「トラベルスクエア」外食と観光の女性人材交流

2020年10月24日(土) 配信

 

 憂鬱なコロナの秋が来た。憂鬱というのは、この秋から、なんとか踏ん張っていたレストラン、食堂組がガソリン切れ、続々倒れていくのではないか、という予感があるからだ(地方旅館だって同じだが)。

 そうなると何が起きるか。大量の解雇、人員整理ということになる。

 男性には次の就職先を探す余地があろうが、こうなると女性は圧倒的に不利になるだろう。

 一方で、観光産業は相変わらずの人手不足。このミスマッチを解消しようと手を挙げてくれた女性がいる。

 石川史子さんといって、現在フードフィールドクリエイティブという会社を主宰され、フード関連全般のコンサルティング(とにかく厨房機器に強いリケジョなのが素晴らしい)、フードのECサイト運営、いくつかのまちおこしへの参加活動をされている方だ。

 実は、先輩ジャーナリストに誘われて、コロナで危機に陥っている外食産業にアドバイスをしようと、業界の指導的立場に立っている方々を集めたフードビジネス研究会の設立に加わっている。ちなみに、この組織、英語名はフードビジネスインスティチュート、頭文字をとってFBIと名付けたのは僕。米国にCIA(カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ)があるなら、こっちはFBIで行こうという気構えだ(笑)。

 その事務局を引き受けてくれたのが石川さんで、彼女は今、FBIの下に「女性活躍推進分科会」を設けて、この外食と観光での女性勤務の交流事業を立ち上げようとしている。

 具体的には外食で活躍していた女性たちに、デジタル人材教育を受けてもらう。もともとある接客のスキルと観光関係者が不得意分野とするIT関連の両方を身につけてもらえば、価値が生まれるのではないか、と石川さんには具体的なプランも見え始めているようだ。

 女性活躍、今回の組閣をみても女性の存在感はゼロに近い。これでは駄目だなあ、と痛感する。

 外食や観光関係のコンベンションに参加しても、黒っぽい背広を着た男性ばかり。もう、うんざりすることばかりだ。

 皆さんは「にーまるにーまるさんまる」という標語を覚えておられるだろうか? これは安倍元首相が2020年には企業や組織の役員さんの3割は女性にしようという意図を込めたもの。それすら忘れてしまう政府なんだから、民間においておや、という感じかな。

 しかし、当面はコロナ危機で生まれる女性解雇の波だ。それをなんとかしようという石川さんの試みは貴重なものだ。

 観光業界、とくに旅館さんは、こうした外食系人材にも興味を持っていただきたい。

 僕もこの分科会で及ばずながら頑張るつもり。

 

コラムニスト紹介

松坂健氏

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

 

NAAと日本医科大、最短2時間で陰性証明書発行 PCRセンター開設

2020年10月23日(金) 配信

検査で使用する全自動遺伝子解析装置「GENECUBE」

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)と日本医科大学は11月2日(月)の午前11時に、同空港内にPCRセンターを開設する。最短2時間で新型コロナウイルスの検査結果の証明書を発行する。多くの国で入国時に新型コロナウイルスの陰性証明書を求められるなか、利便性を増すことで、国際線需要の早期回復につなげたい考え。

