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退屈と向き合う ― 旅人の力量が問われる闇と静寂

2016年12月1日
編集部

 金目鯛の煮付けが無性に食べたくなった。夢にまで見るようになったので、つい先日、東伊豆を訪れた。

 しかし、不安もあった。前日から関東の平野部、東京都心にも積雪の予報が出ていた。「11月の積雪は観測史上初」というニュースを聞きながら、クルマで行こうか、電車で行こうかと、直前まで迷った。宿泊した翌日に、大雪で立ち往生することが予想されたからだ。

 電車での伊豆旅行は旅情がある。ビールを飲みながら冬景色を眺めるのもなかなか乙で、捨てがたかったが、途中、幾つか寄りたい場所があったので、結局クルマを選んだ。

 伊豆に入り、昼前に国道135号線沿いのレストランで金目鯛を食べた。宿の夕食は、「板長のお任せプラン」だったので、金目鯛の煮付けが100%出る保証はなかったので、とりあえず開始早々、今回の旅の大きな目的を達成した。早期の目的達成は安心感につながる。

 1泊2日の旅の場合、初日の昼食は、旅全体の成否を占ううえでとても重要な役割を担う。もし、この昼食で大きくハズしてしまえば、例えば奥さんや彼女などを連れていく場合、宿泊先での夕食や、朝食にも大きなプレッシャーを与えることになる。いわば、短期決戦の初戦を悪い形で負けてスタートすること同義だからだ。

 まずまずの展開で無難に昼食を終え、熱川バナナワニ園に行った。この付近は何度も通っていたのだが、初めて入園した。冬の間、ワニの動きは悪く、檻の外から挑発してもまるで置物のようだった。しかし、温泉熱を上手く活用した、同園の見せ物に十分に満足できた。そういえば、バナナワニ園の駐車場にクルマを停めたとき、隣にハーレー・ダビットソンとカワサキZRX1200ダエグが停まっていた。「真冬のような激寒の日に、おっさん2人がオートバイに乗ってワニを見に来ているのか」と思っていると、女性が2人、ワニ園から出て、そのオートバイに跨った。寒空に唯一ホットなシーンだった。いずれにせよ、温泉地の近隣にちょっとしたレジャー施設があると、旅人を退屈させない。

 その後、以前天候不良で入れなかった黒根岩風呂にも入り、宿にチェックインした。客室からは、相模湾の圧倒的な海が見えた。私は金目鯛も食べたし、雪催いの少々荒れた海を眺めながらビールを飲んで過ごすことで満足した。

 夕食は、金目鯛が出た。昼間のレストランよりも、宿の金目鯛の煮付けの方が美味しかった。私は、もう「成仏」してもいいほどに満たされていた。

 夕食が終わり、窓の外を見ると、もう真っ暗だった。海の波の音は聞こえるが、闇の世界である。ビールも昼の間に随分飲んだし、夕食もたらふく食べたので、お酒を飲みたい気分でもなかった。そうすると、もうやることがなくなってしまった。ひとことで言えば、「退屈」を感じてしまったのだ。随分勝手なものだ。旅先でテレビをつける気になれない。しかし、窓の外は真っ暗闇。そして静寂。布団が敷かれ、テーブルは隅に押しやられている。つまり、あとは眠るのみである。多くの旅館でこのような状態を経験する。これは旅館で一夜を過ごす宿命である。この時間をどう過ごすかが、旅人としての力量が問われる。私は気づいたら眠っていた。 

(編集長・増田 剛)

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