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旅の責任は自分が負う ― 謙虚さを失った旅人は見苦しい

2017年3月21日
編集部

 旅とは思い通りにいかないものである。

 海外を旅するにしても、飛行機の着陸が遅れたり、現地で道に迷ったり、注文したものと違う料理が出てきたり……。これらを含めて旅だと思っていれば、すんなりとホテルに到着できたり、食べたい料理がちゃんと出てきただけで万事順調と感じられる。

 半分上手くいけば、上々だというレベルの謙虚さが、旅を楽しくする。

 でも、旅先で思い通りにいかないことを極度に嫌う人もいる。何かトラブルが生じると、大きなストレスを感じて、イライラしたり、旅行会社やホテルのスタッフに当たり散らしたりする。

 旅行中に不快なことや、不便なことを一切排除したいがために、リスクの少ない「安全・安心」を謳うツアーに参加するのも1つだ。一定以上の基準を満たしたツアーでは、おそらくホテルもそれなりのグレードが選ばれ、レストランのメニューもしっかりと選択されているだろう。トラブルに巻き込まれる確率もぐんと下がり、何かトラブルに巻き込まれたとしても、旅行会社が対応してくれる。

 旅のリスクを最小限にする努力は旅行者にとって当然必要なことである。安全・安心なツアーに参加することは、リスク回避の努力の正攻法である。けれど、信頼できるツアーを選んだからといって、旅のトラブルがなくなるわけではない。

 旅の責任を自分が負うのではなく、100%旅行会社などに寄りかかっている旅行者の姿勢が、ときどき鼻につくことがある。

 初めて行く海外のビーチで泳いでいる最中に沖に流されたり、街の危険な区域に立ち入って暴行されたりというケースが多々ある。そうすると、被害に遭った旅行者やその関係者が、「『ここは危険だ』という十分な説明がなかった」などと言って、旅行会社と揉める。旅行会社にも非があるかもしれないが、旅行者も自らの「安全」を他者に委ね過ぎていたのではないかと感じることもある。

 子供のころから泳ぎ慣れた海なら、水深や潮の干満の大きさ、波の流れ、風の向きなどある程度理解しているので事故も起こりづらい。しかし、初めて行く、見知らぬ海に対して「何を安心して泳いでいるのだろう」と思ってしまう。初めて歩く街の路地も危険だらけだという基本認識が欠かせない。旅行するなら少なくとも、“自分自身で”危険かどうかを調べるべきであるし、どうしても調べ切れなかったものに対しては、旅行会社のスタッフに、自分から聞くべきである。旅人の身でありながら、旅行会社からの説明をひたすら待っている姿勢こそ疑問に感じる。そして旅人は危機への嗅覚も必要だ。

 「安全・安心」を謳うツアーに参加することは、リスク回避の1つの手段であるが、そこに寄りかかり過ぎると、逆にリスクを大きくしてしまう。

 国内旅行でも、旅館に少し高額な宿泊費を払うと、王様のように振る舞う客がいる。そして何か気に食わないことが起こると、宿に文句を言う。日本の旅館は“おもてなし”を前面に出しているため、それら甘ったれた客に対しても強く出づらい。

 旅人は所詮「他所者」である。もっと謙虚であるべきである。謙虚さを失った旅人は見苦しい。

(編集長・増田 剛)

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