 同センターは問診から証明書の発行までを行う国内空港初の施設。事前予約なしでも受け付ける。出国者以外も受検できる。

 場所は第1ターミナル中央ビルの3階と第2ターミナルビルの1階に設けた。

 年中無休で24時間営業する。料金は予約した場合3万9800円、予約しなかった人と午前9時から午後5時以外の検査は、4万6500円となる。健康保険は適用できない。

 利用者は同病院の付属病院で検査したうえで、証明書を成田空港で受け取ることもできる。

 10月22日(木)に開いた会見で田村社長は「国際線の早期復活につなげたい」と力を込めた。

日帰り温泉施設「荒船の湯」10月25日オープン 群馬県・下仁田町

2020年10月23日(金) 配信

下仁田「荒船の湯」

 アーキテクト(山口正人代表、埼玉県深谷市)は10月25日(日)、群馬県・下仁田町に日帰り温泉施設「下仁田『荒船の湯』」をグランドオープンする。

 昨年9月に閉館した下仁田町の町営施設「西下仁田温泉『荒船の湯』」の民間移譲公募に応募した同社が、総工費1億5千万円をかけリニューアルした。打たせ湯や寝湯、壷湯、露天風呂の新浴槽など新たな温泉設備の追加やエントランス部分の刷新など大規模な改修を行い、リラックスできる空間づくりを目指す。

 施設入口部分には、ウイルス不活化が期待される消臭・除菌シャワーミストを設置し、館内決済にICタグシステムを導入するなど、コロナ禍でも安心して利用できる。また、今回の改修でコワーキングスペースや個室を新設し、新しい働き方として注目を集めているワーケーション利用も可能な施設となっている。

 館内食堂では、地場野菜を使用した「肉汁ねぎうどん」や、同町初となるクラフトビール「下仁田クラフトビール」などのオリジナルグルメのほか、地元下仁田町にある「神津牧場」の生乳を使用したソフトクリームなども楽しめる。

 食堂のみの利用も可能で、入浴客だけでなく近隣を訪れた観光客や地元住民にも食事処として利用してもらえるように、今後も下仁田町の美味しい食材を生かしたメニュー開発に力を入れていく。

TEJ沖縄、285の企業・団体が出展 「コロナ禍では最大級の旅のイベント」10月29日~11月1日開催

2020年10月23日(金) 配信

沖縄での開催は初

 日本旅行業協会(JATA、坂巻伸昭会長)は10月22日(木)、来週から沖縄で開催される「ツーリズムEXPOジャパン2020 旅の祭典in沖縄」(TEJ沖縄)について現在の状況を説明し、出展が企業・団体合わせて285にのぼることを明らかにした。池畑孝治理事・事務局長は「コロナ禍では最大級の旅のイベント」と話し、ニューノーマル時代の新しい旅のカタチを国内外に発信する。

池畑孝治理事・事務局長

 「昨日も参加国・地域が増えたりと、刻一刻と状況が変わっている」。同日に東京・霞ヶ関の本部で開いた定例会見で池畑理事・事務局長は、開催直前まで参加を検討している団体があるなど、出展数が変動する可能性を示唆した。

 初の沖縄開催となる今回のTEJは、10月29日(木)~11月1日(日)の日程で行われる。国内が28道府県、海外が30カ国(10月21日時点)のほか、観光関連事業者、旅行会社、航空会社などが出展。「旅の力」で日本・世界を元気にする機会を創出する。

 一般日(10月31日、11月1日)の来場者は、昨今の状況を鑑み、事前予約を必須とした。予約はすでに4000人を超え、うち沖縄以外が約1500人だという。会場内各所で感染防止対策も講じ、感染症対策啓発ブースも単独で設ける。

 展示会は、IT見本市のResorTech Okinawaおきなわ国際IT見本市2020(リゾテックおきなわ2020)と共催し、VRを活用した展示などにも取り組み、新しい生活様式に対応するソリューションを提案する。

 また、フードコーナーは密を避けるため屋外に設置。「おきなわフードフェスタ」と称し、「沖縄キッチンカーフェスタ」「沖縄県産肉×琉球泡盛フェスタ」「旅するカレーフェスタ」の3つのカテゴリで開催する。

 池畑理事・事務局長は「コロナ禍でもこれだけのイベントができると、日本・世界にアピールしたい」と力を込めた。

アイランダー、今年はオンラインで開催  リモート観光ツアーも

2020年10月23日(金) 配信

84団体が参加する(画像はイメージ)

