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13線区の維持困難、持続可能な交通体系模索(JR北海道)

2016年12月15日
編集部

 北海道旅客鉄道(JR北海道、島田修社長)は11月18日、同社単独での維持が困難な線区が、北海道の鉄道網の半分以上の13線区、1237㌔になると発表した。同社は、民間企業の事業として担えるレベルを超えた鉄道輸送サービスを持続的に維持していくためのコストを、「誰がどのように負担するべきか」地域住民や国、関係機関などに相談する考え。そのうえで「持続可能な交通体系」の実現に向けた取り組みを進めていく。

 札沼線の北海道医療大学―新十津川、根室線の富良野―新得、留萌線の深川―留萌は、輸送密度200人未満(片道100人未満)の線区。1列車あたりの平均乗車人員が10人前後と、利用者が少ない。同線区の2015年度営業損失は合計で、20億円以上。また運営赤字以外にも、今後20年間で必要な老朽土木構造物の維持更新費用が合計で58億円必要になる。同社ではこれらの線区に対し、「鉄道よりもほかの交通手段が適している。手段を切り替えることで利便性・効率性の向上も期待できる」と考える。今後はバスなどの利用に転換できるよう、地域住民などとの相談を始める予定だ。

 宗谷線の名寄―稚内、根室線の釧路―根室、滝川―富良野、室蘭線の沼ノ端―岩見沢、釧網線の東釧路―網走、日高線の苫小牧―鵡川、石北線の新旭川―網走、富良野線の富良野―旭川は、輸送密度が200人以上2千人未満の線区。このなかには、観光路線の役割を担う富良野線の富良野―旭川も含まれる。しかしこの線区も、輸送密度1500人、15年度営業損失は9億5600万円。

 同社ではこれらの線区を、「単独では老朽土木構造物の更新を含め『安全な鉄道サービス』を持続的に維持するための費用を確保できない線区」に位置づける。今後は①利用の少ない駅の廃止や列車の見直し②運賃値上げ③上下分離方式の導入――などを検討し、そのうえで鉄道を輸送サービスとして維持するかどうか判断する。上下分離方式とは、設備の整備・保有主体と運営主体を分離するもの。公的機関がインフラ整備を行い、民営が電車の運行を行う。地方鉄道ではインフラ保有にかかる費用が経営を圧迫することから、導入する鉄道会社も多い。

 一方、同社単独で維持可能な線区は、函館線の岩見沢―旭川、札幌―岩見沢、小樽―札幌など585・9㌔。大量・高速輸送の観点からも鉄道でなければ輸送を担えない線区と、輸送密度が4千人以上の線区があてはまる。しかし、これらの線区でも15年度営業損失は、90億5200万円に上り、老朽土木構造物の維持更新にも多額の費用がかかることが予想されている。同社は、国や自治体などの補助スキームの活用や運賃の値上げなどを行い、同線区を単独で維持していく考えだ。

 宗谷線の旭川―名寄間と、根室線の帯広―釧路間は当面同社が維持をするが、営業損失が50億円を超えている。そこで、北海道高速鉄道開発との関連のなかで、持続的な維持方法を検討する。また北海道新幹線の札幌延伸後は、函館―長万部、長万部―小樽間を経営分離させる。

 JR北海道が18日に行った会見に対し高橋はるみ北海道知事は、道庁ホームページ上にコメントを掲載。同社が「単独での維持が困難」としている線区に対し、「本道の都市間を結ぶ幹線や地域を支える路線など道内鉄道網全体の5割を超える線区が対象となっており、その進め方如何では、本道の公共交通ネットワークに重大な影響を及ぼす可能性がある」と大きな危機感をにじませた。JR北海道には、引き続き徹底した管理コストの削減など最大限の自助努力を進めることと、関係機関などへの丁寧な説明を求めた。また道庁では、「鉄道ネットワークワーキングチーム」を新たに組織。鉄道網のあり方や課題について集中的な議論を進め、国や関係自治体との連携・協力をはかりながら、地域にとって欠かすことのできない交通網の確保に向け積極的に取り組んでいく。

 旅行者にとっても鉄道は大事な足である。定番の観光スポットとして挙がる小樽や函館、札幌以外にも、北海道の179市町村すべてに魅力は詰まっている。地域住民の足としてだけではなく、北海道の観光資源有効活用のためにも、より多くの線区が維持されるのが望ましい。そのためにも、観光者と生活者、両面の目線から交通網整備を考えてほしい。

【後藤 文昭】

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