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【handy japan・勝瀬博則社長インタビュー】無料無制限のスマホ 5カ月足らずで16万室契約

2017年12月14日
編集部

2017年12月14日(木) 配信

勝瀬 博則 氏
handy Japan 代表取締役社長 、ミシシッピ州立大学MBA
1992年から米国大手事業会社にて通信、サーチエンジン、ヘルスケア事業を手掛け、2015年世界最大のOTA, Booking.comの日本統括マネジャーに就任。現在は現職のほか、神奈川県観光政策統括アドバイザー、パソナ地方創生特命アドバイザー、フォートレスキャピタルマネジメント顧問などを兼任している。

 客室備え付きの無料スマートフォン「handy」が人気を集めている。2017年7月1日にサービスを開始。5カ月もたたず16万室(11月24日現在)以上と契約し、1日に約1千室のペースで増えている。全国のホテル総客室数の約18%のシェアを占め、東京都では約60%のホテルへ導入されていくことになる。今後は旅ナカのメディアとしての事業にも乗り出す。今回、handy japanの勝瀬博則社長にサービスや展望を聞いた。

【平綿 裕一】

無料無制限のスマホ「handy(ハンディ)」

 ハンディは無料無制限で国内外の通話やインターネット接続などが可能。観光情報の発信もでき、地図アプリは内蔵され目的地への誘導が可能だ。31カ国語に対応し、通常のスマホと同様の機能を備え、SNS(交流サイト)などの各種アプリのダウンロードも自由。

 施設のWebサイトはもちろん、口コミサイトにも連携し、利用者は外出時に持ち出せる。ワンタッチでコンシェルジュに連絡でき、外出先でアクシデントがあっても、素早く対応できる。

 11月までに日本で16万室以上に導入され、1日当たり約1千室のペースで増えている。厚生労働省の調査によると16年のホテル総客室数は約87万室で、全国で約18・4%のシェアとなる。サービス開始から5カ月足らずで、驚異的な伸びを示している。

東京都では約60%が導入へ

収益体系は2本柱にプラス1

 ハンディの収益の柱は2本ある。1つは、ホテルの室内に置くレンタル収入(月々980円から)。もう1つはハンディ内の広告収入となる。18年以降は2つに加え、ハンディを通してチケットなどを購入する際に、手数料徴収を始める予定。すでに海外拠点では導入済みで、日本での導入を急いでいる。

 勝瀬社長は「広告や手数料収入、情報発信ができることだけが特徴ではない。ハンディの操作情報などを集め、精密な顧客ニーズを“見える化”できる」と話す。

 施設はこれに対応し、相性のいい館内案内やプロモーションの露出度合いを上げるなど、データに則った戦略が打てる。効果測定をしっかりと行うことで、地域の観光を強化する一助になる。

「スタートアップという言葉は適切ではない」

 サービス開始は17年7月1日だが、「中堅クラスの実力を持ってスタートした」(勝瀬社長)と振り返る。

 日本参入時にシャープとの業務提携で約30億円の出資を得た。ハンディ自体の技術を持つTinkLabという会社は、オペレーション開始から4年以上が経過し、鴻海(ホンハイ)から130億円の出資を受けている。人材は提携先のシャープに加え、外資系OTAや、大手旅行会社などからも集めている。

 勝瀬社長の言う「スタートアップという言葉は適切でない」とは、これらの理由に基づいた自信のあらわれ。技術、資本、人材が潤沢にある。だからこそ市場に認められ、全国で導入が進んでいる。

RevPARが3・4%上昇

 導入して実際に利益が上がるのか――。

 すでにコーネル大学のホスピタリティマネジメント学部との共同研究を行っている。ハンディ導入後、3カ月以内にRevPAR(販売可能な客室1部屋当たりの収益)が約3・41%上昇し、1泊当たり5・1㌦(約570円)ほど上がったとの結果が報告されている。

 一方、ハンディ上で、客に直接プロモーションできる“プッシュメッセージ”という機能でも効果が出ている。喫食率が約2割と、スパの売上が約3割上がるといったデータもある。 

“旅ナカメディア”としての位置づけ

 11月に萩本良秀氏(じゃらんnet、@ぴあの元編集長)を編集顧問に迎えた。

 なぜか。「ある意味で旅行雑誌としての機能を追加し、情報端末の機能を拡充させる」(勝瀬社長)。ハンディ内のコンテンツを読み物として紹介。旅行者が初めて行く場所でも、安心して回れるよう地域情報を提供していく。

 とくに主導権を握りたいのは“旅ナカ”。ミレニアル世代が旅行のトレンドを作る現在、スマホの普及で客の行動パターンが変化し、旅マエから旅ナカに移行している。

 ハンディはデジタルメディアの機能を持つ。購入意欲がある客に、見逃すかもしれない情報をリアルタイムに訴求できるうえ、その場所まで誘導できる。

 「観光資源や旅行商品の売り手・作り手側の想いなども、旅ナカで旅行者に発信できる。面白いコンテンツを提供することで、地域の周遊観光の促進や、消費単価のアップにもつながる」。

読者規模という観点からも強みがある。

 観光庁のデータによれば、16年の日本全体の平均宿泊数は約1・3泊。つまり、1つの導入施設では1カ月に、約23人がハンディ内の旅情報を閲覧できる状況にある。

 23人掛ける16万室で1カ月約370万人、年間で4千万人以上の読者を得る機会がある計算だ。旅行でホテル旅館に宿泊し、その客へ直接訴求できる、ターゲティングメディアとしての潜在能力は大きい。

地方部に多い旅館には代理店制度で

 勝瀬社長は「旅館マーケットは非常に重要」と語る。旅館は地方部に多いが、地方部への営業は会社として体力がいる。

 ハンディは代理店制度を活用して、この課題を克服。全国に230人を超える営業を持つJTB商事などに、宿泊施設へ提案、契約の取り次ぎを委託した。これまでホテルが中心だったが、今後は全国約69万室を持つ旅館にも展開を進めていく。

 旅館側もメリットがある。ハンディはモバイル回線で客室や内線電話が可能。ハンディの画面を客室テレビに映すことができるミラーリング機能の拡充も検討している。旅行者はネット動画や自館のPR動画など、データ容量を気にせず大きなテレビで観られる。

 つまりハンディ1台でPBXやVODの代替が利く。さらに来年以降はルームキー機能の搭載や、ハンディによるチェックイン・アウトの自動化も視野に入れている。人件費削減や、生産性向上にも寄与していく方向だ。

「コネクティビティ」

 「我われが非常に重要視している言葉は『コネクティビィティ(つながること)』」。

 日本にいても、海外の家族や友達らとつながることができ、連絡が取れないといった“心配のない”社会を目指す。ハンディを社会のインフラへ進化させていく。つながることに心配ない世の中であれば、旅がより楽しくなる。

 新たな通信サービスとしての期待は大きい。日本政府観光局(JNTO)が提供を始めた観光情報アプリの、プロモーション連携で参画している。政府が掲げる目標達成に向け、「観光立国の下支えをしていきたい」と勝瀬社長は力を込める。

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