 全国の島々が集結するイベント「アイランダー2020」(主催:国土交通省、日本離島センター)は11月20日(金)~11月29日(日)までの10日間、オンラインで開催する。交流プログラムやライブ配信などを通じて、「島」の魅力を体感できるとともに、離島地域の活性化をはかる。

 今年で28回目を迎え、各地から84団体が参加する。島のおすすめ観光スポット紹介をはじめ、リモート観光ツアーやオンラインヨガ体験など、Webを最大限に活用し、島に滞在しているようなプログラムを実施する。

 移住を考えている人には、島の人と対面で個別相談ができるほか、ハローワーク職員と1対1で仕事の相談も行う(いずれも予約制)。また、離島と島外の民間企業が交流できる場「しまっちんぐ」も設ける。

 特色ある特産品を取りそろえた「島のマルシェ」では、各出展団体が販売する商品を紹介し、取り寄せもできる。

 同イベントは「離島」と「都市」の交流事業で、島の自然や歴史、文化などをアピールすることで、交流人口の拡大、UIJターンを促していく。

アプリの案内で福岡を巡る、デジタル観光ツアー無料公開 西鉄×スポットツアー

2020年10月23日(金) 配信

デジタルツアーの画面イメージ

 西日本鉄道(倉富純男社長、福岡県福岡市)とスポットツアー(鳥居暁社長、東京都千代田区)は10月23日(金)から、デジタルの案内で福岡の街を巡ることができる観光ツアーをアプリ「SpotTour」で無料公開した。福岡の魅力発信と観光需要の創出が狙い。2021年3月31日(水)までの期間限定。

 「鉄道・バス・徒歩とデジタル観光ツアーアプリを利用した、福岡の魅力の再発見」をテーマに、位置情報を活用したアプリ完結型のデジタルツアーを展開する。ガイドに頼らず、1人から参加できるため、ウィズコロナ時代の鉄道・バス・徒歩を活用した安全・安心な観光を提案する。

福岡デジタル観光ツアー

期間:2020年10月23日(金)~2021年3月31日(水)

コース:計9コース(無料)

例①天神散策【2時間】意外と知らない九州一の繁華街を歩いてみよう

・西鉄福岡(天神)駅⇒福岡市役所15F展望台⇒アクロス福岡⇒HARENO GARDEN⇒福岡市赤煉瓦文化館⇒水鏡天満宮⇒警固神社

②博多旧市街散策【2時間】こんなにあった!福岡発祥・伝来の地、寺社めぐり

・博多駅⇒九州鉄道発祥の地碑⇒博多千年門⇒承天寺⇒妙楽寺⇒東長寺⇒博多町屋ふるさと館⇒櫛田神社

③福岡の公園散策【2時間】「大濠公園」「舞鶴公園」福岡セントラルパーク

・大濠公園バス停⇒大濠公園(柳島浮見堂)⇒日本庭園⇒福岡城・鴻臚館案内処(三の丸スクエア)⇒福岡城天守台⇒福岡城むかし探訪館⇒福岡城・鴻臚館前バス停

――など。

 スポットツアーが運営する「SpotTour」は、「無人観光(デジタルツアー)」を提供し、日本各地の持続可能な観光整備を支援する。アプリは12言語に対応し、会員登録不要で無料で利用できる。現地までのナビゲーションやデジタルスタンプ、現地に行くと開放される情報(限定情報)を表示させることが可能。観光スポットに訪問した日時の履歴は「ツアーカード」として記録され、写真を撮影すると自動的にフォトブックも制作する。観光地や施設の説明やマナーも、動画を掲載することでわかりやすく説明できるという。

エアトリ、Go To東京キャンペーン、事前座席指定が無料に

2020年10月23日(金)配信

「エアトリ国内ツアー」SPRING商品・キャンペーンページ

 エアトリ(柴田裕亮社長兼CFO)はこのほど、同社らが運営する総合旅行プラットフォーム「エアトリ」の国内ツアーで、LCC(格安航空会社)の春秋航空日本(SPRING)と連携して「エアトリ限定!Go to東京キャンペーン」を始めた。期間中、「エアトリ」で東京行きの対象プランを予約した52(GoTo)組限定で、通常は有料の事前座席指定料を無料にする。

