判断の根拠はサイエンス(科学)を最優先する」と明確に発表し、情報の「見える化」による危機管理にも取り組んでいる。2015年度には、公約に掲げた入り込み客数300万人を達成。草津温泉のシンボル「湯畑」周辺の再整備計画によって、ブランド力を高めた黒岩町長に、まちづくりの根本思想を聞いた。
【増田 剛】
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――9月21日に草津白根山の噴火警戒レベルが1に引き下げられました。
9月6日から運用しているレベル1の新基準では「任意の24時間で地震回数が10回未満で、火山性微動が発生しない状態が、2週間以上続いた場合」などと定められています。しかし、火山の警戒レベルは山ごとに決めらており、統一されたものではありません。
白根山(湯釜付近)の噴火警戒レベル1では、湯釜火口から半径500㍍、レベル2では半径1㌔で立ち入りが規制され、国道292号線(志賀草津高原ルート)の一部区間が規制区域に入ります。
白根山の噴石が飛ぶ範囲は過去の歴史を調べても半径400―500㍍、最長でも680㍍の範囲にとどまっています。それが1995(平成7)年に設定された警戒レベル2における立ち入り規制「半径1㌔」の基準になっています。
――この基準が足枷になっている面もありますか。
現在は観測技術が発達し、山の状態は以前よりも具体的に知ることができるようになってきました。警戒レベルの根拠や、規制の見直しについても気象庁と継続的に議論しています。
9月21日には、60人ほどの町民に集まっていただき、「しばらくは警戒レベル1と2の間を繰り返すことが予想されます」と話し、「草津町は、サイエンス(科学)を最優先に取り組んでいきます」と理解を求めました。
――レベル2になると志賀草津高原ルートは通行止めになります。
11月中旬になると、志賀草津高原ルートは冬期閉鎖されます。また、春先に道路が開通しても降雪や天候次第で閉鎖することもあります。火山も同じように、「危険な状態では閉鎖するし、安定してくれば開通する」という柔軟でスピーディーな対応が必要なのだと思います。
□すべての判断は「科学」を根拠に
これまでは火山活動が収まりつつあっても、レベルの引き下げが遅れることもありました。今後は科学に基づいた迅速な対応に変えていきます。
今年1月に白根山が噴火したときに、多くのメディアが訪れました。私は「すべての判断は科学を最優先し、2番目が法令関係、3番目がビジネス」という姿勢を明確に表明し、このスタンスを貫きました。
――メディアへの対応が慣れていない市町村では、失敗してしまうケースも散見されます。
行政として求められる一番の基本は「危機管理」と、職員にも常に言い続けてきました。とりわけメディアへの対応は危機管理の大きな要素の一つです。
草津町は誰にも分かりやすいように情報の「見える化」に取り組んでいます。包み隠さず、すべて公開していますので、メディアとも信頼関係が築けているのではないかと思っています。
――9月28日に再び警戒レベル2に引き上げられました。
レベル1となった9月21日の翌22日から、レベル2に引き上げられた28日まで、志賀草津高原ルートは開通しました。この1週間に草津町を訪れる観光客数は一気に増えました。御座之湯、大滝乃湯、西の河原露天風呂などの有料温泉施設は、噴火後に入浴者数が低迷していましたが、売上が大きく伸びました。自家用車で訪れる若年層など日帰りのお客様が大幅に増えたことが要因です。……
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