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震災から4年9カ月―岩手県陸前高田市と宮古市田老地区を取材― (11月9―10日)

生命と防災の“学びの場”に

 2011年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく5年を迎えようとしている。復興が遅れる一方で、震災の風化は進んでいる。そのなかで、被災地は「生命の大切さ」や「防災」「まちづくりの復興」などさまざまな“学びの場”を提供している。11月9―10日に、復興の最前線、岩手県陸前高田市と宮古市田老地区を訪れた。語り部ガイドが伝えたい真の想いや、未来への「希望」など、現場の声を届ける。
【増田 剛】

「奇跡の一本松」の沖で新たな防潮堤が作られている
「奇跡の一本松」の沖で新たな防潮堤が作られている

陸前高田市、“もの言わぬ語り部”残すべき

 震災で甚大な被害を受けた陸前高田市には、今も全国から「陸前高田で何かしたい」という気持ちを持って多くの人々が訪れる。そんな人々の来訪の窓口となって「陸前高田をもっと深く知ってほしい」と、同市観光物産協会は14年4月に「まるごとりくぜんたかた協議会」を設立した。「応援されるだけではなく、訪れてくれた方々に『確かな価値』を提供していこう」との思いから、震災と復興を伝える「語り部ガイド」とともに、震災遺構を目の当たりにして“防災意識の大事さ”を学んだり、ゼロからのまちづくりの過程を見学しながら“復興とは何か”を考え、そして“生命の大切さ”までも考える機会を与える場となっている。

 震災から5年近くの月日のなかで、まちは日々姿を変えている。被災した建物の多くは取り壊され、わずかに保存が決まった震災遺構が残る風景。平均10メートルのかさ上げ工事のため、重機が山を削り、土砂を運ぶベルトコンベアが中心部の空中で稼働していたが、そのコンベアも撤去されようとしている。また、市内には5・5メートル、12・5メートルの巨大な防潮堤の建設も進められており、復興の最前線を体感することができる。

 陸前高田観光ガイドのガイド部会長の新沼岳志さんは14・5メートルの印が津波到達の高さを示す震災遺構「道の駅陸前高田松原」の前で「日々、我われが体験した震災について語っているが、時が経てば体験者は減っていく。『もの言わぬ語り部』を残しておかなければならない」と強調する。「明治29年、昭和8年、昭和35年の津波のときも何も残してこなかった。書物やDVDで記録しても平時には誰も見ない。見たくなくても毎日目に映る震災遺構こそが訴える力になる。何も残せなかった地域は次第に人々が訪れなくなっている……」と話す。「時とともに訪れる方々のニーズは変わる。ガイドも震災の話だけでなく、『被災地では今このような問題が起こっている』など、ソフト面の話を中心にしている」と語る。

 問い合わせ=陸前高田市観光物産協会 電話:0192(54)5011。

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津波で4階まで浸水した「たろう観光ホテル」
津波で4階まで浸水した「たろう観光ホテル」

宮古市田老地区、「防災の町」世界に向けて発信

 宮古市田老地区は“万里の長城”の異称を持つX型の高さ10メートル、全長2433メートルの二重防潮堤があまりにも有名だ。しかしながら東日本大震災では、181人という大きな犠牲者を出した。

 現在、無残に壊れた防潮堤の沖合70メートルに、高さ14・7メートルの新しい防潮堤の工事が始まっている。4階まで浸水した「たろう観光ホテル」も震災遺構として宮古市が保存することが決まった。

 さまざまな震災遺構が残る田老地区は「防災の町」として認知度を広め、日本全国、世界中から多くの人々が訪れる。宮古市も防災意識を高めてもらおうと、「学ぶ防災」として多様な案内コース・プログラムを用意している。

 田老には高齢者もスロープや階段で高台に逃げやすいように避難道がたくさんあるのが特徴。また、今回の災害で水門作業をしていた消防団が逃げ遅れ犠牲になったことを教訓に、津波到達予想時刻の10分前までに作業を終わらせるルールなども新たに整備された。

 宮古観光文化交流協会に6人在籍する“学ぶ防災ガイド”の佐々木純子さんは「時間稼ぎのための防潮堤がいつの間にか過信になっていたのかもしれない。人間は自然災害には勝てない。100年経っても“逃げること”。少しずつ逃げなくなる意識が恐い」と語る。現在も多くの行政や企業・団体のリーダー研修などで田老を訪れる。

 問い合わせ=宮古観光文化交流協会「学ぶ防災ガイド」 電話:0193(77)3305。

地元の食材を提供「渚亭 たろう庵」

 被災したたろう観光ホテルは宮古市に無償譲渡し保存が決まったが、同ホテルの松本勇毅社長は今年6月、田老の高台に新たに「渚亭 たろう庵」を開業させた。全13室で関西や中四国、九州からも多く訪れ、稼働率は90%を超える超人気宿となっている。アワビやワカメをはじめ、地元の豊富な魚介や野菜を洋食のシェフと和食の料理人が提供する。松本社長は「震災後も以前と変わらず魚は獲れる。加工工場ができ、付加価値を付けられると、さらにブランド化され、大きな可能性を感じる」と未来に期待を抱いている。館内では、松本社長がたろう観光ホテルの6階から撮影した、インターネットでも配信されていない津波の映像を見ることができる。

 問い合わせ=渚亭 たろう庵 電話:0193(87)2002。

 田老地区はまちづくりのビジョンも描かれている。過去何度も津波被害を受け、将来も津波が訪れることが確実なまちであるがゆえに、最先端の「防災の町」として世界中からこのまちに多くの人が訪れ、知恵と情報が集まり、発信していく可能性を感じた。

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