 今回のキャンペーンは、座席指定手続きも「エアトリ」で行うため、出発当日の空港での座席指定手続きが不要となる。さらに、対象の全プランはGo to トラベルキャンペーン(CP)対象商品のため、Go To トラベルCPの最大35%割引、旅行代金の最大15%相当額の地域共通クーポンと合わせて、実質最大50%割引となる。

 対象プランは、SPRING利用の新千歳発、広島発、佐賀発の東京(成田)行きプラン。10月15日~12月31日までに対象プランを予約し、入金した利用客が対象となる。指定座席はスタンダードシート(5~15、18~33列目)。

JOTC、世界各地の観光局参加のWebセミナー開催へ 全19日37回の実施

2020年10月23日(金) 配信

イメージ

 日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC、菊間潤吾会長)は11月12日(木)~12月24日(木)の間、旅行会社を対象に「JOTC デスティネーション シリーズ ウェビナー」を開く。海外旅行再開に向けた準備として、各国・地域の観光局や大使館などがプレゼンテーションを行い、旅行会社の社員に教育研修の機会を提供する。

 全19日37回にわたって実施する同セミナーは、アジアや欧州のほか、中東、南米、外国クルーズ船各社など、世界各地の団体が参加する。プレゼンは1回あたり3時間と長めに設定し、現状報告や観光客の受入体制、PRなどを、趣向を凝らした内容で紹介する予定。参加団体は観光局を中心に、航空会社などと連携して参加するエリアもある。

 10月22日の定例会見に出席した海外旅行推進部の薦田詳司副部長は「視聴の受付開始から1日半で約700人の申し込みがあった」と報告。旅行会社の関心の高さをうかがわせた。また、Webセミナーの利点として「東京のみならず、全国の広い地域で聴くことができる。大きなメリット」と語った。各回の定員上限は3000人、毎回1000人の視聴を目標に据える。申し込みはJATAホームページで受け付ける。

 JOTCでは今年4~9月に合計10回のWebセミナーを開催し、延べ1万2327人が参加した。薦田副部長は「回を増すごとに参加者が増えている」と話し、今回のセミナーへの参加も呼び掛けた。

 ほかにも、JOTCの下期活動計画には、海外教育旅行の海外教育旅行オンラインセミナー(11月・全5回)の実施や、海外修学旅行の手引き策定などがある。また、一般消費者に対する海外旅行機運醸成をはかるため、ツアーグランプリにオンラインツアー部門新設(案)や、国内主要空港でのイベントを計画している。

佐賀市内をお得に巡る 格安貸切タクシープラン 来年3月末まで

2020年10月23日(金)配信

つながるタクシーロゴ

 佐賀市にこのほど、市内の見どころを、お得に巡ることができる格安の貸切タクシープラン「SAGAつながるタクシー」が登場した。定番の観光スポット巡りや希望に沿ったオリジナルコースなど、利用時間に応じて自由にアレンジが可能。ウィズコロナ時代において、安心と快適さを兼ね備えた、少人数での旅行にぴったりなサービスだ。旅行商品のオプションプランとして組み込むことも可能。実施は来年3月31日まで。ただし、利用件数が予定数に達し次第終了となる。

 利用は、佐賀駅南口にある商業施設「コムボックス佐賀駅前」1階の観光案内拠点「SAGA MADO(サガマド)」で受け付ける。佐賀市歴史民俗館や佐賀バルーンミュージアムといった佐賀市中心街の見どころを回るコース(2時間)をはじめ、歴史スポットを巡るコース(4時間)、少し足を延ばして世界遺産の三重津海軍所跡や筑後川昇開橋を訪ねるコース(2―4時間)など、2時間から6時間まで、1時間刻みで各種モデルコースを用意する。常駐する観光コンシェルジュに利用時間や立ち寄りたい場所などを伝えて、オリジナルコースを設定することもできる。

サガマド発着でお手軽に市内周遊

 申し込みは事前予約のほか、当日の飛び込みも可能。宿のチェックインや電車の出発まで、少し時間があるといったときにもぴったりだ。タクシーは原則、サガマド発着だが、旅の行程に合わせて到着地を九州佐賀国際空港や市内宿泊地などに変更することもできる。

 料金は普通車1台当たり、2時間コースで2千円、3時間コースで3千円、4時間コースで4千円、5時間コースで5千円、6時間コースで7600円(いずれも入館料など別途必要な場合あり)。

 タクシーを2時間チャーターした場合の通常料金は9200円、6時間の場合は2万7600円なので、同サービスを利用すれば、かなりお得に市内観光が楽しめる。人数に応じてジャンボタクシーも利用可能だ(料金は別途設定)。

 また、市内観光施設間(約50カ所設定)を時間フリーでタクシーを乗り継いで巡りたい人向けに、目的地までの乗車料金の半額程度(上限2万円まで)で利用できるタクシー利用割引券も発行する。

 問い合わせ=サガマド ☎0952(37)3654。

「観光人文学への遡航(4)」 カントの考える自由

2020年10月23日(金) 配信 
 

 人間が追求するべき自由とは何かを考え続けていると、必ずカントにたどり着く。すべての哲学はカントに流れ着き、そしてカントから流れ出るとも言われているように、近代哲学の分野においてカントの位置づけは重要である。
 
 カントの主張でのちの世界に最も影響をもたらしたのが、自由の尊重である。
 
 現代においてもそうであるが、自由とは、自分の意のままに振る舞う、すなわち、自分のしたいことをしたいようにできる状態と捉えられている。したいこととは、往々にして、己の生理的欲求と欲望に忠実に従っての行動ではなかろうか。しかし、実際にそれは、自分が己の欲望の奴隷となっているに過ぎない。カントは自由を厳格に捉えている。彼に言わせると、欲望に基づく行為は、逆に不自由なのだ。
 
 動物と異なる人間らしさとは、「やりたいこと」をやるのではなく、「やるべきこと」をやるところにある。目の前に2つの選択肢があったとき、やりたい方を選ぶのではなく、やるべき方を選ぶのである。今自分が下そうとしている決断は、やるべき道なのか、やりたい道なのか。そのように考えてみると、今まで下してきた決断は、往々にしてやりたい道を選んできたのではなかったか。
 
 しかし、私自身はやりたくはなかったけれど、力を持っている人が言うからしょうがなくこの道を選んだんだという声も聞こえてきそうだ。忖度という言葉がこれだけ一般化し、国家公務員だけでなく、地方でも、そして民間も、あらゆる組織が政権の真似をして忖度が一気に蔓延した。でも、一人ひとりと話してみると、本当はこんなことしたくなかったんだけど、しょうがないからやったんだという言い訳が聞こえてくる。
 
 でも、それも、人のせいにしておいて、結局は、自分の評価を下げたくない、自分が権力者に認められたいがために下した決断であるから、いくら言い訳しても所詮欲望の虜となっているに過ぎない。これはまさに不自由な生き方である。そして、そのような欲望に基づいて下された決断は、善意志から発出したとは言えない。
 
 カントの考える真の自由とは、「自律的に行動すること」である。自律的とは、自分以外のものが下した決定に従って行動するのではなく、善意志に基づいて自分で定めた法則に従って行動するということである。まさに、自(みずか)らに由(よ)るから自由なのである。人が決めたことに乗っかっているのは自由ではない。自らやるべきことを定め、それを無条件に実施するのが、自由である。予算がついたからやる、国から言われたからやる、住民から怒られたからやる、世の中はそんなことばかりである。善意志からやるべきことをやるという機会は、意識していないと、ないに等しい。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。